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2024.03.20
日本新聞
日本新聞 4561号記事 戦闘機輸出は憲法違反の暴挙
「戦闘機輸出は国益」と言い放つ首相。武器輸出は平和を投げ捨て参戦する危険な行為。
不戦の憲法9条を守り、戦争ではなく平和の道を
5日の参院予算委員会で岸田首相は、英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機を、日本から第三国へ輸出できなければ、今後の英国、イタリアとの交渉で不利に働くと、輸出の必要性を強調した。と言っても、輸出しなければ何がどのように不利になるのか全くわからない。
この時点で公明党は、「(戦闘機輸出は)憲法の平和主義に逸脱し、日本が海外の紛争に関与することにつながる」と言っていた。
13日の参院予算委員会で首相は、
1、輸出するのは次期戦闘機に限定
2、輸出先は「防衛装備品・技術移転協定」の締約国に限定
3、現に戦闘が行われている国への輸出禁止
の3点をあげ、「個別の案件ごとに閣議決定する」と提示した。これに対して公明党は容認に転じた。武器の輸出解禁に自公が合意したのである。
なし崩し的に武器輸出が行われないためにと、首相は「個別の案件ごとに閣議決定」とした。自公で閣議決定することが、一体どんな歯止めになるのか。
これまでも閣議決定で、次々重大な決定をしてきたのである。解釈改憲で集団的自衛権の行使容認も閣議決定で決めてしまった。閣議決定で外堀をどんどん埋めて、安保関連法強行採決など、数の暴力で押し通す。民主主義のかけらもないのが、日本の政治の実態である。
14日、在日米軍が沖縄でオスプレイの飛行を再開した。鹿児島県屋久島沖で在日米軍のオスプレイが事故を起こし、8名が死亡する大事故を起こしてから、わずか3カ月余りである。宜野湾市の松川市長は「誰も納得していない」、沖縄県の玉城知事も「許しがたい」と怒りを示した。
オスプレイは事故多発で“空飛ぶ棺桶”とさえ呼ばれているアメリカの欠陥機である。オスプレイの購入については、次々取りやめて、結局購入したのは日本だけである。アメリカがオスプレイの飛行を再開したことで、日本の自衛隊も再開する。自衛隊員が欠陥機に乗って危険な目にあわされる可能性もある。
武器輸出もオスプレイの飛行再開も、やってはならないことである。政府がやっていることは、世界の平和を守ることにも、日本の若者の命を守ることにも反している。
平和憲法を守ろう
“日本は不戦の憲法9条を持つ平和の国”これがかつて、世界の日本に対する評価だった。軍隊を持たない国・コスタリカは日本の憲法9条をお手本にしていた。
ところがイラク戦争で自衛隊を戦地に派兵し、武器や米兵の輸送を行ったことで、世界の日本に対する評価は大きく変わってしまった。自衛隊は日本軍であり、世界に戦火をまき散らす米国との軍事同盟軍である。
岸田首相は「台湾有事」を声高に叫び、軍備増強しなければ危ないかのように煽る。しかし実際は軍備増強するから危ないのである。アメリカと軍事同盟を組むことで、敵を作り、戦争に向かうのである。
今、アメリカの一極支配は大きく揺らいでいる。中国を中心にアジアの経済圏、そしてアフリカの経済圏などが構築されてきている。これまでのような搾取被搾取の関係ではなく、共に伸びていく未来ある関係である。
日本はそうした動きに逆行している。日本は武器輸出ではなく、平和の道へと歩を踏み出すべきである。不戦の憲法9条を作った時のように。そしてアジアの一員として、アジアの国々と力を合わせて発展していく道を歩むべきである。
(沢) -
2024.03.13
日本新聞
日本新聞 4560号記事 原発事故から13年、原発は廃炉に!
