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2024.06.05
日本新聞
4572号「農政の憲法」を改悪、農業壊滅への道
4572号1面記事
「農政の憲法」を改悪、農業壊滅への道
食料自給率38%の危機的状況をさらに悪化させる改悪。農家の権利も消費者の権利もないがしろ。輸入に頼る農業からの脱却こそ急務
5月29日、「改正食料・農業・農村基本法」が参院本会議で与党、日本維新の会の賛成で可決、成立した。
「食料・農業・農村基本法」は1999年に制定され、「農政の憲法」と呼ばれている。改定は25年ぶりに初めて行われた。改定の根拠とされたのが、ウクライナ戦争などによって、食料安全保障の確保の重要性が浮き彫りとなったことが上げられている。
主な改定内容は
・基本理念に「食料安全保障の確保」を追加
・輸出促進のため、国は農産物の競争力を強化する
・消費者は、環境負担が少ないものや持続的な生産に資する商品の選択に努める
・大規模農家だけでなく多様な農業者が農地を確保できるよう配慮
・障がい者などが農業活動できるように環境整備する
では一つ一つ見ていこう。
基本理念に「食料安全保障の確保」を追加したというが、最近、安全保障という言葉が飛び交う。「経済安全保障」「食料安全保障」これらが軍事の安全保障と結びついている懸念は大きい。実際、有事の食料安全保障のために、花を作っている農家にいもを作るように命令を出し、従わなければ罰金を科すとしている。有事だからと、急に作付けを変えることなどできない。
価格に費用を転嫁できるように、理解増進、費用の明確化を進めるというが、実際は経費より安く米や野菜を売らなければならない状況である。大手企業の農業参入でますます価格統制が行われている。
輸出促進のため、農産物の競争力を強化というのも、大手企業にしかできないことだ。食料自給率が38%と極端に低い状況こそ変えていかなくてはならない。輸出の話ではない。食料自給率を引き上げていくことが最優先である。
消費者の商品選択が大きな問題のように言うが、消費者に正しい情報を提供することが先である。アメリカの余剰農産物を輸入するために、パン食を推奨し、欧米食に切り替えていったのは消費者のせいではなく、政府による意図的な宣伝によるものである。
大規模農家だけではなく多様な農業者が農地を確保できるようにする、これは企業が農業に進出しやすくするためのものであり、農業の発展や農家保護とは無縁だ。
障がい者が農業活動できるよう環境整備。農福連携で、農家も助かり、障がい者も仕事に誇りを持って取り組めるようになるのはいいことである。一部の者がそれを悪用することがないことを望む。
食料自給率アップ、種の自給が農業のカギ
日本の農家の平均年齢は68歳である。今の農政ではさらに高齢化するのは明らかである。何十年も農業委員を務めていた方が、「息子に農業をやる、と言われて、とっさに、“それはやめて!”と言ってしまった」と話していた。そう言ってしまった自分が悲しいのである。
食料自給率38%の現状からどう引き上げていくのか、それを第一にして、80%までもっていかなくてはならない。
生産費用の高騰で農家は悲鳴を上げている。欧米並みの直接支払い制度の拡充が必要だ。
国がめざすのは農業の大規模化だが、そうではなく家族農業など小規模農業の保障こそが、農業の未来を切り拓く。その具体化のための施策を講じるべきだ。
食料の保障の重要なポイントは種である。日本は今、種の9割以上を外国の圃場に依存している。国内で安全な種を確保することが緊急課題だ。
米の需要が減っているからと、田んぼを畑にする方針が出されている。それでどうやって、食料の確保ができるのか。義務でもないミニマムアクセス米を輸入するのではなく、日本の農家の米作りを保障し、国の責任で買い取る。それを備蓄や、内外の援助に回すことで食料の確保ができる。
農水省は「みどりの食料システム戦略」で、農地面積の4分の1の100万ヘクタールを有機農業にするという目標を提示している。しかし、何の具体策もないために国際社会からも「できるわけがない」と笑われているのが実情だ。
