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2023.10.25
日本新聞
日本新聞 4540号記事 米軍と自衛隊が南西諸島に共同軍事施設を検討
「台湾有事」を宣伝し、日米合同軍の実現がねらい。軍事費も更に増額し、戦争準備進める日米。戦争ではなく平和で安心な暮らしが願い
世界がきな臭くなっている。ウクライナもパレスチナも戦争の真っただ中だ。何より大切なのは、停戦である。犠牲にストップをかけることだ。ところがなかなか停戦が実現しない。
日本はどうか。今、物価は値上げ値上げで、生活は苦しくなる一方だ。政府がやるべきことは、疲弊して苦しんでいる人々の生活を具体的に保障することだ。
ところが実際やっていることは、軍備増強、米軍との合同軍事演習である。そのために莫大な金が浪費されている。
今、「台湾有事」をアメリカが喧伝し、日本はアメリカの意向第一で南西諸島の軍事要塞化を進めている。米軍と自衛隊は対中国を意識して、沖縄県や南西諸島に、物資や装備品の備蓄・補修施設を整備する検討に入るという。既存の米軍・自衛隊基地内に整備して、米軍と自衛隊が共同使用するというのである。日米軍の一体化が進められていくのだ。
米軍は世界各地に装備品や食料、水、医薬品などを備蓄し、装備品を補修もできる施設を設けている。いつ、どこで戦争が起きても対応できる態勢を組んでいるのである。西太平洋では、相模総合補給しょう(相模原市)、米軍港湾施設の横浜ノースドック、キャンプ・キャロル(韓国)、米領グアムなど。東南アジアやオセアニアにも新たに整備。オーストラリアとフィリピンで整備に着手、シンガポールとタイ、パプアニューギニアとも協議。南西諸島に日米が共同使用する備蓄・補修施設を整備することで、日米合同軍が具体的に動き出す態勢ができる。つまり、日本がアメリカの世界戦力の下で、米軍の一部隊のように動かされるわけである。非常に危険な計画である。
軍事大国化に歯止めかけ、平和憲法を守ろう
政府は2023年から5年間で軍事費を総額43兆円に増やす計画を立て、すぐに予算に計上し、軍備増強を進めている。この間の兵器ローンが16兆円を超えているため、実際は約60兆円の軍事費である。現在世界10位の軍事費が、第3位の軍事大国にのし上がるのである。
そして今、某商業紙によると、軍事費が43兆円をはるかに上回る勢いで、予定より増えているというのだ。イージス・システム搭載艦はすでに2005億円も増額、今後も新型護衛艦FFM、輸送ヘリCH47、ステルス戦闘機F35Aなど次々値上げが報告されている。
一体誰が日本の軍事大国化を望んでいるのか。少なくとも私たちは何も聞かれてはいない。食料品や光熱費、ガソリン代など、値上げはとどまるところを知らず、生活は苦しくなっていく一方である。その中で決められていくのは軍備増強。軍事要塞化。一体誰のための政治なのか。
軍事費増も軍事基地建設も、どれもこれも憲法違反である。日本は二度と戦争しない、戦力を持たないという憲法9条を制定した。平和を守る日本国憲法は、世界の平和を求める国の模範となった。軍隊を持たないコスタリカも、憲法9条を手本としている。
ところが当の日本は、憲法9条を形骸化させ、葬り去ろうとしている。解釈改憲と称して、自国が攻撃されなくても、同盟国が危険になれば攻撃できる集団的自衛権の行使が可能と閣議決定。国会での審議もしない。そして、攻撃されなくても危険だと感じれば攻撃できる敵基地攻撃能力の保持も決めた。まさに戦争まっしぐらである。
軍備増強など必要ない。アジアの国々と力を合わせ、平和を築いていくことが未来への道である。 (沢) -
2023.10.18
日本新聞
日本新聞 4539号記事 水俣病訴訟 チッソ、国、熊本県が控訴の暴挙
水俣病の原因はチッソの排水。国がすぐに対処していれば被害の拡大は防がれた。責任を認め被害者全員に救済措置を早急に講じるべき
水俣訴訟大阪地裁判決は、128人の原告全員を水俣病と認め、一人当たり275万円の賠償を、国などに命じた。被害者の権利を守る画期的な判決である。
これに対して、チッソは4日、国と熊本県は10日、判決を不服として、大阪高裁に控訴した。患者は高齢となり、一刻も早く救済されなければならない。裁判半ばに他界した方もいる。控訴は非人道的で、認められない暴挙である。
水俣病の経緯
1932年
日本窒素肥料水俣工場でアセトアルデヒド製造操業開始
1945年
日本窒素肥料がアセトアルデヒド、酢酸工場の排水を無処理で水俣湾へ排出
1949年
水俣湾でタイ、エビ、イワシ、タコが獲れなくなる
1952年
水俣で胎児性患者が出生。認定は20年後
1953年
水俣湾で魚が浮上、猫が狂死
1954年8月1日
熊本日日新聞が「ネコ100余匹が次々狂い死にした」と報道
1956年
5歳女児が新日窒附属病院小児科に入院、この年、50人発病、11人死亡