原発事故から何ら教訓を得ようとせず、原発推進、再稼働へ走る政府。311子ども甲状腺がん裁判で、「真実が知りたい」と訴える青年達
13年前の3月11日、東日本大震災が起こり、1万5900人の方が亡くなり、2520人の方が行方不明となっている。
亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
そしてその後、東電福島第一原発の原子炉が次々爆発し、メルトダウンするという大事故となった。放射性物質は空気中へ、海へと流れ、被ばくの被害も拡大した。
福島県の、当時18歳以下の子どもたちを対象に県民健康調査が行われたが、今日までに、健康調査で327人が甲状腺がんまたは疑いと診断されている。県民健康調査以外でも43人が甲状腺がんと診断されている。計370人が、甲状腺がんまたは疑いと診断されているのである。通常では、子どもの甲状腺がんは100万人に1人か2人の発症だが、原発事故後の福島では38万人に370人という、余りにも高い発症率である。チェルノブイリ原発事故後も子どもの甲状腺がんが多発し、原発事故が原因であることははっきりしている。ところが福島の子どもたちの甲状腺がんと原発事故との因果関係は、いまだに認定されていない。
このような理不尽の中で、実際に甲状腺がんと診断され、手術を受けた7人の福島県の青年達が裁判を起こして闘っている。真実が知りたい、なぜ自分ががんになったのかを明らかにしたいと。政府と東電は、ごまかしではなく、事実を真正面から直視し、子どもたちの甲状腺がんの原因が原発事故によることを認めるべきである。
311甲状腺がん裁判
第9回口頭弁論行わる
3月6日、311子ども甲状腺がん裁判の第9回口頭弁論が行われた。
2点の大きな争点が明らかにされた。
原告側弁護団が提出した第19準備書面は、被告東電が、「福島県民健康調査の結果、子どもの甲状腺がんがみつかったのは過剰診断の結果だ。調べなければ一生気がつかないほどの軽微なものだ」と言っている点を論破した。県民健康調査で、甲状腺がんまたは疑いと診断された人以外に、がんだと診断され、がん登録した人は43人いる。もし、スクリーニング(一斉検査)による過剰診断の結果だと言うなら、がん登録された43人より軽い症例であるはずだ。ところが実際は、県民健康調査で診断された人の方が重い症例なのだ。これは被告の「スクリーニングで発見されたものは潜在がん」という主張と矛盾している。
実際、原告の7人も、再発して何度も手術したり、筆舌に尽くしがたい苦しい治療を受けている。これを潜在がんだというのか。
第20準備書面は、100ミリシーベルト論の誤りを指摘している。
被告東電は「100ミリシーベルト以下で発がんリスクの増加は確認されていない」と言っている。被告の根拠は、2007年のICRP勧告であり、その後、100ミリシーベルト以下の低線量被ばくによる健康被害は明らかにされており、30本もの論文が出されている。被告の根拠は崩されている。原発労働者30万人を対象にしたデータからは、低線量の方が健康への影響が大きい実際が示されている。
被告の過剰診断論も100ミリシーベルト論も破たんしている。
裁判官は原告の苦しみを受け止め、事実に沿った判決を出してほしい。夢を次々つぶされていった原告の思いを受け止めてほしいという、弁護団の思いが伝わってきた。
報告会で原告のお母さんが「一人の手」を歌い、力を合わせていけば未来は切り拓いていけるという思いを切々と訴えた。
尚も原発推進に走る政府の犯罪性
2011年3月11日16時36分、政府は原子力緊急事態宣言を発出した。13年経った今も、原子力緊急事態は継続されているのである。事故現場では必死の被ばく労働が行われ、収束には程遠い状況である。
今年1月1日には能登半島地震が起きた。志賀原発は群発地震のすぐそばに位置し、原発の被害状況の発表も二転三転し、真実が明らかにされているとは言い難い。道路は寸断され、家屋は倒壊。屋外退避も屋内退避もできない。原子力規制委は「自然災害による被害は原発が安全かどうかの範ちゅう外」という内容のことを発表した。原発事故は地震と共に起きる可能性が高い。避難できるかどうかを自然災害と別に考えることなどできない。つまり、避難できなくても関係ないという無責任な論であり、見殺しにすると言っているに等しい。このような姿勢で、次々原発を再稼働させるのは、まさに犯罪である。能登半島地震の震源地の近くに建設予定だった、珠洲原発を建てさせなかった住民たちの闘いに私たちは救われた。
