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2025.02.26
日本新聞
自給率38%、食料を守らない国に未来なし
4610号1面記事
自給率38%、食料を守らない国に未来なし
農家が農業を続けられ、消費者が安心して農産物を買える対策を講じるのが政治の役割。「時給10円で
生きられるか」米農家の怒りの叫び
“日本の農家は過保護にされている”などと言われて、あたかも農家が潤沢な補助金をもらって悠々自適に暮らしているように宣伝されて久しい。実際はどうだろうか。
日本の農家の平均年齢は68歳、しかも後継ぎのいない農家が多い。自分の子どもに「農業をやってほしい」と言えないのだ。農業をやって食っていけないからである。
今、米の値上がりが宣伝されているが、今ようやく30年前の水準に戻ったと言える。米を60キロ作るのに経費は1万5000円はかかる。1990年には2万1000円を超えていたが、その後、米価は下がり続け、1万1000円台~1万6000円台を上下し続けてきた。米農家は赤字経営を強いられた。経費を差し引いた米農家の収入は年たったの1万円、労働時間で割ると、なんと自給10円にしかならない。こんな統計が発表された。これではとても生きられないから、米以外のもので収入を得る方法を農家は必死で考えて生きてきたのである。先祖代々の土地を何とか生かしたい、そんな思いで米作りを続けてきたのである。
今ようやく2万3000円台になったところだ。そうなると今度は“米が高値で消費者は買えない”と宣伝し、“農家だけがいい思いをしている”と、農家と消費者の対立を煽る。
責任は政治にある。農家に米や野菜を作って生きていける価格を保障する、同時に消費者に安心して食料を買える価格を設定する。その差額を農家に保障するのが国の仕事である。
2009年、当時の石破農水相は「生産調整を廃止に向けて緩和していき、農家に必要な生産費をカバーできる米価水準と市場米価の差額を全額補てんする。それに必要な費用は3500億円~4000億円で、生産者と消費者の双方を助けて、食料安全保障に資する政策は可能である」と方向性を出した。
首相になった今、これを実行すべきである。軍事予算8兆7000億円である。これをやめれば3500億円~4000億円はすぐにでもねん出できるというものである。
若者が希望を持って従事できる農業の確立を
日本の食料自給率はたったの38%である。6割以上を輸入に頼っている。ひとたび、ウクライナ戦争のようなことが起きると、日本は最も打撃を受ける国だと言われている。世界のどこよりも大量の餓死者を出し、国の存亡に関わるというのである。そうならないように、食料を自国で自給できるようにする、これが当然の政策だと思うが、日本の農政はそうではない。
・農業予算が多すぎる
・飼料米補助をやめよ
・低米価に耐えられる構造転換
・備蓄米を減らせ
・食料自給率を重視するな
これが政府の方針だというのだから驚く。何も実際に即していない。
1980年に農林水産予算額は3兆5800億円だったのが、2024年には2兆2700億円と大幅に減っている。一方、軍事予算は1980年に2兆2300億円だったものが、2024年には7兆9400億円まで増え、農林水産予算の3.5倍になり、今後もどんどん増額される。
農家は高齢化し、食料を作る人が減っていく中で、軍事費を増やしてどうやって生きていけるというのか。都市に人口が集中し、農漁村は過疎化するばかり。耕作放棄地がどんどん増えていく。これはすべて政治の責任である。
農林水産業など一次産業に力を入れ、地方に産業を興す。そうして雇用を創出して、地方で暮らせるようにする。それが今、早急に求められている。
3月30日、東京・青山で、農政の転換を求めてトラクター行進が行われる。元農水相の山田正彦さんが事務局として尽力している。農家を守ることは食を守ることであり、消費者を守ることだ。食を守ること、命を守ることを第一にする農政の大転換を求める。 (沢)
