緑の党
 Green Party

 
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    ファシズム化に向かう教育
 
 今、働く者の生活は大変厳しくなっている。この厳しさはどこからくるのだろうか。今では労働者の3分の一が非正規雇用で、若者は二人に一人である。年収200万円以下の人が1000万人を超え、年収100万円しかない人も増え続けている。働いても働いても貧しいワーキングプア時代だ。年間自殺者は3万人を超え、12年連続だ。そして若者に仕事がない。若者の失業率も9%台であり、実に日本の失業率4.5%の2倍である。
 世界でも若者の失業率が高くなっている。スペインでは45.7%、ギリシアでは38.5%である。その若者が、希望のない社会に対して敢然と政府に抗議し、起ちあがっている。もともとEUはフランス9.1%、イタリア8.3%などにみられるように、米国に比べ失業率が高かった。それは医療などの社会保障が優先していたからである。しかし、米国では自己責任として社会保障が切り捨てられているので、失業率はEUに比べ、比較的低く抑えられていた。ところがリーマン・ショック以来、その米国も失業率は9%の高止まりで、10月になって8.6%に改善しているものの、医療保険のない者は4600万人と言われている。
 米国でも、若者の非正規雇用が増え、親の世話にならないと生活できない「パラサイトシングル」が470万人から約600万人に増大し、その45%が貧困ラインにいる。10代の失業率は25%だ。その若者たちが米国でも声を上げている。
 金融街のウォールストリートで若者、市民、労働者らが「1%の金持ちのせいで、99%の私たちが苦しんでいる」と明確なスローガンを打ち出し、9月に続き、10月もデモに繰り出し、ウォール街を占拠している。そのデモ隊に警官隊が催涙スプレーで攻撃し、ブルックリンの橋を渡ろうとした際に700人を逮捕した。しかし、その行動はやむどころか一層拡大し、30都市に広がり、11月15日には、ニューヨークで3万3000人がデモを行った。
 1%に当たる270万人の富裕層の所得が、下位から1億人の所得に匹敵する。大企業の最高経営責任者の年収は、平均的サラリーマンの数百倍である。オバマ大統領を支えている世界最強の投資銀行と言われるゴールドマン・サックスの会長で最高経営責任者のロイド・ブランクフェインの年収は16億円で、その他に投資収入で約23億円を手にしている。06年のボーナスは63億円である。このように投機でぼろもうけしている投資銀行などの救済のために税金を投入する政府や投資銀行、富豪に国民の怒りが爆発した。
 「ウォール街が問題の根源だ」とし、肥え太る企業と銀行、その企業と銀行のために忠誠を尽くす政治家に対して、断固「ニューヨーク州の富豪に50億ドルの減税をやめよ!公立学校や公的サービスの数10億jもの予算カットをやめよ!良質な雇用を創出せよ!」と要求している。これに対してニューヨーク市長は、公園清掃を名目に強制排除をした。しかし、労働組合が応援し、医師・看護士が医療班を組織し、ニューヨーク市職員労組も参加表明し、参加者が増え続けている。
 ウォール街を占拠する人々は、「人間よりも利益を、正義よりも私欲を、平等よりも抑圧を優先する企業が政府を動かしている時に、我々はみなさんに訴えるためにやってきた」と声明を発表し、「世界を支配する企業勢力から不当な扱いを受けたと思う人々すべてが、味方であると知ってもらうために声明を書いた」と発表している。その声は多くの支持を得て、広がっている。
 貧富の格差は急速に広がり、世界的な兆候となった。それは弱肉強食を象徴とする新自由主義・市場原理主義経済によるものである。
 
