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2024.12.25
日本新聞
新エネルギー基本計画 認められない原発最大限活用方針
4601号1面記事
新エネルギー基本計画
認められない原発最大限活用方針
市民の声を聞かず企業の言い分だけで決める審議会。「福島の事故を
なぜ教訓にしないのか」と憤る被害者。原発回帰で命は守られない
12月17日、政府は第7次エネルギー基本計画の原案を公表した。
東電福島第一原発事故以来、「可能な限り原発依存度を低減する」という文言を記し続けてきたが、今回はその文言は消え、「原発を最大限活用する」に変えられた。
この方針について、福島原発告訴団団長、被団連共同代表の武藤類子さんは、「大きな失望と怒りを感じる。どうして福島の事故が教訓にならないのか。福島の7つの市町村には誰もいない。何を優先すべきか、何を最も大事にすべきか、話し合わなければならない時だ」と静かに怒りを込めて語った。
原子力資料情報室の松久保さんは、「3つの点からお話する。
1つ目は公平性納得性の問題。国は業者の言い分しか聞かない。業者は苦しい苦しいという。苦しいから、国富の負担で原発を建設すべきだという。とんでもない。納得できるものではない。
2つ目は科学的かどうか。コストの検証では、原発は安い、再生エネは高いと言うが、実際ではない。原発の安全対策をきちんとすれば莫大なコストがかかる。
3つ目は、実現可能性。2023年の時点で、総電力量に対して原発は9%。それを2030年には20~22%にするという。そのためには原発が30基動いていないといけない。現在再稼働しているのは14基。全く無理な話だ」
実現不可能なことを「方針」と言っても全く実効がない。
最近起きたことを見ても、あまりにもひどい。
女川原発2号機が11月11日再稼働したが、ナットが緩んでいたと、あたかも作業ミスのように宣伝し、13日に再び起動させた。これは炉内の仕組みの問題で、重要だ。また、12月7日に再稼働した島根原発2号機は、原子炉の水位計が1時間、計測できないトラブルが起きた。水位がわからなくなるのは原発にとって致命的で、スリーマイル島原発事故でも福島原発事故でも水位の低下が大きな問題となった。
福島のような事故が起きれば日本は壊滅する
1キロワットアワーあたりのコスト試算では、
原子力 16.4~18.9円
事業用太陽光
15.3~36.9円
洋上風力18.9~23.9円
つまり、原発が一番安い電力だと言っている。
これは間違いである。
フランスで今年9月に稼働したフラマンビル原発3号機は、建設コストが132億ユーロ(日本円で2兆円以上)、イギリスで建設中のヒンクリー・ポイントC原発は、2基で310億ポンド(日本円で約6兆円~6兆5000億円)。福島第一原発事故以降、安全確保に係る費用は莫大に膨れ上がっているのである。
ところが当の日本では1基7000億円程度ですませようとしている。一般の住宅の耐震強度より原発の方がはるかに低い強度である。安全性軽視で、とにかく安く仕上げようという業者のいい加減さが見えてくる。
今年1月1日の能登半島地震でも、原発の避難計画が全くの絵に描いた餅であったことが明らかになった。家がつぶれてしまったり、崩壊している中で屋内退避など不可能。そして道路が陥没したりして寸断されている中で、屋外退避も出来ない。珠洲原発が住民の反対で建設されていなかったことと、志賀原発が稼働していなかったことが、不幸中の幸いだった。
政府はそれさえ教訓にしない。
原発マネーに群がり、政治と企業の癒着の結果、東電福島第一原発事故が引き起こされた。地球規模の大事故、放射能汚染であった。まだ、海側に放射性物質が流れていったが、これが島根原発や伊方原発なら、日本列島全体が放射性物質で覆われる大惨事になる。
原発からの撤退が急務である。 (沢)
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2024.12.18
日本新聞
第12回、311子ども甲状腺がん裁判 がんと被ばくの因果関係は明らか
4600号1面記事
311子ども甲状腺がん裁判
第12回口頭弁論
がんと被ばくの因果関係は明らか
勇気を持って裁判を闘っている原告の青年達をこれ以上、傷つけるのは許されない。
東電は原発事故の犠牲によるがんだと早急に認めよ
12月11日、東京地裁で「311子ども甲状腺がん裁判」第12回口頭弁論が行われた。
傍聴のためにたくさんの方々がかけつけた。89席の傍聴席の傍聴券に189名が並んだ。「これだけ多くの人がこの裁判を注目している、裁判官は真剣に審議し、判決を出してほしい」という思いが伝わってくる。東京周辺からだけではない。福島からも青森からも九州からも、全国からかけつけているのである。
この日は東電福島原発事故から13年8か月である。事故当時、生まれた赤ん坊が中学1年生か2年生になっている。実に長い年月が経過している。にもかかわらず、事故はいまだに収束せず、健康被害も拡大している。