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2025.02.19
日本新聞
福島第一原発 汚染水の空タンク解体開始、作業員被ばく
4609号1面記事
福島第一原発 汚染水の空タンク解体開始、作業員被ばく
タンク解体作業で30代作業員が内部被ばく。鹿児島では原発複合災害訓練実施。原発からの撤退、事故
炉遮へい、汚染水発生防ぐ対策を
2月14日、福島第一原発の汚染水タンク解体が開始された。
2023年8月から、事故炉から発生した汚染水の海洋投棄が実施された。ALPS処理水とは言っても、トリチウムは除かれていないし、他の放射性物質も取り除かれてはいない汚染水である。海洋投棄反対の漁業者はじめ多くの声を無視しての強行である。
福島第一原発事故炉からの汚染水保管タンクは1000基を超えている。これまで、10回、タンク78基分を投棄した。その空になったタンクのボルトを外したり、ガスバーナーで切断したりし、細かく切って、コンテナに入れて原発敷地内の北側に保管するという。
放射性物質は拡散しないのか、作業員の被ばくはどう防ぐのかと疑問が湧く。1日目の14日はタンクのフタを5つに分けて撤去する作業。作業後の検査で、30代の作業員が放射性物質に汚染され、内部被ばくが確認された。
事前に予測できたことだ。21基のタンクを解体するというが、作業員の被ばく対策をやれないなら、作業継続はできないことだ。
タンク解体開始と同じ14日、鹿児島では地震に伴って九州電力川内原発で重大事故が起きたという想定で、避難訓練を実施したという。国と鹿児島県、地元市町、九電など294機関、住民約4800人が参加しての大訓練。
しかし、重大事故の訓練を物々しくやるより、原発からの撤退を考えた方がいい。東電福島第一原発事故は世界を震撼させた大事故である。事故後、ドイツは原発ゼロを実現した。ところが事故に直面した当の日本は、あろうことか今、原発を「できる限り活用」と原発推進策に戻っている。今も事故処理の見通しさえ立っていないというのに。
科学は人類の発展のためにあるべきで、発展とは破壊ではなく生成でなければならない。将来の世代に、核汚染という解決不能の問題を負わせる原発は、果たして科学と呼べるのか。
市民科学者が重要な提言を示している。
「汚染水発生ゼロめざし、長期遮へい管理求める」原子力市民委員会
東電は、21基のタンクを解体した跡地に燃料デブリの一時保管施設を建設することを検討しているという。放射性物質を敷地内のあちこちに分散する、これは汚染を拡散することではないだろうか。総量8トンもある燃料デブリは現在0.7gを試験的に取り出して調べている段階。超高線量で気の遠くなるような工程であり、取り出しは不可能である。
原子力市民委員会はすでに昨年3月、国と東電に提言書を提出している。
1.福島第一原発の廃炉に関わる「中長期ロードマップ」の「汚染水対策」の目標に「汚染水発生量ゼロ」を加え、その達成時期を明記すること
2.「汚染水発生量ゼロ」実現のために、地下水流入を防ぐ原子炉建屋止水を最優先項目に位置付けること、及び建屋止水後の燃料デブリの冷却のために、循環注水冷却システムを現在の開ループ方式から閉ループ方式に変更すること
3.「燃料デブリ取り出し」は、現状では技術的に極めて困難なこと、また、住民と作業員の被ばくリスクが大きいことから、「取り出し規模の拡大」を凍結し、現在の位置で長期遮蔽管理すること
実に明確である。原発事故に対しては、「止める、冷やす、閉じ込める」が原則だと言われている。今、政府・東電が行っているのは、「閉じ込める」ではなく「拡散する」である。原子力市民委員会が提言しているように、汚染水をこれ以上増やさないことが大切だ。建屋への地下水流入を防がず、汚染水を増やし海洋投棄、これでは汚染被害を拡大する一方だ。こんなやり方では、作業員の被ばく、住民の被ばくも拡大する。
政府・東電は汚染水の海洋投棄を即、中止し、事故炉の長期遮へい措置へと方針を変更すべきである。 (沢)
