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2024.07.03
日本新聞
沖縄の自治、人権踏みにじる日米両政府
4576号1面記事
沖縄の自治、人権踏みにじる日米両政府
政府は起訴後3カ月も事件を隠す暴挙。5月26日にも女性暴行事件。辺野古土砂搬出現場の抗議活動中、ダンプ衝突で警備員死亡、女性重傷
昨年12月、沖縄で16歳未満の少女が米兵に誘拐・性的暴行された。この事件は3月27日に起訴されていたが、政府は沖縄県に隠していた。事件がわかったのは6月25日のことだった。沖縄県議選の投開票日は6月16日。事件の発表は沖縄県議選が終わるまで隠されていたという可能性も考えられる。
5月26日にも米海兵隊員が、性的暴行をしようと女性を襲い、2週間のけがをさせる事件が起きている。昨年12月の事件を早期に発表していれば、この事件を防ぐことができたかもしれない。
米軍側は日本人が被害にあっても、誠意ある対応はない。彼らにとって日本人は“ジャップ”でしかないのだ。そして日本政府は断固とした抗議を行わず、身柄の引き渡しも要求しない。沖縄県民の人権も沖縄の自治も踏みにじり続けている。
今回の事件を受けて、「オール沖縄」、「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」、「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」などの団体が、日米両政府、米軍に対して、謝罪と心のケアを求めて抗議声明を出している。
1995年にも、米兵による少女暴行事件が起き、抗議の県民大会には11万人を超える人が結集し、怒りをぶつけた。しかし、30年近く経った今も、状況は変わっていないのである。
5月にも暴行事件が起きていたことについて、玉城知事は、「このような非人道的で卑劣な犯罪が再び発覚したということは、断じて許されるものではない。強い憤りを禁じ得ない。情報を把握していれば、米国や国に対してしっかりと申し入れ、我々も被害が発生することがないように注意を認識できた。非常に残念」と述べた。
沖縄をないがしろにする政治を変えていかなければならない。
辺野古の土砂搬出現場
で死傷事故
6月28日、沖縄県名護市安和の国道で、警備員と土砂搬出抗議行動の女性がダンプにひかれた。警備員の男性は死亡、女性は足を骨折するなどの重傷を負った。
辺野古新基地建設については、沖縄県民は選挙でも住民投票でも反対の意思表示を明白にしている。玉城知事も基地反対を訴えて知事に選ばれた人で、県民とともに基地建設反対を貫いている。
辺野古大浦湾にマヨネーズ状の軟弱地盤の存在が明らかになった。そのため、国は埋め立て計画の変更を余儀なくされ、沖縄県に承認を求めていた。
基地を造ること自体、県民の民意に反しているし、ましてや軟弱地盤に基地建設などとんでもない。玉城知事は埋め立て計画の変更を承認しない。ところが国は知事の合意がなければ国が代執行できると、辺野古の工事を強行している。
これはあってはならないことである。国と地方は対等であり、国は地方自治を尊重しなくてはならない。(最近、それを覆す悪法が成立したが)ところが国は、何が何でも辺野古新基地建設を強行する姿勢である。
これでは沖縄戦の二の舞ではないか。唯一の地上戦である沖縄戦で、沖縄県民の4人に1人が犠牲となった。戦いを望まない沖縄の人々が戦場にかり出され、命を失った。
今も、沖縄県民が望まない基地(米軍基地も自衛隊基地も)が、南西諸島に次々造られ、戦場にされようとしている。
“軍隊は住民を守らない”これが沖縄戦で思い知らされた真実である。米兵による少女暴行事件、基地建設現場での死傷事件、すべて戦争に向かうことによる犠牲である。
平和を愛する沖縄の民意を政府は守るべきである。基地はいらない。戦争の準備を中止すべきである。 (沢)
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2024.06.26
