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2023.10.11
日本新聞
日本新聞 4538号記事 2022年度、いじめも不登校も過去最多
小中の不登校は29万9千人、いじめは小中高で68万2千件、自殺は411人。差別や暴力にがんじがらめにされている子ども達の心の解放を
文部科学省が2022年度の「児童生徒の問題行動・不登校調査」を発表した。
それによると、小中学生の不登校は約29万9000人で過去最多。前年度比22.1%の大幅増となった。いじめは小中高で約68万2000件、暴力行為の発生は約9万5000件でいずれも過去最多だった。
大変な事態である。学校現場の惨たんたる状況が浮き彫りにされている。発表された数字はあくまで文科省に報告された数であり、実際はこの数より多いと思われる。不登校やいじめを報告すれば、学校長自身の評価に関わるから、なるべく問題がないようにして定年退職を迎えたいという意識が働き、問題に目をつぶる傾向は否定できないからである。いじめが前年度より1割も増えたことについて、「コロナ禍で縮小されていた部活動や学校行事が再開され、子ども同士の接触する機会が増えた」としている。コロナでオンライン授業の時は、子ども達が会わないから、いじめが減っていたというのである。これでは本質的に何も変わっていない。子ども達の中の差別意識は変わらないから、顔を合わせればいじめ、暴力となる。
小中高校生の自殺者数は前年度より43人増えて411人。そのうち原因不明が6割の255人だというのだから驚く。
これが一番の問題である。何故、学校に来ない子どもが年々増えるのか、不明。何故、いじめが増えるのか、不明。何故、暴力事件が起きるのか、不明。何故、自殺する子どもが後を絶たないのか、不明。
これでは何も解決することは出来ない。日本の教育は死んでしまっていると言っても過言ではない。深刻な事態なのである。
子どもをいきいき育てる教育への転換を
いじめの問題一つとってみても、自分たちがいじめた子が自殺したと聞いても、「なんてことをしてしまったんだ」と心を痛めるのではなく、笑い飛ばす子どもが育っている。子どもと子どものコミュニケーションも、教師と子どものコミュニケーションも成立していない。
教師は残業残業に追われているが、それは子どもを育てるための仕事ではなく、書類提出に忙殺されているのである。そんな中で疲れ果て、子ども達が何を考えているか、何に悩んでいるか、困っているかと心を配ることもできなくなってしまう。子どもの自殺が増えているが、精神的に追い詰められて休職に追い込まれている教師も増えている。子どもも教師も管理、統制され、疲れ果てている。
教師が元気なら、子ども達と一緒に遊び、子ども達の様子もわかる。子ども達も教師に心を開いてくるだろう。そんな関係が、今の教育現場にはあまりにも少なくなっている。
その結果が、不登校過去最多、いじめ・暴力過去最多、自殺過去2番目なのである。夜遅く、電車から降りてくる子ども達がいる。塾帰りなのだろう。子ども達に一番大切なのは何なのか、今一度、考え直す必要がある。勉強しろ勉強しろと育てた子どもに殺される事件が頻発している。子どもにとっても、親にとっても、何が幸せなことかと考えさせられる。
学校現場で子ども達の中にある差別に真っ向から立ち向かっていく教育が、最も求められている。
人間は本来、集団化するものであり、命を大切にするものである。その本来の姿に戻してやるのが教育の仕事である。子ども達を差別から解放する教育への転換は急務である。 (沢) -
2023.10.04
日本新聞
日本新聞 4537号記事 辺野古埋め立て 国交相、沖縄県知事に設計変更承認指示の暴挙
沖縄戦を強いられた県民の民意は戦争反対、基地反対。
全県的な反戦組織「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」発足で反戦の団結強まる
9月28日、斉藤国土交通相は、沖縄県・玉城知事に対して、軟弱地盤の辺野古北側の埋め立て設計変更申請を承認するように指示を出した。軟弱地盤に基地をつくることは無謀であり、埋め立てを承認しないのは当然である。
沖縄県民は、沖縄戦で言葉に尽くせないほどの悲惨な経験をしている。肉親を失い、友を失い、すべてを失った。その中から、今日の沖縄を作り上げてきたのである。二度と戦争をしてはならない、これは沖縄県民の変わらぬ民意である。基地建設は決して認められないのである。
第二次世界大戦末期、日本の敗戦は明らかで避けられない、降伏するしか道はない、という時に、沖縄を捨て石として戦場にした。そのため、沖縄県民の4分の1が犠牲となったのである。