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2025.02.12
日本新聞
政府は子宮頸がんワクチンの積極的勧奨の中止を
4608号1面記事
政府は子宮頸がんワクチンの積極的勧奨の中止を
東京・名古屋・大阪・福岡でワクチン被害者120名超の裁判闘争続く。
国と製薬会社2社は「病気の原因はストレス」と被害を認めぬ暴挙
2月3日、東京地裁でHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)薬害東京訴訟の原告側反対尋問が行われた。
HPVワクチン薬害訴訟とは
HPVワクチンは2010年末頃から、接種費用の公費負担が行われ、国がワクチン接種を積極的勧奨した。ワクチンは「サーバリックス」(グラクソスミスクライン社・英国)と「ガーダシル」(MSD社・米国)だ。中学生、高校生の女子300万人以上に接種した。ところが接種者に被害が次々表れた。全身の痛み、運動障害、認知機能障害など多岐にわたり、1人の人にいくつもの障害が出て、大変な苦しみを背負い、日常生活も困難になる。学校にも通えない、車いす生活を余儀なくされる人も多い。ワクチンに対する不信が高まる中、国は2013年には積極的勧奨を中止した。
2016年7月に、東京・名古屋・大阪・福岡の4都市の各地方裁判所に被害者たちは、国と2つの製薬会社を訴えて訴訟を起こした。現在、原告は120名を超えている。
そもそも子宮頸がんはワクチンを打たなければならないものなのか。
子宮頸がんの原因はHPV(ヒトパピローマウイルス)だとされているが、そのウイルスに感染しても2年以内に9割が自然排出されるという。子宮頸がんにかかるのは感染者のわずか0.15%だという。まして、子宮頸がんの死亡者は若い人はごく少ない。定期的に検診を受ければ、早期発見により治癒率は高まる。
ワクチン接種による被害の方が深刻である。製薬会社と政治家の癒着も指摘された。儲けの犠牲にされた少女たちは「私の人生を返してください!」と訴えている。
ワクチンを打つ前は、元気な女の子達だったのである。これからの人生に夢を持ち、将来何になろうかと思いを巡らしていたのである。ところがワクチン接種で人生が一変し、夢を断たれてしまったのだ。
にもかかわらず、2022年4月、国は「専門家が“安全性に重大な懸念はない”と言っているとし、積極的勧奨を再開した。小6~高1女子を対象に、公費での定期接種を再開したのである。
2013年にワクチン接種を始めてから被害者が急激に増え、2013年に積極的勧奨を中止してから2022年の再開までは減り、再開後26カ月で被害の新規受信者数は308人にのぼっている。(現在は全国で545人以上)
ワクチン接種と被害者数とは明らかに相関関係がある。
心因性を主張しワクチン被害を否定する国と製薬会社
2014年に厚労省は被害者の症状の原因を「心身の反応・機能性身体症状」と発表した。ワクチンが原因ではなく、ストレスなど心因性だとしたのだ。これによって被害者は2次被害を受け、一般の病院でも診療を受けられなくなった。ひどい仕打ちである。
2月3日の東京訴訟でも、原告側証人の角田郁生医師が「子どもの時にどういう環境にあったかが影響する。汚い環境にあると病気にかかりやすい。両親が離婚して過度のストレスを受けていた人もいた。ワクチンと関係ない」と言うのを聞き、憤りを感じた。差別に満ちた発言だ。角田医師はマウスの実験をしたり研究室にいる人で、一人の患者も診療していない。自分が発表していることも「知らない」「わからない」と平気で言う。
「自分の上に5人の人間が乗っているような強い倦怠感」「スプーンでえぐられるような頭痛」「学校で意識をなくし、目を覚ました時、それ以前の記憶がなかった」
被害者の体験はあまりにも悲惨だ。それが今も続いている。良心的な医学者達は研究グループを作り、「HPV関連神経免疫異常症候群(HANS)」と被害を命名し、患者の診療を続けている。