 新自由主義経済とは何か
 
 この新自由主義経済の特徴は、「民間の活力」を第一として、国営のものを民営化させ、企業や外資の市場拡大のために規制緩和を強行した。そして「小さな政府」を掲げ、社会福祉、教育費を削った。大企業と富裕層には優遇税制で減税を行い、貧しいものには増税を課すため、富める者は益々富み、貧しいものはますます貧しくなっていった。
 そして、大企業は世界競争で生き抜くため、労働者を使い捨てにし、非正規雇用労働者を大量生産した。そのため労働者の生活は一層困窮している。
 この新自由主義は80年代から登場してくるが、英国のサッチャー首相時代は1986年「金融ビッグバン」と称して、銀行の淘汰を行った。製造業より、金融による投機が世界を席巻し始めた。米国のレーガン大統領時代は、富裕層への最高税率が70%だったものを28%までに下げ、金持ち・企業を優遇してきた。その結果国家財政を一挙に悪化させた。そして国債を発行させつづけてきた。
 ブッシュ親子は湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争へと武力による市場強奪を行い、オバマ政権時も踏襲され、石油市場獲得のため、リビアも武力制圧した。また。クリントン大統領時代は金融業務の規制緩和が行われ、IT産業はもとより、金融派生商品はグローバル化で激増した。しかし、実態の伴わない投機は世界を駆け巡り、遂に2008年にはリーマン・ショックで破綻した。今日の米、EUの危機は深刻であり、日本もまた急激な円高、企業の海外移転はさらに加速している。
 この新自由主義経済では、破たんした金融・大企業の負債を政府が税金でカバーするため、国家財政は益々赤字になり、社会福祉費、教育費の削減や公務員削減が矢面になった。ギリシャでも緊縮財政に対して国民が抗議のデモを行っている。
 日本では第二臨調(第二次臨時行政調査会・1981年〜1983年)からこの新自由主義経済が行われた。中曽根内閣時代、国鉄の分割・民営化、電電公社、専売公社の民営化が断行された。中曽根はのちに、「国鉄の分割・民営化の真の目的は労働組合の解体にあった」と語っている。つまり、闘う労働組合を解体することによって、労働者を使い捨てにできる雇用体系を作り、大企業の儲けを支えた。それが「労働者派遣法」の規制緩和であった。戦後は労働環境の劣悪な状態により、間接雇用は禁止したが、実際は山谷のような手配師はずっと行われていた。通訳などの13の特殊業務は認めるとして1985年労働者派遣法が成立した。ところが、労働者派遣は急増し、1999年には派遣業種が拡大し、2004年には製造業まで解禁された。つまり、大企業の調整弁として、労働者は全く無権利になり、使い捨てになったのである。
 野田政権は今国会で「労働者派遣法改定」を骨抜きにしようとしている。08年のリーマン・ショックで大企業はいち早く派遣労働者の首を切った。その失業者が集まった「派遣村」が大きな社会問題になった。そこで、「製造業派遣」「登録型派遣」の原則禁止を柱として「労働者派遣法改定」案を提出したが、大企業の意向と自民・公明の反対で、「製造業派遣」「登録型派遣」をそれぞれ原則禁止する規定について削除することで三党が合意した。今後TPPなどを視野に入れた時、大企業は労働者を使い捨てにできるこの制度を維持したかったのである。野田政権は大企業の代弁者にすぎない。
 2001年に登場した小泉元首相もまたその急先鋒で、彼は「自民党をぶっ壊してでもいい。今の日本の閉塞状態から脱出するには改革が必要だ」とセンセーショナルに宣言した。小泉の行ったのは「郵政改革」である。日本の郵便局は郵便貯金、簡保も含めると約300兆円の資産があり、世界最大の銀行である。その市場に目を付けた米国が、「郵政民営化」を要求し、小泉はそれに応えたものである。
 
 TPP加盟は売国政治
 
 そして、いま最も大きな問題がTPP(環太平洋経済連携協定)である。これは初め、太平洋の3カ国、シンガポール、チリ、ニュージーランドの経済貿易協定だった。それにブルネイが加わり、2006年5月TPPとなった。この小国貿易協定は隣の大国、シンガポールはマレーシア、チリはアルゼンチン、ニュージーランドはオーストラリアに対して小国同士の絆を強めていこうというものであった。ところが、2008年9月アメリカが、投資、金融を含む全分野の交渉への参加を表明し、2010年、オーストラリアも参加し、米国がTPPの主導権を握った。現在ベトナム、マレーシア、ペルーも加わり9カ国である。そして今年の11月11日、野田首相が、国民の意思を無視し、ハワイで行われたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でオバマ大統領と会談し、TPP交渉への参加を正式に表明した。カナダ、メキシコも参加表明している。このTPPは2015年までに工業製品、農産物、金融サービスなどすべての商品について関税、その他の貿易障壁を実質的に撤廃し、環太平洋全域に貿易自由化を実現するという。

