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2025.11.27
日本新聞
人権侵害のスパイ防止法を断固阻止
4648号1面
人権侵害のスパイ防止法を断固阻止
知る権利・報道の自由・人権を侵害し市民監視強化、行く先は戦争の悪法。高市政権と右派政党共謀のスパイ防止法制定を許さぬ運動を
13日の参院予算委員会で、参政党の神谷代表が「外国からの工作をはねのけるためにもスパイ防止法の制定は急務」と論じたのに対し、高市首相は「スパイ防止法制定は私自身が総裁選で訴えていたこと」と応じた。
高市首相自体がスパイ防止法制定を早期に実現したいと公言し、維新の会との連立合意書の中でも、スパイ防止法の検討を明記している。国民民主党は「G7諸国と同等レベルのスパイ防止法を制定する」と明言し、法案提出に向けて草案中だ。右派政党がスパイ防止法制定に前のめりである。
このような危険な政治情勢の中、スパイ防止法制定に反対し、阻止する運動を広げていく必要性が高まっている。
ねらいは一般市民の監視強化、人権侵害
“日本は世界でも数少ないスパイ防止法がない国だ”と、同法制定は全く当然のことなのだという宣伝がある。
日本にある法律は
・国家公務員法…公務員の守秘義務違反に罰則
・自衛隊法…自衛官の防衛機密の漏えい禁止
そして2013年に特定秘密保護法、2017年共謀罪が、反対の声を無視して制定された。いずれもスパイ防止が明記されている。特定秘密の定義も明確ではなく、取材や報道の自由も侵害されかねないし、犯罪を犯していなくても「合意」したとみなされれば罪になる共謀罪など、ファシズムそのものである。
いずれも市民を監視し、市民に情報を提供しない法律であり、スパイ防止法もその流れの一つだ。スパイ防止法の制定は日本の民主主義崩壊の危機である。公務員、自衛官が対象の法律に加えて、一般市民を監視するために制定をねらっているのがスパイ防止法なのである。
市民による「スパイ防止法を考える学習会」が開かれている。
秘密保護法制定後に「大川原化工機事件」が引き起こされた。この事件では警察は証拠資料をねつ造していた。「秘密法強化で、こうしたえん罪に対する弁護はできなくなる」と海渡弁護士は指摘している。海渡弁護士は「イラク戦争もCIAが拷問によって引き出した情報をもとに始められた」と情報機関が戦争を引き起こす可能性を指摘した。
ジャーナリストの青木理さんは「元内務官僚で保守の政治家であった後藤田正晴氏は、晩年の新聞インタビューで、なぜ日本には情報機関がないのか問われ、“謀略はすべきではない”“情報機関は諸刃の剣となる”と答えた。それに比べ今、治安維持法的な法の必要性や情報機関の創設を礼賛し必要だとする風潮は危険」と語っている。
1925年に制定された治安維持法は、政府に反対する者に襲いかかった。天皇制に反対し社会主義を訴える者、戦争反対を訴える者を根こそぎ検挙した。日本の未来を考える多くの若者が獄中死させられた。昔の話では済まされない。
高市首相は所信表明演説の冒頭、「政権の基本方針と矛盾しない限り、各党からの政策提案を受け、議論する」と述べた。これは大変危険な発言である。“政権の基本方針と矛盾しない限り”つまり、高市政権の方針と矛盾するものは受け付けないということである。
軍事費をどんどん引き上げる方針、農家を守らず輸入、輸出して大企業を守る方針、働く者を制限なく働かせる方針、朝鮮学校差別方針、外国人排外方針等々、やめてもらいたいことは多々ある。しかし聞く耳を持たない、更には反対する者は罰するスパイ防止法の制定である。
このような政策に反対する声を広げる全国的な運動を前進させる時である。
(沢)
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2025.11.20
日本新聞
高市首相の労働時間規制緩和方針に抗議
4647号1面
高市首相の労働時間規制緩和方針に抗議
労働時間規制のない裁量労働制の適用拡大も検討。「柔軟な働き方で
ないと国際競争力が低下」との企業側の主張重視。働く者を守るべき
高市首相は上野厚生労働相に「労働時間規制の緩和の検討」を指示した。1月から厚生労働省の審議会の分科会では、労働基準法などの見直しを検討している。しかし、この見直しが労働者の立場に立ったものなのかどうかは、はなはだ疑問である。高市首相の「労働時間規制緩和」発言からは、働く者のことを考えてのものとは思われない。もともと、この規制緩和は企業側からの「柔軟に働ける環境を整備しないと、国際競争力が低下する」という要請に応えたものだ。
すでに労働時間規制の対象から外されているものとして、裁量労働制、高度プロフェッショナル制度がある。裁量労働制は、仕事の進め方や時間配分を労働者の「裁量」にゆだねる働き方である。早く終わったらそれで終了できると言われているが、逆に終わらなければ延々と働かなければならない。高市政権は裁量労働制の拡大も検討している。
過労死遺族が労働時間規制緩和に抗議