これ以上被害を拡大しないために、政府はHPVワクチン接種をすぐさま中止すべきである。 (沢)
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2025.02.05
日本新聞
子どもの自殺最多の527人、深刻な事態
4607号1面記事
子どもの自殺最多の527人、深刻な事態
小中高の不登校は40万人を超え、毎年100人近い教員が自殺している。
子どもも教師も希望を持って生きられる差別反対の教育改革が急務
2024年の小中高生の自殺者数は527人で過去最多となった。
小学生 15人
中学生 163人
高校生 349人
これは実に深刻な問題である。
子どもは未来の日本を切り拓く大きな力である。本来、希望に燃えた存在だ。その子ども達が明日に絶望して、自らの命を絶つ、これは日本社会に未来がないことを示すと言わざるを得ない事態だ。
新聞報道などでは「コロナ禍以降高止まり。コロナで生活が変ったからだ」などと言われているが、果たしてそうだろうか。
原因として、「学校問題」が44%を占めている。実際、教師にしかられた直後に自殺したという子どももいる。同級生に壮絶ないじめにあっていた子どももいる。差別に押しつぶされて命を絶った子どもが多いと考えられる。
また、不登校も増え続けている。2023年度に不登校だった小中学生は34万6482人にのぼる。前年度に比べて4万7000人増、16%も増えている。高校生の不登校は6万8770人である。小学生の不登校は13万370人で10年前の5倍、中学生は21万6112人で10年前の2.2倍となった。
学校に行けば差別される、いじめられる、話ができる友達もいない、そんな子ども達の孤立した状況が不登校や自殺という結果を引き起こしている。
そして学校には、子ども達の苦しみを解決する力が全くない。それは教育現場で病んでいるのは、子どもだけではなく、教員も犠牲となっていることが示している。
毎年100人近くの教員が自殺している
自殺しているのは子どもだけではない。教師もまた、自殺に追い込まれている。実に毎年100人近くの教員が自殺しているのだ。
特に新任教諭が自殺へと追い詰められている。
2006年6月
新宿の小学校で23歳の新任女性教諭(23歳)が、毎日書類を書いてソファで寝る生活で、保護者からは「結婚も子育ても未経験で信頼できない」などとクレームをつけられ、疲れ果てて自殺。
2006年10月
西東京の小学校の25歳の新任教諭は、睡眠時間3時間で仕事漬け。保護者からは深夜も休日も携帯に電話がかかり、ストレスがたまり自殺。
2019年9月
福岡県の24歳の新任教諭が教室で首つり自殺。遺書に「人のためにと思って就いた職業。あこがれた仕事。子どもに迷惑をかけてしまう。大好きな子どもなのに。さようなら」と記していた。
教員の精神疾患も増えている。公立学校教員の1か月以上の長期療養者数(2022年度)は、
全体 12192人
20代 3096人
30代 3380人で、
20代は2016年度に比べて2.41倍、30代は1.89倍と増えている。
自殺した教員もそうだが、心が壊されている教員も、相談する相手もいなかったのだ。それどころか、叱責されたり嫌味を言われたり、新任の教員を励まし育てる現場ではないから、心が病んでしまう。
そのような教師集団が子どもの抱えている問題に心を砕いたり、子どもが元気になるような教育実践ができるわけがない。子どもを差別から解放するには、まず教師が差別から解放されていなければならない。子どもに対する教師の差別、教師の間の差別、それを解決しなければ、子どもの命を守ることは出来ない。
子どもと最も近いのは新任の教員だ。若い教師が書類の作成で夜中まで働かされ、子どもと元気に遊ぶこともできない、これでは子どもの声を聞くこともできない。
学校の主役は子ども達である。子ども達が共に学び、成長していける教育現場への抜本的な改革が必要とされる。 (沢)