 米国がこのTPPで主導権を握った目的は、米国を抜いて世界第一の経済大国になろうとする中国を包囲し、アジアの市場で米国の輸出倍増計画を達成するという経済的進出のみならず、政治的、軍事的に中国に対するアジアでの勢力圏を増大させるという狙いである。
 アジア太平洋地域(APEC21カ国)での経済連携の枠組みは中国やASEANが重視する「ASEAN(東南アジア諸国連合10カ国+3〈日本、中国、韓国〉)と日本が提起する「ASEAN+6カ国(日中韓、インド、オーストラリア、ニュージーランド)である。そのどれにも米国は入っていない。しかし、アジアは世界で最も経済発展する地域である。その市場を狙い、米国が入ってきたのがTPPである。  このTPPに参加すれば、日本の輸出企業は儲けるだろうが、米国に市場を明け渡し、農業だけでなく、24の分野で関税が撤廃されるため、その損失は大きく、国家存亡の危機にさらされる。一層米国へ従属させられることになる。
 @ 米国はTPPでアジアへの分断を持ち込み、中国包囲網を作ると同時に、日本とアジア諸国との分裂も画策している。このTPPは加盟国以外の国に対しては大変排他的な条約である。加盟国同士は関税をなくすが、加盟していない国には高い関税をかける。大企業は米国の市場に車や電気製品を輸出したいがために政府の尻を叩いて加盟を急がせているが、いままで築いてきたアジア諸国との関係もTPPに加盟することで、差別的な経済関係を作ることになり、今まで築いてきた関係が崩れていく。特に日本と中国の経済関係が妨げられる。米国に乗せられて損をするのは日本である。「TPPの経済効果が10年間で2.7兆円に対して、ASEAN+3が5.2兆円と大きく、しかも例外品目もTPPに比べても設けやすい」と自民党の茂木敏充政調会長は、野田政権のTPP偏重政策を批判している。経済効果が減るにもかかわらず、TPP参加に邁進する野田政権はまさに売国政権であり、日本を亡国へと導くものである。
 A このTPPで農業は壊滅的打撃を受ける。農水省はこのTPP参加により食料の自給率は40%から14%に落ち、農業が被る被害は生産額にして4兆1000億円、関連産業を含めると7兆9000億円に膨れ上がり、351万人の雇用が喪失すると発表した。
 日本のコメは778%の関税率で守られ、主食のコメは自給している。しかし、その関税を守るため、アメリカに1割に相当する外国産米を輸入することを義務付けられている。日本のコメは年間生産量は800万トン。1割に相当する80tは外国産米を輸入しているが、そのうちの5割は米国産のコメである。しかし、このTPPは「関税ゼロ」なので、規制はなく、米国産の安いコメが雪崩を打って入ってくることになる。現在日本のコメ生産費は1俵(60s)1万3700円である。米国は2880円、中国は2100円、オーストラリアは2640円である。米国産の輸入米価格は3000円くらいであるが、これでは日本は太刀打ちできない。日本のコメの一部のブランド米以外は総崩れになる。しかし、安いコメがいつも入ってくる保証はない。米国の金融資本は、コメの先物市場で主導権を握り、原油のように価格操作し、日本の田畑が荒廃したころ、米価を釣り上げると輸入が途絶え、たちどころに食糧難に遭遇することになる。食料自給率40%の現在、食料の輸入がストップしたら5000万人が食料の危機に直面し、14%になった場合は1億1000万人が困窮する。日本がアメリカに生殺与奪の権利を握られることになるのである。
 ハイチでは米国の圧力で、1955年、コメの関税を35%から3%にしたら、自給できなくなった。メキシコでは、関税フリーの北米自由貿易協定で、トウモロコシの原産地であるにもかかわらず、米国の安いトウモロコシが入ってきて、130万人の農民が職を失い、食料輸入国に転落した。コメの自給を守ることは絶対譲れないことである。米国のコメは安いと言うが、米国では農家補償が行われているからである。現在でも、米国の農家保障は65%。ドイツ62%。フランス44%、イギリス42%、それに比べて日本は27%と格段に低い。
 また、TPPで、遺伝子組み換え食品の表示義務もなくなる。農薬まみれの食品や遺伝子組み換え食品が大量に入ってくる。優秀な科学者が遺伝子組み換えのじゃがいもをマウスに食べさせたら、65の健康被害が出たと発表。「問題が解決されない限り私は遺伝子組み換え食品を食べない」「市民をモルモットにすべきでない」と言ったら、バイオ産業の攻撃で解雇されたという。真実を語るものはいつでもバッシングに合う。また、ラウンドアップ社の除草剤や除草剤耐性作物の輸入が拡大される。インドではモンサント社などが遺伝子組み換え綿の種を「綿自体に殺虫効果がある。害虫が死ねば殺虫剤を買わなくてもいい。幸せを運ぶ種」と4倍の値段の種を売りつけた。農民は借金して種を買ったが、豊作にならず、腎臓を売る者も出、10年間で20万人の自殺者が出た。また日本の稲のカメムシ退治にネオニコチノイド系の農薬が使われているが、この農薬で、ミツバチの大量死が起き、自然の生態系が破壊されている。
 このTPPに対して、全国農業協同組合中央会(JA全中)は真っ先に反対表明をした。「我が国は世界最大の農林水産物輸入国であり、国民の圧倒的多数が望むのは、食料自給率の向上である。・・・地球環境を破壊し、目先の経済的利益を追求し、格差を拡大し、世界中から食料を買いあさってきたこれまでのこの国の生き方を反省しなければならない。食べ物を大切にし、美しい農村漁村を守り、人々が支え合い、心豊かな暮らしを続け、日本人として品格のある国家を作っていくため、われわれはTPP交渉への参加に断固反対し、更なる国民運動の理解と支持を得ながら、大きな国民運動に展開させていく」とし、全国農業会議所、全国漁業組合連合会、全国森林組合連合会、生活クラブ生協連合会、大日本水産会など17団体で実行委員会を結成し、反対行動を展開している。これまで1167万人の署名を集め、国会議員350人が交渉参加反対、もしくは慎重にという態度を表明している。また、日本医師会、日本薬剤師会も「TPPは国民皆保険制度を破壊する」として運動に参加してきており、国民的な運動となっている。
 
