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2025.02.05
日本新聞
子どもの自殺最多の527人、深刻な事態
4607号1面記事
子どもの自殺最多の527人、深刻な事態
小中高の不登校は40万人を超え、毎年100人近い教員が自殺している。
子どもも教師も希望を持って生きられる差別反対の教育改革が急務
2024年の小中高生の自殺者数は527人で過去最多となった。
小学生 15人
中学生 163人
高校生 349人
これは実に深刻な問題である。
子どもは未来の日本を切り拓く大きな力である。本来、希望に燃えた存在だ。その子ども達が明日に絶望して、自らの命を絶つ、これは日本社会に未来がないことを示すと言わざるを得ない事態だ。
新聞報道などでは「コロナ禍以降高止まり。コロナで生活が変ったからだ」などと言われているが、果たしてそうだろうか。
原因として、「学校問題」が44%を占めている。実際、教師にしかられた直後に自殺したという子どももいる。同級生に壮絶ないじめにあっていた子どももいる。差別に押しつぶされて命を絶った子どもが多いと考えられる。
また、不登校も増え続けている。2023年度に不登校だった小中学生は34万6482人にのぼる。前年度に比べて4万7000人増、16%も増えている。高校生の不登校は6万8770人である。小学生の不登校は13万370人で10年前の5倍、中学生は21万6112人で10年前の2.2倍となった。
学校に行けば差別される、いじめられる、話ができる友達もいない、そんな子ども達の孤立した状況が不登校や自殺という結果を引き起こしている。
そして学校には、子ども達の苦しみを解決する力が全くない。それは教育現場で病んでいるのは、子どもだけではなく、教員も犠牲となっていることが示している。
毎年100人近くの教員が自殺している
自殺しているのは子どもだけではない。教師もまた、自殺に追い込まれている。実に毎年100人近くの教員が自殺しているのだ。
特に新任教諭が自殺へと追い詰められている。
2006年6月
新宿の小学校で23歳の新任女性教諭(23歳)が、毎日書類を書いてソファで寝る生活で、保護者からは「結婚も子育ても未経験で信頼できない」などとクレームをつけられ、疲れ果てて自殺。
2006年10月
西東京の小学校の25歳の新任教諭は、睡眠時間3時間で仕事漬け。保護者からは深夜も休日も携帯に電話がかかり、ストレスがたまり自殺。
2019年9月
福岡県の24歳の新任教諭が教室で首つり自殺。遺書に「人のためにと思って就いた職業。あこがれた仕事。子どもに迷惑をかけてしまう。大好きな子どもなのに。さようなら」と記していた。
教員の精神疾患も増えている。公立学校教員の1か月以上の長期療養者数(2022年度)は、
全体 12192人
20代 3096人
30代 3380人で、
20代は2016年度に比べて2.41倍、30代は1.89倍と増えている。
自殺した教員もそうだが、心が壊されている教員も、相談する相手もいなかったのだ。それどころか、叱責されたり嫌味を言われたり、新任の教員を励まし育てる現場ではないから、心が病んでしまう。
そのような教師集団が子どもの抱えている問題に心を砕いたり、子どもが元気になるような教育実践ができるわけがない。子どもを差別から解放するには、まず教師が差別から解放されていなければならない。子どもに対する教師の差別、教師の間の差別、それを解決しなければ、子どもの命を守ることは出来ない。
子どもと最も近いのは新任の教員だ。若い教師が書類の作成で夜中まで働かされ、子どもと元気に遊ぶこともできない、これでは子どもの声を聞くこともできない。
学校の主役は子ども達である。子ども達が共に学び、成長していける教育現場への抜本的な改革が必要とされる。 (沢)
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2025.01.29
日本新聞
軍備増強は抑止ではなく戦争への道
4606号1面記事
軍備増強は抑止ではなく戦争への道
日米軍事同盟強化は自衛隊が米軍の指揮下で動くこと。戦争抑止は平和外交でこそ実現できる。軍事に金をかけず貧困層の支援第一に
1月21日、米ワシントンで日米豪印4か国の戦略対話(QUAD)外相会合が開かれた。トランプ米大統領就任後初の会合だ。QUADは中国に対抗するためのもので、「力または威圧により現状変更を試みるいかなる一方的な行動にも強く反対する」という。では日米豪印で軍事同盟を組み、中国に対抗し、合同軍事演習を繰り返すのはどうなのか。「力または威圧」に当たらないのか、はなはだ疑問だ。
岩屋・外相は米国務長官と会談し、「新たな高みに日米同盟を引き上げることで一致した」と発表した。新たな高みとは一体どのようなことなのか。
翌2日、中谷・防衛相は沖縄県与那国町で糸数町長と会談した。中谷・防衛相は「敵のミサイル攻撃を受けた際に住民が避難するシェルターの整備、政府と自治体による共同訓練などに、最大限努力する」と語った。
