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2025.06.25
日本新聞
沖縄戦から80年 二度と沖縄を戦場にしてはならない
4627号1面記事
沖縄戦から80年
二度と沖縄を戦場にしてはならない
本土決戦を避けるため沖縄を捨て石にした無惨な歴史。今また沖縄を
はじめとした南西諸島の軍事基地化を進める危険な動きに歯止めを
6月23日は「沖縄戦の戦没者の霊を慰め平和を祈る日」と1961年に琉球政府立法院が「慰霊の日」に制定した。
敗戦が間近になった1945年3月末から6月末にかけて、日本軍とアメリカ軍が沖縄本島を中心に激しい戦闘をした。本土決戦を遅らせるために、沖縄での戦いを長引かせる作戦で、沖縄を捨て石にしたのだ。このため、沖縄県民は多大な犠牲を強いられ、実に県民の4分の1の命が奪われたのである。
沖縄県民を利用し見殺しにした日本軍
1944年3月22日、日本軍は第32軍を編成。この年の夏から日本軍部隊が次々と沖縄に配備。
1944年7月、日本軍は足手まといになるからと沖縄の住民を本土や台湾へ疎開させる方針を決める。学童疎開船「対馬丸」は約1700人の子ども達を乗せて8月21日、九州を目指し出発する。翌22日、アメリカの潜水艦に魚雷攻撃され、約1500人が犠牲となった。痛ましい事件だった。
1944年10月10日、米軍による「10・10空襲」は早朝から5回にわたり、約660人が命を奪われた。那覇市は約90%が消失した。
戦局悪化により、召集年齢は17歳に引き下げられた。沖縄では特例として14歳でも兵士にできるようになった。
1945年3月、沖縄の中学校、師範学校で「鉄血勤皇隊」や「通信隊」が組織され、看護要員とされた高等女学校の生徒を含めて21校の2000人以上の若者が動員された。半数以上が戦死したのである。満足な武器も食料も与えられず、次々命を奪われた若者、そして子ども達。
第32軍は首里の司令部を放棄し、沖縄南部・摩文仁へ撤退しアメリカ軍と戦うことを決め、ガマに避難していた沖縄県民を追い出した。墓に逃げて、アメリカ軍の爆撃を受けて亡くなった人達、追い詰められて集団自決させられた人たち、凄惨を極める地獄絵が繰り広げられた。今も沖縄には、一家が皆亡くなってしまった屋敷跡があちこちに残っているという。
1945年6月18日から19日にかけて、日本軍は学徒隊の生徒達に解散命令を出し、激戦地に放り出した。これにより生徒たちの犠牲は急激に増えた。ひめゆり学徒隊の犠牲者の8割は解散命令後に亡くなっている。
6月22日に自決した陸軍牛島中将は「最後まで敢闘し、悠久の大義に生くべし」と命令を出した。この命令が犠牲をさらに拡大させた。あまりにむごい命令だ。
再び沖縄を戦場にしようとする政府
政府は「台湾有事」を宣伝し、九州から与那国島までの南西諸島に次々ミサイル基地を建設した。そしてあたかも中国が攻撃してくるように、シェルターを設置し、仰々しく避難訓練まで実施している。それぞれの島から中国に向けてミサイルを設置する。これでは「有事」を作り上げることである。挑発そのものである。
アメリカはすでに経済的にも中国に抜かれている。「アメリカファースト」のアメリカはそれを認めたくない。そこでアジア人とアジア人を戦わせる、つまり対中国は日本にやらせて高みの見物というのがアメリカの作戦である。そのために日本の軍備を増強させようとしているのである。
今も日本の米軍基地の7割を沖縄に押し付けている日本。そして再び戦場にしようとしている日本。
沖縄戦から80年、今沖縄の人々は、沖縄戦での惨劇が繰り返される大きな不安を抱いているだろう。二度と戦争を繰り返さない反戦の声を、今こそ日本中に広げていく時である。 (沢)
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2025.06.18
日本新聞
東海村村長が一転して東海第二原発再稼働容認
4626号1面記事
