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2024.01.03
日本新聞
日本新聞 4550号記事 2024年、反戦、命を守る運動を!
国会審議もなく、殺傷兵器の輸出解禁を閣議決定した政府。参戦へと歩を進める動きに歯止めを。軍事予算増ではなく生活保障優先を
日本は年々戦争に向かって突き進んでいると言っても言い過ぎではない。昨年は殺傷兵器の輸出解禁にまで踏み込んだ。しかも有権者に信を問うでもなく、国会で審議するでもなく、閣議決定してしまったのである。昨年12月22日の、武器輸出ルールを定めているという「防衛装備移転三原則」の改定である。
日本はこれまで、武器は原則輸出しない「武器輸出三原則」を堅持してきた。殺傷兵器の輸出を認めるというのは、「武器輸出三原則」とは全く相容れない。戦争しない国から戦争する国への大転換である。これを閣議で決めてしまうなど、暴挙そのものである。
今、ウクライナ戦争が長引き、アメリカでもヨーロッパでも、ウクライナ支援に予算を組むことに反対の国内世論が強まっている。生活も苦しく、“ウクライナ支援ではなく生活支援を”という声が高まっているのだ。アメリカでは大統領選を控え、バイデン大統領もウクライナ支援を強行できない。
そこに日本の殺傷兵器輸出解禁決定である。日本は迎撃ミサイル「パトリオット」をアメリカに輸出することを決めた。アメリカの意を受けた決定だと思われる。アメリカはこれまでパトリオットなどの迎撃ミサイルをウクライナに供与してきた。そこで日本がパトリオットを製造し、アメリカに融通する。それがウクライナ支援に回される可能性は高い。 まさに紛争地への支援であり、日本はウクライナ戦争に参戦していると認定されても仕方がない状況になる。
ここまでの体制づくりの段取りを、政府は着々と進めてきた。
「解釈改憲」で集団的自衛権行使容認、安保関連法で戦争する国へ。そして安保3文書で敵基地攻撃能力保有を明記。これでは不戦、戦力不保持の憲法9条が形骸化されていくのは明らかである。
この危険な実態を直視し、反戦の声をあげていく時である。
軍事ではなく貧困対策を最優先に
アメリカやヨーロッパが貧困で大変だ、では日本はどうか。
昨年暮れには日本の各地で、助け合い活動が行われた。
年末年始をどう暮らしていくか、重い気持ちで迎える人も多い。年末年始の休業で、収入も入らない。子どもも学校が休みで給食も食べられない。一体どうやって過ごせばいいのかという人達のために、野菜や保存食品などを袋に入れて配る。大切そうに抱えていく人たち。貧困は外国のことではなく、日本の問題である。
昨年12月22日に閣議決定した2024年度予算案は、一般会計の歳出総額112兆717億円と相変わらず膨張予算である。軍事費は7兆9496億円で、前年度から1兆1277億円も増えた。その上、兵器ローンは7兆9076億円、ローン残高は14兆1926億円に膨らんでいる。敵基地攻撃能力保有のために、長射程ミサイル取得など、さまざまな作戦のための費用が増大している。
こうした軍事費増は全く不要なものである。アメリカは「台湾有事」など煽り立て、政府は南西諸島にミサイル基地を次々造り、軍事要塞化している。島の人たちはそれを望んではいない。
かつて、琉球王国がそうであったように、戦争ではなく、近隣諸国と自由に行き来して、平和な日々を送ってきた。豊かな自然を守り、日本各地や海外から観光客が訪れ、観光で地域が豊かになる。それが島の人たちの願いである。
平和外交を行えば、「台湾有事」は起こらない。日本がアメリカと組んで軍備増強に走る時、近隣諸国も警戒する。かつての日本軍国主義が再来するのではないかと。
軍備増強で予算を膨張させ、3分の1を国債に頼る。それは私たちの借金になる。そこで増税、今でも貧困に苦しんでいるのに、ますます生きられなくなる。
政府の軍備増強に歯止めをかけ、生活保障最優先の政治を要求する。
2024年も、反戦の運動を前進させよう。(沢) -
2023.12.27
日本新聞
日本新聞 4549号記事 種子不正で三井化学を刑事告発
「みつひかり」の産地も発芽率も偽り。種子法廃止の根拠の「民間の優良品種・みつひかり」は嘘だらけ。種子法を復活し農家の権利を守れ
12月14日、山田正彦・元農相を筆頭に19人の学者や議員が、種子不正で三井化学クロップ&ライフソリューションを刑事告発した。告発人は、衆参議員や鈴木宣弘・東大大学院教授、堤未果・国際ジャーナリスト、孫崎享氏などである。
不正の中味は、「みつひかり2003」について、
・2016年から2022年にかけて、茨城県と表示した種子について、愛知県産等を混合させた
・異品種の混合割合は、2020年25%、2021年38%に及ぶ
・2019年から2022年にかけて、発芽率が90%に満たないにもかかわらず、発芽率90%と表示した
