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2022.12.28
日本新聞
日本新聞 4497号記事 2023年度大軍拡予算案は廃案に
政府、来年度予算案を閣議決定。生活関連予算を削り、軍事費を実質10・2兆円に増額。米国から武器を買わされ戦場にされる予算案反対
12月23日、政府は2023年度予算案を閣議決定した。一般会計の歳出総額は114兆円で、前年度の107.6兆円から6兆円以上も増額し、11年連続で過去最高を更新する。
続くコロナ禍で苦しむ人々の支援策のために予算を使うのが当然だが、全く違う。大幅に増えるのは軍事費なのである。
2023年度の軍事費は6.8兆円にする方針で、2022年度の約1.25倍、25%も増やす。6.8兆円は、対GDP比で1.2%である。これまで軍事費を少なくとも当初予算ではGDP比1%以内にとどめてきたのに、それを公然と破った。それだけではない。政府は複数年度にわたって使える「防衛力強化資金」なるものを新設し、3.4兆円を繰り入れる。つまり、軍事費は10.2兆円にまで膨らむのである。岸田政権は「5年間で軍事費は43兆円に」と発表したが、「防衛力強化資金」の新設で、43兆円をはるかに超えることが予測される。
43兆円の中味は次の通りである。
・敵の射程圏外から攻撃する「スタンド・オフ防衛能力」に約5兆円
・戦闘機や軍艦の維持経費に約9兆円
・自衛隊施設の改修整備に約4兆円
・弾薬や誘導弾の購入に約2兆円
・無人機に約1兆円・宇宙分野に約1兆円
・サイバー分野に約1兆円などである。
16日に閣議決定された「安保3文書」では、日本が攻撃されていない米国の戦争でも、自衛隊が相手国に攻め入ることができると明記されている。攻撃のための、長距離巡航ミサイル「トマホーク」の米国からの購入、国産12式地対艦誘導弾の長射程化の開発と量産、高速滑空弾の研究・量産、極超音速誘導弾の開発などが予算案に含まれている。
不戦の憲法9条を全くないがしろにした予算案であり、決して認められるものではない。
さらに、在日米軍駐留経費を日本が肩代わりする「思いやり予算」を、米国側の要求に基づいて年間約100億円増額し、2022年度~2026年度の5年間で1兆551億円にする。この「思いやり予算」を2023年度から「同盟強靭化予算」と改称するという。その他に、米軍再編関係費、基地周辺対策費、SACO(沖縄に関する特別行動委員会)経費などで約8000億円、基地交付金等防衛省予算外の日本負担が約2000億円で、米軍関係費は年間1兆円規模になる。日本は米国の属国なのかと思われる状況だ。
軍拡のために福祉削減、大増税の嵐
財源はどうするのかの問いに、出してきたのが大増税だ。
現在の復興特別所得税を軍事費に流用する方針も出されている。復興特別所得税は、東日本大震災で被災した地域の復興のための予算である。まだまだ必要な予算なのに、それを削り軍事費に充てるというのである。
そしてそのための福祉削減と大増税を、岸田政権は打ち出している。
コロナ禍で、今こそ社会福祉の充実が不可欠な時なのに、医療保障は削減され、負担増、雇用対策費も削減、年金給付は実質削減である。中小企業予算も農業予算も削減となった。「将来的な子ども予算倍増」は掛け声だけで、来年夏に議論が持ち越される始末だ。
そして事力強化のための増税表明。5年間で増税で約1.2兆円を捻出。内訳は、法人税約8000億円、所得税約2000億円、たばこ税約2000億円だという。軍事力強化のための増税について、共同通信の世論調査では約65%が反対している。
戦争のための軍拡予算には断固反対である。今、すべてのものが値上げされ、生活もひっ迫している。軍事ではなく、生活保障のために予算を回すべきである。命を踏みにじる悪政にノーを突きつける時である。 (沢) -
2022.12.21
日本新聞
日本新聞 4496号記事 安保3文書閣議決定の暴挙に抗議する
敵基地攻撃能力の明記を閣議決定!憲法9条を葬り去る戦争への道を国会での審議もなく決める暴挙。戦争反対の運動の前進を!
