-
2021.12.08
日本新聞
日本新聞 4444号記事 青森で米軍がタンク投棄、人命軽視の暴挙
三沢基地所属の米軍が民家の近くにタンクを投棄し、青森空港に緊急着陸。地元への連絡は4時間後。日米地位協定を盾に住民の安全無視
11月30日、午後6時10分頃に米軍三沢基地所属のF16戦闘機が青森空港に緊急着陸した。この米軍機は着陸直前に燃料タンク2個を投棄している。1個は深浦町役場や住宅近く(民家まで約20~30メートル)の国道周辺で見つかった。もう1個は深浦町の山林で、野菜集出荷施設の近く(300メートル)で見つかった。米軍は「非居住地域に投棄した」と発表したが、実際は民家近くであり、住民は怒りの声をあげている。
三村・青森県知事は三沢基地の副司令官に「大惨事を起こしかねなかったということを忘れないでいただきたい」と抗議し、防衛省で岸防衛相に「大惨事につながりかねない事故や、地域の実情を無視した事案が立て続けに発生している。米軍に対する県民感情は悪化の一途をたどっている」と述べた。深浦町の吉田町長は東北防衛局長との会見で、「ちょっとずれたら民家の屋根だった。訓練空域に町も組み込まれていると認識させられたので、安全管理については米軍にきつく申し上げたい」と語った。
「安全確認されるまでF16の飛行中止を」という日本側の要請も無視し、12月2日には三沢基地所属のF16が飛行しているのが確認されている。日本人の安全など眼中にもない姿勢がみてとれる。
相次ぐ米軍機事故、
立ちはだかる日米地
位協定
今回、米軍機は青森空港に緊急着陸し、8時間近くとどまった。しかし、日米地位協定によって日本側は警察でも機体に触れることもできず、米軍関係者の到着、対応を待つしかない。
2004年に沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落した時も、日本側が立ち入ることさえ許されなかった。日本は被害を受けながら、全く無権利であった。
11月には米軍普天間基地所属のオスプレイから住宅地に水筒が落ちたが、米軍は問い合わせがあるまで報告しなかった。
日米地位協定では、公務中の米兵が起こした事件の場合、日本は裁判権を有しないし日本の警察も介入できない。
2005年、厚木基地勤務の米兵が小学生3人をワゴン車ではねて逃走。警視庁が逮捕したが、「公務中」のため釈放。米側は裁判も行わず、減給処分のみ。
1985年~2004年に米兵の「公務中」の事件は7046件。そのうち軍事裁判を受けたのは1人、懲戒処分が318人である。
1995年には沖縄で小学生の女の子が米兵3人に拉致、強姦された「米兵による少女暴行事件」が起き、沖縄では大きな基地反対運動が起きた。この時も米軍は地位協定を理由に、3人の引き渡しを拒否した。
日本人の命や人権など何とも思わない事件が繰り返され、米軍はそれを問題にもしない。
ところが政府は繰り返される事件や事故に断固たる抗議をするどころか、アメリカの意のままに兵器を爆買いし、アメリカの基地建設費用や、米海兵隊のグアム移転費まで日本が出すのである。納得できる話ではない。そして2022年度以降、在日米軍に対する「思いやり予算」を大幅に増額するというのである。
なぜ日本が米軍を思いやらなくてはならないのか。少なくとも米軍は日本人の命など何とも思ってはいない。オスプレイなどの欠陥機を日本はアメリカでの価格の倍以上の額で購入している。いや、アメリカ自らも、他の国も買わないしろものを、である。
米軍が日本を守るというのは実際ではない。米軍との合同軍事演習は、日本が戦争に巻き込まれることにつながる。日本はアメリカと軍事同盟を組むのではなく、アジアの国々との経済協力、平和友好へと舵を切る時である。 (沢) -
2021.12.01
日本新聞
日本新聞 4443号記事 沖縄県知事が辺野古設計変更認めず
岸田政権も「辺野古移設が唯一の解決策」と沖縄の民意無視。基地などできない軟弱地盤に莫大な費用を浪費。辺野古新基地建設は中止に
11月25日、玉城・沖縄県知事は防衛省沖縄防衛局が県に出していた辺野古新基地設計変更の申請を不承認とした。これは埋め立て予定海域で見つかった軟弱地盤に対応するためのものであるという。
玉城知事は「完成の見通しが立たず、事実上、無意味な工事をこれ以上継続することは許されない」と語っている。
軟弱地盤はN値0で、“マヨネーズ状”と称されている。そのようなところに基地を造るなど不可能である。しかも最深90メートルというが、政府が改良工事を行うのは水深70メートルまでで、改良しない部分を残しての基地建設もあり得ない。
