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2024.10.09
日本新聞
種子法廃止違憲訴訟 食料への権利訴え結審
4590号1面記事
種子法廃止違憲訴訟
食料への権利訴え結審
「種子法廃止は農業をないがしろにする国の姿勢」と種子農家が主張。生産者と消費者双方の食料への
権利を侵害した種子法廃止は違憲
10月1日、種子法廃止違憲訴訟控訴審の最後の意見陳述が行われた。
最初に種子農家の菊地富夫さんが、「一審判決では、食料への権利が認められず、結局請求は棄却された。国が種子法を捨ててしまった意味は大きい。冷害や不作の年に、農家の方たちに種子を提供して喜ばれることが誇りだし、そのために国や県が補償を続けることが、種子農家にとっての食料への権利だと思う。そのために種子農家は厳格に生産を続けてきた。
みつひかりの不正事件は、私たち種子農家にとっては起こりえないこと。種を購入した農家への補償がなされていないことは許されない。
種子法は種子農家の生産の安定を支え、農家の生活と、主食である米の安定供給を支えてきた。種子法廃止は農家の生活と国民の命を軽んじるもの。憲法が保障する人権を侵害するもの」と訴えた。当然の訴えである。
続いて山田正彦弁護士は、TPP違憲訴訟、種子法廃止確認訴訟提起に至ったいきさつについて述べた。
「国が公共の種子の研究・開発を保障して、種もみ1キロ500円であったのが、民間の『優良品種』の代表のように言われたみつひかりが1キロ5000円もの値段。おまけに突然の供給停止、発芽率も『90%以上』の表示は嘘で、全く発芽しなかったものもあり、平均70%くらいと全くひどい状況。
さらに、世界で紛争が起きている中、穀物輸出国19か国が輸出禁止。日本の備蓄米は1か月半しかない。日本は米国などから毎年77万トンもミニマムアクセス米として買わされ、それを義務だと言ってきたが、義務ではない。しかも、国内価格60キロ1万円を割り込んでいる時にも2万4000円で購入。放出するときは安いので、累積分の赤字が750億円」と愚策を指摘した。最後に「食料への権利は天賦の権利。種子法廃止は、私たちを飢えに陥れかねない天賦の権利を侵害するもので、絶対に認めてはならないと確信する」と堂々と訴えた。傍聴席から自然に共感の拍手が起こった。
最後に田井弁護士が、食料への権利について訴えた。
「米の問題は我がこととして考えなければならない。農業者が種子法によって供給されてきた、安価で優良、安全・安心な種子によって農産物を生産し、消費者がその農産物を購入して消費する機会を奪い、農業者や消費者の『食料への権利』を侵害した。
『みつひかり』の不正問題で、種子法廃止の理由の〝優れた民間品種の促進〟は崩れた。そしてもうひとつの種子法廃止理由の『コメの供給不足が完全に解消された』も6~8月の米不足で、大きな誤りだと明らかになった。種子法廃止が食料への権利を侵害するものと認める正義の判断を求める」と述べた。
食料への権利=生存権
報告会で大分大学の小山敬晴・准教授は「一審で食料への権利を認めてもらえなかった。生存権が今、“働ける人は働いて自分で権利を獲得する、働けない人に限って国が保障する”となっている。これではダメ。働いても食料がなければ生きられない。食料への権利はすべての人に保障されている。フランスは自給率が100%を超えている。安全なものが量として保障され、貧困でアクセスできない人にも保障されている。日本は量がない」と指摘した。
種子農家の菊地さんは、「自給率が40%もないのに、遊休農地があふれている。納得できない。間違っている。米が高いと言っても一日一人100円で足りる。消費者と生産者との合意があれば、150円で安心安全なものが作れる」と提起した。
全く理に合っている提案である。国は食料への権利を守るべきである。判決は来年2月20日。実際に即した公正な裁判を! (沢)
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2024.10.02
日本新聞
袴田さん、再審無罪!再審法の抜本改正を
4589号1面記事
袴田さん、再審無罪!再審法の抜本改正を
「無罪と聞いて涙が止まらなかった」と姉のひで子さん。警察、検察、裁判所の罪は明らか。えん罪で奪われた巖さんと家族の人生は戻らない
「『主文 被告人は無罪』というのが、神々しく聞こえましたよ。私、それを聞いてね、感激するやらうれしいやらで、涙が止まらなかった。それで、後のことはね、ほとんど聞いておりませんでした」
裁判後、静岡市民文化会館で行われた会見で、袴田ひで子さん(91)は満面の笑みを輝かせた。
無罪判決!