裁判所前の集会では、福島で被ばくのことを口にすれば“風評加害”だと被害者が逆に攻撃される実際が報告された。絶対に間違っているが、これが現実だ。その中で、バッシングを覚悟しながら裁判を起こした6人の青年達は宝であり、守っていかなければならないと痛感する。
「あじさいの会」共同代表の千葉親子さんから「本日、原告の意見陳述の予定だったが、できなくなった。裁判所は何故、本人の声を聞かないのか。重い気持ちになった。石破政権は原発回帰に動いている。しかし、裁判を闘う青年達は、原発回帰の波を押し返してくれていると思う。これからも一生懸命に応援していきましょう」と訴えた。
郡山から避難している松元徳子さんは「この裁判は必ず勝ち抜かなければならない。福島第一のような事故を起こせば、必ず私たちのような避難者が出る。甲状腺がんだけではなく、病気で苦しむ子ども達が必ず出ます。やはり国を動かさなければならないし、東電は許されない。汚染水を処理したと海洋に流すことは許してはいけない」と訴えた。
井戸弁護団長からは「前回我々は10本以上の準備書面を出した。今日は被告側がそれに答える期日です。結果としては反論の書面はほとんど出てこなかった。
こちらの主張の大きな柱は、ひとつは甲状腺がんになった子ども達の病理です。大部分の子ども達にリンパ節転移がある。一部には遠隔転移まである。どうして潜在がんだと言えるのか。それに対してどう反論してくるのか注目していたが、反論は出ていない。
二つ目は、被ばく量。黒川先生に詳細に指摘していただいて、UNSCEARが言ってるような少ない被ばく量ではない。5通の意見書を出した。それに対してどう反論してくるかが注目ポイントであった。これについての反論もない。次回までには反論を出し尽くすと言っているので、次回に注目してください」と説明された。
「県民健康調査」のいい加減さ、100ミリ閾値論の偽り
今回の裁判では、福島「健康調査」のいい加減さが明らかになった。線量が多かった地域ほど甲状腺がん患者の割合が多い、これは実際である。検討委員会でも「甲状腺がんの原因は原発事故だ」という委員も数人いたが、その意見は取り上げられず、あろうことか“健康被害は生じていない”と報告されたのである。
また被告・東電は「100mSvを下回る被ばく線量では発がんリスクの増加は確認されていない」と主張したが、これは明らかに間違っている。
報告集会で、初めて裁判を傍聴したという立教大学の大学院生の斉藤さんは、「8月に勉強会に参加し、母も被ばくの問題に関心があったということもあり、参加した。健康被害を被害者が語れない状況、語れば自己被害にされるのはひどい。全国各地から来ている支援している皆さんに学びたい。たくさんの方が集まって、裁判所に圧力をかけられた。傍聴して、原告の側は科学的な根拠に基づいて、理性的に述べていると思った」と感想を述べていた。
若者がその感性で、何が真実か見抜いていくのが頼もしいと感じた。
次回13回口頭弁論期日は来年3月5日(水)です。一人でも多くかけつけて、正しい判決を求めましょう。 (沢)
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2024.12.11
日本新聞
消費者に安全な食品がわかる表示を
4599号1面記事
消費者に安全な食品がわかる表示を
遺伝子を操作するゲノム編集は表示不必要、「無農薬」「遺伝子組換えでない」を表示も禁止。現行の企業優先の食品表示は抜本的改正を
食品表示はとても大切である。安全なものを食べたい、子どもに食べさせたいと思っても、表示がきちんとしていなければ、消費者は選びようがない。
残念ながら、日本の食品表示が正しくされているとは言い難い。それどころか、誰を守るための表示なのかと言いたくなる状況がある。
たとえばパンなどの表示で、小麦粉は「国内製造」。これは一体何?と考えさせられる。サラッと見ると、「国内ならいいか」と思わされる。しかし「国産」とは書かれていない。小麦粉「国産」なら、国内産の小麦を国内で製粉したもので、「国内製造」は国内で小麦から小麦粉にしたというだけで、国内産の小麦かどうかは書いていない、ということになる。
ひどいごまかしだ。国内産だとはどこにも書いていない、そう思った消費者が悪い、というやり方だ。
食品表示の問題点
日本ではゲノム編集食品の表示はいらないことになっている。遺伝子組換えは、遺伝子のすきまに別な種の遺伝子を付け加えるやり方。たとえば、トウモロコシに害虫に強くなる遺伝子を付け加えると、害虫に強いトウモロコシができる。そのトウモロコシを食べると虫が死ぬ。では人間には影響がないのか、という問題がある。除草剤の影響を受けない大豆なども遺伝子組換えだ。
日本の食品表示では、遺伝子組み換え作物を使った加工品については、表示義務はない。表示義務があるのは、原材料の上位3位までのもの、5%以上のものに限る。それ以外は表示しなくていいことになっている。日本の食用油にはほとんど、遺伝子組換え菜種が使われているのに表示はない。