 アメリカのルールを押しつけ、治外法権的TPP
 
 B TPPは農業だけでなく、24分野にわたって関税が撤廃され、米国のルールを押し付けられる。それに違反すると訴えられ、賠償しなければならなくなり、治外法権的制度ともいえる。すでに日本は、全品目の関税の平均は3.3%で、農産品は11.7%である。EUの関税率の20%にくらべると、充分に日本は開国しているが、TPPに加盟するということは米国の輸出を日本の24分野にわたって、増やすということである。
 まず、このTPP交渉参加に際しても日本には米国から条件が付けられている。その条件を満たさないと参加できないことになる。米国産牛肉に対しては、2003年12月に牛海綿状脳症(BSE)の発生で、輸入が停止されていたが、2年後に20ケ月以下の牛肉のみ輸入することになっている。その輸入制限を撤廃することを米国は要求している。また、かんぽの「がん保険」参入を規制するように要求してきた。米国の要求で小泉は郵政を郵便(郵政事業会社、郵便局会社)、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の4会社に分割した。郵貯と簡保には300兆円の資産があった。それに米国の金融資本が目をつけていたのである。ところが、分割・民営化は大変国民には不便で、自民党は総選挙で大敗北を喫し、見直しを掲げた民主党政権が生まれた。この見直しは、郵便局を通じて、郵政、郵貯、かんぽを全国的に行うもので、切り離しを再び回復させるものである。ところが米国はそれに対して「民間事業との対等な競争条件をおかす」として反対している。しかし、郵便局から切り離されると、郵貯もかんぽも資金収集能力が大幅に減ってしまう。さらに、かんぽ生命は米国の規制で、新規の保険商品を発売できないので保険収入が07年には115兆円あったものが93兆円と22兆円減った。死亡保険の希望額は男性は平均3600万円、女性は1700万円と言われるが、かんぽ生命は1300万円に制限され、がん保険についてはかんぽは参入が認められていない。1974年米国系のアメリカファミリー生命保険が日本でがん保険を開始し、独占していた。2001年に初めて日本の保険会社もがん保険に参入できるようになったが、今でも8割を米国の保険会社が占めている。自国の保険市場でありながら30年近く、日米保険協議でがん保険に参入できなかったのである。政府は郵政民営化見直しで、生命保険の限度額を2500万円に引き上げること、がん保険にも参入することとしているが、米国が猛烈に反対しているのである。
 そして米国は24分野にわたって問題が起きた時、米国のルールを強引に適用するために、ISD条項(投資家対国家の紛争解決)を持ち出し、治外法権的な制度が復活してくる。メキシコの自治体が環境保護のため、米国企業による有害廃棄物の埋め立て許可を取り消したら、このISD条項により、投資した米企業の訴えで、メキシコ政府は約1670万ドルの賠償を支払うことになった。カナダ政府は823万ドル米企業に支払っている。投資家が投資先でトラブルになった時、世界銀行傘下の国際投資紛争解決センターなどへ仲裁を申し立てることが可能と定めてあるのが「ISD条項」であるが、米国の投資家に有利な決定ができるようになっており、米国のルールが押し付けられることになる。
 そして米国の企業が日本の市場を狙って一層入り込み、公共事業までも食い物にする。それとともに、米国の弁護士が大量に米企業を守るために入ってくる。また外国人労働者も大量に入国し、労働現場が一層低賃金化する。非正規労働者が一層拡大する。安いものも大量に氾濫しデフレが起こり、TV局や銀行も外国資本に牛耳られることになる。著作権の厳密な解釈などにより、日本国内で流通している模倣品などが海賊版として取り締まられることになる。
 C また、このTPPの重要な問題として、国民皆保険制度が破壊されることである。医療分野では、混合診療が解禁になる。高額な医療は保険適用でなくなり、お金のある人しか良質の医療を受けられなくなる。米国の企業や、保険会社、金融会社なども病院経営にも参入し、利益追求が一層激しくなり、医療の質や安全性の低下が加速される。また、採算の取れない治療や地域から撤退し、無医地帯などを多く作り出すことになる。米国では医療無保険の人が4600万人もおり、盲腸の手術代だけでも200万円もかかるという高額医療である。保険に入っていない人は緊急に病院に運びこまれても出されてしまうという無慈悲な社会である。日本もまたこれに倣うというのである。国民皆保険制度は少なくても国民の医療が守られているが、それまで破壊されるTPPに加盟するということは、国民を切り捨てるということである。
 このTPPによって、日本のほとんどの市場が米国に乗っ取られていくことになる。多国籍企業は儲けるが、貧しいものは一層生活が厳しくなるもので、断固このTPPに反対していかなければならない。いずれは国会でもTPP参加の審議と決議が行われるだろうが、TPPに反対する大きな国民運動を起こし、国家存亡の危機をもたらすTPP参加を阻止していかなければならない。国民の反対意見を無視して、野田政権がTPP交渉参加表明をしたことは許されないことである。
 
