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2023.08.30
日本新聞
日本新聞 4532号記事 民意無視の汚染水海洋放出に抗議
事故炉の汚染水海洋放出は世界初の無謀な行為。全漁連会長が反対を明言した翌日、放出を決定。中国、日本産水産物の輸入全面停止決定
岸田政権は19日に日米韓首脳会談から帰国し、20日には東電福島第一原発を訪れ、24日から汚染水の海洋放出を強行した。全国漁業協同組合連合会会長は改めて、反対を明言していた。「関係者の合意なしにはいかなる処置もしない」という文書にも明記した約束を踏みにじっての強行である。
23日、緑の党は海洋放出の中止を求める声明を出した。
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放射能汚染水の海洋放出の中止を求める声明
岸田首相は、「福島県復興の前提に福島第一原発の廃炉があり、廃炉の前提に処理水の処分がある」として、その汚染水の海洋放出を8月24日に行うことを関係閣僚会議で決定した。しかし、30年以上に及ぶ汚染水の放出は世界の海を汚し、二次災害を生み出すものだ。反対の声があるにもかかわらず強行する海洋放出は即刻中止することを求める。
①政府は、国際原子力機関(IAEA)の「国際的な安全基準に合致する」「人および環境に与える放射線の影響は無視できる」という報告書をお墨付きとして、海洋放出を強行している。しかし、原発事故で溶け落ちた核燃料を冷やした高濃度汚染水は、「多核種除去設備ALPS」で処理してもトリチウムなど除去できない放射性物質を含む。またトリチムのほかにもセシウム・ストロンチウムなど62核種の基準値超えの放射性物質を含む汚染水が大量にある。放射性物質がある限り、被ばくを伴う。海洋放出はどんなに薄めても放射性物質を海に垂れ流すことであり、食物連鎖を通じて健康に被害をもたらす明らかな環境汚染である。世界最悪の原発事故を起こした汚染水を海洋に放出するのは世界初であり、全く無謀なことである。断じて認めるわけにいかない。これは風評被害ではなく、放射能の二次災害である。
②事故前は、年間2兆ベクレルのトリチウムを海洋放出していた。現存の汚染水のトリチウムは860兆ベクレルである。年間22兆ベクレルを放出する予定である。しかし、海洋放出はコスト削減になるからと言って行うべきではない。二次災害を防ぐために、放射性物質を閉じ込めるべきである。政府は、石油備蓄で使われている大型タンクの増設やトリチウムのモルタル固化などの代替え案を採用すべきである。
③現在の汚染水の総量134万トンは、タンク約1000基に保管されている。東電によると、2023年に放出する汚染水は、3万1200トン、約30基分であるが、毎日約100トンの汚染水が新たに発生しているので、実質減るのは約1万2200トン、約10基分、全体の1%に過ぎない。東電は、「放出量を徐々に増やして、2051年までに、保管タンクゼロにできる」としているが、石棺や地下水などを遮蔽する措置を抜本的に取らない限り、汚染水の終わりが見えない。50年もかかると推測する専門家もいる。345億円をかけ、現在も毎年の電気代が十数億円かかる凍土壁は、地下水をゼロにはできなかった。したがって石棺や新たな広域遮水壁対策を検討するべきである。
④2015年、政府と東電は、「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と約束した。ところが、政府は約束を破って海洋放出を強行した。全漁連会長らと面会し、漁業者に必要な支援などの基金を800億円出すことによって一定の理解を得たと強弁している。しかし、関係者の理解を得られたとは到底言えないものである。世界の海を放射能で汚染することは取り返しのつかないことであり、被災地の人々を一層苦しめるものである。海洋放出の中止以外、安心は得られない。そして国内だけでなく、汚染された海によって世界の人々の生業もまた奪われる。政府は、国内や世界の人々の反対の声に耳を傾けるべきである。
