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2023.09.27
日本新聞
日本新聞 4536号記事 安保法制強行成立から8年 戦争に向かう日本に歯止めを
安保関連法で集団的自衛権の行使を可能にし、昨年の安保3文書で敵基地攻撃能力保有打ち出した政府。日米軍事同盟強化は戦争への道
2015年9月19日、安倍政権(当時)は安保関連法案(11の法案を束ねて一括採決)の強行成立を行った。国会前では連日、強行採決に反対し、抗議の声があげられていた。全国でも抗議行動が行われた。にもかかわらず、強行採決、成立させたのである。
安保法制によって、集団的自衛権が可能にされ、日米軍事同盟がますます強化された。アメリカとの合同軍事訓練は、安保法制成立前の3年間では64回だったものが、成立後の3年間では242回と急激に増えている。アメリカだけではなく、オーストラリア、イギリスとも合同訓練が増えた。イギリスとは合同訓練などしなかったのに、6回行い、オーストラリアとは4回から9回に増えている。
そして昨年12月の安保3文書によって、敵基地攻撃能力を保有するに至ったのである。
政府は「日米一体化、日本の軍事力増強は、抑止力となる」と言うが、果たしてそうだろうか。今、アメリカは「台湾有事」をあおり立てている。「台湾有事」に備えるという名目で、沖縄を含む南西諸島に自衛隊のミサイル基地が次々造られた。米軍がそこからミサイルを撃つ。ミサイルを積んだトラックで島中を移動しながら、ミサイルを撃つ。そうなれば島全体が戦場になる。その後、自衛隊が迎え撃つシナリオだ。島民にシェルターに避難する訓練をさせているというが、島民を犠牲にするのか。
アメリカは以前から「アジアの戦争はアジア人同士を戦わせる」と言ってきた。アメリカとの一体化は日本を守らない。同盟国アメリカに攻撃する国に対して自衛隊が攻撃する。これは日本がアメリカの戦争に巻き込まれることである。アメリカに加担しなければ、日本が戦場になることはない。日米一体化は抑止力どころか、戦争に突入する危険をもたらす。
憲法9条を守り戦争しない日本に
安倍政権は、改憲手続きもせず、解釈改憲で集団的自衛権の行使を閣議決定した。これほど重要なことを閣議決定で決められるわけがないが、決めてしまった。
集団的自衛権の行使も、敵基地攻撃能力も、不戦、戦力不保持の憲法9条に明らかに違反している。9条をそのままで、決して成り立たないことである。全く無法である。
憲法9条は、戦後の焼け野原の日本で、食料にも事欠く中で、二度と戦争してはならないという強い思いで、決められた大切なものである。戦争は何もかも奪い尽くすもので、プラスになることはひとつもない。不戦を誓い、命を守っていこうという決意である。この憲法9条を形骸化させ、軍事費を2倍にし、軍備強化に拍車をかけている。
日米韓首脳会談で確認した結束とは一体何か。日本と韓国がアメリカの手足となって、アメリカの世界戦略の下で、アメリカと共に闘う、実際は戦わせられるのだ。
そこに日本の未来はあるか。岸田首相は、日本が加盟してもいない軍事同盟NATO首脳会議に、昨年6月に続き、今年7月にも出席した。これも憲法違反である。決して認められないことなのに、マスコミは口をつぐんでいる。国会で徹底討論したという話も聞かない。NATOで日本は「パートナー国」に位置づけられているというが、日本は欧米の一員ではなく、アジアの一員である。アジアの国々と力を合わせて生きるのが、日本の取るべき進路である。それが平和への道である。
(沢) -
2023.09.20
日本新聞
日本新聞 4535号記事 3.11 子ども甲状腺がん裁判
子どもの命を守る闘い
「治療のいらない軽微ながん」と非情な言葉を吐きつける東電側。公表でも358人の小児甲状腺がん発症。原因が原発事故なのは余りに明白