地方の一次産業を大事にすれば、人も戻っていく。政策の根本的な転換が求められる。 (沢)
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2024.05.29
日本新聞
4571号 すべての冤罪を晴らす世論を高めよう
4571号1面記事
すべての冤罪を晴らす世論を高めよう
袴田裁判再審結審、判決は9月26日、無罪判決を。5月23日、日比谷野音で狭山集会。石川さんが元気なうちに再審無罪を!と切実な訴え
5月22日、袴田巌さんの裁判をやり直す再審公判が静岡地裁で結審した。拘禁症で裁判に出れない巌さんに代わって、姉のひで子さんが出廷した。ひで子さんは「どうぞ弟巌に、心の自由をお与え下さいますよう、お願い申し上げます」と訴えた。
1966年、静岡県清水市で味噌会社専務一家4人強盗殺人事件が起き、焼け跡から4人の他殺体が発見された。味噌会社の従業員の袴田さんが犯人にでっち上げられた。死刑囚として長期拘留された袴田さんは、恐怖のため拘禁症を患っている。
検察側は「『5点の衣類』は袴田さんの犯行時の着衣と認められる」として死刑を求刑した。弁護側は「捜査機関が証拠をねつ造した」として、無罪を訴えた。
袴田さんの無実は明らかである。「5点の衣類」は事件から1年2か月後に事件現場近くの味噌工場の味噌タンクから「発見」されたもの。ステテコは大きすぎ、ズボンは小さすぎて入らない。しかも1年2か月経っているというのに、血痕は赤いまま、上着より下着が血の色が濃いなど、不自然な点が多い。「5点の衣類」は捜査機関のねつ造だという、弁護側の訴えは妥当なものだ。
事件から58年、袴田さんは88歳、ひで子さんは91歳、一刻も早く冤罪を晴らし、一日でも長く、真に自由な日々を過ごしてほしい。
9月26日には無罪判決を!
袴田裁判の次は狭山
裁判の再審無罪を!
5月23日、日比谷野音で、「狭山事件の再審を求める市民集会 無実を叫び61年!東京高裁は事実調べ・再審開始を!」が開催された。石川さんの再審無罪を求める人たちが全国からかけつけた。
社民党の福島みずほ党首は「石川さんの無実は明らか。袴田裁判は9月26日に結論が出る。狭山裁判でも再審無罪をかち取ろう。冤罪被害者のための再審請求が認められることを求める超党派の議員連盟が260名で発足した。いたずらに時間を費やす検察官の抗告を廃止すべきだ」と訴えた。
石川一雄さんは「新しい弁護士さんたちは、活気ある、期待が持てる弁護士さんだ。元気な間に無罪をかち取ることを強く強く望む。仮出獄して30年も経って、まだ解決できない。皆さん、よろしくお願いします」と訴えた。石川さんの無念な思いが伝わってきた。
早智子さんは「今朝、両親の墓前に“集会に行ってくるよ”と言ってきた。昨日、袴田裁判再審が結審した。9月26日の無罪判決は明らかだ。次は狭山だ。検察は渋々、証拠調べを行ってきた。前進している。裁判所は一雄の声を聞いてほしい。様々に体調の衰えはあるが、気力は衰えていない。たくさんの方が狭山に来てくれている。生あるうちに再審開始、無罪を獲得したい」と力強く訴えた。
基調提案で部落解放同盟中央本部副委員長の片岡さんは、明確に次の3点を提示した。
1、昨年12月、裁判長が定年退職。退官前に鑑定人尋問を認めてほしいと52万の署名を裁判所に提出したが、かなわなかった。新しい裁判長は「どの点が争点か説明してほしい」と言ってきた。検察は反対したが。前向きだ。
2、裁判のこれからの闘い方だが、鑑定人尋問をやるかどうか判断してもらう。闘いの焦点は万年筆の鑑定実験を裁判所にやらせること。兄の六蔵さんは、3回目の捜査に刑事が来た時、「2回も調べたんだから、あるわけがない」と言った。万年筆が出てきたとき「誰か置きやがった」と刑事に言った。60年経って、万年筆がでっち上げだと100%証明できた。
3、再審法の改正が必要。袴田事件は2014年に静岡地裁が再審開始を決定した。ところが検察が抗告し、10年経って、ようやく再審、結審。石川さんは85歳、時間をかけていられない。昨年、日弁連が再審法改正を提案した。いよいよ決戦だ、がんばろう!