政府は16日、「国家安全保障戦略」などの安保3文書を閣議決定した。3文書は外交・防衛の基本方針である「国家安全保障戦略」、10年間の「防衛目標」を実現するための方法と手段を示す「国家防衛戦略」、防衛費の総額や装備品の整備規模を定める「防衛力整備計画」の3つである。
これらの柱は、敵基地攻撃能力の保有の明記であり、不戦の憲法9条を掲げ専守防衛を原則としてきた日本の在り方を大きく変貌させるものとなる。つまり、日本は「戦争する国」と世界に宣言することになるのだ。
これほどの大転換を、主権者である国民に信を問うこともなく、国会での審議もなく閣議決定で決めてしまったのだ。民主主義国家とは無縁の姿である。
岸田政権は軍事費をGDP(国内総生産)比2%にする、つまり年間11兆円へと増額するとしている。2023年度から5年間の軍事費の総額は約43兆円にものぼる。非常に危険な軍事大国への道である。
「戦争ではなく平和の準備を」と憲法学者らが対案公表
閣議決定を前にした15日、憲法学者らによる「平和構想提言会議」が安保3文書に対する対案として「戦争ではなく平和の準備を―“抑止力”で戦争は防げない―」を公表した。 提言は、「安保3文書改定は、日本の安保政策の大転換になり、日本が自ら戦争する国家に代わる」と指摘し、「国会の徹底的な審議もないままに憲法の実質が勝手に上書きされようとしている」と懸念を示した。政府・与党の「軍事力の増強が抑止力を強め、平和を担保する」という論を、「きわめて短絡的で危険」とし、「防衛力強化がかえって周辺国との軍拡競争を招いて戦争のリスクを高める」と警鐘を鳴らした。提言は「今こそ憲法9条が定める平和主義の原則に立ち返るべき」と訴えている。 具体的には、
・朝鮮半島の非核化に向けた外交交渉の再開
・中国を「脅威」と認定しないこ
・アジア諸国との対話の 強化を提唱
・専守防衛の堅持
・米国製巡航ミサイル「ト マホーク」など敵基地攻撃能力につながる兵器の購入や開発の中止 を求める
基本的に国会審議もなく決めたものを認めるわけにはいかないと、はっきり言っていこうと呼びかけている。
自民公明両党は16日、2023年度与党税制改正大綱を決定した。この中で、軍事費増額の財源は、法人税、所得税、たばこ税で賄うとした。増税時期は2024年以降とした。
法人税は、税率は変えず、本来の税額に4~4.5%を上乗せ、所得税は税額に1%上乗せして軍事費に充てる目的税を新設するという。復興特別税の税率を2.1%から1%引き下げる。つまり、東日本大震災の復興税を軍事費に当面流用するというわけだ。そして復興税としての上乗せ時期を延長する。たばこ税は1本あたり3円から引き上げていく。
日本は世界第3位の軍事大国になる。不戦の憲法9条のある日本で、敵基地攻撃能力保有、軍備増強、アメリカからの兵器爆買い、南西諸島の軍事要塞化などあってはならないことである。戦争をしないためには戦争しない道を歩むことである。中国などアジアの国々を敵対視するのではなく、平和外交を徹底することである。
今後5年間で軍事に約43兆円もの予算を使うのではなく、苦しい生活の中で途方に暮れている人たちがいる今、命綱として使うべきお金である。戦争への道を突き進むための安保3文書閣議決定に抗議する。 (沢) -
2022.12.14
日本新聞
日本新聞 4495号記事 沖縄県民の民意を尊重し辺野古新基地建設中止を
最高裁が辺野古問題で沖縄県を敗訴に。国の意向そのままの司法、三権分立などない。国と地方は対等、民意を踏みにじり基地建設は暴挙
8日、最高裁小法廷は沖縄県の上告を棄却する判決を言い渡した。
沖縄県の上告の内容は、2018年、辺野古新基地の埋め立て海域で軟弱地盤がみつかったことから、県は2013年に出した埋め立て承認を撤回した。マヨネーズ状の軟弱地盤に基地を建設するなど、危険極まりないことを撤回するのはあまりにも当然のことである。ところが防衛省沖縄防衛局は、行政不服審査法に訴え、国交相に県の埋め立て承認撤回を取り消すことを求めた。
行政不服審査法は、国のやり方で損害を被った人が訴える術である。防衛省が沖縄県を訴えるなど、対象外であることははっきりしている。にもかかわらず、国交相は防衛省の訴えを取り上げ、沖縄県の承認撤回を取り消したのである。これに対して沖縄県が、国交相の裁決の取り消しを求めて提訴したのである。
今回の判決の根拠は、「県は原告として認められない」である。これは全く不当である。防衛省が国交相に、沖縄県の決定の取り消しを求めること自体が成り立たない。これでは国の機関が内輪で認め合い、地方自治など成り立たなくなってしまう。
2000年に施行された「地方分権一括法」で国と地方の関係を、上下・主従の関係から、対等・協力関係に転換している。沖縄県に対する国のやり方は、「地方分権一括法」に明らかに反している。沖縄県民は、基地反対、特に辺野古新基地反対の民意を繰り返し、明確に示してきた。選挙で然り、辺野古埋め立ての是非を問う県民投票で然りである。政府はこの民意を受け止め、辺野古新基地建設を断念しなければならないはずである。
ところが今回の最高裁判決を含め、国と沖縄県の間の訴訟は12件もあり、これまで判決が出されている5件(今回も含め)はすべて、沖縄県の敗訴となっている。日本は立法、行政、司法がそれぞれ独立している三権分立の国だということになっているが、実際は全く違う。裁判所は政府に忖度し、その機能を果たしていない。これは民主主義の崩壊である。
遺骨の眠る土砂を埋め立てに使うな、と怒りの声
具志堅隆松さんはガマフヤーのメンバーと沖縄戦で亡くなった方の遺骨の収容活動を、40年間にわたって続けてきた。3年前に、戦没者の遺骨が混じった沖縄南部の土砂を辺野古埋め立てに使おうとしていることがわかり、防衛省との交渉を続けている。今年8月5日の南部住民との意見交換会で、防衛省は「ご遺族の意見を聴く予定はない」と公言し、強い非難を浴びた。沖縄戦で沖縄の人々がどんな苦しい目にあわされたのか、何も考えようともしない姿勢に、「遺骨は防衛省のものではない!」と怒りの声があげられている。
沖縄の美ら海を沖縄戦の犠牲者の遺骨で埋める、このような非道を沖縄県民も私たちも決して認められない。
今、鹿児島南部の島から沖縄の与那国島までの南西諸島の軍事要塞化が進められている。島々にミサイル基地が造られ、米海兵隊がそこから中国へ向けてミサイルを撃ち込み、島から逃げる。こうして日本は戦争に巻き込まれていく。このような事態が現実のものとならないように、戦争反対の声を全国で高めていかなくてはならない。沖縄が直面している危険は、日本全体の問題である。
新基地を造らせない、軍備増強を許さない反戦の思いを全国でつないでいこう。 (沢)