日本新聞
沖縄慰霊の日 南西諸島の軍事要塞化に反対
4575号1面記事
沖縄慰霊の日
南西諸島の軍事要塞化に反対
唯一地上戦を強いられた沖縄戦。6月23日の慰霊の日、多くの県民が
平和の礎を訪れ霊を悼んだ。沖縄戦を繰り返させない反戦の運動を
6月23日は沖縄慰霊の日である。1945年6月23日、陸軍第32軍の牛島司令官が自決したため、日本軍による組織的な戦闘が終わった。この日を沖縄県では慰霊の日として、沖縄戦の犠牲者を悼み、毎年、沖縄戦全戦没者慰霊祭を行っている。
玉城知事は次のように平和宣言した。
「沖縄戦から、平和の大切さ、命の尊さを学んだ。あの戦争から79年、今も広大な米軍基地、それによる事件・事故、環境問題。そして安保3文書などによる自衛隊の急激な配備拡大など、祖先は一体どのような思いで見ているだろうか。
沖縄の本土復帰の時、日本政府は、沖縄を平和の島とし、国際的な経済的文化的交流の新たな舞台とすることこそ、多くの霊を慰めることだと、声明を出した。
米軍基地の整備縮小、普天間基地返還、辺野古新基地断念を求める。戦争につながる一切の行為を否定し、人間の尊厳を重く見る、人間の安全保障、より高次な平和を求める。この島が世界の恒久平和に貢献する国際平和総合拠点となるよう、全身全霊取り組んでいく」と宣言した。
岸田首相があいさつに立つと、「沖縄を守ってくれ!」「沖縄を戦場にするな!」という声が何度も起こった。
岸田首相は「沖縄戦の悲惨な歴史を思うと、胸がふさがる思い」だと言い、「戦争の惨禍を二度と繰り返さないと御霊に誓う」と言ったが、一体どんな気持ちで言っているのか、怒りが湧いた。沖縄を含む南西諸島にミサイル基地を造り、自衛隊を配備し、強大な軍事基地化している。アメリカが煽り立てる「台湾有事」に対応するとばかりに軍事費倍増、5年間で43兆円である。能登半島地震の被災地では、いまだに水道も復旧していない地域が多いというのに。言ってることとやってることが、余りにも違う。御霊にこれほどの嘘を平気で誓える人間に、私たちの未来を任せてはおけないと、強く思う。
沖縄を戦場にするな
79年前の沖縄戦で住民が辛酸をなめさせられたのは、日本軍によるところが大きい。集団自決の惨劇も、日本軍がいるところで引き起こされた。
6月23日が組織的戦闘終結の日と言われているが、実際には、この日以降が最も犠牲者が多かった。牛島司令官は自決したが、「最後まで闘え」と命じる遺書を遺した。このため、最後の闘いだと命を散らさせられた兵士が多かった。「捕虜になるよりは死を選べ」という愚かな教えが、生きられる人をも殺したのだ。ひめゆり学徒などは、6月23日の終結宣言以来、自分で逃げることを強いられた。日本軍が守ることなどなかった。6月23日以後の犠牲者が最も多かったのである。
沖縄戦の教訓を沖縄県民は知っている。だから新基地建設に反対しているのだ。
ところが政府は沖縄県に対して、8月1日から辺野古の大浦湾での軟弱地盤の本格工事に着工すると宣言したのである。沖縄県民は辺野古新基地建設に反対し、玉城知事を選んだのである。その沖縄の民意を全く無視して、新基地建設を強行するというのである。これが「戦争の惨禍を二度と繰り返さないと御霊に誓う」政府のやることか。マヨネーズ状の軟弱地盤に7万本もの砂杭を打ち込むという。軟弱地盤に基地を建設すること自体、土台無理なことであり、ゼネコンの儲けのためなのは明白だ。
慰霊の日に沖縄県民をだまそうとするのではなく、平和の島にすると言ったら、その実現に向かうべきである。
沖縄慰霊の日、反戦の思いを新たに運動を前進させよう。 (沢)
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2024.06.19
日本新聞
311子ども甲状腺がん裁判 第10回口頭弁論 東電は責任認め被害者に補償を
4574号1面記事
311子ども甲状腺がん裁判
第10回口頭弁論
