-
2024.02.21
日本新聞
日本新聞 4557号記事 復興特別所得税の軍事費流用に抗議
岸田首相、復興のための税金を軍事費に回し、最大13年延長方針変えず。軍事費拡大は戦争を引き起こす。災害支援、命を守る政策を
14日の衆院予算委員会で、岸田首相は、2027年度までの5年間で総額43兆円にする軍事費の財源を、増税で確保する方針を示した。増税の中味は、復興特別所得税、たばこ税、法人税の3税である。
なぜ復興税を軍事費に振り分けるのか。そのために増税期間を13年も延長するというのである。復興特別所得税は、東日本大震災の被災者支援のためと銘打って、徴収された。それを、軍事費を増やすために流用する、これは納税者をだますやり方に他ならない。
軍事費増額の財源を増税によってまかなう法案は2023年6月16日に強行成立させられた。復興税を軍事に流用することが、決められたのである。
しかし、復興税の軍事費流用は、この法律が決められる前の2011年度から2015年度にかけて、すでに一部が軍事費に流用されていたのである。
額にして1270億円にのぼる。復興とは何の関係もないものばかりである。重機関銃を備えた装甲車や輸送機、自衛隊施設の改修費などである。島しょ部に対する攻撃への対応、弾道ミサイル攻撃への対応などの事業に流用したというのだ。
何のための予算編成なのか。組まれた予算は何にでも好き勝手に使って良いとでもいうのか。
被災者救援を第一に行わない政府
今回の能登半島地震では、政府が自衛隊を動かすのがあまりにも遅かった。大地震が起きてすぐ動く体制ではなく、現地からの情報待ちで、遅れ遅れになっている。かつて安倍首相(当時)は、「自衛隊の任務は災害支援ではない」と言い切った。つまり自衛隊は軍隊だと言っているのである。「軍隊は住民を助けない」これは沖縄戦を経験した方の言葉である。
能登半島地震で、孤立した集落が各地にあったが、その救援にすぐさま自衛隊ヘリがかけつければ、どんなに救われたことか。1か月経っても断水が続いている中、水の供給や風呂付の自衛隊トラックがかけつけたら、被災者の大きな助けになっただろう。それが第一の政治ではないのである。
1月1日に起きた地震なのに、仮設住宅ができるのは3月末と報じられている。国際社会からは「なぜ日本でそんなに対応が遅いのか」と驚かれている。
復興税を軍事費に流用する実際を知れば、日本の政治の本質がわかるというものだ。
仮設住宅にしても、集落がばらばらにされる中で、孤独死などの二次災害も予想される。石川県では仮設住宅1万5000戸のうち8000戸は県外に設置するという。
2004年の新潟県中越地震の時に、長岡市内の仮設住宅団地に、山古志村の人たちをコミュニティ単位で入居させた。そして2~3年かけて復興して帰還できた。これを山古志方式と呼んでいる。隣近所がまとまって暮らせるから、それまでと同じように助け合える。
復興税はこのように被災者支援のために使うべきである。そのためだと思っている納税者に有無を言わせず、軍事費への流用を決めてしまうなど、認められないことである。
軍事費の増大は一体何のために必要なのか。中国や朝鮮が攻めてこないための「抑止力」だと言うが、果たしてそうだろうか。
南西諸島にミサイル基地を次々造り、中国や朝鮮に向けてミサイルを配置する、それが「抑止」になるのか。警戒心を高めて、むしろ戦争を引き起こすことにつながるではないか。南西諸島の島々が戦場と化す日を、日本が自ら作っているとしか思えない。軍備増強など必要ない。
憲法9条の不戦を守り、近隣のアジアの国々と、軍事ではなく対話で、平和友好の関係を築いていくこと、それが日本の取るべき道である。 (沢) -
2024.02.14
日本新聞
日本新聞 4556号記事 経済安保保護法案 知る権利・プライバシーの侵害
政府指定の秘密の範囲拡大、適性評価の調査対象大幅増、秘密漏えいの厳罰化を今国会提出予定。戦争準備総仕上げの危険な法案阻止
政府は7日、経済安全保障に関わる情報に、国家機密の取り扱いを有資格者に限る「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度を広げる「経済安保情報保護法案」の概要を自公両党に説明した。この法案を政府は2月下旬にも今通常国会に提出する方針である。
セキュリティー・クリアランス(SC/適性評価)とは何か。政府が指定した安全保障上重要な情報とされたものに接する必要がある公務員や民間事業者らに対して、政府が信頼できるか否かを調査するというもの。家族や同居人の生年月日や国籍、犯罪歴、薬物乱用、精神疾患、飲酒の節度、経済状況など。本人の同意を得た上で、というが、仕事を失わないためには、ノーとは言えない。ほぼ強制となるだろう。
