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2025.01.29
日本新聞
軍備増強は抑止ではなく戦争への道
4606号1面記事
軍備増強は抑止ではなく戦争への道
日米軍事同盟強化は自衛隊が米軍の指揮下で動くこと。戦争抑止は平和外交でこそ実現できる。軍事に金をかけず貧困層の支援第一に
1月21日、米ワシントンで日米豪印4か国の戦略対話(QUAD)外相会合が開かれた。トランプ米大統領就任後初の会合だ。QUADは中国に対抗するためのもので、「力または威圧により現状変更を試みるいかなる一方的な行動にも強く反対する」という。では日米豪印で軍事同盟を組み、中国に対抗し、合同軍事演習を繰り返すのはどうなのか。「力または威圧」に当たらないのか、はなはだ疑問だ。
岩屋・外相は米国務長官と会談し、「新たな高みに日米同盟を引き上げることで一致した」と発表した。新たな高みとは一体どのようなことなのか。
翌2日、中谷・防衛相は沖縄県与那国町で糸数町長と会談した。中谷・防衛相は「敵のミサイル攻撃を受けた際に住民が避難するシェルターの整備、政府と自治体による共同訓練などに、最大限努力する」と語った。
与那国島は日本で最も中国に近い島である。与那国島の島民は歴史的にも平和を愛し、争いとは無縁に生きてきた。他国の国民とも平和的に友好を重ねてきた。「敵」とは一体どこのことか。
アメリカが喧伝する「台湾有事」を理由にして、アメリカの要請どおりに軍事費倍増を決めてしまった政府。南西諸島にはミサイル基地がどんどん造られ、ミサイル、弾薬が配備されている。そして「有事」の際には島の人たちはどこに逃げるのか、シェルター整備、避難訓練と、危機感を煽っている。
抑止力、実は戦争へと向かうもの
“戦争にならないようにするために”と、軍備増強が行われている。アメリカの安全保障専門家からは、「日本は防衛費をGDPの3%まで増やすべきだ」という主張が出ているという。日本はどこまでアメリカの要求に応えようとするのか。日本の経済はすでに破たん状況である。GDPに対する政府債務残高の比率は250%を超えているのだ。
世界の中で、30年以上労働者の賃金が上がっていない国は日本以外にない。数字上いくらか賃金が上がっていても、物価の上昇率を下回っているため、実質賃下げが続いている。
日本の大企業はバブル期を超える利益を上げ、内部留保金も過去最大を更新している中で、働く者は貧困にあえいでいる。給食以外にはろくにご飯を食べられず、冬休みや夏休みには給食がないため、ひもじい思をしている子ども達がいるのが、日本の現実なのである。
このような中、莫大な予算を、防衛省は湯水のように軍事費に費やしている。ミサイル研究開発、イージス・システム搭載艦建造、無人での攻撃能力推進、宇宙システム管理、防衛通信衛星打ち上げ、弾薬・火薬などの新設(全国12施設に57棟の火薬庫新設決定)等々、防衛ではなく、明らかに攻撃のための軍備増強である。
もはや南西諸島だけのことではない。日本全国に、米軍の戦略を遂行するための基地が造られている。米軍の戦略は、日本と中国を戦わせ、高見の見物ということだ。アメリカは経済的にももうすぐ中国に追い抜かれる、それを避けるために中国にダメージを与えたい。そのために自衛隊はじめ、日本の若者が危険にさらされるのである。
軍備増強してアメリカと歩調を合わせることは抑止力ではない。「有事」を引き起こすことである。南西諸島の島々の住民を命の危険にさらすことだ。
軍備増強ではなく平和外交で、アジアの平和・友好をかち取ることが、戦争を止める最良の道である。軍事に金をかけるのではなく、貧困に苦しんでいる日本に住む人々の救済に予算を使うべきである。野党はそのために全力を尽くす時である。 (沢)
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2025.01.22