東電福島第一原発事故から12年半の歳月が流れた。しかし事故による被害はいまだに続いている。政府は放射性汚染水の海洋投棄を国内外の中止要請に耳を傾けることもなく、8月24日に強行した。中国を始め、国際世論の批判を浴びている。
9月13日、東京地裁において、3.11子ども甲状腺がん裁判の第7回口頭弁論が行われた。地裁前には200名以上が駆けつけ、83名が傍聴した。
裁判の前に、地裁前での集会が行われた。
弁護団から、今回から裁判長が代わることが報告された。これまで原告7人全員の意見陳述が終わっている。新しい裁判長は何も聞いていない。新たな裁判長に対して、弁護団は、原告2人の意見陳述の時間を取ってほしいと要望を出したが、それが実現できる見込みが今のところないという。井戸弁護団長は、「裁判の前の進行協議で、次回以降、原告の声を直接裁判長に届けられるよう要求していく」と話した。そして、東電と原告側の一番の争点は、潜在がんなのか被ばく由来なのかという点だ。執刀した鈴木医師は「甲状腺がんは非常に進行している」と論文に記している。これに対する東電側の反論は何も反論になっていないことが指摘された。
古川弁護士は「原告の一人は来週末に検査をし、すでに2回手術をしているが、結果を見て、次の手術をどうするか判断する。不安な気持ちを話していた。裁判所には原告の声をきちんと聞いてもらいたい」と訴えた。
あじさいの会共同代表の牛山元美医師は「甲状腺がんは放っておいてもいいがんというものではない。病気に悩んで人生が変わってしまった子ども達の実際をみてほしい。裁判に関わって、たくさんの支援の方がいることが、大きな励ましになっている。最近一番気になったのは、疫学の専門家たちが“被ばくの影響かもしれないということ自体が、被ばくした社会の復興を妨げる”と言っている。だからこそ、真実を訴えなければならない」と語った。
福島の小児甲状腺がん多発は原発事故由来
裁判では鈴木弁護士がプレゼンをおこなった。小児甲状腺がんが通常は100万人に1人か2人、事故後、福島では事故当時18歳未満の子ども38万人の健康調査を行った。その結果、1巡目で187例、2巡目で125例の甲状腺がん、あるいは疑いがみつかった。しかも、その77.6%でリンパ節転移が確認された。これを東電はスクリーニング検査の結果だと言う。調べなければ生涯わからない、治療の必要もないがんだというのだ。これについて、鈴木弁護士は明確に否定した。
東電は「甲状腺がん多発と原発事故との因果関係はない」という根拠に、UNSCEARの報告書を論拠にしている。ところが裁判で、UNSCEARの報告書のデータの開き方を質問している。つまり、報告書を見もせずに論拠としているのである。これでは話にならない。
報告会では、UNSCEARがビキニ水爆実験による被爆が問題になって、放射能汚染に対する国際的な関心が高まった時に、それを抑えるために作られた機関であると指摘された。
福島からの避難者で、大阪で裁判闘争を闘っている森松さんは、「原告を孤立させないでほしい。甲状腺がん多発は事実だ。原告を支えていこう」と力強く訴えた。
新たに副団長となった杉浦弁護士は「裁判はまさに被害の問題になる。原告に寄り添うことが大事」、同じく副団長の斉藤弁護士は「声をあげた原告がさまざま言われる。それを守ろうと参加した。原告達が怖がらずに声をあげれるよう支えていく」と語った。
国と組んで権力でごり押ししてくる東電側。それに対して若者たちを守る良心の闘い、子ども達の命を守る闘いである。 (沢) -
2023.09.13
日本新聞
日本新聞 4534号記事 沖縄の民意踏みにじる沖縄県敗訴判決
辺野古・軟弱地盤の埋め立て認めぬ県の判断は正当。政府は沖縄の負担軽減を口先ではなく実現すべき。基地のない自然豊かな沖縄に