⑤政府は原発回帰に舵を切った。福島原発事故の1~3号機で生じたトリチウムは年間200トンにのぼる。再処理工場が稼働すれば、使用済み核燃料を年間800トン処理し、大量のトリチウムが取り出され、海洋放出する計画になっている。原発のない社会を実現しない限り、更なる危険が待ち受けることを危惧する。環境を破壊する放射能汚染水の海洋放出は即刻中止することを要求する。
2023年8月23日
緑の党 党首 對馬テツ子
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中国は日本の水産物の輸入の全面停止を決定した。福島沖の底引き網漁は9月1日に解禁される。現在の水揚げ量は震災前の2割、漁師たちはここからだと期待していた矢先である。これは風評被害ではなく、環境汚染であり実害である。ここまで何とか生業をつないできた漁業関係者たちの努力を水の泡にするのか。
政府・東電は海洋放出をただちに中止すべきである。 -
2023.08.23
党の主張・声明
放射能汚染水の海洋放出の中止を求める声明
岸田首相は、「福島県復興の前提に福島第一原発の廃炉があり、廃炉の前提に処理水の処分がある」として、その汚染水の海洋放出を8月24日に行うことを関係閣僚会議で決定した。しかし、30年以上に及ぶ汚染水の放出は世界の海を汚し、二次災害を生み出すものだ。反対の声があるにもかかわらず強行する海洋放出は即刻中止することを求める。
政府は、国際原子力機関(IAEA)の「国際的な安全基準に合致する」「人および環境に与える放射線の影響は無視できる」という報告書をお墨付きとして、海洋放出を強行している。しかし、原発事故で溶け落ちた核燃料を冷やした高濃度汚染水は、「多核種除去設備ALPS」で処理してもトリチウムなど除去できない放射性物質を含む。またトリチムのほかにもセシウム・ストロンチウムなど62核種の基準値越えの放射性物質を含む汚染水が大量にある。放射性物質がある限り、被ばくを伴う。海洋放出はどんなに薄めても放射性物質を海に垂れ流すことであり、食物連鎖を通じて健康に被害をもたらす明らかな環境汚染である。世界最悪の原発事故を起こした汚染水を海洋に放出するのは世界初であり、全く無謀なことである。断じて認めるわけにいかない。これは風評被害ではなく、放射能の二次災害である。
事故前は、年間2兆ベクレルのトリチウムを海洋放出していた。現存の汚染水のトリチウムは860兆ベクレルである。年間22兆ベクレルを放出する予定である。しかし、海洋放出はコスト削減になるからと言って行うべきではない。二次災害を防ぐために、放射性物質を閉じ込めるべきである。政府は、石油備蓄で使われている大型タンクの増設やトリチウムのモルタル固化などの代替え案を採用すべきである。
現在の汚染水の総量134万トンは、タンク約1000基に保管されている。東電によると、2023年に放出する汚染水は、3万1200トン、約30基分であるが、毎日約100トンの汚染水が新たに発生しているので、実質減るのは約1万2200トン、約10基分、全体の1%に過ぎない。東電は、「放出量を徐々に増やして、2051年までに、保管タンクゼロにできる」としているが、石棺や地下水などを遮蔽する措置を抜本的に取らない限り、汚染水の終わりが見えない。50年もかかると推測する専門家もいる。345億円をかけ、現在も毎年の電気代が十数億円かかる凍土壁は、地下水をゼロにはできなかった。したがって石棺や新たな広域遮水壁対策を検討するべきである。
2015年、政府と東電は、「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と約束した。ところが、政府は約束を破って海洋放出を強行した。全漁連会長らと面会し、漁業者に必要な支援などの基金を800億円出すことによって一定の理解を得たと強弁している。しかし、関係者の理解を得られたとは到底言えるものではない。世界の海を放射能で汚染することは取り返しのつかないことであり、被災地の人々を一層苦しめるものである。海洋放出の中止以外、安心は得られない。そして国内だけでなく、汚染された海によって世界の人々の生業もまた奪われる。政府は、国内や世界の人々の反対の声に耳を傾けるべきである。
