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2023.11.08
日本新聞
日本新聞 4542号記事 狭山再審求め、日比谷野音に3000名結集
無実を叫び60年の闘い。「無罪を克ち取るまで死なない」と語る石川一雄さんは84歳。裁判所は再審を早急に開始し、冤罪を晴らすべき
10月31日、日比谷野外音楽堂で「狭山事件の再審を求める市民集会」が開催され、全国から約3000名がかけつけた。
狭山市で1963年に女子高校生が誘拐・殺害され、被差別部落の24歳の青年・石川一雄さんが犯人にでっち上げられ、60年経った今も、強盗殺人犯の冤罪を着せられている、これが狭山事件である。数々の証拠から、石川さんの無実は明らかであるのに、再審請求はことごとく却下され、今、第三次再審請求を行っている。裁判所は一刻も早く、石川さんの再審を決定すべきである。
10月31日、日比谷野音には、石川さんの再審を求める訴えが続いた。
大野裁判長が今年12月で退官する。何としても大野裁判長のもとで再審を克ち取ろうと、闘いが展開されている。
社民党の福島みずほ党首は「大学生の時に“石川青年は無実だ!”というゼッケンをつけて集会に参加したことを、よく覚えている。逮捕されて石川さんが書いた“私はやってません”という文体は、脅迫状と似ても似つかない。万年筆のインクも被害者の物ではない。刑事訴訟における再審の部門を改正し、再審法を作るべきだ。証拠調べが条文化されるべき。検察官の抗告を許さない法を作るべき。死刑をなくしたい」と訴えた。
すべての冤罪を晴らす闘い
石川さんは「再審で無罪を克ち取るまでは、石川一雄は死にません。残念なのは、桜井さんが逝ってしまったことです。千葉刑務所で15年間、一緒にやってきた。お互いに頑張ろうとやってきた。狭山事件はなかなか勝利することができない。大野裁判長に、最低でも事実調べをやるように求めたい。長年、三者協議に出て、証拠もわかっている。再審を決めてもらいたい。皆さんも、要請行動を起こしてほしい」と訴えた。
石川早智子さんは「狭山事件発生から60年、寺尾不当判決から49年になる。49年前の10月31日の寺尾判決は、石川一雄84年の人生で一番悔しい日だ、と本人から聞いた。2009年12月、門野裁判長は、8項目の証拠開示勧告を出した。本当にうれしかった、大きく動くと思った。しかしなかなか動かない。大野裁判長退官まで、まだ時間がある。大野裁判長の決断、正義を信じたい。袴田さんは10月27日、裁判が始まった。もうこれ以上、袴田さんの人生を翻弄するのはやめてほしい。次は狭山だ。石川が元気なうちに無罪を克ち取り、両親の墓にも手を合わせたいと願っています」と語った。
袴田巌さんのお姉さんのひで子さんもかけつけ、「袴田事件は弟が30歳、私が33歳の時の事件。57年経って私は、90歳になって初めて、裁判というものに出た。大勢の方が冤罪で泣いている。巌だけ助かればいいとは思っていない。皆さん、早く再審開始になってほしい。来年の3月か4月には結審になり、遅くとも夏には無罪になると思っている。今度は石川さんの番だ。これからも共に頑張っていく」と、き然と訴えた。
人生の57年、60年を奪われるとは、人生そのものを奪われてしまったことである。無実が明らかなのに、いたずらに時間を引き延ばし、冤罪を着せるなど、あってはならないことである。足利事件の菅家さんが「私を取り調べた警察や検察に謝ってほしい!」と怒りをもって訴えたように、人権侵害も甚だしい取り調べ(暴言、暴力)が行われている。
取り調べの可視化、再審法の改正は緊急である。狭山事件の再審開始、鑑定尋問の実施を求める。一刻も早く、冤罪を晴らさなければならない。 (沢) -