与那国島は日本で最も中国に近い島である。与那国島の島民は歴史的にも平和を愛し、争いとは無縁に生きてきた。他国の国民とも平和的に友好を重ねてきた。「敵」とは一体どこのことか。
アメリカが喧伝する「台湾有事」を理由にして、アメリカの要請どおりに軍事費倍増を決めてしまった政府。南西諸島にはミサイル基地がどんどん造られ、ミサイル、弾薬が配備されている。そして「有事」の際には島の人たちはどこに逃げるのか、シェルター整備、避難訓練と、危機感を煽っている。
抑止力、実は戦争へと向かうもの
“戦争にならないようにするために”と、軍備増強が行われている。アメリカの安全保障専門家からは、「日本は防衛費をGDPの3%まで増やすべきだ」という主張が出ているという。日本はどこまでアメリカの要求に応えようとするのか。日本の経済はすでに破たん状況である。GDPに対する政府債務残高の比率は250%を超えているのだ。
世界の中で、30年以上労働者の賃金が上がっていない国は日本以外にない。数字上いくらか賃金が上がっていても、物価の上昇率を下回っているため、実質賃下げが続いている。
日本の大企業はバブル期を超える利益を上げ、内部留保金も過去最大を更新している中で、働く者は貧困にあえいでいる。給食以外にはろくにご飯を食べられず、冬休みや夏休みには給食がないため、ひもじい思をしている子ども達がいるのが、日本の現実なのである。
このような中、莫大な予算を、防衛省は湯水のように軍事費に費やしている。ミサイル研究開発、イージス・システム搭載艦建造、無人での攻撃能力推進、宇宙システム管理、防衛通信衛星打ち上げ、弾薬・火薬などの新設(全国12施設に57棟の火薬庫新設決定)等々、防衛ではなく、明らかに攻撃のための軍備増強である。
もはや南西諸島だけのことではない。日本全国に、米軍の戦略を遂行するための基地が造られている。米軍の戦略は、日本と中国を戦わせ、高見の見物ということだ。アメリカは経済的にももうすぐ中国に追い抜かれる、それを避けるために中国にダメージを与えたい。そのために自衛隊はじめ、日本の若者が危険にさらされるのである。
軍備増強してアメリカと歩調を合わせることは抑止力ではない。「有事」を引き起こすことである。南西諸島の島々の住民を命の危険にさらすことだ。
軍備増強ではなく平和外交で、アジアの平和・友好をかち取ることが、戦争を止める最良の道である。軍事に金をかけるのではなく、貧困に苦しんでいる日本に住む人々の救済に予算を使うべきである。野党はそのために全力を尽くす時である。 (沢)
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2025.01.22
日本新聞
靖国合祀取り消し訴訟 最高裁が韓国人遺族の上告棄却
4605号1面記事
靖国合祀取り消し訴訟
最高裁が韓国人遺族の上告棄却
侵略を解放と偽る靖国神社に朝鮮半島出身者2万人以上を合祀。戦犯との合祀は人権侵害と訴える遺
族。侵略の事実さえ認めない政府
第2次世界大戦で旧日本軍に徴用されて戦死した朝鮮半島出身者2万1181人が靖国神社に合祀されている。これに対して韓国籍の遺族らが、2013年に「靖国神社合祀取り消し訴訟」を起こした。「朝鮮半島を侵略した加害者とともに合祀されるのは耐えがたい屈辱と苦痛だ」という訴えは、至極もっともなものである。
1959年、国が提供した戦没者の名簿を基に、靖国神社に合祀された。遺族は「家族の情報を国が無断提供したことは、プライバシー権の侵害で、政教分離の規定にも反する」と訴えたのだ。
一審二審ともに遺族側の敗訴となった。遺族らは上告し、上告審が最高裁で行われ、1月17日、最高裁は遺族側の上告を棄却した。
最高裁は「除斥期間」(不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する)が過ぎた後の提訴だとして上告を退けた。しかし、韓国政府に対して靖国神社の資料が送られたのは1990年代後半、あるいは2000年になってからであり、除斥期間は該当しない。最高裁判決は、原告の権利と利益侵害については判断を示さなかった。判決を聞いた原告の中には「あきれて言葉が出ない」と涙ぐんだ人もいたという。「父親が亡くなったことも、合祀されたことも全く知らされなかった。合祀には、遺族の合意を得るのが当然。父の名誉のために、名前を抜いてほしい」という遺族の訴えは当然の要求である。
最高裁の裁判官4人中3人の多数で、遺族側敗訴となったが、三浦裁判官は反対意見を述べた。国が靖国神社に情報を提供し、合祀に至ったことで三浦裁判官は「憲法が定める政教分離規定に反する可能性がある。合祀を望まない韓国人遺族がいることも想定しながら合祀を推進しており、国の責任は極めて重い」と指摘している。また、除斥期間を理由に上告を退けたことに対して「被害者にとって著しく酷であり不合理」とした。
「国に二度殺された」と憤る遺族たち
日本は朝鮮半島に侵略し、植民地支配した。第二次世界大戦では、植民地なのだからと、戦場にかり出したり、炭鉱やダム建設などのために強制連行し強制労働させた。「朝鮮人も天皇の赤子だから、お国の為に尽くせ」と、最も危険な戦地へ向かわせられた。徴用工はろくな食事も与えられず、酷使され、命を奪われた。屈辱の日々を送らされたのである。