日本新聞
靖国合祀取り消し訴訟 最高裁が韓国人遺族の上告棄却
4605号1面記事
靖国合祀取り消し訴訟
最高裁が韓国人遺族の上告棄却
侵略を解放と偽る靖国神社に朝鮮半島出身者2万人以上を合祀。戦犯との合祀は人権侵害と訴える遺
族。侵略の事実さえ認めない政府
第2次世界大戦で旧日本軍に徴用されて戦死した朝鮮半島出身者2万1181人が靖国神社に合祀されている。これに対して韓国籍の遺族らが、2013年に「靖国神社合祀取り消し訴訟」を起こした。「朝鮮半島を侵略した加害者とともに合祀されるのは耐えがたい屈辱と苦痛だ」という訴えは、至極もっともなものである。
1959年、国が提供した戦没者の名簿を基に、靖国神社に合祀された。遺族は「家族の情報を国が無断提供したことは、プライバシー権の侵害で、政教分離の規定にも反する」と訴えたのだ。
一審二審ともに遺族側の敗訴となった。遺族らは上告し、上告審が最高裁で行われ、1月17日、最高裁は遺族側の上告を棄却した。
最高裁は「除斥期間」(不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する)が過ぎた後の提訴だとして上告を退けた。しかし、韓国政府に対して靖国神社の資料が送られたのは1990年代後半、あるいは2000年になってからであり、除斥期間は該当しない。最高裁判決は、原告の権利と利益侵害については判断を示さなかった。判決を聞いた原告の中には「あきれて言葉が出ない」と涙ぐんだ人もいたという。「父親が亡くなったことも、合祀されたことも全く知らされなかった。合祀には、遺族の合意を得るのが当然。父の名誉のために、名前を抜いてほしい」という遺族の訴えは当然の要求である。
最高裁の裁判官4人中3人の多数で、遺族側敗訴となったが、三浦裁判官は反対意見を述べた。国が靖国神社に情報を提供し、合祀に至ったことで三浦裁判官は「憲法が定める政教分離規定に反する可能性がある。合祀を望まない韓国人遺族がいることも想定しながら合祀を推進しており、国の責任は極めて重い」と指摘している。また、除斥期間を理由に上告を退けたことに対して「被害者にとって著しく酷であり不合理」とした。
「国に二度殺された」と憤る遺族たち
日本は朝鮮半島に侵略し、植民地支配した。第二次世界大戦では、植民地なのだからと、戦場にかり出したり、炭鉱やダム建設などのために強制連行し強制労働させた。「朝鮮人も天皇の赤子だから、お国の為に尽くせ」と、最も危険な戦地へ向かわせられた。徴用工はろくな食事も与えられず、酷使され、命を奪われた。屈辱の日々を送らされたのである。
加害者のA級戦犯とともに合祀されることは、国に二度殺されることだ。決して受け入れられないと訴えている。
靖国神社はかつての侵略戦争を徹底して美化している。靖国神社の中にある遊就館では、ゼロ戦などが展示され、かつての戦争を讃えている。侵略戦争などという文字はどこにもなく、「アジアの国々を解放するための戦争であった。大歓迎された」とデマを流している。
無理やり日本の戦争にかり出され、いつどこで亡くなったのかも知らされず、いつの間にか、加害者である戦犯と一緒に日本名で祀られていた、実に屈辱的である。司法も政府と一体で、違法性を認めようとしない。このような理不尽に断固抗議する。
日本政府は侵略戦争、植民地支配での加害の事実を認め、謝罪しなければならない。
今、日本がやるべきことは軍備増強ではなく、過去の加害の歴史を認め、そこからアジアの平和、友好、連帯への一歩を踏み出すことである。アメリカ追随するのではなく、アジアの経済圏を作り、共に発展する未来を作り出すことである。
朝鮮半島出身者の靖国合祀はすぐさま取り消すべきである。 (沢)
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2025.01.15