2023.11.01
日本新聞
日本新聞 4541号記事 イスラエル、パレスチナは即時停戦を
戦争で犠牲になるのは子どもや女性、高齢者。水も食料も途絶えたガザ地区、犠牲者は増えるばかり。ただちに戦争をやめるのが解決の道
ハマスの攻撃に対する反撃として、イスラエルがガザ地区に空爆を強化している。10月25日段階で、ガザ側の死者は6546人、イスラエル側が1400人以上で、計7900人以上となった。
ガザではイスラエルに燃料や食料を遮断され、発電所も停止している。エジプトとの境界にあるラファ検問所から、21日以降、人道支援物資が搬入されたものの、イスラエルが搬入を拒否している。ガザの病院では電力不足で医療機器が必要な未熟児などが命の危機にさらされている。ガザ各地の学校などに、約60万人が避難している。
18日、国連安保理の戦闘中止を求める決議案に、アメリカが拒否権を行使している。そのため戦闘中止決議はあげられなかった。しかし、イスラエルの非人道的なガザ空爆に対して国際的な批判が高まる中、形勢不利と見たアメリカは、イスラエルに対して、「自衛権行使」を支持しながら、「人道目的の一時的な戦闘中断」を検討すべきと要請した。
日本時間で26日午前6時の国連安保理では、アメリカ、ロシア双方の決議案が否決された。
アメリカの案は、「戦闘の一時的な停止」を求め、各国にテロに対する自衛権がある、と主張。これに対してロシアと中国が「イスラエルの自衛権を認めれば戦闘の激化は止まらない」と拒否権を発動。ロシアが即時停戦を求めた案は、アメリカが拒否権を行使し否決。安保理は暗礁に乗り上げている状況だ。
一刻も早く停戦を実現しなければ、日々、犠牲は拡大していく一方だ。
停戦を求める世論が世界で高まっている
今回ハマスは1日で5000発のロケット弾を撃ったと言っている。それをイスラエルは防御できなかった。イスラエルは入植地を囲んで最高8メートルの高い壁を造って、誰も近づけないようにし、そこを3000人で守っている。攻撃のあった7日はユダヤ教の安息日で、祭日でもあった。3000人のうち2000人が西岸地区に移動していた。2年前から計画していたこの計画がわからなかったのか。この報復で、イスラエルはガザに突っ込むと言っている。そうなると中東戦争になる可能性がある。
歴史を見ると、パレスチナ人が住んでいた地に、イギリスがイスラエル建国を認め、イスラエルの侵食が進んで、パレスチナ人は狭い土地に押し込まれ、苦しい生活を強いられている。ユダヤ人にとっては長い迫害の後にたどり着いた地だから放したくない。問題の根は深い。中国とロシアは、パレスチナとイスラエルの2つの国を建国する以外に解決はない、と主張している。
世界の人々はこうしたいきさつを知っているから、各国で戦争反対のデモが起きている。アメリカではニューヨーク大学やカリフォルニア大学で、パレスチナ・ジェノサイドへの抗議デモを行っている。
今、ガザ地区とイスラエルで戦闘が激化していることに対して、停戦を求める国際世論が高まっている。
1、ガザ地区への食料、医薬品、燃料など人命救助支援、人道支援や医療スタッフの安全な通行を促進すること
2、すべての市民の人質、特に子どもや高齢者を解放すること
3、ガザ北部に人道支援が到達できるようにし、そこにいる市民やスタッフとともに、常に保護されることを約束すること
4、イスラエル政府による、民間人に対するガザ北部からの退去命令を撤回すること
5、危篤状態にある患者を緊急治療のために避難させること
世界の500以上のNGOが上記に掲げた項目を求める署名に賛同し、署名活動を行っている。毎日いたいけない子ども達の命が奪われている。一刻も早く戦争をやめさせることが最優先である。イスラエルとハマスの即時停戦を求める。 (沢) -