高市首相の「労働時間規制の緩和検討」指示に対して、過労死遺族らが懸念を表明している。
2015年に電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)が過労自殺した。母親の高橋幸美さんは「犠牲者は娘で終わりにして」と訴え続けている。今回の労働時間規制緩和についても「過労死ラインまで働かせるのはやめてください。上限規制を緩める政策は絶対にしないでほしい。大切な家族が馬車馬のごとく働かされて過労死した。命が奪われる働き方に傾いていくことが心配でなりません」と訴えている。
高市首相は「心身の健康維持と従業員の選択を前提にした労働時間規制の緩和の検討」だとしている。しかし、今の規制は過労死ライン水準である。それを緩和してもっと働かせるというのだから、首相の言う「心身の健康維持」などできない。緩和されたら、「従業員の選択」など絵に描いた餅にすぎない。「法的にも問題はない」と、会社に労働時間拡大を強いられるのは明らかである。
「残業代が減ることによって、生活費を稼ぐために無理をして副業することで、健康を損ねてしまう方が出ることを心配している」これが高市首相の労働時間緩和の理由だという。よくもこのような思ってもいないことを言えるものだ。
本当に労働者の健康を心配しているなら、労働時間を増やすのではなく、給料を増やすことを考えるべきだ。労働時間を増やせという企業の要請を取り上げるのではなく、企業に内部留保金をため込まずに賃金を上げるようにさせるべきだ。
安倍元首相は「企業が儲ければ労働者にそのしずくがしたたり落ちる」と言った。高市首相も同じことを言っている。実際は、大企業はいくら儲けても賃金を上げようとはしない。ため込んだ内部留保金は2024年末時点で637兆円を超えている。13年連続で過去最高を更新し続けている。その一方で働く者の給与は30年間上がっていないという異常事態である。歴代政府は法人税の減税で更に企業を優遇してきた。裏金問題もここから起きている。高市政権は裏金問題をそのままにして、裏金議員を温存している。
軍事費はGDP比2%達成を2年間前倒しし、その財源は問わない。一方で、社会保障の充実を訴えると財源はどうすると言う。軍備拡大をやめれば財源は十分ある。なぜ野党はそこを突かないのか。
働く者が健康に安心して働ける環境づくりこそが、政治の成すべきことである。(沢)
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2025.11.13
日本新聞
小中学生の不登校、自殺が過去最多
4646号1面記事
小中学生の不登校、自殺が過去最多
不登校最多の原因を保護者に押し付け、学校の問題に目を向けない文科省。いじめも自殺も過去最多、友情や連帯の心を育てぬ教育現場
文科省の調査によると、2024年度の小中学校で年間30日以上欠席した不登校の児童生徒は35万3970人で、過去最多、12年連続増だった。小学生は5.6%増の13万7704人、44人に1人が不登校だ。中学生は0.1%増の21万6266人、15人に1人が不登校だ。年間30日に満たない不登校予備軍がどれくらいいるのかは発表されていない。学校に行かない子どもは年々増えているのである。
ところが文科省は、不登校が増えている原因を「無理に通学する必要はないといった保護者らの意識変化だ」と発表している。これでは不登校を減らすメドはない。
音楽が鳴ると踊り出す、小学校入学間近の元気な女の子がいた。お母さんは「この子のいいところを受け入れて伸ばしてくれるならいいけど、押しつぶされると学校に行かなくなる」と心配していた。1年後、「あまり学校に行ってない」とお母さんは残念そうに話していた。小学2年生の不登校の男の子のお母さんは「こんなに学校に行かない子が増えているんだから、学校は何が悪いのか考えるべき」と憤っていた。
子ども達は最初から学校に行くことを拒否していたわけではない。一人一人の子どもが、なぜ学校に来なくなったのか、学校側は掘り下げて考えなくてはならない。「親が学校に行くように勧めないから」では、解決することを放棄している。子ども達がどんな問題を抱えているのか、真剣に向き合うことである。
いじめも自殺も過去最多
学校に差別はないのか、いじめられている実際はないのか。2024年度の小中高校のいじめも過去最多で76万9000件と発表された。これは学校から報告された数であり、実際ははるかに多いいじめがあることは推して知るべしである。
いじめる側になるか、いじめられる側になるかが死活問題となり、いじめられている人を助けたり、いじめている人に注意することもできない状況に追い込まれている。差別があふれる中で、心がすさんでしまっている。自分たちがいじめた相手が自殺したことを知った中学生が、「やっと死んだか」とSNSに投稿していたという報道もあった。背筋が凍りつく思いだ。若者らしいヒューマンや正義を愛する心が根こそぎ無くされてしまっていることが無念である。