「証拠は調査機関のねつ造」
1966年、静岡県で起きた一家4人強盗殺人事件で死刑が確定した袴田巖さん(88)の再審判決公判で、静岡地裁(国井恒志裁判長)は26日、無罪を言い渡した。有罪の三つの証拠をすべて「調査機関のねつ造」と認定した。
・事件の1年2か月後に、袴田さんが当時働いていた味噌工場のタンク内から見つかったという5点の犯行着衣。最大の争点は着衣の血痕の色合い。弁護側は「1年以上味噌漬けにされていれば、赤みは消える。衣類は袴田さんのものではない」と主張。検察は「残る場合もある」と反論していた。判決では「血痕は赤みを失う。発見に近い時期に捜査機関によって加工がされ、タンクに隠匿したねつ造証拠」と認定。
・袴田さんの実家捜索で見つかったとされる、犯行着衣のズボンと同じ素材の切れ端についても「捜査機関が持ち込んだと考えなければ説明困難」と指摘。切れ端押収直後に当初パジャマとしていた犯行着衣を5点の衣類に変更したことは、検察官が事前に押収を知っていたことを「推認させる」と言及し、経緯からしてねつ造と認定。
・自白調書については「捜査機関により、肉体的・精神的苦痛を与えて供述を強制する非人道的な取り調べで獲得された」として「実質的に捏造された」と指摘。
控訴期限は10月10日。検察側が控訴を断念すれば、袴田さんの無罪が確定する。
小川秀世弁護士も「58年というのはあまりに長すぎたが、『無罪』を聞いて素直に喜べた。これほど踏み込む(捏造認定)とは考えていなかった」と顔をほころばせた。ひで子さんとの間には、今年1月、82歳で死去した西嶋勝彦弁護団長の遺影があった。
14年間を「容疑者・被告」44年間を「死刑囚」として生き、拘禁症状が続く巖さん。その弟を人生をかけて支え続けてきた姉のひで子さん。そして「殺人犯の家族」と陰口を言われた家族(死刑判決の2か月後に母親が死去)。この人たちの大切な年月は、たとえ無罪が確定しても二度と還らない。検察は一刻も早く控訴を断念し、せめて袴田さん救済の道を整えるべきである。
会見の途中「裁判長の謝罪に対して…」という質問に弁護団が「謝罪はしていない」と指摘する場面があった。裁判長の「申し訳ない」は謝罪にならない、という意味であろう。
昨年8月23日に亡くなった桜井昌司さん(「布川事件」再審無罪)は、司法に対して罰則劇、のある訴追制度の必要を強く訴えていた。「人間だから、警察だって検察だって裁判長だって間違いはある。でも、間違ったら〝ごめんなさい〟だろう。あいつら、有罪にしておいて一遍も謝らないんだから。」
開廷前に会った石川一雄さんも「今日の無罪は決まっている。私は裁判長が何と謝るかを聞きに来た」と話していた。
田中薫弁護士は「言いにくいが、当時のマスコミも『この自白はおかしい』とひとつも思わなかった。むしろ犯人だと持ち上げた。今さら当時のことで訴えられないが、一人一人が鋭い目を持つことが、二度と袴田さんと同じ人を生み出さないことにつながる」と語った。
東京新聞社説に「無実の人を罰する不正義、真犯人を取り逃がす不正義、無罪まで長い歳月を要する不正義。冤罪には3重もの不正義がある。」とあるが、「警察、検察、司法が罪を認めない不正義」を加えなければならない。
無罪判決は当然である。ひで子さんが言っていたように、袴田さんの無罪で終わりではない。検察の抗告権をなくすなど、再審法を改正しなければならない。 (山本)
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2024.09.25
日本新聞
9月26日袴田判決、再審無罪確定を
4588号1面記事
9月26日袴田判決、再審無罪確定を
袴田さんの完全無罪と再審法改正求め、日比谷野音に2500人結集。
再審は冤罪被害者を救うため、検察官抗告の禁止など法整備は緊急
