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2023.10.04
日本新聞
日本新聞 4537号記事 辺野古埋め立て 国交相、沖縄県知事に設計変更承認指示の暴挙
沖縄戦を強いられた県民の民意は戦争反対、基地反対。
全県的な反戦組織「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」発足で反戦の団結強まる
9月28日、斉藤国土交通相は、沖縄県・玉城知事に対して、軟弱地盤の辺野古北側の埋め立て設計変更申請を承認するように指示を出した。軟弱地盤に基地をつくることは無謀であり、埋め立てを承認しないのは当然である。
沖縄県民は、沖縄戦で言葉に尽くせないほどの悲惨な経験をしている。肉親を失い、友を失い、すべてを失った。その中から、今日の沖縄を作り上げてきたのである。二度と戦争をしてはならない、これは沖縄県民の変わらぬ民意である。基地建設は決して認められないのである。
第二次世界大戦末期、日本の敗戦は明らかで避けられない、降伏するしか道はない、という時に、沖縄を捨て石として戦場にした。そのため、沖縄県民の4分の1が犠牲となったのである。
沖縄県民の思いを無視して、日本政府は沖縄復帰後も、沖縄に基地を押し付けてきた。沖縄の人々は「すでにある米軍基地は奪い取られた基地だ。しかし、辺野古新基地は差し出す基地だ。絶対に認めるわけにはいかない」と話している。
沖縄県知事が設計変更を承認しなければ、辺野古の工事は進められない。これに対して防衛省は国交相に、沖縄県の不承認を取り消すよう、行政不服審査法に基づいて審査請求した。
行政不服審査法は、行政から不当な処分を受けた国民の救済のためのものだ。防衛省沖縄防衛局が「私人」として訴え、国交相が判断する、これは成り立たない。ところがこれを行使し、国交相が沖縄県知事に承認を指示したのである。
つまり国のやり方に対して、自治体が意見を言うことなど認めないのだ。玉城知事が承認指示に従わなければ、国が県に代わって承認する「代執行」のための訴訟を高裁に起こすという段取りである。これでは国が何でも好き勝手に出来、国と地方自治体が対等になったなど、全くの建前で実際は全く違う。
沖縄県民の反戦運動を全国に広げよう
沖縄で全県的な反戦組織「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」が発足し、9月24日、那覇市でキックオフ集会が開かれた。11月23日に那覇市で1万人規模の県民大会を開く予定。
共同代表の具志堅隆松さんは、沖縄戦で犠牲になって遺骨さえもわからなくなってしまった人たちが多くいる中、遺骨発掘を続けている「ガマフヤー」代表である。具志堅さんは「相手を攻撃できる基地があれば攻撃の対象になる。沖縄に配備されたミサイルを撤去してほしい。そうでないと私たちの生存が厳しくなる」と語っている。
今、沖縄を含む南西諸島にミサイル基地が造られ、自衛隊が配置されている。アメリカは「台湾有事」を喧伝し、今にも中国が台湾を攻撃するかのように煽っている。日本政府も「台湾有事」を叫びたて、南西諸島の軍事要塞化を進めている。
果たして「台湾有事」は本当だろうか。台湾の世論調査では6割以上が現状維持を意思表示している。20代の若者では80%以上である。独立派が多数ではない中で、「台湾有事」は現実のものではない。
アメリカはすでに経済力では中国に抜かれている。アメリカと中国の力関係が逆転するのは、時間の問題である。だからアメリカは日本や韓国に中国と戦わせて叩く、これがアメリカの戦略である。この戦略にまんまと乗っているのが日本政府である。
戦争に向かう道ではなく、かつての侵略戦争の加害の事実を認め、アジアの国々と友好・連帯を築いていくのが日本の進むべき道である。 (沢) -
2023.09.27
日本新聞
日本新聞 4536号記事 安保法制強行成立から8年 戦争に向かう日本に歯止めを
安保関連法で集団的自衛権の行使を可能にし、昨年の安保3文書で敵基地攻撃能力保有打ち出した政府。日米軍事同盟強化は戦争への道
2015年9月19日、安倍政権(当時)は安保関連法案(11の法案を束ねて一括採決)の強行成立を行った。国会前では連日、強行採決に反対し、抗議の声があげられていた。全国でも抗議行動が行われた。にもかかわらず、強行採決、成立させたのである。
安保法制によって、集団的自衛権が可能にされ、日米軍事同盟がますます強化された。アメリカとの合同軍事訓練は、安保法制成立前の3年間では64回だったものが、成立後の3年間では242回と急激に増えている。アメリカだけではなく、オーストラリア、イギリスとも合同訓練が増えた。イギリスとは合同訓練などしなかったのに、6回行い、オーストラリアとは4回から9回に増えている。