東電は責任認め被害者に補償を
「福島の子ども達のがんは潜在がんで治療の必要もないもの」と言い放つ東電。今も苦しみ続ける被害者をムチ打つ無責任な姿勢を問う
6月12日、「311子ども甲状腺がん裁判」の第10回口頭弁論が行われた。86席の傍聴席に対して191人がかけつけた。「まだ被ばくのことを言っているのか」などのバッシングにさらされながら闘い続けている青年達を支援したい、応援している人がいるんだよというエールだ。
裁判では、原告側の弁護士が、「進行がんでも潜在がんなのか。被告の東電は“治療の必要はない”と言うが、果たしてそうなのか。福島県立医大の鈴木眞一教授は『通常と同じ』と言うが、通常は治療している。摘出しないで経過観察するなど、そのような例は小児甲状腺がんにはない。また、高野医師は“若年層の甲状腺がんは頸部の大きな腫瘤や肺転移など進行した状態で発見されるが、予後は極めて良好。30年以上生存率99%”と述べているが、これは実際ではない」と指摘した。
原告の青年達も何度も再発して手術したり、苦しいアイソトープ治療を繰り返している。青年達の実際を無視し、“予後は良好”などと、医師の立場からよく言えるものだ。
そして被告の言うスクリーニング効果。問題ではないのに、調べたために小児甲状腺がんが多数みつかったという論だ。しかし鈴木教授は、自分が手術した患者で、必要のない手術は一例もないと言っている。では原発事故によって被ばくしたのが原因でしょうという質問には答えない。
それにしても、何度も何度もスクリーニング効果ではないと、原告側弁護団は指摘しているが、被告東電は認めない。原発事故と子ども達のがんとの因果関係を認めたくないからだ。余りにも誠意がない。
メディアは公正な報道
を、裁判所は正しい判
断を
報告会では原告2さんの訴えを聞いた。
――がんと診断を受けてから10年、過酷でつらい治療を受けたが、病状は今も進行している。自分はあとどのくらい健康で生きられるのかと考える。腫瘍マーカーの値はじりじりと上がっている。治療はアイソトープ治療しかないが、効果がない。治療にかけた時間はすべて無駄だったと感じる。常に体調が悪い。
中学の頃から、東京の企業に入って自分の得意分野で活躍したいと思っていた。受験準備が間に合わず、進学先を変えたが、再発のため、退学。病気を人に知られないように、小さくなって暮らしている。
また、夢に向かって通信教育を受けている。もうすぐ30歳、夢の実現は難しい。厳しい体調で不安だ。
最初の意見陳述で支援者の方から“ありがとう”と言ってもらって、この裁判への意識が変わった。この裁判の主役は私たち原告なんだ。これからも、自分がその場にいて、自分の目で見て、その瞬間を見届けていきたい。これからも原告達とともに最後まで一緒に闘いたい。そして、声をあげられずに一人苦しんでいる甲状腺ガンを患っている一人一人の力になりたい ――
堂々とした訴えだった。
次に各弁護士から裁判の中味について話された。
柳原弁護士の「学生時代、生活保護不正受給の裁判で、本人尋問の中味で“お金がなくてメガネを買えなかった。黒板の字が見えなくて、何も勉強できなかった”というのを聞いた。裁判はこういう声を届けなければならないと思った。原告2さんは意見陳述で生まれ変わった。毎日泣きながら文章を書いた。それを聞いて感動した裁判官は異動になった。これを新しい裁判官に伝えなければならない。原告2さんは理不尽に屈しない人になった。原告さんの生の声をこれからも大事にしたい」という訴えは会場にしみわたった。
井戸弁護団長は「次回から原告の要旨説明の道が開けた。12月、3月の期日で東電が反論する予定。裁判も大詰めになってきたが、メディアが報じない。そのために知らない人が多い。社会的世論を大きくしていくために、これからも協力してほしい」と呼びかけた。
被害者が小さくなって生きらされ、加害者の東電は次の再稼働をねらう、これは明らかに間違っている。
メディアは真実を報じるべきだし、裁判所には正しい判断を求めるものである。(沢)