 米国のアジア介入が強まる
 
 米ロが初参加した東アジアサミット(EAS)で、米国はアジア太平洋地域を安保政策の最重点とする新戦略を打ち出した。アフガン、イラク、そしてリビアと米国の狙う政権転覆が達成したため、軸足をアジア太平洋に移すというものである。この地域にこだわるのは、「最も著しい成長を続け、世界経済規模の半分以上を占めるからである」という。しかし、アジアの中心は今中国である。中国は日本を抜いて世界第二位の経済大国であり、米国を脅かしている。アジアに続いて急成長するアフリカとの連携が良いのも中国である。その中国の影響力を剥ぐため、米国はアフリカにも武力介入している。そして今度は軍事、政治、経済面でアジアへの関与を強化するというのである。オバマはオーストラリアを訪問の際、同国北部に最大2500人の米海兵隊を駐留させる計画を発表した。南シナ海を含む西太平洋に米軍拠点を作ることで、中国をけん制しようとしている。米国は、アジア太平洋での存在を「最優先事項」と位置づけ、財政難による軍事予算削減もこの地域ではありえないと言明した。そして米国はEASで、中国と加盟国の一部が領有権を争う南シナ海をめぐる海洋安全保障に積極的に関与する姿勢を示した。米国のアジア介入は一層強まってくる。
 そして米国は中国包囲網を築くため、TPP交渉も急ぎ、9カ国が大筋合意した。アジア・太平洋における米国と中国の主導権争いは今後一層激しくなるだろう。そのために日本を一層米国の軍事的配下におこうとしている。
 沖縄に駐留する第三海兵遠征軍は、9月30日「在日米海兵隊基地」司令部を廃止した。そして「米海兵隊太平洋基地」司令部を設立した。在日米海兵隊基地は沖縄の各基地、キャンプ富士、岩国基地など日本の海兵隊基地を管理していたが、米海兵隊太平洋基地はそれにハワイ基地、カネオ基地、韓国のムジュク基地を新たに管理下に置き、ワシントンの米海兵隊基地司令部直轄となる。日米安保では「日本と極東の安全のため、米軍は日本の基地使用を許される」とあるが、米本土やハワイは極東ではない。そして世界中の海に出撃する第七艦隊も在日米軍に含まれていない。ところが、この米国の新司令部に対して野田政権は拒否するわけでもなく、「思いやり予算」を出し続けている。また、米空母艦載機部隊を岩国に移転し、米軍住宅を建設する計画も着々と進み、南スーダンには自衛隊300人が派兵される。そして6月には日米安全保障協議委員会で、基地の共同使用が打ち出され、米軍の基地に自衛隊が、自衛隊の基地に米軍が一体となって日米混成軍で演習をしている。
 また、中国との尖閣諸島問題で、政府は自衛隊の南西諸島への自衛隊配備を狙い、沖縄県の与那国島に陸上自衛隊沿岸監視部隊を配置し、三沢に配置していたE2C早期警戒機を数機、那覇基地に常時展開させる計画である。その那覇基地を2個中隊増強する予定である。
 そして、憲法改憲の憲法審査会が動き出した。10月21日に、衆参両院で憲法審査会の会長と委員が決められ、11月17日には初議論が行われた。2007年5月に改憲手続法である国民投票法が成立し、同年8月に憲法審査会が設置されていたが、4年間動きがなかったが、集団的自衛権の憲法解釈の見直しや武器輸出三原則の緩和を唱える前原民主党政調会長が民主党の憲法調査会の委員長に就任するや自公と一体になって改憲へと動き始めたのである。不戦の9条を投げ捨てるこの改憲の動きが各地域でも強まってきているのである。
 
 文科省が介入してきた教科書問題
 
 沖縄の八重山地区(石垣市、与那国町、竹富町)の中学校の公民教科書採択問題の紛糾は、今の日本の情勢を反映し、先鋭化している。
 3市町村の教育長や教育委員各1人を含む8人で作る協議会が8月23日、「新しい歴史教科書をつくる会」の元会長らが執筆した育鵬社版の教科書「新しいみんなの公民」を採択した。しかし、竹富町教育委員会は選定の方法に問題があるとして育鵬社版を不採択とした。
 沖縄では2007年、集団自決の軍の関与を巡って教科書検定問題で沖縄県民が11万人結集して県民大会を開催した。軍の関与があった事実を認めろと政府に強く抗議した経緯があり、さすがに育鵬社版の歴史教科書の採択にはならなかったが、育鵬社版の公民教科書を採択するという動きに出てきた。
 この協議会の会長は玉津博克石垣市教育長であるが、この会長は、@協会規約を次々変更した。教科書に通じた教員ら調査員が各教科書を比較し、順位付けしていたのを廃止した。最も現場の声を反映する教員の影響力を弱めるものである。全国でこれが行われてきた。これは「つくる会教科書」採択の手法である。A協議会の規約で定めた役員会を経ずに教科書調査員を委嘱した。沖縄教組の八重山支部執行委員長で中学校の社会科の教員が教科書調査員として一度内示されたのに、外された。B協議会は調査員の推薦にも入っていなかった育鵬社版を選定した。初めから育鵬社版を採択する計画であった。2010年石垣市長選は自公推薦の中山義隆市長が当選し、この市長に推薦されたのがこの玉津教育長であった。
 この混迷を受けて沖縄県教委がねじれ解消のために再協議を指導した。9月8日には、協議会メンバー以外を含む3市町村の教育委員全13人が集まり、再協議した結果、育鵬社版の採択が撤回され、東京書籍版が採択された。この結果を県教育庁は「有効」として文科省に報告した。
 ところが、石垣市と与那国の両教育長が反発し、「協議は整っていない」として中川正春文科相に訴えた。これに対して、9月15日、森ゆう子文科副大臣は「現時点で正式に決定された答申は育鵬社版一つだ。それに基づいて努力していただきたい」と答弁したが、竹富町教委は一歩も引かないので、中川文科相が遂に10月26日、「育鵬社版の教科書を採択する石垣市と与那国町に対しては、教科書の無償給付の対象とし、竹富町は無償給付の対象とならないが、地方公共団体自ら、教科書を購入して無償で給付することができる」と発言した。これに地元は一斉に猛反発し、「子どもと教科書を考える八重山地区住民の会」や「沖縄県教組」などが「抗議声明」を発表している。
 この問題は、教科書採択権は、各教育委員会にあるとしている地方教育行政法と、採択地区では同一の教科書を採択しなければならないとする教科書無償措置法の不整合にある。この不整合を放置してきてきた文科省が、竹富町だけを無償化の対象としないことは全く不当である。
 竹富町は「違法などしていないのにどうして無償化対象から外れるのか納得できない」となっている。もしこれが行われれば、1963年の教科書無償措置法制定後初めて実行されないことになり、憲法26条でも定めた義務教育は無償に違反する。
 文科省が育鵬社の採択に自民党と一体となって強行しているのは、戦争への道へと突き進んでいるからにほかならない。
 