2014年の特定秘密保護法施行以来2022年末時点で、評価保有者は13万人で、大半が国家公務員で、民間人は3%。これを経済安保に広げることで、民間事業者や大学などの研究者へと、民間人の対象が大幅に増加する。調査を拒否したり、不適格と判断された民間人が、その後不当に扱われる危険性もある。
国家総動員法の再来
この法案は、高市早苗・経済安全保障相が「安倍元首相の宿題、何としても成立させたい」と取り組んでいるという。実にきな臭い。
明らかにされたところによると、機密漏えいの罰則を2段階で設けている。特に機密性が高い情報を漏らした場合、既存の特定秘密保護法を適用して、懲役10年以下の罰則を科す。また、有資格者が漏えいすれば、最長5年の拘禁刑や最高500万円の罰金刑などを科す。
昨年12月26日付で、海上自衛隊の1等補佐が、「特定秘密」が含まれる情報をOBに漏らしたとして、懲戒免職処分にされている。
弁護士の海渡雄一さんは「経済安保版秘密保護法は、日本政府の戦争準備の一連の法律の総仕上げだ。経済情報、ITに関する情報まで秘密にしようとしている。これは戦前の国家総動員法に匹敵するもの。人権侵害のための法律だ」と厳しく批判している。
日本弁護士連合会(日弁連)は1月18日に、「経済安全保障分野にSC制度を導入し、厳罰を伴う秘密保護法制を拡大することに反対する意見」を発表した。
意見書では、国民的な議論を経る必要があると同時に、少なくとも次の4項目について定めるなど、知る権利及びプライバシー権が侵害されない制度的な保障がなされない限り、反対する、とした。
1、政府の違法な行為を秘密指定してはならないと法定すること
2、公共の利害にかかわる事項を明らかにしたことによって、ジャーナリストや市民が刑事責任を問われることがないこと
3、適正な秘密指定がなされているかどうかをチェックするための、政府から真に独立した機構を作ること
4、一旦秘密に指定した事項が、期間の経過等によって公開される仕組みを作ること
いずれも当然のことである。政府によって、何が秘密に指定されるかもわからない、公務員だけでなく民間企業・大学・研究機関で働く民間人が秘密保護の義務を課されプライバシーを侵害される、政府に反対する個人や報道関係者を厳罰に処すなどの、権力の乱用を許してはならない。
特定秘密保護法と共に、「経済安保情報保護法案」も闇に葬り去らなければならない。ファシズム国家の完成に向かっての法整備に歯止めをかけなければならない。 (沢) -
2024.02.07
日本新聞
日本新聞 4555号記事 朝鮮学校の子ども達に教育の保障を
補助金カット、授業料無償化からの排除…朝鮮学校への差別政策を改めるべき。民族の文化と誇りを学び明るく育つ朝鮮学校の子ども達
2010年、高校授業料無償化が行われたが、朝鮮学校は除外された。朝鮮学校が各種学校扱いだから、というものであったが、他の外国人学校は無償化が適用され、朝鮮学校だけ除外という、露骨な差別である。2019年からの幼保無償化からも、朝鮮学校は除外された。
すべてのこどもに差別のない未来を手渡すために
このような状況の中、2月2日、きゅりあん大会議室において、「すべてのこどもに差別のない未来を手渡すために」と題して、「こども基本法」「東京都こども基本条例」から学ぶ交流集会が、「すべてのこどもに差別のない未来を・東京南部の会」の主催で行われた。
長谷川和男さんは「朝鮮学校『無償化』排除に反対する会連絡会」の共同代表であり、日本全国の朝鮮学校を訪れた方である。長谷川さんは全国行脚で実際に目にした朝鮮学校のことを話してくれた。
「朝鮮学校は独立採算だ。先生方の給料も少ししか出せない。ご飯は保護者が持ってきてくれる。オモニ(お母さん)達は学校の財政を作るために、キムチや小物などを作って売っている。そんな苦しい中でも、東日本大震災の時には支援物資を届け、支援を受けた宮城の朝鮮学校では、地域の日本の人たちにおにぎりを作って配った。
日本の学校では、いじめ、不登校、自殺が多いが、朝鮮学校の子どもたちは、小さな子を大事にしている。教育目標は“一人はみんなのために みんなは一人のために”である。そのスローガンが生きている。子どもの自主性、主体性が育まれている。日本の文科省・地方自治体は朝鮮学校から学ぶべきだ」
「国連・子どもの権利委員会対日審査」に参加した宋恵淑さんは、3人の子どもを朝鮮学校に通わせている。宋さんは、「朝鮮学校にないもの」について話した。
「・コロナ禍における各種支援が朝鮮学校には適用されない。
・第3子は保育料が無料になるが、朝鮮学校は各種学校だからカウントされないという不条理。
・東京都私立外国人学校教育運営費補助金が、2010年から朝鮮学校だけ支給停止に。
『子どもの権利条約』には、命を守られ成長できること、意見を表明し参加できること、子どもにとって最もよいこと、差別のないことの4つの理念が掲げられている。東京都では2021年4月には『東京都こども基本条例』が定められた。ところが朝鮮学校は常に排除され続けている。