原発事故から13年、今も苦しみは続いている。すべての原発を止め、廃炉にする以外に道はない。汚染水を海にばらまき、原発事故の二次被害、三次被害を引き起こすことを阻止しなければならない。勇気をもって裁判を闘っている青年達とともに。 (沢) -
2024.03.06
日本新聞
日本新聞 4559号記事 食料安保の確立は農家を守ることから
政府、食料・農業・農村基本法改「正」案と関連法案を閣議決定。食料自給率アップ、主要穀物の備蓄確保が大事。その点に何も触れない改悪
2月27日、政府は、食料・農業・農村基本法の改「正」案や関連法案を閣議決定した。
これまでの政府の方針は、有事の際に、花づくりをやめて野菜を作れ、と命令と義務を課すというものだった。これを平時から緊急時にも対応できるように、食料生産を増やし、輸出を増やすというのである。
2020年度の日本の食料自給率は、カロリーベースでたったの37.6%である。東京の自給率はなんと0.49%にすぎない。大問題だ。それなのに何故、輸出を増やさなければならないのか。日本の農家がもっと生産できるなら、それを実現し、食料自給率をあげるべきだが、そうはしない。あくまでも輸入相手国との関係を重視している。
そもそも、なぜ日本の食料自給率がここまで下がってしまったのか。
戦後、敗戦国日本はアメリカの占領下に置かれた。アメリカの農産物輸入の増大、そのためのパン食や肉食への移行で、食の安全保障を量的にも質的にも握られることになった。
今も同様で、食の安全保障をアメリカに握られている状況である。何十年も前に、“食料自給率をまずは45%にする”という目標が掲げられた。今では目標さえ出さず、自給率は下がり続けている。
日本の農業を抜本的に立て直す時
ウクライナ戦争、イスラエルのガザ無差別爆撃など、紛争が絶えない中で、食料安保の問題は深刻だ。このような中、中国は、14億の人口が1年半食べられるだけの穀物を備蓄する方針を出した。日本はどうか。コメを見ても、1.5ヵ月か2ヵ月分しかないのである。だから日本は、世界で一番先に餓死者が多数出て、日本という国が滅亡の危機に瀕する、とさえ言われている。“日本が無くなる前に行っておこう”と日本を訪れる外国人観光客もいる、これが実際だ。
食料自給率をあげることは、国の存亡に関わるくらい、重要な問題なのである。
改「正」案では、食料安保を「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態」としている。そしてこの実現に取り組むことを目的に掲げた、というのである。
ではどうやって実現するのか、具体策が大事である。
1970年、農水予算は1兆円、軍事費の2倍近くあった。ところが50年以上経っても2兆円。軍事費は5年間で43兆円にするという。資材、飼料、燃料は暴騰し、農産物の販売価格は上がらず、農家は悲鳴を上げている。やむなく離農する農家も後を絶たない。こうした農家を具体的に支援し、後継ぎを守れるようにしなければ、野菜やコメを作る農家がいなくなってしまう。まさに危機的状況である。
大企業は農業をビジネスとしかとらえない。将来の食の確保のためにと、昆虫食、培養肉、人口卵などが考えられ、すでに学校給食にコオロギが出されたり、パウダーにしてさまざまな食品に混ぜられようとしている。ゲノム編集のトマトの苗が全国の小学校に無料配布されたりしているが、これでは子ども達を守れない。
遺伝子組換えでない、という表示もできなくなり、ゲノム編集は始めから表示なし、無添加の表示もダメ、コオロギパウダーもわからないようにして食べさせるなど、全くひどいものだ。
農政を抜本的に変える時である。そのためには、安全な食べ物を作っている農家と消費者の連携を強め、遺伝子組換えなどの危険な食品を排除していく運動が求められる。