 歴史を歪曲する教科書の採択を許さない闘いを
 
 この新しい歴史教科書をつくる会(「つくる会」)は、仲間割れし、「つくる会」から分裂した日本教育再生機構=「教科書改善の会」は育鵬社(扶桑社の子会社)から、「つくる会」は自由社から歴史と公民の2種類の教科書をそれぞれ発行している。彼らの考え方は、教科書の「反戦・平和や護憲、核廃絶、アイヌや在日外国人への差別撤廃、環境保護」などの記述は「有害添加物=毒」だと決めつけている。また国際紛争は話し合いでなく、武力で解決するのが当然だとしていることだ。日本のアジア侵略も「戦争初期のわが国の勝利は、東南アジアやインドの人々に独立への希望を与えました」(育鵬社)とし、アジア解放の戦争と強調し、歴史の真実を教えていない。また沖縄戦での集団自決について日本軍の責任を認めず、米軍の上陸と攻撃で県民が自ら選らんだものとして描き、史実を歪曲している。
 危機に対しては天皇を中心に国民がまとまれるというのが「つくる会」の主張で、神武天皇を初代天皇と記述している。また国民の参政権や、基本的人権がなかった大日本帝国憲法を賛美し、国民より、「天皇」「国家」を優先する教科書である。このような教科書を採択させようとする今の民主党の政権は、自民党と一体になり、戦争を賛美し、戦争へ進むものである。
 特に、中国との尖閣諸島の問題を取り上げ、危機意識をあおって、沖縄での米軍・自衛隊の増強を目論んでいる。教科書問題でも沖縄県民を分断させ、沖縄の更なる軍事基地化を狙っているのである。
 また、辺野古新基地移設に向けた環境影響評価書を政府は年内に沖縄知事に提出する予定でいたが、記者に「いつ出すのか」と聞かれ、「(女性を)犯す前『これから犯しますよ』と言いますか」と沖縄防衛局長が発言した。この評価書の提出が女性への乱暴を想起させる発言は、女性の人権をないがしろにしたことと同時に、沖縄県民の感情を著しく傷つけたことで、県民はもとより国民の反発を買った。単に更迭にしたからいいという問題ではなく、それは政府の姿勢を反映したものである。一川外務大臣は「沖縄県民に心からお詫びしたい」とは言ったものの、1995年沖縄で小学生の少女が米兵に集団で暴行された事件についても「詳しく知らない」という有様で、一層沖縄県民の怒りを買っている。沖縄に米軍基地を押し付けてきたその歴史は沖縄戦から何も変わっていないのである。
 この育鵬社版の教科書が10年度に比べて急速に増えている。歴史教科書で約6.6倍の4万7812冊(3.7%)、公民は11.6倍の4万8569冊(4%)である。自由社版は歴史、公民共に0.1%にも達していない。育鵬社を採択した学校は大幅に増えた。育鵬社の採択冊数の約60%は横浜市が占めている。今回東京都の大田区も育鵬社版になった。清水教育長と高橋史郎元「つくる会」副会長も顧問を務める日本教育推進財団の理事である教育委員が主張したものである。大田区では、「大田多文化共生推進プラン」も策定され、大田区に住む18000人を超える外国人も「国際都市おおた」の町づくりに主体的に参画することを目標にしている。育鵬社版の採択はこの目標に反するものである。現場の声を無視し、少数の教育委員の決定で採択する現在の制度の問題点が浮き彫りにされた。しかし、前回「つくる会」の教科書を採択した杉並がそれを否決したことは、大きな闘いの勝利であり、育鵬社並びに自由社の教科書を採択させない闘いを作っていくことが急務である。
 育鵬社の歴史、公民の両方を採択した公立中学校は、栃木県大田原市、東京都大田区・武蔵村山市、神奈川県横浜市・藤沢市、広島県呉市、愛媛県今治市・四国中央市・上島町の9地区で、歴史を採択したのは、島根県益田地区、山口県岩国地区の2区で、公民を採択したのは、大阪府東大阪市、広島県尾道市である。また歴史、公民の両方を採択した公立学校は埼玉県立伊奈学園中学校、(中高一貫校)、東京都立中高一貫校(10校)、神奈川県立特別支援学校、横浜市特別支援学校、神奈川県立支援学校、愛媛県立中高一貫校(3校)と同特別支援学校である。歴史を採択したのは都立特別支援学校、神奈川平塚中等教育学校である。私立学校では歴史と公民が15校、歴史3校、公民3校の計21校である。
 また、自由社を採択したのは、公立学校では歴史がゼロで、公民が都立特別支援学校だけで、私立中学校では歴史と公民が2校、歴史5校、公民2校の計9校である。
 4年後の教科書採択に向け、今から子どもたちに真実の歴史や国民が主体となって社会を切り開いていくことを教えるためにも、「つくる会」系の教科書採択を阻止していかなければならない。
 