同5月1日
水俣保健所が「原因不明の奇病発生」と水俣病公表、これが公式確認
チッソがアセトアルデヒド製造から24年経ってようやく、水俣病が公表されたのである。最初の発症がいつなのかは定かではない。「奇病」として偏見を持たれ、病院へも行けない状況だったのである。
1956年11月の段階で、熊本大学の研究班は、「病気は水俣湾の汚染魚を食べたことによる」と調査結果を発表している。厚生省(当時)も「昭和31年(1956年)全国食中毒事件録」の「いわゆる『水俣病』について」という項目に、「原因食品 水俣湾内産魚介類」と記している。
熊本県は1957年8月に、食品衛生法による水俣湾魚介類の販売禁止措置の方針を固め、8月に厚生省に可否を照会した。これに対して厚生省は「食品衛生法は適用できない」と退けたため、その後も水俣湾の魚介類による被害は拡大し続けたのである。
こうした経緯から、原因企業のチッソと国との共同犯罪と言っても過言ではない。もちろん、熊本県の責任も大きく問われる。
2009年の水俣病特措法は、2012年7月末の申請期限までに約3万8000人に対して、一時金210万円や療養費などを支給した。しかし、対象を、不知火海周辺の熊本、鹿児島両県の9市町村の沿岸部などに居住歴があり、チッソがメチル水銀排出を止めた1969年11月末までに生まれた人に限定した。沿岸部に居住していなくとも汚染魚を食べて発症しているし、1969年11月以降に生まれた人も発症している。
岡山大学大学院環境生命科学研究所の津田敏秀教授は、「水俣病は魚介類を原因食品とするメチル水銀中毒症の症状とみなされる」と断定している。そして、「水俣病は国と県が食中毒事件として食品衛生法に基づいた措置を怠ったこと、水俣病の認定審査を行う医師らが食中毒症としてのとしてのメチル水銀中毒症についての知識に欠け、多くのケースで保留や棄却をもたらした」と問題視している。大阪地裁判決は津田教授の見解を重要視している。
国は周辺住民の命を守ることより、原因企業であるチッソを守ろうとし、チッソの排水に含まれているメチル水銀が原因であることを隠した。そのために一体どれだけの人が犠牲にされたことか。国も熊本県もチッソも、そのことに何の反省もなく、控訴したのである。すべての原告に賠償を命じた大阪地裁判決は全く正しい。続く熊本、東京、新潟訴訟でも大阪地裁判決同様の判決が出たら大変だと、控訴したのだろう。
チッソ水俣工場創業から91年が過ぎ去った。事実を認め、被害者救済を最優先にすべき時である。 (沢) -
2023.10.11
日本新聞
日本新聞 4538号記事 2022年度、いじめも不登校も過去最多
小中の不登校は29万9千人、いじめは小中高で68万2千件、自殺は411人。差別や暴力にがんじがらめにされている子ども達の心の解放を
文部科学省が2022年度の「児童生徒の問題行動・不登校調査」を発表した。
それによると、小中学生の不登校は約29万9000人で過去最多。前年度比22.1%の大幅増となった。いじめは小中高で約68万2000件、暴力行為の発生は約9万5000件でいずれも過去最多だった。
大変な事態である。学校現場の惨たんたる状況が浮き彫りにされている。発表された数字はあくまで文科省に報告された数であり、実際はこの数より多いと思われる。不登校やいじめを報告すれば、学校長自身の評価に関わるから、なるべく問題がないようにして定年退職を迎えたいという意識が働き、問題に目をつぶる傾向は否定できないからである。いじめが前年度より1割も増えたことについて、「コロナ禍で縮小されていた部活動や学校行事が再開され、子ども同士の接触する機会が増えた」としている。コロナでオンライン授業の時は、子ども達が会わないから、いじめが減っていたというのである。これでは本質的に何も変わっていない。子ども達の中の差別意識は変わらないから、顔を合わせればいじめ、暴力となる。
小中高校生の自殺者数は前年度より43人増えて411人。そのうち原因不明が6割の255人だというのだから驚く。
これが一番の問題である。何故、学校に来ない子どもが年々増えるのか、不明。何故、いじめが増えるのか、不明。何故、暴力事件が起きるのか、不明。何故、自殺する子どもが後を絶たないのか、不明。
これでは何も解決することは出来ない。日本の教育は死んでしまっていると言っても過言ではない。深刻な事態なのである。
子どもをいきいき育てる教育への転換を
いじめの問題一つとってみても、自分たちがいじめた子が自殺したと聞いても、「なんてことをしてしまったんだ」と心を痛めるのではなく、笑い飛ばす子どもが育っている。子どもと子どものコミュニケーションも、教師と子どものコミュニケーションも成立していない。