4日、最高裁は、沖縄県への国交相の「是正の指示」を違法として取り消しを求めた沖縄県の訴訟で、沖縄県の上告を棄却した。これによって沖縄県の敗訴が確定した。
沖縄県の玉城知事は軟弱地盤改良工事を不承認とした。これに対して国土交通相が「是正の指示」を出した。それを違法として、沖縄県が取り消しを求めて訴訟を起こした。
仲井真・元知事が埋め立てを承認したというが、その後、埋め立て予定地の軟弱地盤が発見されたのである。マヨネーズ上の軟弱地盤に軍事基地を建設するなど、余りにも無謀なことであり、玉城知事が承認しないのは当然である。ところが防衛省はいつものやり方で、国交相に行政不服審査法に基づいて不服審査請求した。国交相はそれを受けて、沖縄県に「是正の指示」つまり、埋め立てを認めるよう指示した。
そもそも、行政不服審査とは、行政による違法な、あるいは不当な処分や公権力の行使によって不利益を受けた国民の権利を守るためのものである。
同じく行政庁である防衛省が国交省に請求するものではない。政府内だから、国交相はいつも防衛省の側につく。これは沖縄県が主張するように、全く違法である。
これを正当に裁かなければならない裁判所もまた、防衛省側につき、沖縄県の訴えを却下してしまう。これでは三権分立ではなく、三権忖度であり、権力のある方が常に勝ち、無法が通ることになる。
今回の判決もまた然りである。
敗訴が確定したからと沖縄県が、改良工事を承認することはないだろう。基地建設反対が沖縄の民意だからである。沖縄県が改良工事の設計変更を承認しなければ、国が代執行することが考えられる。
これでは沖縄県の権利は何もなく、政府と沖縄県の関係は最悪状態になる。
基地のない沖縄が沖縄県民の願い
沖縄県は広さから言ったら全国の0.6%にすぎない。その沖縄に今も全国の7割の米軍基地が集中している。政府は「沖縄の負担軽減」を叫ぶが実際はどうか。
宜野湾市にある米軍普天間基地は、住宅地のどまん中にあり、学校などと隣接しており、「世界で一番危険な基地」と言われている。普天間基地の返還は一刻も早く行われなければならない。しかも無条件で返還されるべきものである。
ところが、普天間基地の返還は代替え基地ができなければ行われないというのが、日米両政府の取り決めである。そして「辺野古が唯一の方法」と、辺野古新基地建設工事を強行している。
沖縄県民が、基地建設反対の知事を何度当選させても、政府は「選挙は基地問題だけを問うものではないから、選挙に勝ったことが基地建設反対とイコールにはならない」と強弁した。そのため辺野古移設を問う県民投票を行い、沖縄県民の民意が基地建設反対であることを示した。それでも政府は民意に従おうとせず、基地建設をやめない。
2000年施行の地方分権一括法は、国と地方の関係は上下・主従の関係ではなく、対等・協力の関係に変わったことになっている。しかし、国と沖縄の関係には、全く適用されていない。政府は沖縄の声を全く無視している。黙って国に従えという理不尽を強いている。
沖縄だけではなく、南西諸島をミサイル基地にして、戦争に巻き込もうとしている。豊かな自然をことごとく破壊してしまう戦場にすることは、絶対に許されない。
沖縄を始め、南西諸島に軍事基地はいらない。戦争ではなく平和への道を歩もう。 (沢) -
2023.09.06
日本新聞
日本新聞 4533号記事 関東大震災朝鮮人虐殺から100年、政府は責任認め謝罪を
関東大震災の混乱に乗じて6000余名の朝鮮人、700名以上の中国人虐殺。政府は真相究明し、虐殺を扇動した責任を認め被害者・遺族に謝罪を