 「民意を反映させる」という橋下の狙い
 
 大阪では、11月27日の府知事と市長選のダブル選挙が行われた。「大阪維新の会」はこのダブル選挙を勝利させるために「大阪冬の陣」と銘打って、「大阪都構想」打ち出し勝負に出た。橋下前府知事は、市長に挑戦し、民主、自民、共産が推した現職に23万票の差をつけ75万票を獲得して当選した。同じく「大阪維新の会」の幹事長である松井も民主、自民が推した前市長に80万票の大差をつけ200万票あまり得票し、府知事に当選した。「大阪維新の会」のダブル当選に、「既成政党破れたり」と言われている。この橋下のキャッチフレーズは「市役所をぶっ壊す」である。一見胸のすくような言葉に市民の多くが期待票を投じている。しかし、かつて小泉が登場した時も、「自民党をぶっ壊す」と派手なパフォーマンスをやり、マスコミがこぞって宣伝した。それとずいぶん似ている。橋下は選挙で、「民意を反映させる」とアピールし、当選も「民意が選んだ」と言っているが、なぜ彼が宣伝され、持ち上げられるのかその本質をとらえることが大変重要である。
 橋下は、現状打破を訴え、これに期待する市民が多いのは事実である。大阪も不景気で、失業者は増え、生活保護受給者は拡大している。企業の多くは東京を本社にし、東京に流出する。住友信託銀行と住友金属工業も合併し、それぞれ本店、本社が東京に移る。地盤沈下が収まらないので、「大阪を世界都市として再生させる」「東京都のような強い大阪を作る」と言えば、何かをやってくれるのではないかと期待をさせられるが、ヒットラーは大きい嘘ほどだましやすいと言った。
 (1)「大阪都構想」は大阪、堺市などを解体し、東京23区のように特別区にし、府と市の二重行政の無駄を省くという。大阪市をはじめ府内の各市町村を再編して、今より強い権限を持つ自治体として、その上に「大阪都」を置くというものである。東京都は、1943年、戦時下で首都機能強化のために東京府と東京市が統合された。戦争のためにより都民を統制下に置きやすくしたのが「東京都」なのである。今道州制や中京都、新潟州などの構想が出ているが、それはもはや県単位ではなく、道州制などのようにより中央集権化するために、自民党時代から進められている。市町村合併もその表れである。あたかも選挙では対立したかのように見えるが、橋下のこの構想に自民府連は連携を模索している。自民も民主も中央集権化させることでは、橋下と全く同じなのである。
 (2)世田谷区では社民党の区長が誕生した。保坂展人(ほさかのぶと)区長は、「他の市町村のように、税減免で企業を誘致しようとしても、企業が払う固定資産税や法人住民税は都の管轄なので、区ではやれない」と嘆く。市町村税のうち固定資産税や法人住民税などは23区では都が集める。本年度は約1兆6000億円で、その55%が各区に配分される。残りは都の財源である。これが特別区財政調整交付金制度である。これは区の財政格差を是正することを目的とするが、結局都が財布を握っているので、区独自に動くことが制約されている。また、大都市の一体性確保を理由に、消防、上下水道も都が握っている。つまり都の権限が強く、地方分権と言われても、「基礎自治体の責務だけが強調され、『税源はあきらめて下さい』では、行政の質は保てない」と区長は訴えている。つまり橋下は区の権限を強化するというが、実際は今まで市が持っている権限を都に集中させていくことなのである。
 道路や港湾整備、市街地再開発は基本的に都道府県に権限があるが、都市計画法により政令市には認められている。したがって大阪市内の都市計画では市が管轄し、府はそれ以外の地域を担当しているので、大阪全体での一体的な計画を立てにくい。水道行政でも府と市に同じ様な組織がある。そこで、橋下は、大阪での大規模公共事業や都市計画を大々的に行う狙いでこの大阪都構想をぶち上げたのである。それを喜ぶのは、日米の大企業である。そして小泉よろしく、市営バスや地下鉄の民営化を訴えている。橋下は小泉と同じ新自由主義の代弁者なのである。
 (3)橋下が「区役所をぶっ壊す」とあたかも市職員が市民の敵のように描いている。「大阪維   新の会」では、「大阪は貧しい都市になったが、公務員は天国である」「公務員は税金の無駄遣いだ」として徹底した公務員の削減、給料の削減をおこない、「特権的な身分制度を廃止し、府民・市民の感覚が反映する公務員制度を構築する。」としている。市会議員を45人に半減し、議員年金の廃止、議員報酬の3割削減を掲げている。公務員をバッシングする態度は、あたかも苦しい府民の声を代弁しているかのように映り、人気が高い。確かに貧富の格差が拡大し、働く者の生活は苦しくなっているが、敵は公務員ではない。しかし、橋下は、「職員の給与を見直す」「幹部職員が政治に口を出す体質を変える」「戦いだから負けを潔く認め、市役所を去ってもらいたい」と今回の選挙で現職の市長を応援した市職員の自主退職を求めるなど反対者を徹底的に排除すると姿勢である。大阪市議会では「大阪維新の会」は定数86のうち33議席で、過半数を占めていない。現職市長を応援した民主、自民などと徹底して話し合うがだめならもう一度民意を問う」と市議会リコールもちらつかせている。これは「大阪維新の会」が提出している「職員基本条例案」や「教育基本条例案」なるものを強行するためである。口では「住民に政治を取り戻す」というがこの「職員基本条例案」「教育基本条例案」などは強権的なもので橋下「独裁」と言われるゆえんである。組織再編で生じた「余剰人員」や君が代斉唱などの職務命令に違反した職員は分限解雇にするというもので、これではとんだ「改革」であり、恐ろしいファシズム体制である。
(4)無駄の張本人である橋下
 橋下が2008年府知事になった時、公務員に「破産会社の従業員であることを認識してほしい。給料半減して当たり前」と言って、大阪府の財政も苦しいのだから、まず公務員から給料を減らすとして実行した。毎年350億円の人件費削減を強行し、大阪府の公務員は全国都道府県のうち2番目に低い給料だ。しかし、大阪府は、財政を健全化すべきと言われている自治体ではない。その金を橋本がどう使っているかが大変重要な問題だ。
 府知事になった年の8月、西日本で一番高いビル、地上256mもある「コスモタワー」と呼ばれる55階建てを府庁舎にすると表明。都庁のようなビルに自分も入りたいということらしい。しかし、09年3月、府議会は、ビルへの府庁舎移転条例とビル購入予算を否決した。しかし10年にビル購入案が可決されるや、85億円でそのビルを購入した。そして府議会の議決も無視して、現庁舎の一部をそのビルに移し、「大阪府咲洲(さきしま)庁舎」とした。2000人の職員が移動した。3.11の大震災の時、大阪は震度3で現庁舎も、市内もそれほど影響がなかったが、この「咲洲庁舎」だけは大揺れとなり、天井のパネルは落下し、水道管は破裂するなど360以上の被害箇所が発生した。またエレベーター4基に男性5人が5時間近くも閉じ込められた。府が設置した専門家会議が、「建物として安全に使用するには耐震補強しても技術的に困難で、費用もかかる。防災拠点として使うには不適切」との意見を出した。購入費用に加え、移転費用に11億円。更に新庁舎の補強工事では30億円、庁舎分割で今後30年間で約1200億円相当に上る行政ロスも予測されている。もともと、耐震性について問題にされていたビルだったと言う。しかし、橋下はビル購入の責任を問われると、「あとの予測できない事象の全責任とれと言うのでは、政治なんて一切できない」「法的な責任はない」「ベストだと思っている」と答弁している。この無駄遣いこそ問われるべきだ。この問題が解決していないのに、任期途中で府知事を降りて、大阪も首都の機能の一部を担うため、大阪都構想を打ち出したのである。
 