教師は残業残業に追われているが、それは子どもを育てるための仕事ではなく、書類提出に忙殺されているのである。そんな中で疲れ果て、子ども達が何を考えているか、何に悩んでいるか、困っているかと心を配ることもできなくなってしまう。子どもの自殺が増えているが、精神的に追い詰められて休職に追い込まれている教師も増えている。子どもも教師も管理、統制され、疲れ果てている。
教師が元気なら、子ども達と一緒に遊び、子ども達の様子もわかる。子ども達も教師に心を開いてくるだろう。そんな関係が、今の教育現場にはあまりにも少なくなっている。
その結果が、不登校過去最多、いじめ・暴力過去最多、自殺過去2番目なのである。夜遅く、電車から降りてくる子ども達がいる。塾帰りなのだろう。子ども達に一番大切なのは何なのか、今一度、考え直す必要がある。勉強しろ勉強しろと育てた子どもに殺される事件が頻発している。子どもにとっても、親にとっても、何が幸せなことかと考えさせられる。
学校現場で子ども達の中にある差別に真っ向から立ち向かっていく教育が、最も求められている。
人間は本来、集団化するものであり、命を大切にするものである。その本来の姿に戻してやるのが教育の仕事である。子ども達を差別から解放する教育への転換は急務である。 (沢) -
2023.10.04
日本新聞
日本新聞 4537号記事 辺野古埋め立て 国交相、沖縄県知事に設計変更承認指示の暴挙
沖縄戦を強いられた県民の民意は戦争反対、基地反対。
全県的な反戦組織「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」発足で反戦の団結強まる
9月28日、斉藤国土交通相は、沖縄県・玉城知事に対して、軟弱地盤の辺野古北側の埋め立て設計変更申請を承認するように指示を出した。軟弱地盤に基地をつくることは無謀であり、埋め立てを承認しないのは当然である。
沖縄県民は、沖縄戦で言葉に尽くせないほどの悲惨な経験をしている。肉親を失い、友を失い、すべてを失った。その中から、今日の沖縄を作り上げてきたのである。二度と戦争をしてはならない、これは沖縄県民の変わらぬ民意である。基地建設は決して認められないのである。
第二次世界大戦末期、日本の敗戦は明らかで避けられない、降伏するしか道はない、という時に、沖縄を捨て石として戦場にした。そのため、沖縄県民の4分の1が犠牲となったのである。
沖縄県民の思いを無視して、日本政府は沖縄復帰後も、沖縄に基地を押し付けてきた。沖縄の人々は「すでにある米軍基地は奪い取られた基地だ。しかし、辺野古新基地は差し出す基地だ。絶対に認めるわけにはいかない」と話している。
沖縄県知事が設計変更を承認しなければ、辺野古の工事は進められない。これに対して防衛省は国交相に、沖縄県の不承認を取り消すよう、行政不服審査法に基づいて審査請求した。
行政不服審査法は、行政から不当な処分を受けた国民の救済のためのものだ。防衛省沖縄防衛局が「私人」として訴え、国交相が判断する、これは成り立たない。ところがこれを行使し、国交相が沖縄県知事に承認を指示したのである。
つまり国のやり方に対して、自治体が意見を言うことなど認めないのだ。玉城知事が承認指示に従わなければ、国が県に代わって承認する「代執行」のための訴訟を高裁に起こすという段取りである。これでは国が何でも好き勝手に出来、国と地方自治体が対等になったなど、全くの建前で実際は全く違う。
沖縄県民の反戦運動を全国に広げよう
沖縄で全県的な反戦組織「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」が発足し、9月24日、那覇市でキックオフ集会が開かれた。11月23日に那覇市で1万人規模の県民大会を開く予定。
共同代表の具志堅隆松さんは、沖縄戦で犠牲になって遺骨さえもわからなくなってしまった人たちが多くいる中、遺骨発掘を続けている「ガマフヤー」代表である。具志堅さんは「相手を攻撃できる基地があれば攻撃の対象になる。沖縄に配備されたミサイルを撤去してほしい。そうでないと私たちの生存が厳しくなる」と語っている。
今、沖縄を含む南西諸島にミサイル基地が造られ、自衛隊が配置されている。アメリカは「台湾有事」を喧伝し、今にも中国が台湾を攻撃するかのように煽っている。日本政府も「台湾有事」を叫びたて、南西諸島の軍事要塞化を進めている。
果たして「台湾有事」は本当だろうか。台湾の世論調査では6割以上が現状維持を意思表示している。20代の若者では80%以上である。独立派が多数ではない中で、「台湾有事」は現実のものではない。
アメリカはすでに経済力では中国に抜かれている。アメリカと中国の力関係が逆転するのは、時間の問題である。だからアメリカは日本や韓国に中国と戦わせて叩く、これがアメリカの戦略である。この戦略にまんまと乗っているのが日本政府である。
戦争に向かう道ではなく、かつての侵略戦争の加害の事実を認め、アジアの国々と友好・連帯を築いていくのが日本の進むべき道である。 (沢)