9月19日、日比谷野音で市民集会「今こそ変えよう!再審法~カウントダウン袴田判決」が行われた。袴田さんは無実が明らかにも関わらず、58年もの長い間、冤罪を着せられている。今は釈放されて、姉のひで子さんと共に暮らしているが、死刑囚の汚名はそのままである。死刑判決が確定してからも44年の長きに及び、その間に袴田さんは拘禁症を患い、精神を病んでしまったのだ。毎日、看守の足音が自分の房で止まらないか、止まったら死刑執行の日だという中で、精神的に追い詰められるのは当然である。
ひで子さんの面会を拒否することも続き、ひで子さんも先が見えない時期があった。しかし、ひで子さんはそこから立ち上がり、巖さんを支え続けてきたのである。見事な女性である。
長い長い闘いもついに、9月26日が再審判決の日である。検察は控訴せず、袴田さんの無罪を確定させるべきである。
「巌の頑張りを再審法改正に」とひで子さん
日本弁護士連合会会長の渕上玲子さんは「袴田さんは長い拘留生活で、いつ死刑になるかわからない恐怖と絶望のために拘禁症を患った。私たち日弁連は再審を共に闘ってきたが、なぜこれほど時間がかかるのか。袴田さんの無罪をかち取るとともに、再審法改正の実現に向けた大きな風を吹かせましょう」と訴えた。
袴田ひで子さんは静岡からかけつけ、あいさつした。
「1週間後に判決が下される。巖は無実だから無罪だと思っている。2014年に再審開始が決まって、拘置所から巖が出てきたとき、もう勝ったようなもんだと思った。巌は年を取り、足が遅くなって車でドライブしている。47年7カ月拘置所にいた後遺症はいろいろ出てきている。判決が出るのはうれしい。47年間巖が頑張った、その頑張りを再審改正法に是非、改正なり訂正なりしてほしい」
巖さんのことだけではなく、巖さんのような目にあう人をなくしていきたいという思いにあふれていた。
再審法改正を求めて
日弁連再審法改正実現本部本部長代行の鴨志田祐美さんは、日弁連が再審法改正に向けてどのように闘ってきたかの経過を話した。再審法改正を目指す議員連盟は設立から5か月ちょっと経った現時点で、現在の入会数は347名。全国会議員の49%に及んでいる。地方でも声があがり、12の道府県議会をはじめ348の議会が国に再審法改正を求める決議を採択している。鴨志田さんは「今年、遅くても来年の通常国会で再審法改正を実現させなければならない」と述べた。
リレーメッセージではブログ「清水っ娘、袴田事件を追う」作者の中川真緒さん、櫻井昌司さんの支援者の宇野朱音さん、など若い人たちが登壇し、冤罪の不当性、再審法改正の必要性について訴えた。
日本プロボクシング協会袴田巖支援委員会の皆さんからも、巖さんを激励する挨拶が相次いだ。巌さんは“元ボクサーだからやりかねない”という偏見を利用して殺人犯にでっち上げられた。
第2部では、フリーアナウンサーの古舘伊知郎さんを司会に、「再審のリアルを語り倒そう」のテーマでディスカッション。
元厚生労働省事務次官で郵便不正事件冤罪被害者の村木厚子さんは、自ら冤罪を着せられた経験から、再審法の問題点を鋭く突いた。
そもそも再審は、無罪の可能性があるのだから、早急に審議すべきだが、その規定が何もない。それどころか再審が決まっても、検察が抗告すれば、徒に時間が費やされる。日弁連の改正案は、手続の明文化・審理の公開、記録・証拠品の保管、証拠の開示、検察官抗告の禁止が盛り込まれている。
袴田さんの完全無罪をかち取るとともに、再審法の改正を実現させよう。 (沢)
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2024.09.18
日本新聞
311子ども甲状腺がん裁判 原発事故と甲状腺がんの因果関係は明らか
4587号1面記事
311子ども甲状腺がん裁判
