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日本新聞 4450号記事

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日本新聞 4450号記事

 

 

東電福島第一原発事故被ばく

甲状腺がんになった若者6人が提訴

原告は事故当時6~16歳、被ばくと甲状腺がんの因果関係は認められないまま。約300人の被害者の先頭で東電の責任問う勇気ある決断

 東電福島第一原発事故の後に甲状腺がんになった、事故当時6歳~16歳だった若者6人が、1月27日に東電に対して総額6億1600万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こす。原発事故によって子どもの時に甲状腺がんになった被害者が、東電を訴えるのは初めてのことである。

 訴えるのは、福島市や郡山市などに住んでいた4人と、会津地方に住んでいた1人と浜通りに住んでいた1人。6人は福島県の県民健康調査などで甲状腺がんと診断された。2人は甲状腺の片側を切除、4人は再発し全摘出、放射線治療を受けていたり、今後予定している。4回手術した人、肺に転移した人もいる。治療や手術で、希望の就職をあきらめたり、大学を中退した人や退学した人もいる。一生、ホルモン剤を飲み続けなければならない生活。放射線治療で不安に押しつぶされそうになり、人生を奪われていると訴えている。

 2011年3月の原発事故からもうすぐ11年になる。しかし、国も東電も何の責任も取っていない。

 子どもの甲状腺がんは通常であれば100万人に1~2人。ところが原発事故当時18歳以下と、事故後の2012年4月1日までに生まれた福島県の計約38万人を対象に検査した結果、昨年6月までに約300人が甲状腺がん、またはその疑いと診断されている。通常であれば1人もいないのが当たり前なのに、約300人も甲状腺がんを発症しているのだから大問題である。

 ところがこの診断結果について、福島県の専門家会議は「被ばくと甲状腺がんの因果関係は現時点で認められない。将来治療の必要のないがんを見つけている過剰診断の可能性が指摘されている」と言い放っているのである。そして「県民健康調査」も縮小しようとしているのだ。専門家会議は政府の御用学者の集まりではないか。

 

 訴訟で東電の責任を明らかに

 

 原発事故がなければ子どもたちは甲状腺がんで苦しむことはなかった。弁護団長の井戸弁護士は「再発している人も多く、過剰診断は考えにくい。東電は原因が原発事故と認め、早急に救済すべきだ。被ばくが原因とみられる甲状腺がんで苦しむ人たちの希望となる裁判にしたい」と語っている。

 訴訟を起こした若者たちは絶望の真っただ中に置かれたことだろう。自分たちの苦しみの原因である原発事故を引き起こした東電が、事故が原因であることさえ認めない。そして政府は被害者を救済するのではなく、東電支援策ばかり考えているのだから。しかしその絶望の中から「事故が関係ないなら、なぜこれほど甲状腺がんの子が出ているのか。今後も甲状腺がんになる子がいるかもしれない。今できることをしなくては」と決意したのである。自分の苦しみの原因が原発事故によって放出された放射性ヨウ素によるものだということ、自分たちの闘いが300人の被害者の希望になればいい、と勇気ある決断をしたのだ。

 チェルノブイリ原発事故に明らかなように、被ばくによる健康被害は否定しようがない。日本政府は「福島原発事故による健康被害はない」とうそぶいている。こんなことがまかり通る社会は間違っている。東電福島第一原発の事故によって、大量の放射性物質が放出され、300人もの子どもたちの甲状腺がんをはじめ、甚大な被害が出た。この事実が事実として認められ、被害者が補償されるよう要求する。(沢)

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