9月1日、関東大震災から100年となった。関東大震災は未曾有の大震災であっただけではなく、朝鮮人や日本の社会主義者を大虐殺したむごい歴史がある。はっきりした数がわからない中で、民間の調査で、少なくとも朝鮮人6000人以上、中国人700人以上、朝鮮人と間違われた日本人の犠牲者も多かったという。単なる震災で終わらせられない、この闇を直視し、二度と繰り返してはならないと、全国各地で集会が行われた。
9月1日、銀座ブロッサムでの「関東大震災100年 朝鮮人虐殺犠牲者追悼と責任追及の集会では、朝鮮大学校の学生たちによる朗読劇が行われ、関東大震災時にどのようにして朝鮮人虐殺が展開されたのか、証言に基づいた史実が語られた。朝鮮人虐殺の事実を知ったおじさんが「日本人だって話せばわかるはずだ」と出かけた直後、おじさんの生首を掲げて「エイエイオー!」と叫ぶ自警団の姿を見た子どもの証言は、心に突き刺さった。
集会では、最後に、政府への要請書を読み上げた。要請事項は次の通り。
1、日本政府は、関東大震災時の朝鮮人虐殺犠牲者に対して、その責任を認め謝罪すること
2、日本政府は、関東大震災時の朝鮮人虐殺の根本的原因が朝鮮半島の植民地支配にあったことを認め、確固たる姿勢を以てその清算を行うこと
3、日本政府は、関東大震災時の朝鮮人虐殺に関して、その実態を明らかにすること
4、日本政府は、政府内に止まらず公的機関に存在する関係書類の調査を行うこと
5、日本政府は、これまで聞き取り調査を行った市民および研究者を入れて真相究明のためのプロジェクトチームを立ち上げること
要請書を真摯に受け止め、政府は真相究明とともに、虐殺の責任を認め、犠牲者と遺族に謝罪すべきである。
虐殺を認め、北東アジアの未来へと向かおう
2日には、荒川河川敷で追悼イベントが行われ、600人の方がかけつけた。
また、連合会館では、「国際シンポジウム 関東大震災朝鮮人虐殺の責任と課題」が開催された。
主催者を代表して、元法務相の平岡秀夫弁護士は、「松野官房長官は“政府内において、虐殺の事実関係を記録する資料はみつからない”と言った。全くひどい。22歳で広島で被爆し、13年前に亡くなった父は大震災の翌日に生まれた。今、朝鮮人虐殺に直接関わった日本人はいない。しかし日本人として責任がある。責任を果たせない、日本が北東アジアに対する将来の展望が示せないのは、政治の貧困だ。苦悩と怒りは、虐殺された人、その遺族、そして今の朝鮮の若者たちに続いている。過去の清算をきちんと行わなければならない」と訴えた。
明治学院大学講師の鄭栄桓さんは、小池都知事の追悼文拒否を批判した。工藤美代子著作「関東大震災『朝鮮人虐殺』の真実」これが虐殺否定論の根拠になっている。
“朝鮮人は摂政宮を暗殺しようとまで画策”したから、“虐殺ではなく、国家の自衛権行使だ”と、朝鮮人暴動はあったという主張であり、事実に基づかない。「虐殺否定論の最大の問題は、被害者を加害者に変えてしまうこと。被害者の名誉が何重にも侵害されている。
朝鮮大学校講師の鄭永寿さんは、次の事実を指摘した。
1923年12月5日付の「独立新聞」には犠牲者数は6661名だと公表された。その後の「在日本東京朝鮮人大会」では、流言蜚語の出所は日本政府当局であり、伝播者も日本政府当局だと声明書を決議している。
鄭永寿さんは、「100年間の無責任を終わらせるためには、真相を調査・発表すること。そして今も無償化から朝鮮学校を排除するなど差別を行っていることで、排外主義が跋扈している。関東大震災時の虐殺主導の構図の繰り返しだ。日本社会における多民族排外主義の克服を」と訴えた。
最後に、鄭栄桓さんの「日本政府は世論を甘く見ている。日本社会の問題だ」という言葉が突き刺さってくる思いがした。
今も続く朝鮮差別、その中で苦しむ在日朝鮮人の人々。この問題を解決しない限り、私達日本人も解放されないし、前に進めない。
大虐殺から100年を機に、排外主義に反対し、アジアの平和・友好・連帯を克ち取る運動を展開しよう。 (沢)