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2025.01.22

日本新聞

靖国合祀取り消し訴訟 最高裁が韓国人遺族の上告棄却

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4605号1面記事
靖国合祀取り消し訴訟
最高裁が韓国人遺族の上告棄却

侵略を解放と偽る靖国神社に朝鮮半島出身者2万人以上を合祀。戦犯との合祀は人権侵害と訴える遺
族。侵略の事実さえ認めない政府

 第2次世界大戦で旧日本軍に徴用されて戦死した朝鮮半島出身者2万1181人が靖国神社に合祀されている。これに対して韓国籍の遺族らが、2013年に「靖国神社合祀取り消し訴訟」を起こした。「朝鮮半島を侵略した加害者とともに合祀されるのは耐えがたい屈辱と苦痛だ」という訴えは、至極もっともなものである。
 1959年、国が提供した戦没者の名簿を基に、靖国神社に合祀された。遺族は「家族の情報を国が無断提供したことは、プライバシー権の侵害で、政教分離の規定にも反する」と訴えたのだ。
 一審二審ともに遺族側の敗訴となった。遺族らは上告し、上告審が最高裁で行われ、1月17日、最高裁は遺族側の上告を棄却した。
 最高裁は「除斥期間」(不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する)が過ぎた後の提訴だとして上告を退けた。しかし、韓国政府に対して靖国神社の資料が送られたのは1990年代後半、あるいは2000年になってからであり、除斥期間は該当しない。最高裁判決は、原告の権利と利益侵害については判断を示さなかった。判決を聞いた原告の中には「あきれて言葉が出ない」と涙ぐんだ人もいたという。「父親が亡くなったことも、合祀されたことも全く知らされなかった。合祀には、遺族の合意を得るのが当然。父の名誉のために、名前を抜いてほしい」という遺族の訴えは当然の要求である。
 最高裁の裁判官4人中3人の多数で、遺族側敗訴となったが、三浦裁判官は反対意見を述べた。国が靖国神社に情報を提供し、合祀に至ったことで三浦裁判官は「憲法が定める政教分離規定に反する可能性がある。合祀を望まない韓国人遺族がいることも想定しながら合祀を推進しており、国の責任は極めて重い」と指摘している。また、除斥期間を理由に上告を退けたことに対して「被害者にとって著しく酷であり不合理」とした。

 「国に二度殺された」と憤る遺族たち

 日本は朝鮮半島に侵略し、植民地支配した。第二次世界大戦では、植民地なのだからと、戦場にかり出したり、炭鉱やダム建設などのために強制連行し強制労働させた。「朝鮮人も天皇の赤子だから、お国の為に尽くせ」と、最も危険な戦地へ向かわせられた。徴用工はろくな食事も与えられず、酷使され、命を奪われた。屈辱の日々を送らされたのである。
 加害者のA級戦犯とともに合祀されることは、国に二度殺されることだ。決して受け入れられないと訴えている。
 靖国神社はかつての侵略戦争を徹底して美化している。靖国神社の中にある遊就館では、ゼロ戦などが展示され、かつての戦争を讃えている。侵略戦争などという文字はどこにもなく、「アジアの国々を解放するための戦争であった。大歓迎された」とデマを流している。
 無理やり日本の戦争にかり出され、いつどこで亡くなったのかも知らされず、いつの間にか、加害者である戦犯と一緒に日本名で祀られていた、実に屈辱的である。司法も政府と一体で、違法性を認めようとしない。このような理不尽に断固抗議する。
 日本政府は侵略戦争、植民地支配での加害の事実を認め、謝罪しなければならない。
 今、日本がやるべきことは軍備増強ではなく、過去の加害の歴史を認め、そこからアジアの平和、友好、連帯への一歩を踏み出すことである。アメリカ追随するのではなく、アジアの経済圏を作り、共に発展する未来を作り出すことである。
 朝鮮半島出身者の靖国合祀はすぐさま取り消すべきである。      (沢)