政府は原発回帰に舵を切った。福島原発事故の1~3号機で生じたトリチウムは年間200トンにのぼる。再処理工場が稼働すれば、使用済み核燃料を年間800トン処理し、大量のトリチウムが取り出され、海洋放出する計画になっている。原発のない社会を実現しない限り、更なる危険が待ち受けることを危惧する。環境を破壊する放射能汚染水の海洋放出は即刻中止することを要求する。
2023年8月23日
緑の党 党首 對馬テツ子 -
2023.08.23
日本新聞
日本新聞 4531号記事 政府・東電は汚染水の海洋放出を中止に
8月末にも汚染水を海に流そうとしている政府。海洋放出反対の世界の声、国内の声に耳を傾け、提案されている代替案を検討すべき
8月18日、首相官邸前で、「汚染水を海に流すな首相官邸要請行動」首相官邸前集会が行われた。主催は「これ以上海を汚すな市民会議」と「さようなら原発1000万人アクション実行委員会」である。司会を務めた武藤類子さんの「岸田首相は日米韓首脳会談のため、アメリカに行っている。しかし、岸田首相の聞くべき声は、バイデン大統領や尹大統領ではない。福島県内の市民の声、国内の市民の声、他の国々の市民の声だ」という訴えに共感を覚えた。
主催者を代表して佐藤知良さんは「政府と東電は“関係者の理解なしには(汚染水を)いかなる処分もしない”と文書で約束している。戊辰戦争の時に会津は大変苦労した。東北は大変苦労した。東日本で塗炭の苦しみを味わって12年。沿岸漁業はようやく2割の水揚げに至ったばかり。ここで汚染水を流されたら、生業が成り立たない。絶対に流させるわけにはいかない。会津の10の掟に、成らぬものは成らぬものです、とはっきりある。成らぬものは成らぬ、汚染水は流させてはいけない!」と力強く訴えた。
あじさいの会事務局長の千葉親子さんは「放射能ほど不条理で、差別的で理不尽なものはない。原発事故から12年、国も東電も責任も取らず、よく来たものだ。事故を起こした原発からの汚染水を、大丈夫だと言って流そうとしている。説明会で一人の男性が言った。“海に汚染水を流すことは、俺のリンゴ畑に汚染水を撒くことと同じだ。何年も何年も撒く。許されない!”汚染水の海洋投棄は絶対に反対だ」と述べた。
原水禁事務局長の谷さんは「原水禁で8月7日に長崎で、汚染水の海洋放出をテーマとした国際シンポジウムを開催した。海外からも、薄めて流すという前例を日本が作ることがどういうことか、指摘されている。他の原発がトリチウムの水を流しているのと福島第一原発の水は違う。事故を起こした原発の水で、どういうものかつかみ切れていないものを流すということは科学的ではない」と指摘された。
海洋放出は地球規模の環境汚染、中止以外に方法はない
続いて参議院議員会館で、「汚染水を海に流すな首相官邸要請行動」院内集会が行われた。
「さようなら原発1000万人アクション」呼びかけ人の鎌田慧さんは「汚染物を海に投棄する。今までの公害病を考えてください。水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそく、これらはすべて企業が環境汚染を公然とやってきた。水俣は今も続いている。こういう結果が出ているのに、130万トンの汚染水を30年間にわたって海に流す。地球環境、世界の水産業者に影響する。国際的な問題で日本の恥だ。無責任な廃棄、放流は絶対認めない。頑張っていこう」と呼びかけた。
経産省に対して要請書を読み上げて手渡した。要請書の中味をしっかりと受け止めてほしいものだ。
海渡弁護士は「汚染水の海洋放出は、国際法上も国内法上も違法である。海洋放出が行われ、消費者が魚を買わなくなるのは風評被害ではなく、正当な自衛行動だ。漁業者は大変な被害を被る、それは風評被害ではなく政府による被害だ。安全な方法を取るのが当然だが、その評価もなされていない。脱原発弁護団はあらゆる努力を続け、何らかの裁判手続きで無謀な海洋放出を食い止める努力を最後まで続ける」と表明した。