国連・子どもの権利委員会日本政府審査では、日本政府に対し、朝鮮学校のこども達への差別的取り扱い是正を求める勧告が4度もなされた。
朝鮮学校にないものを求めるのは、決して過度ではない。当たり前の権利を求めているだけだ」
東京朝鮮第六幼初級学校の金炳虎校長は「2010年~2023年まで、朝鮮学校には1円も補助金が支給されていない。朝鮮学校=北朝鮮、だから制裁の対象?北も南も同じ祖国であり、朝鮮学校は朝鮮民族の学校だ。給食もない。オモニ会が実費で給食を作ってくれたり、友の会の方々が作ってくれている」と実情を訴えた。
オモニ会会長の鄭さんは、「東京朝鮮第二初級学校の先生時代に、朝鮮学校への入学を勧めると、朝鮮学校の制服を着ていると危ない、学費が高い、卒業しても権利がないと言われた。政府による差別だ。日本の学校で差別され、朝鮮学校に編入してきて“楽しい!”と喜ぶ子どもがいる」と、差別政策への憤りを語った。
朝鮮学校の高校生、大学生が文科省前で、「無償化」からの排除に抗議して訴えている。当然の要求である。すべてのこども達に、等しく教育を受ける権利がある。
政府は朝鮮学校への差別政策をただちにやめるべきである。 (沢) -
2024.01.31
日本新聞
日本新聞 4554号記事 「群馬の森」朝鮮人追悼碑の撤去やめよ
群馬県が近く代執行で碑を撤去する方針。朝鮮人を強制連行、強制労働で命をも奪ったのは事実。碑の存続で多くの人に歴史を知らせよう
群馬県高崎市に県立公園「群馬の森」がある。その一角に朝鮮人追悼碑がある。かつて日本は朝鮮半島を植民地支配した。第二次世界大戦中は労働力の不足を補うために、朝鮮人を強制連行し強制労働させた。炭鉱や工事現場で、ろくな食事も与えず、長時間、過酷な労働を強いた。その労働の中で衰弱して亡くなった人、逃げようとして捕まって殺された人などの霊を悼んで、「建てる会」が追悼碑を建てたのである。
県は追悼碑を認めておきながら、「政治的な集会を行った」「『強制連行』という言葉を使った」と難癖をつけ、追悼碑を撤去すると脅かし続けてきた。群馬県知事は「近く追悼碑を撤去する方針だ」と明言し、いつ代執行するかわからない、緊迫した状況である。自主撤去しないなら強制的に代執行する、というのである。
これは、日本の植民地支配、戦時中の加害の事実を認めず消し去ろうとする日本政府と同じ姿勢である。やったことは消えない。それを認めた上で初めて、平和友好という次の段階に進めるのである。
アジアの国々に謝罪し、友好への道へ
群馬県内には、群馬鉄山などの鉱山や軍需工場がたくさんあり、朝鮮半島から連行されてきて働かされていた。中国人捕虜もいた。その人数は公的には残されていない。しかし、間組百年史に、沼田市にあった日発岩本発電所で、連行されてきた1000人の朝鮮人と600人余りの中国人捕虜が働かされていたことが記録されている。
市民団体「朝鮮人・韓国人強制連行犠牲者追悼碑を建てる会」は追悼碑建立について、群馬県知事に要望書を提出し、県議会は全会一致で主旨を採択した。こうして2004年3月に「群馬の森」に「記憶 反省 そして友好」の追悼碑ができたのである。
碑には次のように記してある。
「21世紀を迎えたいま、私たちは、かつて我が国が朝鮮人に対し、多大な損害を与えた歴史の事実を深く記憶にとどめ、心から反省し、二度と過ちを繰り返さない決意を表明する。過去を忘れることなく、未来を見つめ、新しい相互の理解と友好を深めていきたいと考え、ここに労務動員による朝鮮人犠牲者を心から追悼するためにこの碑を心から建立する。この碑に込められた私たちのおもいを次の世代に引き継ぎ、さらなるアジアの平和と友好の発展を願うものである」
強制連行という言葉を入れたら、「強制連行という用語を政府は認知していない」とクレームが付き、やむなく“労務動員”に変えた。それでも市民の目につく場に碑を建てたほうがいいと考えたからである。
ところが、2014年7月、県は10年間の設置期間の更新を認めず、撤去するよう突然通知してきた。「碑文が反日的だ」と撤去を求める団体による大音量による街宣、県庁に押し掛けるなどがあり、県は「碑文が紛争の原因」と撤去を命じた。そして自主撤去に応じないなら代執行に出るという姿勢を明らかにしたのである。
「記憶 反省 そして友好」日本の加害の事実をしっかり認め、その実際を広め、二度と繰り返さない反戦の運動を繰り広げる、そこからアジアの国々との友好を深め、平和を築いていこうという大切な言葉である。
日本はアジアの一員として地域の平和のために、アジアの国々と力を合わせていくことである。アジアの盟主になろうと他国を弾圧した歴史を、二度と繰り返さないためにも、朝鮮人追悼碑は撤去させてはならない。 (沢)