そして昨年12月の安保3文書によって、敵基地攻撃能力を保有するに至ったのである。
政府は「日米一体化、日本の軍事力増強は、抑止力となる」と言うが、果たしてそうだろうか。今、アメリカは「台湾有事」をあおり立てている。「台湾有事」に備えるという名目で、沖縄を含む南西諸島に自衛隊のミサイル基地が次々造られた。米軍がそこからミサイルを撃つ。ミサイルを積んだトラックで島中を移動しながら、ミサイルを撃つ。そうなれば島全体が戦場になる。その後、自衛隊が迎え撃つシナリオだ。島民にシェルターに避難する訓練をさせているというが、島民を犠牲にするのか。
アメリカは以前から「アジアの戦争はアジア人同士を戦わせる」と言ってきた。アメリカとの一体化は日本を守らない。同盟国アメリカに攻撃する国に対して自衛隊が攻撃する。これは日本がアメリカの戦争に巻き込まれることである。アメリカに加担しなければ、日本が戦場になることはない。日米一体化は抑止力どころか、戦争に突入する危険をもたらす。
憲法9条を守り戦争しない日本に
安倍政権は、改憲手続きもせず、解釈改憲で集団的自衛権の行使を閣議決定した。これほど重要なことを閣議決定で決められるわけがないが、決めてしまった。
集団的自衛権の行使も、敵基地攻撃能力も、不戦、戦力不保持の憲法9条に明らかに違反している。9条をそのままで、決して成り立たないことである。全く無法である。
憲法9条は、戦後の焼け野原の日本で、食料にも事欠く中で、二度と戦争してはならないという強い思いで、決められた大切なものである。戦争は何もかも奪い尽くすもので、プラスになることはひとつもない。不戦を誓い、命を守っていこうという決意である。この憲法9条を形骸化させ、軍事費を2倍にし、軍備強化に拍車をかけている。
日米韓首脳会談で確認した結束とは一体何か。日本と韓国がアメリカの手足となって、アメリカの世界戦略の下で、アメリカと共に闘う、実際は戦わせられるのだ。
そこに日本の未来はあるか。岸田首相は、日本が加盟してもいない軍事同盟NATO首脳会議に、昨年6月に続き、今年7月にも出席した。これも憲法違反である。決して認められないことなのに、マスコミは口をつぐんでいる。国会で徹底討論したという話も聞かない。NATOで日本は「パートナー国」に位置づけられているというが、日本は欧米の一員ではなく、アジアの一員である。アジアの国々と力を合わせて生きるのが、日本の取るべき進路である。それが平和への道である。
(沢) -
2023.09.20
日本新聞
日本新聞 4535号記事 3.11 子ども甲状腺がん裁判
子どもの命を守る闘い
「治療のいらない軽微ながん」と非情な言葉を吐きつける東電側。公表でも358人の小児甲状腺がん発症。原因が原発事故なのは余りに明白
東電福島第一原発事故から12年半の歳月が流れた。しかし事故による被害はいまだに続いている。政府は放射性汚染水の海洋投棄を国内外の中止要請に耳を傾けることもなく、8月24日に強行した。中国を始め、国際世論の批判を浴びている。
9月13日、東京地裁において、3.11子ども甲状腺がん裁判の第7回口頭弁論が行われた。地裁前には200名以上が駆けつけ、83名が傍聴した。
裁判の前に、地裁前での集会が行われた。
弁護団から、今回から裁判長が代わることが報告された。これまで原告7人全員の意見陳述が終わっている。新しい裁判長は何も聞いていない。新たな裁判長に対して、弁護団は、原告2人の意見陳述の時間を取ってほしいと要望を出したが、それが実現できる見込みが今のところないという。井戸弁護団長は、「裁判の前の進行協議で、次回以降、原告の声を直接裁判長に届けられるよう要求していく」と話した。そして、東電と原告側の一番の争点は、潜在がんなのか被ばく由来なのかという点だ。執刀した鈴木医師は「甲状腺がんは非常に進行している」と論文に記している。これに対する東電側の反論は何も反論になっていないことが指摘された。
古川弁護士は「原告の一人は来週末に検査をし、すでに2回手術をしているが、結果を見て、次の手術をどうするか判断する。不安な気持ちを話していた。裁判所には原告の声をきちんと聞いてもらいたい」と訴えた。
あじさいの会共同代表の牛山元美医師は「甲状腺がんは放っておいてもいいがんというものではない。病気に悩んで人生が変わってしまった子ども達の実際をみてほしい。裁判に関わって、たくさんの支援の方がいることが、大きな励ましになっている。最近一番気になったのは、疫学の専門家たちが“被ばくの影響かもしれないということ自体が、被ばくした社会の復興を妨げる”と言っている。だからこそ、真実を訴えなければならない」と語った。
福島の小児甲状腺がん多発は原発事故由来