アメリカの消費者は信頼できる生産者を見定め、その作物を購入して支えている。そうした動きは日本でも確実に広がっている。そうした草の根の運動から、政治を変えていこう。 (沢) -
2024.02.28
日本新聞
日本新聞 4558号記事 東電・福島第一原発事故 ますます被害拡大の汚染水投棄
汚染水投棄から半年、中国など国際社会の批判高まる。禁輸で漁業者の苦難続く。政府は国内外の批判を受け止め、海洋投棄の中止を
東電福島第一原発事故による汚染水の海洋投棄から、半年が過ぎた。この問題を巡り、日中両政府の専門担当者が1月、非公表で協議を開始した。
汚染水海洋投棄の4回目の投棄を目前にして、海洋投棄に反対し日本の海産物を輸入禁止にしている中国と話をつけ、日本の漁業者の反発を弱めるというのが、日本政府のねらいだったのだろう。
日本側からは、外務省、経済産業省、環境省、原子力規制庁、東電が参加したという。しかし、中国側は禁輸措置を撤廃する考えはない。
2月23日、中国外務省の毛寧副報道局長は、「日本は国際社会の懸念に真剣に応え、責任あるやり方で、核汚染水に対処すべきだ」と求めた。中国は「長期にわたり有効な国際的モニタリング(監視)体制の構築」を日本政府に求めている。日本は受け入れようとしない。日本政府が「安全だ」と言うなら、モニタリング体制を作るべきだし、中国が調査を求めているのだから、それも受け入れるべきだ。調べられると困るから拒否している、としか考えられない。調べられると困る、つまり危険なのだから、海洋投棄はただちに中止すべきである。
共同通信による全国の漁連・漁協へのアンケート結果が報じられているが、「風評被害があった」が36.1%、「どちらかといえばあった」が44.4%で、8割を超えている。アンケートは「風評被害」と言っているが、海洋投棄は風評被害ではなく実害だ。海洋投棄に反対している中国や韓国が問題なのではなく、政府が海洋投棄を強行していることが問題なのである。
安全軽視の東電の体質変わらず
事故を起こした東電福島第一原発事故現場で、相次いで事故が起きている。
2023年10月25日
多核種除去設備(ALPS)で洗浄廃液が飛散し、カッパを来ていなかった作業員2人が最大0.9ミリシーベルトの被ばく
2024年2月7日
汚染水の除染設備を洗浄中、建屋外につながる排気口から廃液約1.5トンが漏出。排気口直下の土壌で、周辺の約350倍に当たる毎時7ミリシーベルトを測定
いずれも深刻な事故である。被ばくについての作業員に対する学習もなく、ずさんな管理で被ばくさせる。放射性物質の環境への拡散。これらは東電が事故から何の教訓もなく、いまだに儲け第一、安全軽視の体質が全く変わっていないことを示す。これでは第二、第三の福島第一原発事故が起きる可能性は否定できない。
福島第一原発のタンクにためられている水には、トリチウムが約860兆ベクレルも含まれ、建屋や炉内に約1200兆ベクレル残留していると推定されているが、はっきりしない。トリチウムだけではなく、セシウム134、セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素129などの放射性物質が残留し、タンク貯留水の約7割が基準超えだというのである。これでは明らかに汚染水である。政府は年間22兆ベクレルのトリチウムを海洋投棄する計画だ。事故以前は福島第一原発から海洋に投棄されていたトリチウムは年間1.5~2.5兆ベクレルだから、10倍も投棄するというのだ。しかも、事故で爆発し、超高レベルのデブリに触れたしろものである。
東電は「関係者の理解なしに、いかなる処分も行わない」と、汚染水について文書に明記して約束しながら、漁業者の反対を無視して海洋投棄を強行した。また、経産省は説明会も公聴会も行っていない。関係者の合意どころか、意見を聞こうともしない。
また、良心的な研究者から、海洋投棄ではない大型タンク貯留案やモルタル固化処分案など、実証済みの代替案が出されているのに、検討すらしない。
まさに、海洋投棄は暴挙であり、国内外からの批判は当然である。政府は海洋投棄を中止し、安全を第一に、代替案を検討すべきである。これ以上、環境汚染を拡大してはならない。 (沢)