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2024.06.12
日本新聞
4573号 難民申請中の強制送還認める改悪入管法施行
4573号1面記事
難民申請中の強制送還認める改悪入管法施行
ウィシュマさん虐待死事件当時より更にひどい悪法。難民申請3回目以降の人は強制送還可能に。難民を受け入れない日本の制度が問題
「改正入管法」が10日、施行された。
入管法を巡ってはさまざまな問題があった。入管法は、日本への入国や出国の管理、在留資格や不法滞在、難民の認定手続きなどに関して決められた法律である。
2019年の入管法改定は、日本の人手不足を補うために、外国人受け入れ政策を見直し・拡大した。そのために新しい在留資格「特定技能」が創設された。一定の専門性・技能がある外国人を即戦力として受け入れることを可能にする、と言われたが、実際は単純労働を含む幅広い業務が可能になった。また、技能実習から特定技能への移行が可能となった。技能実習生は最長5年しか日本に在留できなかったが、特定技能に移行することで、引き続き働くことが可能になった。
それもこれも日本の労働力不足を補うためである。外国人労働者がいなければ日本は回らない、外国人労働者に助けられている。それなら、外国人労働者が安心して働けるような制度にすべきである。
2021年にも「入管法改正案」が国会に提出されたが、批判の声が強く、取り下げとなった。
2021年3月6日、名古屋入管に収監中のスリランカ人女性ウィシュマさんが死亡した。体調不良を訴え続けていたのに、入管側は適切な処置もせず放置した。この事件によって、入管による収監者への扱いが問題視された。
その直後の法案提出で、収監者への取り扱いや難民認定制度の改正が取り上げられているかと思いきや、それと真逆であったために、取り下げとなったのである。
「改正入管法」の
何が問題なのか
10日に施行された「改正入管法」は、2021年に取り下げになった「改正案」がほとんどそのまま引き継がれている。
最大の問題点は、3回目の難民申請以降は「難民認定すべき相当の理由」を示さなければ送還するという点だ。「相当の理由」は紛争などの本国の情勢に変化があったなどが挙げられるというが、それ以前から身の危険を感じて国を逃れてきた人はどうなるのか。変化がなくとも送還によって命の危険にさらされる可能性があるのだ。
日本は難民条約に加入している。それなのに、難民受け入れは極端に少ない。2022年の難民認定率は、イギリス68.6%、カナダ59.2%、アメリカ45.7%に対して、日本はわずか2.0%202人にとどまっている。
本来、難民に認定されて当然の人が認められないため、何度も何度も申請せざるを得ない。それを、3回目の申請以降は強制送還する、これはとんでもないことである。
他にも問題は多い。
入管が認めた「監理人」(親族や支援者)の下で生活できるようにする。一見いいようだが、3カ月ごとに、入管施設への収容継続の必要性を判断する、という条件が付けられている。「監理人」にも責任がかかり、「監理人」の負担も大きい。
更に、送還に必要な旅券の申請を命じられて拒否したり、送還の飛行機内で暴れたりした場合の刑事罰を新設。送還が命に関わる場合、命がけで拒否するのは当然のことである。有無を言わせず罪人にして送還する、これが難民条約に加入した国のやることなのか。
小泉法相は「改正入管法」について、「保護すべき者を確実に保護し、ルールに違反した者は厳正に対処する。日本人と外国人が尊重し合うバランスのとれた共生社会の基盤をつくるという考え方によって成り立っている」と持ち上げている。
外国人を安価な労働力として酷使し、「いつでも強制送還できる」と脅す。どこがバランスのとれた共生社会なのか。
日本社会にとって、外国人労働者はなくてはならないパートナーである。共に安心して働ける法制度を作ることが、今求められているのである。 (沢)