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2025.11.05
日本新聞
所信表明演説 軍備拡大打ち出す高市政権
4645号1面記事
所信表明演 説
軍備拡大打ち出す高市政権
日米同盟強化のため軍事費GDP比2%達成を今年度中に前倒し。原発推進、先端技術の農業で農家切り捨て。反戦、命を守る運動を
自民党と維新の会の連立政権・高市政権が発足した。
公明党が連立から離脱し、その自民にすり寄ったのが維新の会。国民民主党は「維新が連立組むなら教えてほしかった」と恨み節。「手取りを増やす」と聞こえのいい言葉で票を集めた国民民主だが、生活困窮の悪政を続けてきた自民と大差はないということだ。
衆参両院で自民を過半数割れに追い込んだのに、右寄り政党が多く、野党政権を作ることができない。
維新は「企業団体献金の廃止」を訴えていたが、自民と連立を組むや、それを引っ込めた。高市政権は、裏金議員を副大臣4人、政務官3人と、7人も起用している。
また、衆院議員定数の1割削減で自民と合意。これは比例定数の削減で、小政党が入れる可能性のある比例区を減らし、小政党をますます締め出すというものだ。更に、消費税削減も引っ込めた。
高市首相の所信表明演説に、自民と維新の連立政権が日本をどのような国にしようとしているのか、見て取れる。
軍事費増で命は守れない
10月24日、高市首相による所信表明演説が行われた。
はじめに、高市首相は「政権の基本方針と矛盾しない限り、各党からの政策提案を受け、議論する」と言っている。ここに大きな問題をはらむ。「政権の基本方針と矛盾しない限り」、では高市政権の方針に反対の意見には話し合いにも応じないということなのか。それでは民主主義の根幹を否定することである。
赤字に苦しむ医療機関、介護施設への対応、中小企業・小規模事業者、農林水産業を支援する推奨メニューを設けるなど、「いのちを守る」と列挙しているが、具体的に生きられる「メニュー」を早急に実行してほしいものだ。
しかし、農業については、「5年間の『農業構造転換集中対策機関』で世界トップレベルの植物工場、陸上養殖、衛星情報、AI分析、センサーなどの先端技術活用で輸出促進、稼げる農林水産業を創り出す」と言っている。企業が参入して儲ける農業をやるということだ。今、必要なのは日本の風土に合った農業のノウハウを知っている農家を守り、若者が希望をもって担える農業にしていくことだ。輸出で儲ける農業ではない。
「中国、北朝鮮、ロシアの軍事動向が深刻な懸念となっている」と言い、イスラエルのガザ大量虐殺については一言もない。イスラエルを支援しているアメリカにしたのだろうが、正義のかけらもない。
最も問題なのは、「防衛力の抜本的強化」として、軍事費のGDP比2%水準(2027年度までに達成)を補正予算と合わせて、今年度中に前倒しするというのである。そして来年中に「安保3文書」を改定して、軍事費を更に増やそうというのだ。
28日にトランプ大統領が来日する前に、何としても宣言しておきたかったのだろう。
原発推進、フュージョンエネルギーとしての核エネルギーにも力点を置いている。東電福島第一原発事故を全く教訓にしない非常に危険な政策だ。「外国人をき然と取り締まる」という排外主義も危険だ。
地方を守るための「地域未来戦略」の中味は、TSMC(台湾の半導体大手)やラピダス(日本の半導体大手)の熊本や北海道進出などのように、地方に産業クラスターを作るというもの。地方に産業をつくるには、地方の第一次産業を復活させ、それに伴う業種を増やすことが、生き生きした地域づくりになる。
軍備増強ではなく平和外交でアジアの国々と友好・連帯を。ますます右寄りで戦争へと向かう高市政権への監視を強め、反戦平和の運動を前進させよう。 (沢)
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2025.10.29
日本新聞
食料自給率38%では命を守れない
4644号1面記事
食料自給率38%では命を守れない
政府は自給率を上げ、安全な食を保障しなければならない。農薬まみれの作物、添加物満載の食品輸入に依存している現状から脱却を
2024年度の食料自給率は38%と発表されている。たったの38%である。世界各国の食料自給率は、
オーストラリア 247%
カナダ 177%
フランス 118%
アメリカ 101%
ドイツ 79%
となっている。日本の38%は余りにも低く、大問題である。
日本の食料自給率が低い理由を政府は「コメと野菜が中心の食生活から、パンと肉が中心の食生活に変わったから」と説明している。日本人の食生活がまるで自然に変わったかのように言っているが、それは全く違う。
戦争に負けて、日本はアメリカの余った小麦、大豆、トウモロコシの市場にされた。自然に米飯からパン食になったのではなく、アメリカの小麦を大量に輸入させられたからである。食で支配され、食生活を変えさせられたのである。アメリカから大量の小麦や大豆、牛乳や肉を大量に輸入させるためである。
