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2024.02.28
日本新聞
日本新聞 4558号記事 東電・福島第一原発事故 ますます被害拡大の汚染水投棄
汚染水投棄から半年、中国など国際社会の批判高まる。禁輸で漁業者の苦難続く。政府は国内外の批判を受け止め、海洋投棄の中止を
東電福島第一原発事故による汚染水の海洋投棄から、半年が過ぎた。この問題を巡り、日中両政府の専門担当者が1月、非公表で協議を開始した。
汚染水海洋投棄の4回目の投棄を目前にして、海洋投棄に反対し日本の海産物を輸入禁止にしている中国と話をつけ、日本の漁業者の反発を弱めるというのが、日本政府のねらいだったのだろう。
日本側からは、外務省、経済産業省、環境省、原子力規制庁、東電が参加したという。しかし、中国側は禁輸措置を撤廃する考えはない。
2月23日、中国外務省の毛寧副報道局長は、「日本は国際社会の懸念に真剣に応え、責任あるやり方で、核汚染水に対処すべきだ」と求めた。中国は「長期にわたり有効な国際的モニタリング(監視)体制の構築」を日本政府に求めている。日本は受け入れようとしない。日本政府が「安全だ」と言うなら、モニタリング体制を作るべきだし、中国が調査を求めているのだから、それも受け入れるべきだ。調べられると困るから拒否している、としか考えられない。調べられると困る、つまり危険なのだから、海洋投棄はただちに中止すべきである。
共同通信による全国の漁連・漁協へのアンケート結果が報じられているが、「風評被害があった」が36.1%、「どちらかといえばあった」が44.4%で、8割を超えている。アンケートは「風評被害」と言っているが、海洋投棄は風評被害ではなく実害だ。海洋投棄に反対している中国や韓国が問題なのではなく、政府が海洋投棄を強行していることが問題なのである。
安全軽視の東電の体質変わらず
事故を起こした東電福島第一原発事故現場で、相次いで事故が起きている。
2023年10月25日
多核種除去設備(ALPS)で洗浄廃液が飛散し、カッパを来ていなかった作業員2人が最大0.9ミリシーベルトの被ばく
2024年2月7日
汚染水の除染設備を洗浄中、建屋外につながる排気口から廃液約1.5トンが漏出。排気口直下の土壌で、周辺の約350倍に当たる毎時7ミリシーベルトを測定
いずれも深刻な事故である。被ばくについての作業員に対する学習もなく、ずさんな管理で被ばくさせる。放射性物質の環境への拡散。これらは東電が事故から何の教訓もなく、いまだに儲け第一、安全軽視の体質が全く変わっていないことを示す。これでは第二、第三の福島第一原発事故が起きる可能性は否定できない。
福島第一原発のタンクにためられている水には、トリチウムが約860兆ベクレルも含まれ、建屋や炉内に約1200兆ベクレル残留していると推定されているが、はっきりしない。トリチウムだけではなく、セシウム134、セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素129などの放射性物質が残留し、タンク貯留水の約7割が基準超えだというのである。これでは明らかに汚染水である。政府は年間22兆ベクレルのトリチウムを海洋投棄する計画だ。事故以前は福島第一原発から海洋に投棄されていたトリチウムは年間1.5~2.5兆ベクレルだから、10倍も投棄するというのだ。しかも、事故で爆発し、超高レベルのデブリに触れたしろものである。
東電は「関係者の理解なしに、いかなる処分も行わない」と、汚染水について文書に明記して約束しながら、漁業者の反対を無視して海洋投棄を強行した。また、経産省は説明会も公聴会も行っていない。関係者の合意どころか、意見を聞こうともしない。
また、良心的な研究者から、海洋投棄ではない大型タンク貯留案やモルタル固化処分案など、実証済みの代替案が出されているのに、検討すらしない。
まさに、海洋投棄は暴挙であり、国内外からの批判は当然である。政府は海洋投棄を中止し、安全を第一に、代替案を検討すべきである。これ以上、環境汚染を拡大してはならない。 (沢) -
2024.02.21
日本新聞
日本新聞 4557号記事 復興特別所得税の軍事費流用に抗議
岸田首相、復興のための税金を軍事費に回し、最大13年延長方針変えず。軍事費拡大は戦争を引き起こす。災害支援、命を守る政策を
14日の衆院予算委員会で、岸田首相は、2027年度までの5年間で総額43兆円にする軍事費の財源を、増税で確保する方針を示した。増税の中味は、復興特別所得税、たばこ税、法人税の3税である。
なぜ復興税を軍事費に振り分けるのか。そのために増税期間を13年も延長するというのである。復興特別所得税は、東日本大震災の被災者支援のためと銘打って、徴収された。それを、軍事費を増やすために流用する、これは納税者をだますやり方に他ならない。
軍事費増額の財源を増税によってまかなう法案は2023年6月16日に強行成立させられた。復興税を軍事に流用することが、決められたのである。