2023.10.25
日本新聞
日本新聞 4540号記事 米軍と自衛隊が南西諸島に共同軍事施設を検討
「台湾有事」を宣伝し、日米合同軍の実現がねらい。軍事費も更に増額し、戦争準備進める日米。戦争ではなく平和で安心な暮らしが願い
世界がきな臭くなっている。ウクライナもパレスチナも戦争の真っただ中だ。何より大切なのは、停戦である。犠牲にストップをかけることだ。ところがなかなか停戦が実現しない。
日本はどうか。今、物価は値上げ値上げで、生活は苦しくなる一方だ。政府がやるべきことは、疲弊して苦しんでいる人々の生活を具体的に保障することだ。
ところが実際やっていることは、軍備増強、米軍との合同軍事演習である。そのために莫大な金が浪費されている。
今、「台湾有事」をアメリカが喧伝し、日本はアメリカの意向第一で南西諸島の軍事要塞化を進めている。米軍と自衛隊は対中国を意識して、沖縄県や南西諸島に、物資や装備品の備蓄・補修施設を整備する検討に入るという。既存の米軍・自衛隊基地内に整備して、米軍と自衛隊が共同使用するというのである。日米軍の一体化が進められていくのだ。
米軍は世界各地に装備品や食料、水、医薬品などを備蓄し、装備品を補修もできる施設を設けている。いつ、どこで戦争が起きても対応できる態勢を組んでいるのである。西太平洋では、相模総合補給しょう(相模原市)、米軍港湾施設の横浜ノースドック、キャンプ・キャロル(韓国)、米領グアムなど。東南アジアやオセアニアにも新たに整備。オーストラリアとフィリピンで整備に着手、シンガポールとタイ、パプアニューギニアとも協議。南西諸島に日米が共同使用する備蓄・補修施設を整備することで、日米合同軍が具体的に動き出す態勢ができる。つまり、日本がアメリカの世界戦力の下で、米軍の一部隊のように動かされるわけである。非常に危険な計画である。
軍事大国化に歯止めかけ、平和憲法を守ろう
政府は2023年から5年間で軍事費を総額43兆円に増やす計画を立て、すぐに予算に計上し、軍備増強を進めている。この間の兵器ローンが16兆円を超えているため、実際は約60兆円の軍事費である。現在世界10位の軍事費が、第3位の軍事大国にのし上がるのである。
そして今、某商業紙によると、軍事費が43兆円をはるかに上回る勢いで、予定より増えているというのだ。イージス・システム搭載艦はすでに2005億円も増額、今後も新型護衛艦FFM、輸送ヘリCH47、ステルス戦闘機F35Aなど次々値上げが報告されている。
一体誰が日本の軍事大国化を望んでいるのか。少なくとも私たちは何も聞かれてはいない。食料品や光熱費、ガソリン代など、値上げはとどまるところを知らず、生活は苦しくなっていく一方である。その中で決められていくのは軍備増強。軍事要塞化。一体誰のための政治なのか。
軍事費増も軍事基地建設も、どれもこれも憲法違反である。日本は二度と戦争しない、戦力を持たないという憲法9条を制定した。平和を守る日本国憲法は、世界の平和を求める国の模範となった。軍隊を持たないコスタリカも、憲法9条を手本としている。
ところが当の日本は、憲法9条を形骸化させ、葬り去ろうとしている。解釈改憲と称して、自国が攻撃されなくても、同盟国が危険になれば攻撃できる集団的自衛権の行使が可能と閣議決定。国会での審議もしない。そして、攻撃されなくても危険だと感じれば攻撃できる敵基地攻撃能力の保持も決めた。まさに戦争まっしぐらである。
軍備増強など必要ない。アジアの国々と力を合わせ、平和を築いていくことが未来への道である。 (沢) -
2023.10.18
日本新聞