そのために学校給食が使われた。次代を担う子ども達の食を米飯からパンに変えたのだ。
自給率38%では、もし輸入相手国(小麦ならアメリカ、カナダ、オーストラリア)が何らかの理由で(災害など)、日本向けの輸出ができないとなったらどうなるか。私たちはたちまち食べるものがなく、餓死の危険に直面するのだ。
政府は何十年も前から“食料自給率を45%にする”と目標に掲げながら、何の具体策もなく、輸入を続けている。それどころか、関税交渉では、アメリカの言うがままに、アメリカからの米の輸入拡大、農産物の輸入拡大を約束させられている。
農家を守ることが国を守ること
今、世界的にも日本食が見直されている。小麦より米の方が体にいいと言われている。パンもケーキも米で作れる。子ども達のおやつだって米で作れるし、食料油、畜産の飼料だって米に代えられる。海外への援助だって米でできる。1年分くらいの備蓄米を持つことも必要だ。
こう考えると、米が余るということはない。
日本の農家が米を作り続けられるように保障する、これが一番の国を守ることである。ところがありもしない「過保護農政」が宣伝され、食管制度(国が米や麦などの主要穀物を農家から買い取り、消費者に安く売る)も廃止されてしまった。それ以来、日本の農家は国からの補助もない中、食料を供給するのが責務だと頑張り続けてきたのだ。
60キロの米を作るのに1万5000円の経費がかかる。しかし近年では米価は1万円を切ったことさえある。昨年から米価が上がったとはいえ、30年前に戻ったに過ぎない。農家に生産費に見合った米価はもちろん、生きていける米価を国が保障しなければならない。そうすれば買う側も、米が高くて買えないという状況は解消できる。国が具体策を講じなければ、農家は廃業し、農村もなくなってしまう。
外国からの農薬たっぷりの野菜や果物が安全な食と言えるか。政府は残留農薬(栽培過程で使用した農薬が収穫後も残っている濃度)基準を緩和している。世界の動きと逆行している。アメリカ国内ではオーガニックが広まり、遺伝子組換えや農薬を使って栽培したものは売れないので、基準の緩い日本向けの農産物を作っている。
残留農薬基準緩和に加えて、日本では「無農薬」表示は禁止され、「遺伝子組換えでない」表示は「分別生産主流管理済み」に変えられ、全く意味が分からなくされている。
農薬を使わないで安全安心な食品を届けようとしている農家の努力も、安全なものを選びたいという消費者の意思をも踏みにじる政策である。
食を守ってこそ、他国に支配されない独立国と言える。 (沢)
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2025.10.22
日本新聞
新潟県に1000億円拠出で柏崎刈羽原発再稼働ねらう東電
4643号1面記事
新潟県に1000億円拠出で柏崎刈羽原発再稼働ねらう東電
新潟県知事は県民投票で県民の意思を確認すべき。福島第一原発事故も未収束、地震帯真只中の柏崎刈羽原発再稼働へと動く無謀な東電
東電が新潟県に対し、地域貢献策として計1000億円規模で資金を拠出する方針を発表した。新潟県がつくる基金に積み立てるという。東電は、柏崎刈羽原発再稼働への地元の理解を得るための拠出だとしている。
1000億円の金をやるから再稼働に賛成しろ、というのである。1000億円と再稼働への理解とは全く関係ない。金をもらったからといって、安全になるわけではない。
10日、柏崎刈羽原発から5〜30キロ圏内の7市町関係者が、原子力規制委員会、財務省、経産省、内閣府に、避難路整備などを求める要望書を提出した。磯田・長岡市長は「県の意識調査で東電に不信感をもっている県民が多かった。1000億円の基金で事態が変わることはない」と言っている。
避難路整備の要望の実現はほぼ不可能である。東電は原発事故の際には原発から5キロ圏内は屋外に避難する、5〜30キロ圏内は屋内退避としている。これも、能登半島地震の際に全く無理だと証明された。屋外に避難するにも道路が寸断された箇所が何か所もあり、車も通れない。屋内退避と言っても、家は崩れてそこにいられる状態ではない。ましてや新潟では冬の豪雪と原発事故が重なった場合、どうすればいいのか。東電は、5キロ圏内も、5〜30キロ圏内も屋内退避だと言っている。5キロ圏内は放射線量が高いからすぐさまそこを離れなければならないのに、屋内にいろと言うのである。そして5〜30キロ圏内は雪かきの時は屋外に出てもいいと。その場しのぎの論で話にならない。
解決策は一つしかない。再稼働しなければいいのだ。
8月末に政府は、原発立地自治体への財政支援を手厚くする「原発立地特措法」の対象地域を広げることを決めている。政府も東電も金で言うことを聞かせようとしているのである。
柏崎刈羽原発再稼働は不可能
柏崎刈羽原発は福島第一原発と同じ沸騰水型の原発である。東電は福島第一原発事故の収束の見通しも立っていないのに、柏崎刈羽原発の再稼働に踏み出そうとしている。全く不誠実な企業である。