2018年に種子法が廃止された。その理由は、種子法が「民間の優良品種」の参入の妨げになっているというものだった。この「民間の優良品種」の代表格として「みつひかり」があげられた。都道府県が研究・開発して農家に供給されるコメの種子は1キロ500円、「みつひかり」は1キロ5000円である。契約農家はこれを、種もみ、農薬、化学肥料の3点セットで購入させられている。
そして今年の2月21日頃、三井化学は「交配不良」を理由に、2023年度栽培用の種子を販売しないと、農家に通知した。2月末は既に田んぼの準備を進めており、種子がなければ代わりの物も用意できない、にっちもさっちもいかない時である。農家にとっては大打撃だ。これに対して農水省は「厳重注意」で済ませている。こうした姿勢も重大な問題だ。
告訴人たちは、厳正な処分を求めて刑事告発したのである。
種子法廃止違憲確認
訴訟控訴審始まる
12月19日、東京高裁で、「種子法廃止違憲確認訴訟」の第1回口頭弁論が行われた。
山形県で採種農家を営んでいる菊地さんは次のように述べた。
「地裁判決では、採種農家である私について“現実かつ具体的な危険又は不安が認められる”と認定されましたが、“食料への権利”については一切認められず、請求は却下された。納得できず控訴した。親父から“自分たちが作った500倍ほどのコメができるのだから、万が一おかしなものが混ざったら、500倍の責任が発生する。絶対に大きな間違いがあってはならない”と教わった。きちんと安定的に種子を作ることが種子農家の誇り。種子法廃止は、種子農家の誠意に背くもので、農家の生活と国民の命を軽んじるもの。それは憲法が保障する人権を侵害するものです」
菊地さん達種子農家の姿勢は、今回の「みつひかり」不正事件と真逆のものである。
田井勝弁護士が食料への権利について、岩月浩二弁護士が「みつひかり」不正問題について、古川健三弁護士が国家賠償責任について、それぞれ意見陳述した。
報告会で、元農相・山田正彦さんは「2016年に種子法が廃止された。翌年、農水省は“みつひかりは超多収。これまでの『ひとめぼれ』などやめなさい。予算を出しません”と全国を回った。
私達は『日本の種子を守る会』を作って、“種子法は廃止されたが、発芽率90%以上のきちんとした種を保障するために種子条例を作ろう”と全国を回った。34道県で種子条例制定。『みつひかり』は1キロ5000円と高値で、しかも不良品。異品種混合、産地偽造、ロットによっては発芽率ゼロ。
2月末、1400ヘクタールの『みつひかり』農家は突然、種がないと言われた。『みつひかり』を認めた農水省は偽造を認め『厳重注意』のみ。食の権利を守るために、共に頑張りましょう!」と力強く訴えた。
採種農家の菊地さんの誇り、弁護団の決意が伝わってきた。種子法違憲訴訟を勝訴し、種子法を復活させなければならない。 (沢) -
2023.12.20
日本新聞
日本新聞 4548号記事 安保3文書改悪から1年、戦争は断固拒否
「平和構想提言会議」が「“戦争の時代”を拒み、平和の選択を」の声明発表。武器輸出ルール緩和で殺傷兵器の輸出解禁は認められない
安保3文書が改悪されたのは昨年12月16日。日本の防衛を根本から変える大改悪を、閣議決定で決めてしまった。大きな批判が巻き起こったが、こうした世論は無視され、この1年、戦争に向かって岸田政権はひた走っている。
そして今、岸田政権は武器輸出ルールの緩和を決めようとしている。戦後日本は、「武器輸出三原則」によって、武器の輸出は原則行わなかった。ところが、今決めようとしているのは、武器の輸出なのである。他国企業の許可を得て日本国内で生産している「ライセンス生産品」について、ライセンス元の国への輸出を全面的に認めるというもの。ライセンス元の国から第三者への輸出も容認するというのだ。
アメリカはウクライナを支援しているが、アメリカを経由して、戦争の真っただ中にいるウクライナへ、日本の武器が輸出されることもあり得る。これでは日本が参戦しているのと同じことだ。
このようなことを絶対に許してはならない。
何の為に武器輸出を決めようとしているのかというと、日本の軍需産業の儲けのために他ならない。日本の企業が死の商人として、世界で儲けようとしているのである。
安保3文書改定1年で非難声明
11日、憲法や国際政治の専門家でつくる「平和構想提言会議」が、「『戦争の時代』を拒み、平和の選択を」と題した声明を発表した。
・敵基地攻撃能力として使う米国製巡航ミサイル「トマホーク」の最大400発購入決定、軍事費の大幅増、防衛産業強化法の成立などは、「戦争する国家」に突き進むもの
・安保3文書決定の時と同様、武器輸出ルール緩和も自公の「密室協議」。国会での徹底審議を通じ、軍拡政策の見直しを
・東アジアの緊張緩和に向けた国家や市民レベルでの対話促進
などを訴えた。