加害者のA級戦犯とともに合祀されることは、国に二度殺されることだ。決して受け入れられないと訴えている。
靖国神社はかつての侵略戦争を徹底して美化している。靖国神社の中にある遊就館では、ゼロ戦などが展示され、かつての戦争を讃えている。侵略戦争などという文字はどこにもなく、「アジアの国々を解放するための戦争であった。大歓迎された」とデマを流している。
無理やり日本の戦争にかり出され、いつどこで亡くなったのかも知らされず、いつの間にか、加害者である戦犯と一緒に日本名で祀られていた、実に屈辱的である。司法も政府と一体で、違法性を認めようとしない。このような理不尽に断固抗議する。
日本政府は侵略戦争、植民地支配での加害の事実を認め、謝罪しなければならない。
今、日本がやるべきことは軍備増強ではなく、過去の加害の歴史を認め、そこからアジアの平和、友好、連帯への一歩を踏み出すことである。アメリカ追随するのではなく、アジアの経済圏を作り、共に発展する未来を作り出すことである。
朝鮮半島出身者の靖国合祀はすぐさま取り消すべきである。 (沢)
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2025.01.15
日本新聞
辺野古基地建設強行、沖縄予算削減の政府
4604号1面記事
辺野古基地建設強行、沖縄予算削減の政府
沖縄県の抗議を無視して軟弱地盤への基地建設続ける政府。在沖米兵による性暴力事件続発、「事件は小さな一側面」と開き直る米司令官
沖縄に対する政府のやり方は目に余る。沖縄県民は辺野古新基地反対の意思表示を選挙で、県民投票で繰り返し明確に示してきた。基地反対は沖縄県民の民意である。
特に、辺野古新基地は極度の軟弱地盤もあり、基地建設は不可能である。マヨネーズ上の地盤に基地を造るなどできないことは、専門家でなくてもわかることだ。
ところが政府は昨年12月28日から軟弱地盤改良工事を開始した。海面下最大70メートルまで、約7万本のくいを打ち込む計画だ。しかし軟弱地盤は最深で90メートルに達することがわかっており、くいが打てない部分は一体どうするのか。工事完了は2033年4月ごろ、米側への引き渡しは2036年ごろの予定だというが、無理な話である。また、総事業費は今の段階で約9300億円というが、これも膨れ上がるだろう。時間がかかろうが、事業費が膨れ上がって喜ぶのは大手ゼネコンである。大体にして、米軍の基地を造るのに、なぜ日本が金を出すのか。米軍が日本を守ってる?そんな実際は全くない。
政府は今年度の沖縄予算を2642億円に引き下げた。2024年度当初と比べて36億円もの減額だ。減額は4年連続である。玉城知事は、基地反対を掲げて当選し、その姿勢を貫いている。だから沖縄の予算を減額し続けているのである。これまでも、基地反対の知事の時は常に予算を減らし、基地賛成、容認の知事になると3000億円突破と予算を増やす、露骨なやり方を取ってきた。いわば兵糧攻めである。
このような中でも、沖縄県民は基地のない平和な沖縄を守りたいと訴えている。玉城知事は軟弱地盤工事強行に「看過できない強硬姿勢が続いている」と批判し、工事中止を訴えている。
米兵による性暴力に断固抗議する
米軍は日本を守るどころか、米兵がいることで、事件や事故が多発している。
昨年は沖縄の米兵の性犯罪の逮捕・書類送検が4件もあった。
玉城知事は「激しい怒りを覚える。県民に大きな不安を与えるものであり、断固とした対応を求める。女性の人権や尊厳をないがしろにする悪質な犯罪だ。日米両政府に強く抗議する」と語っている。「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」共同代表の高里鈴代さんも「事件が起きても、米軍は何も対応してこなかったということだ」と事件続発に憤っている。
一方、米軍嘉手納基地のエバンス准将は「遺憾だ」としながら、「事件は小さな一側面だ」と言っている。被害者の女性にとって、人生を左右する大きな事件である。被害者の女性は「外を歩くのも怖い。命の危険も感じた」と話している。被害者の16歳未満の少女の、傷ついた心は元に戻らない。少女に性暴行を加えた米空軍兵長は懲役5年の有罪判決を受けたが、解決とは言えない。
この事件が報じられたあとも、性暴力事件が引き起こされている。政府は米軍に対して「綱紀粛正を求める」と繰り返すだけで、断固抗議する姿勢は今回も見られなかった。
こうした事件は明らかになったものだけであり、もっと多くの女性が被害にあっていると思われる。そして沖縄だけではなく、全国の米軍基地が存在する地域で、事件は起きているのだ。
事件が起きても、警察は県にも地元自治体にもすぐに知らせることもしない。事件から3カ月、あるいはそれ以上経ってからようやく知らせる、マスコミにも知らせないという実態がある。日米地位協定に見る不平等な日米関係がまかり通っている。
米軍基地は造るのではなく、撤去すべきである。政府は日本に住む人の人権を守らなければならない。 (沢)