裁判では鈴木弁護士がプレゼンをおこなった。小児甲状腺がんが通常は100万人に1人か2人、事故後、福島では事故当時18歳未満の子ども38万人の健康調査を行った。その結果、1巡目で187例、2巡目で125例の甲状腺がん、あるいは疑いがみつかった。しかも、その77.6%でリンパ節転移が確認された。これを東電はスクリーニング検査の結果だと言う。調べなければ生涯わからない、治療の必要もないがんだというのだ。これについて、鈴木弁護士は明確に否定した。
東電は「甲状腺がん多発と原発事故との因果関係はない」という根拠に、UNSCEARの報告書を論拠にしている。ところが裁判で、UNSCEARの報告書のデータの開き方を質問している。つまり、報告書を見もせずに論拠としているのである。これでは話にならない。
報告会では、UNSCEARがビキニ水爆実験による被爆が問題になって、放射能汚染に対する国際的な関心が高まった時に、それを抑えるために作られた機関であると指摘された。
福島からの避難者で、大阪で裁判闘争を闘っている森松さんは、「原告を孤立させないでほしい。甲状腺がん多発は事実だ。原告を支えていこう」と力強く訴えた。
新たに副団長となった杉浦弁護士は「裁判はまさに被害の問題になる。原告に寄り添うことが大事」、同じく副団長の斉藤弁護士は「声をあげた原告がさまざま言われる。それを守ろうと参加した。原告達が怖がらずに声をあげれるよう支えていく」と語った。
国と組んで権力でごり押ししてくる東電側。それに対して若者たちを守る良心の闘い、子ども達の命を守る闘いである。 (沢) -
2023.09.13
日本新聞
日本新聞 4534号記事 沖縄の民意踏みにじる沖縄県敗訴判決
辺野古・軟弱地盤の埋め立て認めぬ県の判断は正当。政府は沖縄の負担軽減を口先ではなく実現すべき。基地のない自然豊かな沖縄に
4日、最高裁は、沖縄県への国交相の「是正の指示」を違法として取り消しを求めた沖縄県の訴訟で、沖縄県の上告を棄却した。これによって沖縄県の敗訴が確定した。
沖縄県の玉城知事は軟弱地盤改良工事を不承認とした。これに対して国土交通相が「是正の指示」を出した。それを違法として、沖縄県が取り消しを求めて訴訟を起こした。
仲井真・元知事が埋め立てを承認したというが、その後、埋め立て予定地の軟弱地盤が発見されたのである。マヨネーズ上の軟弱地盤に軍事基地を建設するなど、余りにも無謀なことであり、玉城知事が承認しないのは当然である。ところが防衛省はいつものやり方で、国交相に行政不服審査法に基づいて不服審査請求した。国交相はそれを受けて、沖縄県に「是正の指示」つまり、埋め立てを認めるよう指示した。
そもそも、行政不服審査とは、行政による違法な、あるいは不当な処分や公権力の行使によって不利益を受けた国民の権利を守るためのものである。
同じく行政庁である防衛省が国交省に請求するものではない。政府内だから、国交相はいつも防衛省の側につく。これは沖縄県が主張するように、全く違法である。
これを正当に裁かなければならない裁判所もまた、防衛省側につき、沖縄県の訴えを却下してしまう。これでは三権分立ではなく、三権忖度であり、権力のある方が常に勝ち、無法が通ることになる。
今回の判決もまた然りである。
敗訴が確定したからと沖縄県が、改良工事を承認することはないだろう。基地建設反対が沖縄の民意だからである。沖縄県が改良工事の設計変更を承認しなければ、国が代執行することが考えられる。
これでは沖縄県の権利は何もなく、政府と沖縄県の関係は最悪状態になる。
基地のない沖縄が沖縄県民の願い
沖縄県は広さから言ったら全国の0.6%にすぎない。その沖縄に今も全国の7割の米軍基地が集中している。政府は「沖縄の負担軽減」を叫ぶが実際はどうか。
宜野湾市にある米軍普天間基地は、住宅地のどまん中にあり、学校などと隣接しており、「世界で一番危険な基地」と言われている。普天間基地の返還は一刻も早く行われなければならない。しかも無条件で返還されるべきものである。
ところが、普天間基地の返還は代替え基地ができなければ行われないというのが、日米両政府の取り決めである。そして「辺野古が唯一の方法」と、辺野古新基地建設工事を強行している。
沖縄県民が、基地建設反対の知事を何度当選させても、政府は「選挙は基地問題だけを問うものではないから、選挙に勝ったことが基地建設反対とイコールにはならない」と強弁した。そのため辺野古移設を問う県民投票を行い、沖縄県民の民意が基地建設反対であることを示した。それでも政府は民意に従おうとせず、基地建設をやめない。
2000年施行の地方分権一括法は、国と地方の関係は上下・主従の関係ではなく、対等・協力の関係に変わったことになっている。しかし、国と沖縄の関係には、全く適用されていない。政府は沖縄の声を全く無視している。黙って国に従えという理不尽を強いている。
沖縄だけではなく、南西諸島をミサイル基地にして、戦争に巻き込もうとしている。豊かな自然をことごとく破壊してしまう戦場にすることは、絶対に許されない。
沖縄を始め、南西諸島に軍事基地はいらない。戦争ではなく平和への道を歩もう。 (沢)