安保3文書の改定では反撃能力について記述された点が大きい。反撃能力の保有の理由としては、「日本へのミサイル攻撃が現実の脅威となっている中で、迎撃による今のミサイル防衛だけで対応することは難しくなっている。その上で、ミサイル防衛を強化して、飛来するミサイルを防ぎつつ、相手からの更なる攻撃を防ぐために、反撃能力が必要だ」としている。
専守防衛のこれまでの立場と変わらないというが、果たしてそうだろうか。相手からの更なる攻撃を防ぐ、つまり、相手が撃つ前に攻撃すると言っているのだ。これを反撃というのは無理がある。明らかに先制攻撃である。これまでの日本の専守防衛をかなぐり棄てるものだ。
一体、日本がミサイル攻撃される根拠はあるのか。これまでどおり、専守防衛に徹していれば攻撃されることはない。しかし、南西諸島にミサイル基地を次々造り、中国や朝鮮共和国に砲台を向けて挑発していれば、攻撃される可能性はある。アメリカの戦略は、日本の自衛隊や韓国兵を戦わせて、米軍は痛手を被らない手口だ。「アジアの戦いはアジア人同士でやらせる」これがアメリカの作戦だ。
不戦の憲法9条を持つ日本は戦争しない国として、一目置かれていた。今は軍事費倍増、武器輸出へと動く危険な国として警戒されている。
戦争ではなく平和への道を、武器ではなく対話での平和外交を。今、パレスチナの子ども達が日々、命を奪われている。即時停戦を求めるとともに、日本が戦争する国になることを阻止しよう。(沢) -
2023.12.13
日本新聞
日本新聞 4547号記事 汚染水の海洋投棄中止、原発からの撤退を
原子力規制委が東電柏崎刈羽原発の運転禁止を解除する方向示す。363名の原告が汚染水の海洋投棄の中止を求め,
国と東電を訴え提訴
今年8月24日以来、3回にわたって、東電福島第一原発事故炉のデブリに触れた汚染水の海洋投棄が強行されている。年明けに、もう一度投棄する予定だとしている。
原発事故を起こした原子炉の汚染水を海に流すのは世界でも例のないことで、危険極まりない。トリチウムだけではなく、基準超えの放射性核種が62も含まれているのだから、処理水ではなく汚染水そのものである。
国も東電も「関係者の理解なしには、どのような処分もしない」と言っていたのに、海洋投棄を強行した。
漁業関係者、農林業、観光業、生協などが反対を表明した。福島県の自治体の7割近くが反対または慎重の意見書を採択した。また、中国、韓国、太平洋島しょ国など世界の国々も反対した。しかし、国も東電も一向に耳を貸そうともせず、海洋投棄を続けている。まさに暴挙である。
福島県民、全国の漁業者らが汚染水の海洋投棄中止求め提訴
このような中、9月8日、「ALPS処理汚染水放出差止訴訟」が福島地裁に提訴された。そして11月9日には1都5県の市民と全国の漁業者、漁業関係者363名の原告で、第2次提訴が行われた。
・海洋投棄は原発事故の被害者に二重の加害を加えるもの
・国は、IAEAの安全基準を順守していると言うが、根拠はない
・東電は「敷地内に汚染水を収容するタンクを新たに建設する土地がない」「海洋放出は、デブリの取り出しのために必 要不可欠」と言うが、建設する土地はある。デブリ取り出しのメドはない
汚染水の投棄によって、漁業生産物は売れなくなる。政府は損害については補償するというが、海を汚染してしまったら元には戻らない。国や東電の主張は破たんしている。海洋投棄は即刻中止すべきである。
また、原子力規制委員会は6日の定例会で、運転禁止命令を出している東電柏崎刈羽原発について、東電の再発防止策を妥当とする検査報告書案を議論した。委員から異論が出ず、運転禁止解除の方向性が出されたとし、年内にも解除を判断するという。
東電は福島第一原発事故を起こし、何の反省もない。それは柏崎刈羽原発の運営姿勢にも明らかである。
2017年12月に、規制委は柏崎刈羽原発6、7号機の事故対策が新規制基準に適合と決定した。ところが2020年3月以降、侵入検知器が多数故障、代わりの対策も不十分なことが発覚。2021年にもテロ対策不備が相次ぎ発覚、4月14日、規制委が運転中止命令。
東日本大震災が起きる前に国が15メートルを超える大津波到来を予見しており、それを知りながら東電は、経費がかかるからと何の対策も取らなかった。そのため、事故を引き起こした。その後も安全二の次で儲け第一の東電の体質は何も変わっていない。
ところが、今回、規制委は運転禁止命令を取り消した。これで東電は柏崎刈羽原発の再稼働へと動く。これを何としても止めなければならない。
今、東海第二原発をはじめ、老朽原発の再稼働に向けて、政府は大きく舵を切った。原発事故から何の教訓もくみ取らない日本の姿勢に、世界の国々は大きな警戒心を抱いている。
生き続けられる環境を守らなければ、原発事故に見るように、取り返しのつかない事態を引き起こすことになる。今、日本がやるべきことは原発再稼働ではない。原発からの撤退であり、再生可能エネルギーへの転換である。(沢)