しかし、復興税の軍事費流用は、この法律が決められる前の2011年度から2015年度にかけて、すでに一部が軍事費に流用されていたのである。
額にして1270億円にのぼる。復興とは何の関係もないものばかりである。重機関銃を備えた装甲車や輸送機、自衛隊施設の改修費などである。島しょ部に対する攻撃への対応、弾道ミサイル攻撃への対応などの事業に流用したというのだ。
何のための予算編成なのか。組まれた予算は何にでも好き勝手に使って良いとでもいうのか。
被災者救援を第一に行わない政府
今回の能登半島地震では、政府が自衛隊を動かすのがあまりにも遅かった。大地震が起きてすぐ動く体制ではなく、現地からの情報待ちで、遅れ遅れになっている。かつて安倍首相(当時)は、「自衛隊の任務は災害支援ではない」と言い切った。つまり自衛隊は軍隊だと言っているのである。「軍隊は住民を助けない」これは沖縄戦を経験した方の言葉である。
能登半島地震で、孤立した集落が各地にあったが、その救援にすぐさま自衛隊ヘリがかけつければ、どんなに救われたことか。1か月経っても断水が続いている中、水の供給や風呂付の自衛隊トラックがかけつけたら、被災者の大きな助けになっただろう。それが第一の政治ではないのである。
1月1日に起きた地震なのに、仮設住宅ができるのは3月末と報じられている。国際社会からは「なぜ日本でそんなに対応が遅いのか」と驚かれている。
復興税を軍事費に流用する実際を知れば、日本の政治の本質がわかるというものだ。
仮設住宅にしても、集落がばらばらにされる中で、孤独死などの二次災害も予想される。石川県では仮設住宅1万5000戸のうち8000戸は県外に設置するという。
2004年の新潟県中越地震の時に、長岡市内の仮設住宅団地に、山古志村の人たちをコミュニティ単位で入居させた。そして2~3年かけて復興して帰還できた。これを山古志方式と呼んでいる。隣近所がまとまって暮らせるから、それまでと同じように助け合える。
復興税はこのように被災者支援のために使うべきである。そのためだと思っている納税者に有無を言わせず、軍事費への流用を決めてしまうなど、認められないことである。
軍事費の増大は一体何のために必要なのか。中国や朝鮮が攻めてこないための「抑止力」だと言うが、果たしてそうだろうか。
南西諸島にミサイル基地を次々造り、中国や朝鮮に向けてミサイルを配置する、それが「抑止」になるのか。警戒心を高めて、むしろ戦争を引き起こすことにつながるではないか。南西諸島の島々が戦場と化す日を、日本が自ら作っているとしか思えない。軍備増強など必要ない。
憲法9条の不戦を守り、近隣のアジアの国々と、軍事ではなく対話で、平和友好の関係を築いていくこと、それが日本の取るべき道である。 (沢) -
2024.02.14
日本新聞
日本新聞 4556号記事 経済安保保護法案 知る権利・プライバシーの侵害
政府指定の秘密の範囲拡大、適性評価の調査対象大幅増、秘密漏えいの厳罰化を今国会提出予定。戦争準備総仕上げの危険な法案阻止
政府は7日、経済安全保障に関わる情報に、国家機密の取り扱いを有資格者に限る「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度を広げる「経済安保情報保護法案」の概要を自公両党に説明した。この法案を政府は2月下旬にも今通常国会に提出する方針である。
セキュリティー・クリアランス(SC/適性評価)とは何か。政府が指定した安全保障上重要な情報とされたものに接する必要がある公務員や民間事業者らに対して、政府が信頼できるか否かを調査するというもの。家族や同居人の生年月日や国籍、犯罪歴、薬物乱用、精神疾患、飲酒の節度、経済状況など。本人の同意を得た上で、というが、仕事を失わないためには、ノーとは言えない。ほぼ強制となるだろう。
2014年の特定秘密保護法施行以来2022年末時点で、評価保有者は13万人で、大半が国家公務員で、民間人は3%。これを経済安保に広げることで、民間事業者や大学などの研究者へと、民間人の対象が大幅に増加する。調査を拒否したり、不適格と判断された民間人が、その後不当に扱われる危険性もある。
国家総動員法の再来
この法案は、高市早苗・経済安全保障相が「安倍元首相の宿題、何としても成立させたい」と取り組んでいるという。実にきな臭い。
明らかにされたところによると、機密漏えいの罰則を2段階で設けている。特に機密性が高い情報を漏らした場合、既存の特定秘密保護法を適用して、懲役10年以下の罰則を科す。また、有資格者が漏えいすれば、最長5年の拘禁刑や最高500万円の罰金刑などを科す。
昨年12月26日付で、海上自衛隊の1等補佐が、「特定秘密」が含まれる情報をOBに漏らしたとして、懲戒免職処分にされている。
弁護士の海渡雄一さんは「経済安保版秘密保護法は、日本政府の戦争準備の一連の法律の総仕上げだ。経済情報、ITに関する情報まで秘密にしようとしている。これは戦前の国家総動員法に匹敵するもの。人権侵害のための法律だ」と厳しく批判している。