東海村村長が一転して東海第二原発再稼働容認
運転開始から46年の老朽原発、22年~24年まで11件の火災。92万人が住む首都圏の原発再稼働は無謀。
政府は「原発最大限活用」方針撤回を
10日、東海村の山田修村長が村議会で「再稼働は必要だ」と再稼働容認の立場を明らかにした。山田村長はこれまで、再稼働に対しては「中立」と言ってきたが、この日、一転して容認に転じた。
東海村の前村長は、「脱原発をめざす首長会議」世話人の村上達也さんだ。村上さんが村長の時の副村長が、山田村長だ。村上さんは村長をやめる時に、山田さんに「心残りは東海第二を止めていないことだ」と言ったら、「信じてください」と言ったというのだ。今回の再稼働容認表明と真逆の言葉である。
東海第二原発は運転開始から46年の老朽原発である。しかも、2022年~2024年の間に11件もの火災を起こしている。今年2月には、中央制御室の制御盤でも火災が発生している。非常に危険な原発である。更に東海第二原発30キロ圏内には92万人の人々が暮らす。事故が起きた時に、一体どうやって92万人もの人たちを避難させるのか。避難などできないのは火を見るより明らかだ。
こうした実際から2021年3月、水戸地裁は住民の運転差止訴訟で、運転を認めない判決を下した。その状況が何も変わっていない中で、山田村長の再稼働容認は一体何が働いたものなのか。納得できるものではない。
同じ10日、東京電力は柏崎刈羽原発6号機原子炉に核燃料を装てんする作業を開始した。昨年4月に7号機の原子炉に核燃料を装てんした時同様、地元の同意なしの暴挙である。再稼働について、地元の同意を得ることなしにできることはない。
東電は福島第一原発事故という過酷な事故を起こし、福島の人々から故郷を奪い、生業を奪い、命さえも奪った。福島第一原発事故の収束の目途も立っていない中で、福島第一原発と同じ沸騰水型の原発を再稼働するというのだ。安全よりも利益第一の東電の体質は、あれだけの大事故を起こしても何も変わっていない。
東京高裁が東電旧経営陣の賠償取り消しの不当判決
「東電の旧経営陣が津波対策を怠り東電に巨額の損失が生じた」として、株主が旧経営陣に23兆円超を東電に賠償するよう求めた株主代表訴訟の控訴審判決が、東京高裁で6日行われ、13兆3210億円の支払いを命じた一審東京地裁判決を取り消し、株主側の請求を棄却した。全くの不当判決である。
取り消しの理由は、「巨大津波は予見できなかった」。2002年の政府の地震調査研究推進本部の「長期評価」をもとに、2008年には東電内部で最大15.7メートルの津波が来ると試算していた。もちろん旧経営陣にも報告していた。武藤元副社長は「社員の報告内容に切迫感はなかった」と、下部の者に責任転嫁しようとしている。報告された時点で対策を講じていれば事故は防がれたのである。安全第一ではなく、いかに経費をかけないかを第一にした結果、大事故を引き起こしたのである。旧経営陣の責任は明白だ。しかし、裁判所はそれを裁こうとはしない。
今も事故は収束していない。家族の長年の思い出の詰まった大切な家を解体しなければならない原発周辺の人々の思いを、国、東電、裁判所は何も理解しようとしない。被ばくと隣り合わせの現実を見ないようにして暮らす被害者がどんな思いでいるか、考えることもないのだろう。
原発事故から14年、汚染水の問題、デブリ取り出しの問題など、何も解決していない。廃炉の見通しも立たない中、現場では毎日4000人を超える作業員が被ばく作業に従事している。
政府は「原発最大限活用」の方針から原発からの撤退へと大きく舵を取る時である。 (沢)
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2025.06.18
日本新聞
農家が生きられる持続可能な農政へ
4625号1面記事
農家が生きられる持続可能な農政へ
「今こそ日本の食と農を守ろう」緊急集会開催。減反を見直せ!食べ物は国産で!
