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2024.03.27
日本新聞
日本新聞 4562号記事 大阪高裁が美浜原発3号機差止棄却の暴挙
運転開始から48年の超老朽原発の再稼働を「問題なし」とした不当判決。
国内外の批判無視で汚染水海洋投棄強行。原発行政は大破たん
3月15日、大阪地裁は、運転開始から48年の超老朽原発である関西電力美浜原発3号機の運転差止を求める住民側の訴えを棄却した。
この裁判は、福井、京都、滋賀の住民7人が美浜原発3号機について、「老朽化で重大事故の可能性が高くなっている」と運転差し止めを求めたものである。
2022年12月、大阪地裁は、住民側の求めた運転差し止めの仮処分の申し立てを退けた。これに対して住民側は即時抗告した。今回大阪高裁は大阪地裁決定を踏襲し、「新規制基準に不合理な点は見いだせず、安全性を厳格、慎重に判断しなければならない事情はない」とした。しかし、高裁決定は美浜原発3号機について「経年劣化の懸念は否定できない」と言及してもいる。これはおおいに矛盾している。美浜原発3号機は1976年に運転開始した。運転開始から実に48年もの超老朽原発である。安全性を心配して運転停止を求める住民側と、「裁判所に理解された。引き続き安全性・信頼性の向上に努め、運転・保全に万全を期す」と言う関西電力と、どちらが理に合っているのか。
住民側の北村栄弁護士は「我々の主張がことごとく退けられた結論ありきの決定だ」と批判した。河井弘之弁護士は「事故は起きないから避難計画を考えなくても良いというのか。福島原発事故で得た『科学に絶対はない』という教訓に反する」と指摘した。長年、原発反対運動を続けてきた福井県小浜市明通寺の中嶌哲演住職は「法の理念や正義にのっとった決定なのか疑問だ」と語った。
福島の原発事故があったから原発の新規建設は難しいからと、原発の寿命40年を延長し、老朽原発を60年まで稼働を延長し、さらには60年を超えてもOKと法を変える、こんなことが許されるわけがない。必ず破たんするのは目に見えている。
東電福島第一原発事故で、私たちは原発と人類が共存することは出来ない、核と人類は共存できないことを知った。専門家であれば、その現実から目を背けることは出来ないはずである。金と引き換えに良心を売り渡さない限り。
汚染水4回目の投棄強行
17日、福島第一原発事故の汚染水の4回目の海洋投棄を完了したと東電は発表した。
放出量は4回で計約3万1200トン。トリチウムの総量は約4.5兆ベクレル。放出口付近の海水から微量の放射性物質トリチウムを検出したが、世界保健機構(WHO)の飲料水基準・1万ベクレルを大きく下回っているとした。
2024年度の海洋投棄は計7回行い、約5万4600トンに増やすという。トリチウムの総量は約14兆ベクレル。5回目の投棄は4~5月の予定だというが、国内外から批判が高まっている海洋投棄は即刻中止すべきである。
現在、海洋投棄されている汚染水は事故原発のデブリに直接触れた、汚染水である。世界でも例のない危険な物質なのである。今まで放出されていた放射性物質より少ない量だから大丈夫、などと言える代物ではない。
昨年12月、原子力市民委員会は「ALPS処理汚染水の海洋投棄を即時中止し、デブリ取り出しと非現実的な中長期ロードマップを見直し、福島第一原子力発電所の『廃炉』のあり方を公開・透明な場で検討するべきである」という声明を出した。声明では次の3点を指摘している。
1、政府は廃炉のために海洋投棄すると言っているが、福島第一原発の廃炉の見通しは全く立っていない。海洋投棄には何の道理も必要性もない。
2、原発事故時には「止める」「冷やす」「閉じ込める」を達成しなければならないが、いまだに「閉じ込める」ができていない。海洋投棄で更に汚染を重ねている。
3、中長期ロードマップを見直すべき。汚染水発生の防止、デブリ取り出しではなく保安方法を検討する、廃炉の公開性、透明性を確保し、市民の声が反映されるようにする。