花角新潟県知事は再稼働について、「県民に信を問う」と言うが、具体的な手立ては明らかにしていない。このため、2024年10月から「再稼働の是非を県民投票によって決めることを求める署名運動」が行われた。県民投票条例の直接請求に必要な約3万6000筆に対して、14万3196筆の署名が集まり、県議会に提出されたが、否決されたのである。
また、柏崎刈羽原発は信州・北陸に至る地震帯の真只中に位置しており、昔からマグニチュード7クラスの地震が頻発している地域だ。東電は原発設置時は海底活断層を活断層と認定していなかった。2003年に原子力安全保安院の指示で長さ20キロの活断層だと評価しなおしていたが、公表はしていなかった。2007年にマグニチュード6.8の中越沖地震が起き、設計上の想定を超える揺れに見舞われた。中越沖地震後、海底活断層を34キロの活断層と再評価した。
この海底活断層は50〜60キロの巨大な活断層から枝分かれしたもので、活断層全体が動いた場合はマグニチュード7.5クラスの地震を想定すべきだと指摘する専門家もいる。このような場所に原発を立地したこと自体、無謀極まりない。それに加えて東電の隠ぺい体質。福島第一原発事故も、15メートルを超える大津波を知りながら、それを隠して何の対策も取らなかったことが事故につながった。
二度と福島第一原発事故のような大惨事を引き起こしてはならない。原発を稼働させなくても電気は足りているのである。原発は再稼働ではなく、すべての原発廃炉が日本の取るべき道である。 (沢)
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2025.10.15
日本新聞
日本政府はパレスチナ国家承認を
4642号1面記事
日本政府はパレスチナ国家承認を
国連加盟国の159カ国がパレスチナ国家を承認。日本はアメリカに追随して承認せず。早急に国家承認し
イスラエルの虐殺をやめさせよ
イスラエルによるガザ虐殺は、国際的な非難が高まっているにもかかわらず強行されている。これまでガザの住民6万6000人以上が虐殺された。今も、いつ命が奪われるか知れない恐怖の中にいるのである。食料もなく、配給所にたどり着いた人々をめがけて、イスラエルが爆撃する。それでも命がけで配給所に向かうのだ。命をかけて。
イスラエルのネタニヤフ大統領は「パレスチナ民族などない。パレスチナ人を全滅させる」と公言している。ガザへの攻撃は、まさにパレスチナ人抹殺の蛮行である。
国際社会は「イスラエルとパレスチナの二国家共存」を訴えている。現在、国連加盟国193カ国のうち159カ国がパレスチナ国家を承認している。
ところが日本は数少ない未承認国なのである。岩屋外相は「承認するかしないかではなく、いつ承認するかだ。日本は二国家解決の立場を堅持しており、二国家解決が一貫した立場だ。二国家解決の土台が完全に崩されるような事態に発展すれば考える」と言っている。では今の事態をどうとらえているのか。これでも土台が崩されていないというのか。
市民団体との交渉に不誠実な外務省
このような中、10月1日、「ジェノサイドをとめろ!イスラエルに制裁を!10.1外務省交渉」が「パレスチナに平和を!緊急行動」と「ガザ緊急アクションなごや」の共催で行われた。これに先立って、防衛省、経産省、厚労省との交渉が行われたが、外務省は「外相の国連出席などで忙しく、一人も交渉に出せない」とドタキャンし、10月1日に引き延ばしになったという。
質問は、
1、これほど事態が悪化した今となっても、国家承認や制裁に踏み切らない理由は何か
2、岩屋外相が会見で話した二国家解決の土台が完全に崩される事態とはどのような事態を指すのか
3、あらゆる選択肢を検討すると言ったが、どのようなものを想定しているのか
1の答え
国家承認するかしないかではなくいつするか。最も効果的かつ実効的なタイミングを総合的に検討している。
2の答え
具体的にどのような事態と答えるのは難しい。二国家解決の実現や中東地域の平和、安定は重要なので外交努力を続けていく。
3の答え
今の時点で具体的な措置内容について判断するのは難しい。
何も答えていないと言っても過言ではない。
イスラエルのネタニヤフ首相やガラント前国防相は、国際刑事裁判所(ICC)から「人道に対する罪と戦争犯罪」の容疑で逮捕状が出されている。日本は2007年からICC加盟国である。ICCで有罪とされたイスラエルのガザ虐殺に断固とした姿勢を取るのが当然である。国際社会が足並みをそろえて、イスラエルの蛮行をやめさせるためのパレスチナ国家承認にも背を向ける。イスラエルを後押しするアメリカの言いなりである。
トランプ大統領は「イスラエルと和平案に合意した」と発表した。しかしその中味はガザの平和を約束したものではない。
ハマスに対して降伏、武装解除、人質の即時引き渡し、ガザ統治からの排除、つまり無条件降伏を突きつけた。一方でイスラエルに対しては、軍事行動停止の期限付きの約束はなく、ガザに軍隊駐留を続けられるとネタニヤフは解釈している。トランプ大統領は「ハマスがこの和平計画を拒否すれば、アメリカはイスラエルの攻撃を全面的に支持する」とまで発言している。
ガザの平和は即時停戦以外にはかち取れない。(沢)