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日本新聞 4553号記事

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日本新聞 4553号記事

4553号1面記事

農家に安全な種、消費者に安全な食を

 放射線育種はゲノム編集、遺伝子組換えと同様、遺伝子を傷つけるもの。主食のコメの放射線育種進む。環境汚染許さない政治に転換

  日本の主食は米である。戦後、アメリカの余剰小麦を大量に輸入するために、「頭脳パン」などが宣伝された。食品業界は“米を食べると馬鹿になり、パンを食べると頭が良くなる”とパンフレットまで作り、日本人の食生活を変えることに躍起となった。
 しかし今、食に対する関心も高まり、グルテンフリーなどが叫ばれている。パン食より米食の方が体にいいと、米が見直されてきた。日本はコメ作りに適した気候で、米を100%自給できる。ところが、ミニマムアクセス米と言って、76.7万トンものコメを輸入している。日本政府はミニマムアクセスは義務だと言いつづけて来たが、お隣の韓国ではミニマムアクセス米を100%は輸入していない。だからと言って何も問われていないのである。対して日本は毎年100%以上輸入している。加工品や飼料米にしているというが、それも含めて日本の農家が作れるのである。明らかに、アメリカの意のままで、日本の農業を売り渡している。
 今、米価は下がり続け、農家は赤字で離農者が増えている。「農業で生きていけないから、子どもには農業をやれとは言えない」という農家も多い。農業従事者の高齢化は深刻で、このままでは米を作る農家はいなくなるとさえ言われている。

 放射線育種とは

 OKシードプロジェクト事務局長、民間稲作研究所常任理事の印鑰智哉さんは、「お米があぶない」と警鐘を鳴らしている。印鑰さんによると、今、重イオンビーム育種米導入の動きが出てきているというのである。育種と聞くと、種を育てることだと思うが、放射線を当てて品種改良することである。放射線育種では、人間が近くにいたら死んでしまうくらい強い放射線を当てる。植物は生き残って突然変異するものもある、それを生かすというのである。
 これまではガンマ線を当てていた。ガンマ線では遺伝子は傷つかない。細胞内に発生する活性酸素が細胞を傷つけ、突然変異させる。ストレスによって品種改良してきた。
 重イオンビームは遺伝子の二重鎖を断ち切る。非常に高い圧力が一点に加えられる。これはゲノム編集と同じ作用である。ゲノム編集は別な種の遺伝子で組み換えるのではないから問題ないというが、遺伝子に手を加える点で、遺伝子組換えと同じく危険性が高い。重イオンビーム育種は世界の中で日本しか行っていない。
 ではなぜ、このような遺伝子操作をやるのか。

 カドミウム汚染対策

 日本は世界最大級のカドミウム汚染被害者を生み出した。カドミウムは自然界にもある物質だが、体内に取り込むと有害で、イタイイタイ病を発症。カドミウム汚染について、「日本は火山国だから」などと言われたが、実際は違う。
 明治政府は富国強兵策を取り、兵器生産に必要な鉱山資源をすべて国有化し、企業に払い下げした。鉱山労働者が犠牲になった。強制連行、強制労働させられた朝鮮人、中国人も犠牲にされた。イタイイタイ病は明治末期から現れているとされる。
 1970年の日本の食品衛生法規格基準では、玄米1キログラム中に1.0ppm以上のカドミウムを有してはならない、であった。国際基準は0.4ppmで日本は批判され、0.4ppmに変えた。
 日本のカドミウム汚染が世界最大級になったのは、カドミウムを使っての産業化であり、責任は政府と企業にある。だから、儲け第一の構図を変えることが解決への道である。ところがその構図は変えず、カドミウムを吸収しないコメを重イオンビーム育種で作る。
 これがコシヒカリ環1号である。この結果、カドミウムは不検出になった。しかし、生命が育っていくうえで重要なマンガンを3分の1しか吸収しないものになった。これでは病気になりやすい。
 稲には9億9000万の塩基があり、重イオンビームで欠損するのは、カドミウムを吸収する1塩基に過ぎないから大した影響はないと言うが、そうではない。1塩基でも影響は大きく、似て非なるものができる。収量も少なくなる。宮城県でも石川県でも重イオンビーム育種に取り組んだが、成功例はない。
 それなのに秋田県は、2025年までに、あきたこまちとコシヒカリ環1号を交配させ、「あきたこまちR」を作り、全量これに切り替えるというのである。「一部の地域だけでやると高カドミウム地域だと風評被害が起こるからだ」というのである。秋田県だけではなく、2025年までに3割の都道府県で低カドミウム対策を実施する、つまり重イオンビーム育種を行うというのである。

 タネの権利と消費者の権利を求める

 では重イオンビーム育種以外にカドミウム対策はできないのか。
 方法はいくらもある。
・ 灌水管理で稲はカドミウムを吸収しにくくなる。
・ カドミウムを吸い上げる植物を植える。
・ カドミウムを取り込まない品種と交配する
 インドのPokkali(ポッカリ)という品種はカドミウムを根の液胞に貯め、稲には取り込まない。マンガンは吸収する。だから、コシヒカリとPokkaliの交配がいい。
 こうした努力も、大企業による環境汚染がそのままでは、焼け石に水である。
 「放射線育種」「ゲノム編集」は食品表示に記されない。「コシヒカリ環1号」は「コシヒカリ」、「あきたこまちR」は「あきたこまち」と表示される。これでは何もわからない。
 国連小農の権利宣言5には、「小農が栽培を望む作物と品種を決定する権利を認める」と明記している。タネの権利である。
 日本では消費者基本法第2条に、消費者の選択の機会が提供されること、必要な情報が提供されること、消費者の意見が消費者政策に反映されること、それが消費者の権利であると記されている。 
 政治が大企業と癒着し、大企業の儲け優先では環境汚染は悪化するばかりである。大企業の儲け第一の政治から、農家と消費者を守る政治への転換、これがタネと消費者の権利を守ることである。
 放射線ではなく、太陽の光をたっぷり浴びた健康な米や野菜を政府は保障すべきである。 (沢)

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