原子力市民委員会は、良心的な専門家や市民が結集し、福島第一原発事故の収束について、真剣に取り組んでいる。デブリ取り出しなど不可能だ、仮にいくらか取り出したとしても、その保管はどうするのか。超高濃度のデブリを取り出すこと自体、危険極まりないことである。大型タンクあるいはモルタル固化など、実証されている建設的な代替案を提案している。しかし政府も東電も無視し続けている。御用学者は危険を知りながら、安全安全と繰り返している。
原発事故から13年、事故から教訓を得ることもなく、原発推進、再稼働に向かう政府の動きに歯止めをかけなければならない。原発はいらない! (沢) -
2024.03.20
日本新聞
日本新聞 4561号記事 戦闘機輸出は憲法違反の暴挙
「戦闘機輸出は国益」と言い放つ首相。武器輸出は平和を投げ捨て参戦する危険な行為。
不戦の憲法9条を守り、戦争ではなく平和の道を
5日の参院予算委員会で岸田首相は、英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機を、日本から第三国へ輸出できなければ、今後の英国、イタリアとの交渉で不利に働くと、輸出の必要性を強調した。と言っても、輸出しなければ何がどのように不利になるのか全くわからない。
この時点で公明党は、「(戦闘機輸出は)憲法の平和主義に逸脱し、日本が海外の紛争に関与することにつながる」と言っていた。
13日の参院予算委員会で首相は、
1、輸出するのは次期戦闘機に限定
2、輸出先は「防衛装備品・技術移転協定」の締約国に限定
3、現に戦闘が行われている国への輸出禁止
の3点をあげ、「個別の案件ごとに閣議決定する」と提示した。これに対して公明党は容認に転じた。武器の輸出解禁に自公が合意したのである。
なし崩し的に武器輸出が行われないためにと、首相は「個別の案件ごとに閣議決定」とした。自公で閣議決定することが、一体どんな歯止めになるのか。
これまでも閣議決定で、次々重大な決定をしてきたのである。解釈改憲で集団的自衛権の行使容認も閣議決定で決めてしまった。閣議決定で外堀をどんどん埋めて、安保関連法強行採決など、数の暴力で押し通す。民主主義のかけらもないのが、日本の政治の実態である。
14日、在日米軍が沖縄でオスプレイの飛行を再開した。鹿児島県屋久島沖で在日米軍のオスプレイが事故を起こし、8名が死亡する大事故を起こしてから、わずか3カ月余りである。宜野湾市の松川市長は「誰も納得していない」、沖縄県の玉城知事も「許しがたい」と怒りを示した。
オスプレイは事故多発で“空飛ぶ棺桶”とさえ呼ばれているアメリカの欠陥機である。オスプレイの購入については、次々取りやめて、結局購入したのは日本だけである。アメリカがオスプレイの飛行を再開したことで、日本の自衛隊も再開する。自衛隊員が欠陥機に乗って危険な目にあわされる可能性もある。
武器輸出もオスプレイの飛行再開も、やってはならないことである。政府がやっていることは、世界の平和を守ることにも、日本の若者の命を守ることにも反している。
平和憲法を守ろう
“日本は不戦の憲法9条を持つ平和の国”これがかつて、世界の日本に対する評価だった。軍隊を持たない国・コスタリカは日本の憲法9条をお手本にしていた。
ところがイラク戦争で自衛隊を戦地に派兵し、武器や米兵の輸送を行ったことで、世界の日本に対する評価は大きく変わってしまった。自衛隊は日本軍であり、世界に戦火をまき散らす米国との軍事同盟軍である。
岸田首相は「台湾有事」を声高に叫び、軍備増強しなければ危ないかのように煽る。しかし実際は軍備増強するから危ないのである。アメリカと軍事同盟を組むことで、敵を作り、戦争に向かうのである。
今、アメリカの一極支配は大きく揺らいでいる。中国を中心にアジアの経済圏、そしてアフリカの経済圏などが構築されてきている。これまでのような搾取被搾取の関係ではなく、共に伸びていく未来ある関係である。
日本はそうした動きに逆行している。日本は武器輸出ではなく、平和の道へと歩を踏み出すべきである。不戦の憲法9条を作った時のように。そしてアジアの一員として、アジアの国々と力を合わせて発展していく道を歩むべきである。
(沢) -
2024.03.13
日本新聞
日本新聞 4560号記事 原発事故から13年、原発は廃炉に!