同じく冤罪で苦しめられた足利事件の菅家さんは「袴田さんの再審決定は自分のことのように嬉しかった。次は石川さんだ。私が無罪になってから15年、警察も検察も何も謝っていない。裁判所の前で謝らせたい。事件のことを何も知らない私を連れていって取調べ。やっていないと言っても、“犯人はお前しかいない”と追い詰める。石川さんの再審をかち取ろう」と怒りを込めて語った。
まだまだたくさんの冤罪事件がある。死刑執行の後に、冤罪が明らかになった人もいる。
再審が決定されてから更に10年、袴田さんの再審は引き延ばされた。その10年は実に貴重な10年であったのに。検察は不服なら、再審で論議すればいい。いたずらに時間稼ぎの抗告は許されない。早急に、検察の抗告廃止を求める。
すべての冤罪を晴らす再審法へと変えなければならない。 (沢)
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2024.05.22
日本新聞
日本新聞 4570号記事 原発は再稼働ではなく廃炉に!
広島高裁、島根原発運転差し止め求める住民の訴え却下。
原子力規制委は東電の安全管理意識低いとしながら東電柏崎刈羽原発稼働認める
5月15日、広島高裁松江支部は、中国電力島根原発2号機の運転差し止めを求めた訴えを退けた。
島根原発は県庁所在地にある原発で、30キロ圏内2県6市に約45万人が住む。住民側は、1月の能登半島地震の家屋倒壊、道路寸断の状況から、島根県や周辺自治体の避難計画にある屋内退避は不可能と訴えた。また、屋外退避では被ばくを強いられる。避難計画に実効性はないという住民側の主張は、理に合っている。
中国電力は最大加速度820ガルとしているが、近年の大規模地震は2000ガルを超えている。設計自体が安全を確保するものではない。
また、島根原発は東電福島第一原発と同じ沸騰水型軽水炉である。福島第一原発の事故原因や事故の中味も明らかにされていない。いまだに廃炉の目途も立たない状況である。事故炉と同じ沸騰水型原発を稼働するなど許されないことである。
東電の安全対策の姿勢を批判しながら再稼働認める原子力規制委
今も毎日約4000人の作業員が廃炉作業を続けている福島第一原発の事故現場。廃炉作業の工程は次々遅れ、廃炉の見通しは全く立っていない。昨年10月には汚染廃液が飛散し、作業員が被ばくし入院する事件が起きた。そして今年2月にも建屋からの汚染水漏れが起き、原子力規制委は、原子炉等規制法に基づく実施計画の違反と判断した。設備の配管洗浄中に起きた事件で、本来閉じる弁が開いていたというのだ。発見が遅れれば、周辺環境にも影響を及ぼすことは必至だった。東電が作成した手順書が現場の状況と一致していなかったことと、作業時に弁が閉じていなかったことが見落とされていたという。トラブル続きに規制委員の中からも「ばからしい」という発言もでている。
ではなぜ、福島第一原発事故を起こしながら、今も安全管理さえまともにやらない東電に、柏崎刈羽原発(これも福島第一原発と同じ沸騰水型)の運転を認めるのか。規制委の山中委員長は「リスク評価が正しくできているか、きちっとみていく」と言っているが、これまで何を見てきたのか。
福島第一原発事故が起きたのも、東電が15メートル以上の津波が起きるという警告を無視し、防潮堤を造るなどの措置を行わなかったことが、大事故につながった。
やらなかった理由は、経費がかさむから。それで故郷も生業も奪われた被害者、のちにガンになった被害者、避難の中で衰弱して亡くなった被害者がいる。今もその苦しみは続いている。東電はあれだけの事故を起こしながら、何の責任も取っていない。
そして今、東電は「福島原発事故処理で23.4兆円かかる。柏崎刈羽原発1基動かせば、年間1100億円の収益改善が見込める」と言っている。実際、これまで東電が負担したのは3兆3000億円だけである。結局、国が負担、つまり私たちの税金である。福島第一原発処理のために柏崎刈羽原発を再稼働する、東電のこの論を原子力規制委は認めているのである。
これでは安全対策二の次で、再び福島第一原発事故のような大惨事を防ぐことはできない。原子力規制委のお墨付きを受けて東電は、地元の合意もないままに、4月26日、柏崎刈羽原発の原子炉への核燃料装てんを完了したと発表している。