そして、ゲノム編集食品については、最初から“表示しなくていい”だった。理由は遺伝子をカットしているだけで、組み換えていないから。たとえばサバは攻撃性の強い特徴があるから、お互いに攻撃しあって、数が減ってしまう。それを防ぐために、攻撃性の遺伝子をカットし、数を確保する。また、サケの食欲抑制遺伝子をカットし、巨大なサケを作っている。明らかに遺伝子操作である。カットする部分を誤ってカットしてしまうという大変な問題も起きる。EUではゲノム編集も遺伝子組換えと同一視している。
人間の健康にどのような影響を与えるのかを研究するのではなく、どうやったら儲かるかに焦点が当てられている。調味料や子どものおやつに遺伝子組み換えの食品が使われているのに、表示されていない。
さらにひどいことに、「無農薬」表示が禁止されている。理由は「風に乗ってくる農薬は防げないから、完全に無農薬などと言えないから、消費者が混乱する」と言うのである。無農薬の表示がないから、農薬や化学肥料を何回もかけたものも、農薬や化学肥料を使わないで栽培しているものも区別がつかない。
また、「遺伝子組換えでない」という表示もできなくされた。分別生産流通管理をしているか、第三者分析機関などによる分析など、遺伝子組換え農産物の混入がないことを確認できる方法がなければ、「遺伝子組換えでない」と表示できないのだ。家族経営の農家がこのようなことができるわけがない。安全な食品だと表示することにだけ、厳しい規制をかけている。その結果、消費者は何が安全なのか、何が遺伝子組み換えなのか、見分ける権利も奪われている。実に理不尽である。
正しい情報を知り、安全なものを選ぶ権利は全く当然の権利である。消費者と生産者の顔の見える関係が大切だ。同時に実際を知ることができるように、食品表示の抜本的な改正を求める。 (沢)
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2024.12.04
日本新聞
米軍事故・事件多発、日米地位協定見直しを
4598号1面記事
米軍事故・事件多発、日米地位協定見直しを
相次ぐ米軍機不時着は大事故につながる危険。絶えない婦女暴行事件。
「抑止力」ではなく「有事」引き起こす横須賀への米原子力空母入港
11月22日、米原子力空母ジョージ・ワシントン(GW)が米海軍横須賀基地に入港した。インド太平洋地域を管轄する第7艦隊隊長は「GWは米国と日本に提供できる最も先進的で最大の海上能力を持つ」と述べた。
原子力空母は「動く原発」とも呼ばれている。原子炉を搭載して、その核分裂反応による熱で運行する航空母艦。原理は原子力発電所の原子炉とほぼ同じ。つまり、ふだんから環境中に放射性物質をまき散らし、事故が起きれば取り返しのつかない大きな被害となる。しかも戦闘機と戦闘員を大量に運べる戦争のための空母である。
このような危険なしろものを日本の海に配置したら、近隣諸国が強い警戒心を示すのは当然である。「抑止力」などではなく、「有事」を引き起こす要因となることは明らかである。
米軍ヘリ不時着、女性暴行、米軍による被害相次ぐ
8月
米軍厚木基地から飛び立った米ヘリが海老名市内の田んぼに不時着
10月10日
神奈川県茅ケ崎市の海岸近くの国道に米軍ヘリ不時着
11月14日
米軍普天間基地所属ヘリが辺戸岬近くに不時着
これほど頻繁に米軍機が民間地に緊急着陸する状況は異常である。いつ大事故が起きるか全くわからない状況である。
そしてもう一つは米兵による犯罪である。特に、女性に対する暴行事件は日常的に引き起こされている。その多くは米軍によって隠され、基地が所在する自治体にも報告されない始末である。声を上げられない女性も多く、日本全国でどれだけの被害があるのか、わからない状況である。日本人の女性がどんな目にあおうが、問題にすらしない、そして日本政府は抗議すらしないのである。
11月20日、横浜地裁で第5次厚木基地爆音訴訟の判決が言い渡された。不当判決である。損害賠償訴訟は一部認められたものの、飛行差し止めは米軍・自衛隊ともに退けられた。爆音を解決するには飛行差し止め以外ない。それが認められなかったのは、基地周辺住民の権利が侵害され続けることであり、決して認められない。
この裁判は、1976年9月に第1次訴訟提訴以来、48年が経過している。住民の願いは「平和で静かな空を取り戻したい」という、当たり前の願いである。
米軍基地があることによって、基地周辺住民の権利は脅かされている。
根源に日米地位協定がある。
米軍基地がある国では、それぞれ地位協定が定められている。下の表から、いかに日本が無権利かよく見えてくる。
ヨーロッパに限ったことではない。フィリピンでも、国内法が原則適用され、訓練・演習にはフィリピンの環境法令の遵守義務が明記され、米軍の有害物質取り扱いにはフィリピン側の許可を必要とする。
相次ぐ事件や事故は、日米地位協定に示されているように、日本が全く無権利であることによるところが大きい。日米地位協定の抜本的見直しなしに、基地問題の解決はない。そして命を守ることもできないのである。 (沢)