いじめと共に、2024年度の小中高生の自殺も過去最多である。529人の自殺者である。子どもの自殺だけが増え続けている。特に女子高校生の自殺が増えている。ネットによる様々な情報によって、若い女性が性被害にあうケースも多い。被害にあった生徒に寄り添って話を聞ける大人がいるかどうかは、実に大きな違いである。命を救うことにつながるのである。
子ども達がどんな悩みを抱えているか、どんな悲しみを抱いているか、聞いてあげるべき教師は、管理・統制、過酷な労働の中に置かれている。教師自身も病んでいる実態がある。何らかの精神疾患で通院したり、休職に追い込まれている教師も多い。
今の教育現場の体制を抜本的に変え、教師が子どもと心を通わせられるように改革しなければならない。単に不登校の数字を調べるのではなく、子ども達が来たいと思う学校への改革である。教師と子どものコミュニケーション、子どもと子どものコミュニケーションのある環境を作ることである。共にやり遂げるものがあり、心の通い合いのある学校、差別を許さない教育現場に変えていく以外に、子ども達の居場所にならない。教育の荒廃は社会の崩壊につながる大きな問題であり、早急に取り組まなければならない。
子ども達の命を守るために。 (沢)
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2025.11.05
日本新聞
所信表明演説 軍備拡大打ち出す高市政権
4645号1面記事
所信表明演 説
軍備拡大打ち出す高市政権
日米同盟強化のため軍事費GDP比2%達成を今年度中に前倒し。原発推進、先端技術の農業で農家切り捨て。反戦、命を守る運動を
自民党と維新の会の連立政権・高市政権が発足した。
公明党が連立から離脱し、その自民にすり寄ったのが維新の会。国民民主党は「維新が連立組むなら教えてほしかった」と恨み節。「手取りを増やす」と聞こえのいい言葉で票を集めた国民民主だが、生活困窮の悪政を続けてきた自民と大差はないということだ。
衆参両院で自民を過半数割れに追い込んだのに、右寄り政党が多く、野党政権を作ることができない。
維新は「企業団体献金の廃止」を訴えていたが、自民と連立を組むや、それを引っ込めた。高市政権は、裏金議員を副大臣4人、政務官3人と、7人も起用している。
また、衆院議員定数の1割削減で自民と合意。これは比例定数の削減で、小政党が入れる可能性のある比例区を減らし、小政党をますます締め出すというものだ。更に、消費税削減も引っ込めた。
高市首相の所信表明演説に、自民と維新の連立政権が日本をどのような国にしようとしているのか、見て取れる。
軍事費増で命は守れない
10月24日、高市首相による所信表明演説が行われた。
はじめに、高市首相は「政権の基本方針と矛盾しない限り、各党からの政策提案を受け、議論する」と言っている。ここに大きな問題をはらむ。「政権の基本方針と矛盾しない限り」、では高市政権の方針に反対の意見には話し合いにも応じないということなのか。それでは民主主義の根幹を否定することである。
赤字に苦しむ医療機関、介護施設への対応、中小企業・小規模事業者、農林水産業を支援する推奨メニューを設けるなど、「いのちを守る」と列挙しているが、具体的に生きられる「メニュー」を早急に実行してほしいものだ。
しかし、農業については、「5年間の『農業構造転換集中対策機関』で世界トップレベルの植物工場、陸上養殖、衛星情報、AI分析、センサーなどの先端技術活用で輸出促進、稼げる農林水産業を創り出す」と言っている。企業が参入して儲ける農業をやるということだ。今、必要なのは日本の風土に合った農業のノウハウを知っている農家を守り、若者が希望をもって担える農業にしていくことだ。輸出で儲ける農業ではない。
「中国、北朝鮮、ロシアの軍事動向が深刻な懸念となっている」と言い、イスラエルのガザ大量虐殺については一言もない。イスラエルを支援しているアメリカにしたのだろうが、正義のかけらもない。
最も問題なのは、「防衛力の抜本的強化」として、軍事費のGDP比2%水準(2027年度までに達成)を補正予算と合わせて、今年度中に前倒しするというのである。そして来年中に「安保3文書」を改定して、軍事費を更に増やそうというのだ。
28日にトランプ大統領が来日する前に、何としても宣言しておきたかったのだろう。
原発推進、フュージョンエネルギーとしての核エネルギーにも力点を置いている。東電福島第一原発事故を全く教訓にしない非常に危険な政策だ。「外国人をき然と取り締まる」という排外主義も危険だ。
地方を守るための「地域未来戦略」の中味は、TSMC(台湾の半導体大手)やラピダス(日本の半導体大手)の熊本や北海道進出などのように、地方に産業クラスターを作るというもの。地方に産業をつくるには、地方の第一次産業を復活させ、それに伴う業種を増やすことが、生き生きした地域づくりになる。
軍備増強ではなく平和外交でアジアの国々と友好・連帯を。ますます右寄りで戦争へと向かう高市政権への監視を強め、反戦平和の運動を前進させよう。 (沢)