軟弱地盤改良のために、砂杭約7万1000本を海底に打ち込んで地盤を固めるために、さらに約353万3000立法メートルの海砂を採取しなければならない。土砂の増量も変更申請に含まれている。土砂の調達先は本部・国頭村地区だけだったのが、本島南部、宮古島、石垣島など7地区9市町村に拡大する。沖縄戦で犠牲となった人々の遺骨が残る土砂を米軍の基地に使うなど、全く許されないことだ。総工費は当初の3倍近い9300億円に膨れ上がり、工期も12年、これは政府の試算で実際はもっと増える可能性が大きい。
実現不可能な基地建設に、莫大な時間と費用をつぎ込む。儲けているのは大手ゼネコンだ。基地ができようができまいが、儲けさえすればいいというねらいが見えてくる。
「基地はいらない」と
いう沖縄の民意尊重を
1995年に米兵3人が女子小学生を強姦した。この事件を巡って、沖縄では米軍基地反対運動が高まった。県民大会には8万5000人が結集した。こうした運動の鎮静化をねらって、日米両政府が提示したのが1996年のSACO合意である。沖縄の11の米軍施設を返還するとして、沖縄の負担軽減策だといわれた。しかし実際は、老朽化し使い物にならないものを返還し、最新機能を備える基地強化であった。
このような姑息なやり方を見抜いた沖縄県民は、辺野古新基地に明確に反対の意思表示をした。選挙のたびに、辺野古新基地反対の候補を支持した。これに対して政府は「選挙は基地建設だけを問うものではないので、基地反対の民意とは言えない」とねじ曲げた。そのため、沖縄県民は2019年に辺野古基地建設だけを問う県民投票を行った。72%が反対票を投じた。
基地反対を、命をかけて貫いた翁長知事の後継者として、沖縄県民は玉城知事を誕生させた。今回、玉城知事が設計変更申請を承認しなかったのは当然である。
これまで玉城知事は何度も首相官邸を訪れたりして、沖縄県民は基地建設に反対だと訴え続けてきた。しかし、政府は聞く耳を持たなかった。岸田首相は安倍・菅内閣とは違うかのように登場したが、結局、「辺野古が唯一の解決策だ」と従来の自民党政権と全く同じ言葉を繰り返した。このようなことから、玉城知事は不承認で工事を阻止しようとしたのである。
これは国が沖縄の声を聞こうとしないことに対する対抗策である。国が真摯に沖縄県と話し合う姿勢をとったことは、残念ながら今まで一度もない。
玉城知事の不承認に対して、政府は対抗策を検討しているという。
11月23日には、普天間基地所属のオスプレイから宜野湾市野嵩の住宅街に金属製の水筒が落下した。米軍基地がある限り、基地周辺の住民は常に危険にさらされている。
政府は沖縄県を訴えるのではなく、基地建設を中止すべきである。
(沢) -
2021.11.24
日本新聞
日本新聞 4442号記事 沖縄戦場化に向かう軍事訓練中止を
11月下旬の自衛隊統合演習で、沖縄各地で大規模軍事訓練実施の計画。沖縄を再び戦場にする危険な動きに歯止めを。
平和が沖縄の民意
沖縄が軍事訓練の場とされている。
11月9日、宮古島と石垣島の北方海域で、航空自衛隊と米空軍が共同軍事訓練を行った。空自は救難捜索機U125AとUH60J救難ヘリコプターを1機ずつ、米空軍は垂直離着陸輸送機CV22オスプレイ、MC130J特殊作戦機が参加しての訓練であった。尖閣諸島に近い空海域での訓練で、中国に対する挑発である。
9日の軍事訓練を発表したのは2日後の11日である。この訓練に対して中国からどのような反応があったかについては、「運用、情報に関わるため、答えは控えたい」という。これでは沖縄の平和、沖縄県民の安全は守られない。
それだけではない。今月下旬(日時は明らかではない)、自衛隊統合演習の一環で、沖縄各地での軍事訓練が計画されている。
・石垣港に海上自衛隊の輸送班が寄港し、与那国島の祖納港との間で人員や車両の輸送訓練
・中城湾港に防衛省が借り上げた民間船で県外から部隊や物資を輸送する訓練
・宮古島で地対艦ミサイル部隊がシミュレーションによる模擬射撃実施
・北大東村の米軍沖大東 島射爆場で空自の戦闘 機や陸自のヘリコプタ ー、海自の護衛艦が実弾射撃訓練
自衛隊の統合演習は、隔年で行われる大規模軍事訓練である。沖縄各地が軍事訓練場として使われることは、とても危険なことである。訓練の中味は、日本が直接攻撃を受ける「武力攻撃事態」を想定したもので、まさに実戦さながらの訓練である。台湾有事や尖閣諸島周辺の緊迫化を意識したものだと言っているが、有事に備えたものではなく、有事を引き起こすものに他ならない。
沖縄での軍事訓練は、沖縄が標的にされる結果をつくる。再び沖縄を戦場とする危険な動きに歯止めをかけなくてはならない。
基地建設ではなく、
沖縄の自然を守る政
策を
50年前、琉球政府の屋良朝苗主席が佐藤栄作首
相に「建議書」を手渡した。日本復帰後の沖縄の将来像を示したものだという。「屋良建議書」の「はじめに」に次のように記されている。
「沖縄は、余りにも国家権力や基地権力の犠牲となり手段となって利用されすぎた。復帰という歴史の一大転換期にあたって、このような地位からも沖縄は脱出していかなければならない」