 日の丸・君が代を強制する大阪の教育
 
 (5)橋下は、教育については東京都以上のファシズム教育を敷こうとしている。
 橋下率いる「大阪維新の会」は府議会で多数を占め、今年6月、君が代斉唱時に教職員の起立を義務付ける「日の丸・君が代」起立条例を全国で初めて可決した。条例案浮上からわずか1カ月の速さである。国が決めた国旗国歌法でも、付帯決議で強制をしないことになっているにもかかわらず、条例として可決した。東京都では2003年10・23通達を教育委員会が出した。もちろん都知事がやらせたものであるが、都の条例にまではしていない。そして、選挙後は、「職員基本条例案」と「教育基本条例案を可決しようとしている。
 この「教育基本条例」は次のような中身である。
 @教育行政からあまりに政治が遠ざけられ、教育に民意が十分反映されてこなかったので、教育行政に政治介入していくと宣言
 A首長が「教育目標」を設定、目標が実現できない場合は校長や教育委員の罷免ができる権限を持つ。
 B学校運営では校長の経営方針・職務命令に従うことを教職員に義務付ける。
 C職務命令に違反した者の免職や「余剰人員」の整理解雇を規定。5回目の職務命令違反または同一の職務命令に対する3回目の違反を行った教員などは、直ちに免職する。教員が君が代斉唱時に起立しないなど職務命令違反を三回すれば、免職になる。
 D2年連続で勤務評価が最低レベルの教員を降任や分限免職の対象に。
 E小中学校では学校選択制の導入を進める。
 F学力テストの学校別結果を公開し、それを指標に学校を選択できるようにする。
 G府立高校は学区制を廃止。定数割れが3年続き、改善の見込みがない高校は統廃合となる。
 H保護者は教委や学校に対して「不当な要求」をしてはならない、とし、あたかもモンスターペアレントへの排除のような装いをしているが、橋下流でないものが排除されるというものである。
 まず、これでは、憲法で保障されている「思想・信条の自由」が奪われ、教員が校長への服従を強いられ、職務違反で脅され、のびのび教育できない。また子ども達も競争原理にさらされ、子どもも分断されていく。橋下はエリート教育に教育予算を使い、府立高の10校に対して、他校の倍近い予算を投入している。数%のエリートさえ養成すれば、あとのものはそれに従う人間であればいいという考え方である。このような新自由主義の教育をイギリスがやったが、破たんした。学校選択制と全国学力テストをリンクさせた結果、裕福な家庭の子どもは成績優秀校に集まり、低所得者の子どもが教育困難校に取り残されることになった。そして「失敗校」だとみなされた学校は廃校や民間委託され、地域の教育は荒廃した。またこのような学校制度で、校長のなり手もなくなり、教育効果もないため、英国では全国学力テストもなくなってきている。
 橋下は「今の政治で必要なのは独裁である」と言い放っている。しかし、その道はまっしぐらに戦争への道へと続いていく。「教育への民意を」とあたかも府民の声を反映させる教育を行うようなポーズをとっているが、実際は一層の差別と分断をもたらすものである。実際から物を見ていく力を我々は鍛えなければならない。
 大阪でも橋下をはじめとして、新自由主義が幅を利かせているが、福島原発事故でも、事故を起こした東電やそれを推進した政府は一切責任を取っていない。そして原発事故がまだ収束していないのに、再稼働、原発輸出に向かい、福島の子どもを救わない今の日本の政治に対して、声を上げていき、連帯の輪を広げていくことが、明日を切り開いていくことである。





 
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