原発事故から何ら教訓を得ようとせず、原発推進、再稼働へ走る政府。311子ども甲状腺がん裁判で、「真実が知りたい」と訴える青年達
13年前の3月11日、東日本大震災が起こり、1万5900人の方が亡くなり、2520人の方が行方不明となっている。
亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
そしてその後、東電福島第一原発の原子炉が次々爆発し、メルトダウンするという大事故となった。放射性物質は空気中へ、海へと流れ、被ばくの被害も拡大した。
福島県の、当時18歳以下の子どもたちを対象に県民健康調査が行われたが、今日までに、健康調査で327人が甲状腺がんまたは疑いと診断されている。県民健康調査以外でも43人が甲状腺がんと診断されている。計370人が、甲状腺がんまたは疑いと診断されているのである。通常では、子どもの甲状腺がんは100万人に1人か2人の発症だが、原発事故後の福島では38万人に370人という、余りにも高い発症率である。チェルノブイリ原発事故後も子どもの甲状腺がんが多発し、原発事故が原因であることははっきりしている。ところが福島の子どもたちの甲状腺がんと原発事故との因果関係は、いまだに認定されていない。
このような理不尽の中で、実際に甲状腺がんと診断され、手術を受けた7人の福島県の青年達が裁判を起こして闘っている。真実が知りたい、なぜ自分ががんになったのかを明らかにしたいと。政府と東電は、ごまかしではなく、事実を真正面から直視し、子どもたちの甲状腺がんの原因が原発事故によることを認めるべきである。
311甲状腺がん裁判
第9回口頭弁論行わる
3月6日、311子ども甲状腺がん裁判の第9回口頭弁論が行われた。
2点の大きな争点が明らかにされた。
原告側弁護団が提出した第19準備書面は、被告東電が、「福島県民健康調査の結果、子どもの甲状腺がんがみつかったのは過剰診断の結果だ。調べなければ一生気がつかないほどの軽微なものだ」と言っている点を論破した。県民健康調査で、甲状腺がんまたは疑いと診断された人以外に、がんだと診断され、がん登録した人は43人いる。もし、スクリーニング(一斉検査)による過剰診断の結果だと言うなら、がん登録された43人より軽い症例であるはずだ。ところが実際は、県民健康調査で診断された人の方が重い症例なのだ。これは被告の「スクリーニングで発見されたものは潜在がん」という主張と矛盾している。
実際、原告の7人も、再発して何度も手術したり、筆舌に尽くしがたい苦しい治療を受けている。これを潜在がんだというのか。
第20準備書面は、100ミリシーベルト論の誤りを指摘している。
被告東電は「100ミリシーベルト以下で発がんリスクの増加は確認されていない」と言っている。被告の根拠は、2007年のICRP勧告であり、その後、100ミリシーベルト以下の低線量被ばくによる健康被害は明らかにされており、30本もの論文が出されている。被告の根拠は崩されている。原発労働者30万人を対象にしたデータからは、低線量の方が健康への影響が大きい実際が示されている。
被告の過剰診断論も100ミリシーベルト論も破たんしている。
裁判官は原告の苦しみを受け止め、事実に沿った判決を出してほしい。夢を次々つぶされていった原告の思いを受け止めてほしいという、弁護団の思いが伝わってきた。
報告会で原告のお母さんが「一人の手」を歌い、力を合わせていけば未来は切り拓いていけるという思いを切々と訴えた。
尚も原発推進に走る政府の犯罪性
2011年3月11日16時36分、政府は原子力緊急事態宣言を発出した。13年経った今も、原子力緊急事態は継続されているのである。事故現場では必死の被ばく労働が行われ、収束には程遠い状況である。
今年1月1日には能登半島地震が起きた。志賀原発は群発地震のすぐそばに位置し、原発の被害状況の発表も二転三転し、真実が明らかにされているとは言い難い。道路は寸断され、家屋は倒壊。屋外退避も屋内退避もできない。原子力規制委は「自然災害による被害は原発が安全かどうかの範ちゅう外」という内容のことを発表した。原発事故は地震と共に起きる可能性が高い。避難できるかどうかを自然災害と別に考えることなどできない。つまり、避難できなくても関係ないという無責任な論であり、見殺しにすると言っているに等しい。このような姿勢で、次々原発を再稼働させるのは、まさに犯罪である。能登半島地震の震源地の近くに建設予定だった、珠洲原発を建てさせなかった住民たちの闘いに私たちは救われた。