沖縄戦での犠牲、米軍統治下での軍事植民地状態にされた犠牲であり、沖縄戦で捨て石にされたこと、戦後も沖縄を日本から切り離したこと、沖縄に米軍を集中させたなどの「手段」を批判している。
「建議書」は、復帰後の沖縄の振興開発計画は地域住民の総意であること、国は県が策定した計画を財政的に保障すること、県民の意思に基づく計画に国は口を出さないことを明記している。米軍基地撤去、自衛隊の沖縄配備にも反対している。
「屋良建議書」を政府は何一つ守ろうとしてこなかった。いや、全く逆のことをしている。沖縄に基地を集中し、日米合同軍事訓練を繰り返している。辺野古新基地反対の民意を、何度も沖縄県民は繰り返し示してきたが、それを無視して、政府は建設を続けている。
11月19日には、「沖縄・奄美の世界自然遺産登録を記念する式典」が沖縄空手会館で行われ、「先人から受け継いだ自然を守る」と誓い合った。戦争は自然をことごとく破壊する。沖縄を軍事訓練の地、戦場へと向かわせてはならない。沖縄だけではなく、日本のどこにも米軍基地はいらないし、軍事訓練もいらない。戦争を避けるには平和・友好の外交以外にない。 (沢) -
2021.11.17
日本新聞
日本新聞 4441号記事 海自がオーストラリアの艦船を初の防護
米軍に次いで「武器等防護」の国を拡大。米国の中国包囲網に組みした挑発行為。戦争にまっしぐらに向かう日米豪印英の軍事同盟強化
12日、防衛省は海自の護衛艦「いなづま」がオーストラリア海軍のフリゲート艦ワラマンガに対して「武器等防護」を実施したと発表した。「武器等防護」は安保関連法を根拠としたもので、平時から他国の艦船や航空機を守る活動である。
これは明らかに憲法9条に違反する。憲法9条では、戦力を持たないこと、戦争しないことを明記している。他国の艦船を守ると言うが、つまり他国の艦船が攻撃される、あるいはその危険があると判断すれば、武器を使う。その結果、自衛隊が戦争に巻き込まれることは目に見えている。
安保関連法自体が憲法違反であり、違憲訴訟が行われている。しかしすでに、この戦争法を根拠として、米軍への武器等防護は2017年5月から実施されている。実施されたのは2017年2件、2018年16件、2019年14件、2020年25件にも上っている。憲法9条が闇に葬り去られようとしているのである。
日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4か国の軍事同盟「クアッド」は対中戦略体制である。これにイギリスが加わり、対中包囲網の構築をアメリカはねらっている。日本はあろうことか、この中心的役割を担おうとしている。来春にも「クアッド」の2回目の首脳会談を日本で開催する方向で調整が進められているというのである。中国への攻撃を検討する会議を隣国日本で開催する、これはまさに中国への挑発である。非常に危険な動きであり、止めなければならない。
軍事強化の
危険な動き
防衛省は12日、「防衛力強化加速会議」の第1回目の会合を開いた。ここでの議論を、安保戦略や防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の改定に反映させたいという。岸信夫防衛相は中国や朝鮮の軍事開発を念頭に、「あらゆる選択肢を排除せず、冷静かつ現実的な議論を突き詰めていくことが重要」と語ったという。「あらゆる選択肢」とは何を指しているのか。岸防衛相は安倍晋三元首相の実弟であり、岸信介元首相の孫である。岸信介は国務大臣の時に「名前が核兵器であれば憲法違反、そういう性質のものじゃない」と言っている。つまり核兵器を持つこともありうると言っている。安倍元首相は2018年1月26日の参院本会議で「国民の命と平和を守り抜くために、通常兵器に加えて核兵器による米国の抑止力を維持していくことが必要不可欠」と言っている。こうした姿勢と岸防衛相の「あらゆる選択肢を排除せず」とが符合することは否定できない。「防衛力強化加速会議」なるものを発足させ、軍事力強化にまい進しようとしていることは実に危険なことである。
「国民の命と平和を守り抜く」と称して、戦争への道に突き進むことを阻止しなくてはならない。
「覇権主義を強める中国」などと言うが、根拠は何か。これまで他国に戦争の火種をまき散らしてきたのは、アメリカである。日本がアメリカの軍事戦略に組みすることは、世界に多くの敵を作ることに他ならない。抑止力とは、アメリカの核の傘に入ることや、憲法9条を葬り去って戦争を合法化することではない。
本当の抑止力は、アジアの国々とともに発展していく道である。その意味でRCEP(東アジア包括的経済連携協定)が来年1月1日発効の見通しがついたことは、評価できる。
平和憲法9条を守り、アジアの国々とともに平和への道を切り開いていくことが、日本の歩むべき道である。(沢)