日本新聞
辺野古基地建設強行、沖縄予算削減の政府
4604号1面記事
辺野古基地建設強行、沖縄予算削減の政府
沖縄県の抗議を無視して軟弱地盤への基地建設続ける政府。在沖米兵による性暴力事件続発、「事件は小さな一側面」と開き直る米司令官
沖縄に対する政府のやり方は目に余る。沖縄県民は辺野古新基地反対の意思表示を選挙で、県民投票で繰り返し明確に示してきた。基地反対は沖縄県民の民意である。
特に、辺野古新基地は極度の軟弱地盤もあり、基地建設は不可能である。マヨネーズ上の地盤に基地を造るなどできないことは、専門家でなくてもわかることだ。
ところが政府は昨年12月28日から軟弱地盤改良工事を開始した。海面下最大70メートルまで、約7万本のくいを打ち込む計画だ。しかし軟弱地盤は最深で90メートルに達することがわかっており、くいが打てない部分は一体どうするのか。工事完了は2033年4月ごろ、米側への引き渡しは2036年ごろの予定だというが、無理な話である。また、総事業費は今の段階で約9300億円というが、これも膨れ上がるだろう。時間がかかろうが、事業費が膨れ上がって喜ぶのは大手ゼネコンである。大体にして、米軍の基地を造るのに、なぜ日本が金を出すのか。米軍が日本を守ってる?そんな実際は全くない。
政府は今年度の沖縄予算を2642億円に引き下げた。2024年度当初と比べて36億円もの減額だ。減額は4年連続である。玉城知事は、基地反対を掲げて当選し、その姿勢を貫いている。だから沖縄の予算を減額し続けているのである。これまでも、基地反対の知事の時は常に予算を減らし、基地賛成、容認の知事になると3000億円突破と予算を増やす、露骨なやり方を取ってきた。いわば兵糧攻めである。
このような中でも、沖縄県民は基地のない平和な沖縄を守りたいと訴えている。玉城知事は軟弱地盤工事強行に「看過できない強硬姿勢が続いている」と批判し、工事中止を訴えている。
米兵による性暴力に断固抗議する
米軍は日本を守るどころか、米兵がいることで、事件や事故が多発している。
昨年は沖縄の米兵の性犯罪の逮捕・書類送検が4件もあった。
玉城知事は「激しい怒りを覚える。県民に大きな不安を与えるものであり、断固とした対応を求める。女性の人権や尊厳をないがしろにする悪質な犯罪だ。日米両政府に強く抗議する」と語っている。「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」共同代表の高里鈴代さんも「事件が起きても、米軍は何も対応してこなかったということだ」と事件続発に憤っている。
一方、米軍嘉手納基地のエバンス准将は「遺憾だ」としながら、「事件は小さな一側面だ」と言っている。被害者の女性にとって、人生を左右する大きな事件である。被害者の女性は「外を歩くのも怖い。命の危険も感じた」と話している。被害者の16歳未満の少女の、傷ついた心は元に戻らない。少女に性暴行を加えた米空軍兵長は懲役5年の有罪判決を受けたが、解決とは言えない。
この事件が報じられたあとも、性暴力事件が引き起こされている。政府は米軍に対して「綱紀粛正を求める」と繰り返すだけで、断固抗議する姿勢は今回も見られなかった。
こうした事件は明らかになったものだけであり、もっと多くの女性が被害にあっていると思われる。そして沖縄だけではなく、全国の米軍基地が存在する地域で、事件は起きているのだ。
事件が起きても、警察は県にも地元自治体にもすぐに知らせることもしない。事件から3カ月、あるいはそれ以上経ってからようやく知らせる、マスコミにも知らせないという実態がある。日米地位協定に見る不平等な日米関係がまかり通っている。
米軍基地は造るのではなく、撤去すべきである。政府は日本に住む人の人権を守らなければならない。 (沢)
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2025.01.08