原発事故から13年、今も苦しみは続いている。すべての原発を止め、廃炉にする以外に道はない。汚染水を海にばらまき、原発事故の二次被害、三次被害を引き起こすことを阻止しなければならない。勇気をもって裁判を闘っている青年達とともに。 (沢) -
2024.03.06
日本新聞
日本新聞 4559号記事 食料安保の確立は農家を守ることから
政府、食料・農業・農村基本法改「正」案と関連法案を閣議決定。食料自給率アップ、主要穀物の備蓄確保が大事。その点に何も触れない改悪
2月27日、政府は、食料・農業・農村基本法の改「正」案や関連法案を閣議決定した。
これまでの政府の方針は、有事の際に、花づくりをやめて野菜を作れ、と命令と義務を課すというものだった。これを平時から緊急時にも対応できるように、食料生産を増やし、輸出を増やすというのである。
2020年度の日本の食料自給率は、カロリーベースでたったの37.6%である。東京の自給率はなんと0.49%にすぎない。大問題だ。それなのに何故、輸出を増やさなければならないのか。日本の農家がもっと生産できるなら、それを実現し、食料自給率をあげるべきだが、そうはしない。あくまでも輸入相手国との関係を重視している。
そもそも、なぜ日本の食料自給率がここまで下がってしまったのか。
戦後、敗戦国日本はアメリカの占領下に置かれた。アメリカの農産物輸入の増大、そのためのパン食や肉食への移行で、食の安全保障を量的にも質的にも握られることになった。
今も同様で、食の安全保障をアメリカに握られている状況である。何十年も前に、“食料自給率をまずは45%にする”という目標が掲げられた。今では目標さえ出さず、自給率は下がり続けている。
日本の農業を抜本的に立て直す時
ウクライナ戦争、イスラエルのガザ無差別爆撃など、紛争が絶えない中で、食料安保の問題は深刻だ。このような中、中国は、14億の人口が1年半食べられるだけの穀物を備蓄する方針を出した。日本はどうか。コメを見ても、1.5ヵ月か2ヵ月分しかないのである。だから日本は、世界で一番先に餓死者が多数出て、日本という国が滅亡の危機に瀕する、とさえ言われている。“日本が無くなる前に行っておこう”と日本を訪れる外国人観光客もいる、これが実際だ。
食料自給率をあげることは、国の存亡に関わるくらい、重要な問題なのである。
改「正」案では、食料安保を「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態」としている。そしてこの実現に取り組むことを目的に掲げた、というのである。
ではどうやって実現するのか、具体策が大事である。
1970年、農水予算は1兆円、軍事費の2倍近くあった。ところが50年以上経っても2兆円。軍事費は5年間で43兆円にするという。資材、飼料、燃料は暴騰し、農産物の販売価格は上がらず、農家は悲鳴を上げている。やむなく離農する農家も後を絶たない。こうした農家を具体的に支援し、後継ぎを守れるようにしなければ、野菜やコメを作る農家がいなくなってしまう。まさに危機的状況である。
大企業は農業をビジネスとしかとらえない。将来の食の確保のためにと、昆虫食、培養肉、人口卵などが考えられ、すでに学校給食にコオロギが出されたり、パウダーにしてさまざまな食品に混ぜられようとしている。ゲノム編集のトマトの苗が全国の小学校に無料配布されたりしているが、これでは子ども達を守れない。
遺伝子組換えでない、という表示もできなくなり、ゲノム編集は始めから表示なし、無添加の表示もダメ、コオロギパウダーもわからないようにして食べさせるなど、全くひどいものだ。
農政を抜本的に変える時である。そのためには、安全な食べ物を作っている農家と消費者の連携を強め、遺伝子組換えなどの危険な食品を排除していく運動が求められる。
アメリカの消費者は信頼できる生産者を見定め、その作物を購入して支えている。そうした動きは日本でも確実に広がっている。そうした草の根の運動から、政治を変えていこう。 (沢)