日本新聞 4539号記事 水俣病訴訟 チッソ、国、熊本県が控訴の暴挙
水俣病の原因はチッソの排水。国がすぐに対処していれば被害の拡大は防がれた。責任を認め被害者全員に救済措置を早急に講じるべき
水俣訴訟大阪地裁判決は、128人の原告全員を水俣病と認め、一人当たり275万円の賠償を、国などに命じた。被害者の権利を守る画期的な判決である。
これに対して、チッソは4日、国と熊本県は10日、判決を不服として、大阪高裁に控訴した。患者は高齢となり、一刻も早く救済されなければならない。裁判半ばに他界した方もいる。控訴は非人道的で、認められない暴挙である。
水俣病の経緯
1932年
日本窒素肥料水俣工場でアセトアルデヒド製造操業開始
1945年
日本窒素肥料がアセトアルデヒド、酢酸工場の排水を無処理で水俣湾へ排出
1949年
水俣湾でタイ、エビ、イワシ、タコが獲れなくなる
1952年
水俣で胎児性患者が出生。認定は20年後
1953年
水俣湾で魚が浮上、猫が狂死
1954年8月1日
熊本日日新聞が「ネコ100余匹が次々狂い死にした」と報道
1956年
5歳女児が新日窒附属病院小児科に入院、この年、50人発病、11人死亡
同5月1日
水俣保健所が「原因不明の奇病発生」と水俣病公表、これが公式確認
チッソがアセトアルデヒド製造から24年経ってようやく、水俣病が公表されたのである。最初の発症がいつなのかは定かではない。「奇病」として偏見を持たれ、病院へも行けない状況だったのである。
1956年11月の段階で、熊本大学の研究班は、「病気は水俣湾の汚染魚を食べたことによる」と調査結果を発表している。厚生省(当時)も「昭和31年(1956年)全国食中毒事件録」の「いわゆる『水俣病』について」という項目に、「原因食品 水俣湾内産魚介類」と記している。
熊本県は1957年8月に、食品衛生法による水俣湾魚介類の販売禁止措置の方針を固め、8月に厚生省に可否を照会した。これに対して厚生省は「食品衛生法は適用できない」と退けたため、その後も水俣湾の魚介類による被害は拡大し続けたのである。
こうした経緯から、原因企業のチッソと国との共同犯罪と言っても過言ではない。もちろん、熊本県の責任も大きく問われる。
2009年の水俣病特措法は、2012年7月末の申請期限までに約3万8000人に対して、一時金210万円や療養費などを支給した。しかし、対象を、不知火海周辺の熊本、鹿児島両県の9市町村の沿岸部などに居住歴があり、チッソがメチル水銀排出を止めた1969年11月末までに生まれた人に限定した。沿岸部に居住していなくとも汚染魚を食べて発症しているし、1969年11月以降に生まれた人も発症している。
岡山大学大学院環境生命科学研究所の津田敏秀教授は、「水俣病は魚介類を原因食品とするメチル水銀中毒症の症状とみなされる」と断定している。そして、「水俣病は国と県が食中毒事件として食品衛生法に基づいた措置を怠ったこと、水俣病の認定審査を行う医師らが食中毒症としてのとしてのメチル水銀中毒症についての知識に欠け、多くのケースで保留や棄却をもたらした」と問題視している。大阪地裁判決は津田教授の見解を重要視している。
国は周辺住民の命を守ることより、原因企業であるチッソを守ろうとし、チッソの排水に含まれているメチル水銀が原因であることを隠した。そのために一体どれだけの人が犠牲にされたことか。国も熊本県もチッソも、そのことに何の反省もなく、控訴したのである。すべての原告に賠償を命じた大阪地裁判決は全く正しい。続く熊本、東京、新潟訴訟でも大阪地裁判決同様の判決が出たら大変だと、控訴したのだろう。
チッソ水俣工場創業から91年が過ぎ去った。事実を認め、被害者救済を最優先にすべき時である。 (沢)