農家に欧米並みの所得補償を!これらは実現可能なこと
コメ問題が一向に解決が見えない中で6月5日、参議院議員会館で「今こそ日本の食と農を守ろう」緊急集会が行われた。
集会に先立ち、令和の百姓一揆実行委員会事務局長の高橋宏通さんから「備蓄米の次はMA米(ミニマムアクセス米)でアメリカから輸入を増やす話が出ている。日本の税金でアメリカの農家に所得補償することでとんでもない。日本の農家に所得補償すべきだ。今日の集会を、日本の農業を守り、日本の食を守り、日本の子ども達の未来を守る集会にしていきたい」と訴えられた。
生産者からの声
日本の種子を守る会会長、JA常陸組合長の秋山豊さんは「私の地元では農家は35%の水田で転作させられている。今年農水省は「転作を1%緩和する」と発表した。それでいいのか。
生産者米価(60キロ)は
令和3年 1万100円
現在 2万4000円
5キロ精米で農家がもらってるのは2300円、約半分。農家にとっては高くない。
異常高温障害で打撃を受けた。1等米は5割、新潟米はゼロに近かった。農水省の作況指数は101で平年並み。これは間違い。適正な生産者米価にすべき」と指摘。
静岡県の米農家の藤松泰通さんは「米農家の廃業、倒産は過去最高。政府は、輸入米を入れる、農業の大規模化を言うが、大規模化は農薬、化学肥料を多大に使用、農村のコミュニティも壊れる。今後10年で農家は半減。農業は国防そのものだ」と主張した。
新潟の米農家の石塚美津夫さんは「農林予算を見ると、スマート農業の予算は農機具メーカーにいき、区画整理事業費は土木業者にいく。安心して翌年もお米が作れる世界、安心して翌年もお米が買える世界にしていきたい」と訴えた。
パルシステム産直事業本部の黒井洋子さんは「日米関税交渉のテーブルに、大豆、トウモロコシをあげたことは残念でならない。大豆の自給率は6~7%、アメリカから65%を輸入。輸入大豆は情報が示されず“国内製造”表示。食料自給率の向上、フード・システムの構築が大事」と指摘した。
各分野から
日本消費者連盟事務局長の纐纈美千世さんは「日本消費者連盟は、緊急声明“食の売り渡しに断固反対します”を出し、27団体から賛同を得ている。農家が置き去りにされ、価格だけ問題とされている現状に怒りを感じる。日本消費者連盟の創設者・竹内直一さんは“食べ物は商品ではない。命を育むものだ”と言っている。農家と消費者が手を結んで、農業をどうしていくか考えていこう」と呼びかけた。
愛知大学農業経済学教授の関根佳恵さんは、「小規模農業は効率が悪い、生産性が低い、というのは実際ではない。EUは大規模農業の補助金を削って、小規模農家に回している。農業予算は、フランスは日本の2倍、米国・韓国は日本の3倍」と日本の農政の問題点を指摘した。
ノンフィクション作家の島村菜津さんは「子どもの心とからだの健康を死守したい。農家の声、消費者の声、本当の声を出していこう」と訴えた。
全国有機農業推進協議会理事長の下山久信さんは「毎年5000ヘクタールの農地がなくなっている。この10年で5万ヘクタール減った。10年後、6割の農地の受け手がない。大問題だ。このままいったら国が終わる。社会のあり方を根本的に転換しなければならない」と警鐘を鳴らした。
農家への所得補償実現のために行動を起こそう
元農水大臣・山田正彦さんは「なぜ今、日本の米が不足しているのか。生産者は米を作ると赤字だ。農家が米を作れるだけの所得補償しなければならない。私が農水大臣時代、4000億円の所得補償をした。今、5000億円あれば所得補償できる。国会や政府に署名を送るなり、行動を起こそう」と力強く呼びかけた。
最後に令和の百姓一揆実行委員会代表の菅野芳秀さんが「農地改革で475万の自作農が生まれた。今、70万を切ろうとしている。米農家の平均年齢は70歳を超えている。米作りのたすきを受け取ってくれる人がいない。命の危機だ。国会議員に命がけでやってほしい。我々も、日本農業、日本の農村を守るために全力を尽くす。一緒にやりましょう!」と熱烈に呼びかけた。