8月20日、岸田首相は東電福島第一原発を視察し、22日にも関係閣僚会議を開き、汚染水海洋放出時期の最終協議を行う方針を出した。
汚染水の海洋放出には一分の正当性もない。政府は海洋放出を中止し、代替案を検討すべきである。そしてこれ以上、汚染水が増えないように、建屋内に地下水が流入することを早急に防ぐ措置を取ることを最優先すべきである。 (沢) -
2023.08.16
日本新聞
日本新聞 4530号記事 平和を発信する沖縄に学び反戦を
「台湾有事」宣伝し戦争に向かう動きに反対。「沖縄を東アジアの平和のハブとする」と訴える沖縄県民に学び、戦争を防ぐ平和・友好の道を
日本の敗戦から78年、戦死した親や兄弟をしのぶ声が新聞紙上やテレビやラジオから流れてくる。どんなに月日が流れても親しい人を失った悲しみは消えない。ましてや戦争という不条理な状況の中で命を奪われた無念は、解決できるものではない。
ところが78年経った今、日本政府は戦争へと向かう道をひた走っているのだ。岸田首相はG7の広島サミットで、「今日のウクライナは明日の東アジア」と言った。ロシアが中国、ウクライナが台湾として、「台湾有事」を避けられないものと言っているのである。
果たしてそうだろうか。1978年に日中平和友好条約が結ばれ、「一つの中国」、台湾は中国内部の問題だと確認した。それなのに日本は今、中国の内政に干渉し、アメリカが声高に叫ぶ「台湾有事」を吹聴する。「台湾有事」つまり、中国が台湾を攻める事態になったら南西諸島も危ない、だから南西諸島に基地を造らなければならない、軍事費を増やし軍備増強しなければならない、というのである。
これは正しいだろうか。台湾では8割以上が「現状維持」を意思表示し、独立派は増えていない。アメリカがこの独立派を刺激し、独立派が武力を使う強硬手段に出れば、中国がこれを制しにかかる。米軍が南西諸島からミサイルを撃って、独立派を支援する。南西諸島が戦場と化す。これが「台湾有事」である。つまり、アメリカや日本が事を起こさなければ「台湾有事」は起こらないのだ。
「台湾有事に備えて軍備増強」ではなく、戦争を防ぐことを考える時なのである。
平和への道を歩む時
ソ連邦解体後、アメリカはアメリカの世界一極支配体制を築こうとした。そのためにはロシアと中国が邪魔になる。そこでウクライナのNATO加盟問題、ウクライナ東部住民弾圧問題でロシアを挑発した。そしてロシアはウクライナに侵攻した。アメリカ主導のNATOはウクライナに武器を供与して、戦争を長引かせている。
次は中国を挑発してアジアで戦争を起こそうとしている。かつては“貧困のアジア・アフリカ”と言われたが、人口においても経済力においても、アジアやアフリカの国々はどんどん成長している。(日本を除いては)
2022年の名目国内総生産は、1位がアメリカ、2位が中国、3位が日本、中国は日本の4倍である。アメリカのゴールドマンサックスの統計によると、50年後の1位は中国、2位はインド、3位はアメリカ、続いてインドネシア、ナイジェリア、パキスタン、エジプト、ブラジルだという。その時、日本は12位に転落しているというのだ。
今のうちに中国に打撃を与えておいて力をはぎ取りたいというのが、アメリカのもくろみである。日本はアメリカの戦略下で、滅びの道に進むのか。
琉球王国は戦争しない平和の歴史を築いていた。中国とは500年以上の友好の歴史をもつ。これに対して日本は明治維新後、特に、領土拡張を進めた。武力で琉球を併合し、朝鮮半島を植民地にし、中国大陸、アジアの国々を侵略した。
沖縄県民は琉球王国の時と同じ、万国津梁=平和の架け橋になろうという考え方を変えてはいない。そして日本は今も侵略戦争時と同様、戦争へと向かっている。
今大事なのは、戦争に備えるのではなく、戦争を起こさないことである。「台湾有事」宣伝に惑わされず、平和を克ち取る反戦の行動をしよう。 (沢)