原発事故と甲状腺がんの因果関係は明らか
311子ども甲状腺がん裁判第11回口頭弁論で苦しい体験を切々と語る原告。被告東電は事故による被ばくを認め、被害者に保障せよ
9月11日、東京地裁で「311子ども甲状腺がん裁判」第11回口頭弁論が行われた。
「311子ども甲状腺がん裁判」は事故当時18歳未満だった青年達が、事故後、甲状腺がんを発症し、自らの病気が原発事故による被ばくが原因だったことを明らかにして、保障してほしいと訴えた裁判である。
被告東電は、いまだに事故と甲状腺がんとの関連性を認めない。それどころか、原告の青年達のがんは、検査しなければ生涯気づかないくらいの、問題にもならないものだとさえ言っている。現実に今現在、苦しんでいる青年たちを前に、よくもこれほどの暴言を言い放つことができるものだ。譲れない闘いである。
原告1さんの意見陳述
裁判の最初に原告1さんの意見陳述があった。すべての原告の意見陳述を聞いた裁判長から今の裁判長に代わったので、意見陳述が認められて本当に良かった。以下に要旨を紹介する。
会津若松に住んでいた。自宅は原発から西に100キロ圏内で、東側方向からのプルームが滞留しやすいところにある。事故後、放射性セシウムも高い値を示していた。自宅の窓は原発側に向いていた。自転車通学で、片道30分はかかった。よく牛乳を飲んでいた。事故後も露地野菜を食べていた。
19歳の時の検査では特に問題はなかった。20歳の時、穿刺細胞診検査をした。1、2回目とうまくいかず、苦しかった。翌日、甲状腺がんを告知された。半年に1回通院した。1年後には10.6ミリと大きくなった。手術前には11.6ミリになっていた。
SNSで病気のことを発信したら、励ましが返ってきてうれしかった。手術後も定期的に検査している。再発を考えると落ち込むので、考えないようにしている。
被告東電はこの意見陳述をどうとらえるのだろうか。これが、調べなければ生涯気づかない、問題にもならないガンなのか。あまりにもひどい。
原告側弁護団は13本の準備書面を提出して、この日の弁論に臨んだ。
弁護団の論点は明確だった。
・被告は“潜在がん”だというが、福島県で甲状腺摘出手術は327人、必要のない手術だったのか。1割が再発している。被告の主張“治療の必要のない潜在がん”は、実際とかけ離れている。
・被告は“福島の子ども達の被ばく量は5.1ミリシーベルトと低いから、原発事故と甲状腺がんに因果関係はない”と主張。紅葉山のモニタリングポストは1歳児で約60ミリシーベルトの被ばくを示す。平山論文も10歳児の被ばく46.81ミリシーベルトと明記。UNSCEARは5.1ミリシーベルトとしている。なぜこんなに違うのか。
・被告の「100ミリシーベルト閾値論」は誤り。世界的な微生物研究者であるルビン博士は“100ミリシーベルト以下でもガンになる”と述べている。
日本民法学会最高峰の我妻栄は“常識的に、事故があった時は因果関係あり”と述べている。原賠法では“早急かつ十分に被害者を支援すべき”と定めている。
この日、87席の傍聴席に対して207人がかけつけた。
報告集会では大学生やスタッフの青年など、若い人の発言が続いた。
「自分と同年代の原告がいろいろな覚悟を持って裁判をしているのがすごい。メディアはあまり報じないが、自分は見過ごしたくないから傍聴した」
「同年代の人たちが闘っているのが心に響いた」
「メディアは取り上げてほしい。人権を守る最前線だ」
井戸弁護団長は「今、“福島の事故で住民被害はなかった”という神話がまん延している。それを打ち破っていかなくてはならない。UNSCEARはインチキだと広めてほしい。それが一番の武器になる」と訴えた。
なぜ、被害を受けた人が勇気を持って被害を訴えなければならないのか。原告の青年達と連帯し、被害の実際を広めていこう。(沢)