二度と福島第一原発事故のような大惨事を引き起こしてはならない。世界で発生しているマグニチュード6以上の地震の約2割が、日本周辺で起きている。地震大国日本では特に原発は危険である。政府は原発再稼働を推進しているが、再稼働ではなく、すべての原発を廃炉に、それが生きていける環境を作ることである。 (沢) -
2024.05.15
日本新聞
日本新聞 4569号記事 人権侵害の経済安保情報保護法成立の暴挙
対象になる情報も明らかにされず、調査を拒否した結果の不利益も防がれず、罰則だけが明記。
知る権利やプライバシー侵害の悪法に反対
10日、参院本会議で「重要経済安保情報の保護・活用に関する法律」が、可決・成立した。賛成したのは自民・公明、日本維新の会、国民民主、立憲民主の各党である。
どんな法律なのか
この法律は、2014年に施行された特定秘密保護法の経済版と言われている。特定秘密保護法は、防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野で、対象者の9割が公務員である。
しかし経済安保はそれを大幅に拡大するものになり、対象者の範囲も大きく広がる可能性がある。
法律の中味は、
・国が保有する情報のうち、流出すれば安全保障に支障を与えるおそれがあるものを「重要経済安保情報」に指定
一体何が「重要経済安保情報」になるのか、何も示されていない。政府は、「成立後に作る運用基準で詳細を定める」と言っている。これでは何でも調査対象になるとされかねない。核心部分がこれから、なのであれば、そもそも法案提出自体ができないことだろう。
・適正評価制度に基づく調査をクリアした人にアクセス権限を与える調査は、
①重要経済基盤毀損活動との関係に関する事項(家族及び同居人の氏名、生年月日、国籍及び住所を含む)
②犯罪及び懲戒の経歴に関する事項
③情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項
④薬物の濫用及び影響に関する事項
⑤精神疾患に関する事項
⑥飲酒についての節度に関する事項
⑦信用状態その他の経済的な状況に関する事項
以上7項目だという。調査対象者と周辺の関係者、実に多くの人が調べられることになる。調査は同意が必要とされているが、拒否した場合の配置転換など、不利益が生じた場合の保障は一切ない。これでは調査はほぼ強制と言える。また、適性が認められない不適者がどのような扱いをされているのか、秘密保護法の事例も不明である。
・情報を漏らした場合、5年以下の拘禁刑か500万円以下の罰金を科す
この点のみは、しっかり明記している。
問われる野党の姿勢
このように見てくると、この法が論議にもならない中味のないものであることがわかる。核心の部分をあいまいにし、とにかく決めろと言わんばかりである。それでも恐るべきファシズム法であることは明らかだ。
この法案に反対したのは、れいわと共産のみなのである。立憲会派の社民は退席で反対の意思表示をした。日本維新の会、国民民主をはじめ、立憲民主までがこのファシズム法案を通している。これが問題である。
「どんな情報が指定対象になるかわからない、これから決める」こんなふざけた答弁をした時点で、野党は審議に応じられないと、態度を明確にすべきではなかったか。
成立後に政府は「運用基準の決定に向けてパブリックコメントを行う」と放言している。今まで市民の意見に耳を傾けたことがあったか。
化学機械メーカー大川原化工機事件があった。大川原化工機が軍用転用可能な装置を中国や韓国に不正に輸出したとして外為法違反に問われ、社長などに厳しい尋問が行われた。第1回公判期日の直前に検察が起訴を取り消した。
2023年12月、東京地裁で、大川原化工機の関係者が訴えた国賠訴訟で、原告側に全面勝訴判決が出された。ねつ造事件である。
新法成立で、このような事件が二度三度とでっち上げられる危険性は高い。ファシズム国家を完成させようとする政府にノーを突きつける運動はますます重要な局面を迎えている。 (沢)