小泉農相に、「農家に所得補償はしないのか。備蓄米を輸入ではなく、日本の農家に作ってもらうというのはないのか」問うたら、「そういう政策はない」という返事が返ってきたという報告もあった。備蓄米を放出したら輸入米、これが政府の方針であり、これでは危機を脱するどころか、日本農業壊滅が避けられない事態になる。
農家と消費者が力を合わせて、亡国に向かう悪政にストップをかけなければならない。 (沢)
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2025.06.11
日本新聞
農家への所得補償がコメ問題の解決
4624号1面記事
農家への所得補償がコメ問題の解決
小泉農相の備蓄米随意契約、30万トンだけ低価格販売は解決にならない。生産者が見通しをもってコメを作れる具体策を打ち出すべき
江藤農水相(当時)が消費者のことを何も考えない問題発言をして更迭になった。新農相となった小泉進次郎農相は備蓄米の随意契約を開始し、5キロ2000円で備蓄米が店頭に並ぶと明言した。政府が放出する備蓄米は2022年産米が20万トン、2021年産米が10万トン。5月29日時点で22万トン61社が確定した。1回の引き渡し量の裁定が10トンか12トンであり、精米設備を持っていなければならないことから、小さな米穀店には手が出ない。対象はあくまで大手企業に限られる。残りの8万トンは、“不公平感を拭い去るため”として、スーパー6万トン、米穀店2万トンの枠を設定すると言うが、それでも対象は絞られる。
備蓄米の随意契約では解決にならない
政府の備蓄米は100万トンだというが、これは年間必要量の1.5か月分にすぎない。全部放出したとしても焼け石に水であるが、そのうち30万トンの放出で解決は見えない。備蓄米を放出してしまったら、食糧危機にどう備えるのか。
小泉農相は“消費者目線で”などと言っているが、すぐになくなる安価な備蓄米放出では先が見えている。生産者のことを真剣に考えるべきである。
日本の農家は先祖代々引き継がれてきた農地を大切に守り続けてきた。減反や転作奨励などで振り回されて苦しい目にあわされながらも、食料供給の責任があると、米を作り続けてきた。長い間の米価引き下げで、米作りでは生きられない中も、兼業しながら米作りを続けてきたのが今の米農家である。
こうした生産農家に所得補償をし、米価を安定させて消費者が安価な米を買うことができるようにする、これが唯一の解決策である。石破首相は「所得補償を考えていないわけではない。努力している農家には補償したいが、やみくもに行うわけにはいかない。精査しなければならない」と言っている。この最悪の農政の中で、努力しないで農業を続けられるわけがない。努力していない農家など存在しない。
政府は大規模農家だけ残して、更なる大規模化を行うことが農業改革だと言っている。ドローンやヘリコプターで農薬をまく農業だ。これは日本の国土の現状を全く無視している。日本は山間地や狭い土地が多く、大規模農業ができるのは農地のせいぜい3分の1である。残りは家族農業など小農が守ってきた。それをつぶしてしまって、3分の1の土地で日本の食料をまかなうことができないのははっきりしている。
世界では小農が中心の農業こそが、生き残る農業だと確認されている。2018年12月、国連総会は国連宣言(小農権利宣言)を121か国の賛成多数で採択した。日本は棄権している。小農が守ってきた日本の農業の実態を全く無視した姿勢であり、日本の農業を壊滅させる方向が見える。
今日の米農家、酪農家、野菜農家など全ての農家の苦境は、農家の実態を見ようともしない政治が根源である。
今、米価が上がったといっても30年前に戻ったにすぎない。そして上がった米価が農家の所得に反映されているかと言うと、決してそうではない。
農村で農家が安心して暮らせる補償があれば、農村に産業がよみがえり若者の職も生まれる。現在のような東京、大阪などの大都市に人口が集中する状態では、一気に食料危機に直面するのは避けられない。日本が生き延びるためには政治の大改革が必要不可欠である。
今日のコメ問題の解決は農家への所得補償なしには不可能である。そのために必要な額は4000億円、軍事費60兆円をやめれば、ただちに実現可能だ。 (沢)