日本弁護士連合会(日弁連)は1月18日に、「経済安全保障分野にSC制度を導入し、厳罰を伴う秘密保護法制を拡大することに反対する意見」を発表した。
意見書では、国民的な議論を経る必要があると同時に、少なくとも次の4項目について定めるなど、知る権利及びプライバシー権が侵害されない制度的な保障がなされない限り、反対する、とした。
1、政府の違法な行為を秘密指定してはならないと法定すること
2、公共の利害にかかわる事項を明らかにしたことによって、ジャーナリストや市民が刑事責任を問われることがないこと
3、適正な秘密指定がなされているかどうかをチェックするための、政府から真に独立した機構を作ること
4、一旦秘密に指定した事項が、期間の経過等によって公開される仕組みを作ること
いずれも当然のことである。政府によって、何が秘密に指定されるかもわからない、公務員だけでなく民間企業・大学・研究機関で働く民間人が秘密保護の義務を課されプライバシーを侵害される、政府に反対する個人や報道関係者を厳罰に処すなどの、権力の乱用を許してはならない。
特定秘密保護法と共に、「経済安保情報保護法案」も闇に葬り去らなければならない。ファシズム国家の完成に向かっての法整備に歯止めをかけなければならない。 (沢) -
2024.02.07
日本新聞
日本新聞 4555号記事 朝鮮学校の子ども達に教育の保障を
補助金カット、授業料無償化からの排除…朝鮮学校への差別政策を改めるべき。民族の文化と誇りを学び明るく育つ朝鮮学校の子ども達
2010年、高校授業料無償化が行われたが、朝鮮学校は除外された。朝鮮学校が各種学校扱いだから、というものであったが、他の外国人学校は無償化が適用され、朝鮮学校だけ除外という、露骨な差別である。2019年からの幼保無償化からも、朝鮮学校は除外された。
すべてのこどもに差別のない未来を手渡すために
このような状況の中、2月2日、きゅりあん大会議室において、「すべてのこどもに差別のない未来を手渡すために」と題して、「こども基本法」「東京都こども基本条例」から学ぶ交流集会が、「すべてのこどもに差別のない未来を・東京南部の会」の主催で行われた。
長谷川和男さんは「朝鮮学校『無償化』排除に反対する会連絡会」の共同代表であり、日本全国の朝鮮学校を訪れた方である。長谷川さんは全国行脚で実際に目にした朝鮮学校のことを話してくれた。
「朝鮮学校は独立採算だ。先生方の給料も少ししか出せない。ご飯は保護者が持ってきてくれる。オモニ(お母さん)達は学校の財政を作るために、キムチや小物などを作って売っている。そんな苦しい中でも、東日本大震災の時には支援物資を届け、支援を受けた宮城の朝鮮学校では、地域の日本の人たちにおにぎりを作って配った。
日本の学校では、いじめ、不登校、自殺が多いが、朝鮮学校の子どもたちは、小さな子を大事にしている。教育目標は“一人はみんなのために みんなは一人のために”である。そのスローガンが生きている。子どもの自主性、主体性が育まれている。日本の文科省・地方自治体は朝鮮学校から学ぶべきだ」
「国連・子どもの権利委員会対日審査」に参加した宋恵淑さんは、3人の子どもを朝鮮学校に通わせている。宋さんは、「朝鮮学校にないもの」について話した。
「・コロナ禍における各種支援が朝鮮学校には適用されない。
・第3子は保育料が無料になるが、朝鮮学校は各種学校だからカウントされないという不条理。
・東京都私立外国人学校教育運営費補助金が、2010年から朝鮮学校だけ支給停止に。
『子どもの権利条約』には、命を守られ成長できること、意見を表明し参加できること、子どもにとって最もよいこと、差別のないことの4つの理念が掲げられている。東京都では2021年4月には『東京都こども基本条例』が定められた。ところが朝鮮学校は常に排除され続けている。
国連・子どもの権利委員会日本政府審査では、日本政府に対し、朝鮮学校のこども達への差別的取り扱い是正を求める勧告が4度もなされた。
朝鮮学校にないものを求めるのは、決して過度ではない。当たり前の権利を求めているだけだ」
東京朝鮮第六幼初級学校の金炳虎校長は「2010年~2023年まで、朝鮮学校には1円も補助金が支給されていない。朝鮮学校=北朝鮮、だから制裁の対象?北も南も同じ祖国であり、朝鮮学校は朝鮮民族の学校だ。給食もない。オモニ会が実費で給食を作ってくれたり、友の会の方々が作ってくれている」と実情を訴えた。
オモニ会会長の鄭さんは、「東京朝鮮第二初級学校の先生時代に、朝鮮学校への入学を勧めると、朝鮮学校の制服を着ていると危ない、学費が高い、卒業しても権利がないと言われた。政府による差別だ。日本の学校で差別され、朝鮮学校に編入してきて“楽しい!”と喜ぶ子どもがいる」と、差別政策への憤りを語った。
朝鮮学校の高校生、大学生が文科省前で、「無償化」からの排除に抗議して訴えている。当然の要求である。すべてのこども達に、等しく教育を受ける権利がある。
政府は朝鮮学校への差別政策をただちにやめるべきである。 (沢)