日本新聞
えん罪を防ぐため再審法の早期改正を
4603号1面記事
えん罪を防ぐため再審法の早期改正を
捜査機関によるねつ造を検証対象から外した袴田事件最高検検証は全く不当。当事者への聞き取り調査、第三者を入れた検証が不可欠
昨年12月26日、最高検が袴田事件を検証した報告書を公表した。
捜査機関による「3つのねつ造」についてどのような検証結果なのか、そこが一番肝心なことである。ところが最高検は、「現実的にあり得ない」として、ねつ造について検証しなかったのだ。これでは検証とは言えない。
袴田さんの無罪を認めながら、「ねつ造と断じたことには強い不満を抱かざるを得ない」と全く理に合わない畝本検事総長の談話とうり二つである。ねつ造でないと言うなら、公判の中で、ねつ造ではない証拠を出して論議すべきだが、それもしなかった。
原告側は、「5点の衣類」「衣類の一部の切れ端」「自白調書」がねつ造であることを科学的に説明している。
「5点の衣類」は、徹底捜査した後に、事件から1年2カ月も経ってから味噌樽から「発見」されるという不自然、そして味噌にそれだけの長期間浸かっていれば黒くなるはずの血痕が、鮮やかな赤色であることの不自然、さらに、ズボンは袴田さんにははけないものだった。「5点の衣類」がねつ造なのだから、切れ端もねつ造だ。
自白の強要は、取り調べの録音テープから明らかである。袴田さんがいくら「やってない」と言っても、「お前がやったんだ」と連日、長時間にわたって問い詰めて自白に追い込んでいったのである。
再審では反論もせず、静岡地裁判決に対しての、「ねつ造については不満」という畝本談話も、最高検の「科学的な根拠を伴っているとは評価しがたい」という非難も、到底受け入れられない。科学的でないのは検察側ではないか。
58年間も殺人犯のえん罪を着せられ、死刑囚として苦しめられてきた袴田さんに真摯に向き合おうという姿勢は全く見られない。袴田さんは毎日、死の恐怖にさらされ、拘禁症を患ってしまった。袴田さんの人生は、無罪となった今も取り戻すことは出来ない。その実際をどうとらえるのか。
袴田事件の検証を
やり直すべき
最高検は、無罪判決から3カ月足らずで、ねつ造の事実さえ検証しようとせず、報告書を出した。これは検証とは言えない。第三者を入れることもせず、当時の捜査関係者の聴取もしていない。えん罪と向き合う気は全くないのである。
第三者を入れ、関係者を聴取してやり直すべきである。
そして再審法の改正を早急に行い、すべてのえん罪を晴らさなければならない。狭山事件の石川一雄さんは、61年もえん罪を着せられ、再審を棄却され続けている。袴田さん以外にも、死刑囚としてえん罪を着せられて拘留されている人のえん罪を晴らさなければならない。
1992年2月20日、福岡県飯塚市で小学1年の女の子2人が通学途中に誘拐され、暴行されて殺され、山中に放棄された。久間三千年さんが逮捕された。久間さんは無実だと言い続けた。しかし2006年10月8日に死刑判決が確定。久間さんは弁護士と「再審のための弁護の打ち合わせ」として、福岡拘置所で面会していた。法務省は久間さんの再審請求の意思を承知していたのだ。また、足利事件の菅家さんと久間さんのDNA型鑑定はMCT118型だが、足利事件ではそれがおかしいと、最新のDNA型鑑定を行うことになった。それが報道されたのが2008年10月17日。1週間後の10月24日に法務省矯正局は法務相に死刑執行の上申書を起案。その日に法務相が捺印、4日後の10月28日に死刑執行。異例のスピードで死刑執行。しかも証人への証言の誘導も明らかになっている。
この飯塚事件は、第二次再審請求が棄却され、今も闘いは続いている。
冤罪を晴らすための再審が速やかに行われるよう、再審法の早急な改正とともに、死刑制度の廃止を求めるものである。 (沢)