沖縄県民の思いを無視して、日本政府は沖縄復帰後も、沖縄に基地を押し付けてきた。沖縄の人々は「すでにある米軍基地は奪い取られた基地だ。しかし、辺野古新基地は差し出す基地だ。絶対に認めるわけにはいかない」と話している。
沖縄県知事が設計変更を承認しなければ、辺野古の工事は進められない。これに対して防衛省は国交相に、沖縄県の不承認を取り消すよう、行政不服審査法に基づいて審査請求した。
行政不服審査法は、行政から不当な処分を受けた国民の救済のためのものだ。防衛省沖縄防衛局が「私人」として訴え、国交相が判断する、これは成り立たない。ところがこれを行使し、国交相が沖縄県知事に承認を指示したのである。
つまり国のやり方に対して、自治体が意見を言うことなど認めないのだ。玉城知事が承認指示に従わなければ、国が県に代わって承認する「代執行」のための訴訟を高裁に起こすという段取りである。これでは国が何でも好き勝手に出来、国と地方自治体が対等になったなど、全くの建前で実際は全く違う。
沖縄県民の反戦運動を全国に広げよう
沖縄で全県的な反戦組織「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」が発足し、9月24日、那覇市でキックオフ集会が開かれた。11月23日に那覇市で1万人規模の県民大会を開く予定。
共同代表の具志堅隆松さんは、沖縄戦で犠牲になって遺骨さえもわからなくなってしまった人たちが多くいる中、遺骨発掘を続けている「ガマフヤー」代表である。具志堅さんは「相手を攻撃できる基地があれば攻撃の対象になる。沖縄に配備されたミサイルを撤去してほしい。そうでないと私たちの生存が厳しくなる」と語っている。
今、沖縄を含む南西諸島にミサイル基地が造られ、自衛隊が配置されている。アメリカは「台湾有事」を喧伝し、今にも中国が台湾を攻撃するかのように煽っている。日本政府も「台湾有事」を叫びたて、南西諸島の軍事要塞化を進めている。
果たして「台湾有事」は本当だろうか。台湾の世論調査では6割以上が現状維持を意思表示している。20代の若者では80%以上である。独立派が多数ではない中で、「台湾有事」は現実のものではない。
アメリカはすでに経済力では中国に抜かれている。アメリカと中国の力関係が逆転するのは、時間の問題である。だからアメリカは日本や韓国に中国と戦わせて叩く、これがアメリカの戦略である。この戦略にまんまと乗っているのが日本政府である。
戦争に向かう道ではなく、かつての侵略戦争の加害の事実を認め、アジアの国々と友好・連帯を築いていくのが日本の進むべき道である。 (沢) -
2023.09.27
日本新聞
日本新聞 4536号記事 安保法制強行成立から8年 戦争に向かう日本に歯止めを
安保関連法で集団的自衛権の行使を可能にし、昨年の安保3文書で敵基地攻撃能力保有打ち出した政府。日米軍事同盟強化は戦争への道
2015年9月19日、安倍政権(当時)は安保関連法案(11の法案を束ねて一括採決)の強行成立を行った。国会前では連日、強行採決に反対し、抗議の声があげられていた。全国でも抗議行動が行われた。にもかかわらず、強行採決、成立させたのである。
安保法制によって、集団的自衛権が可能にされ、日米軍事同盟がますます強化された。アメリカとの合同軍事訓練は、安保法制成立前の3年間では64回だったものが、成立後の3年間では242回と急激に増えている。アメリカだけではなく、オーストラリア、イギリスとも合同訓練が増えた。イギリスとは合同訓練などしなかったのに、6回行い、オーストラリアとは4回から9回に増えている。
そして昨年12月の安保3文書によって、敵基地攻撃能力を保有するに至ったのである。
政府は「日米一体化、日本の軍事力増強は、抑止力となる」と言うが、果たしてそうだろうか。今、アメリカは「台湾有事」をあおり立てている。「台湾有事」に備えるという名目で、沖縄を含む南西諸島に自衛隊のミサイル基地が次々造られた。米軍がそこからミサイルを撃つ。ミサイルを積んだトラックで島中を移動しながら、ミサイルを撃つ。そうなれば島全体が戦場になる。その後、自衛隊が迎え撃つシナリオだ。島民にシェルターに避難する訓練をさせているというが、島民を犠牲にするのか。
アメリカは以前から「アジアの戦争はアジア人同士を戦わせる」と言ってきた。アメリカとの一体化は日本を守らない。同盟国アメリカに攻撃する国に対して自衛隊が攻撃する。これは日本がアメリカの戦争に巻き込まれることである。アメリカに加担しなければ、日本が戦場になることはない。日米一体化は抑止力どころか、戦争に突入する危険をもたらす。
憲法9条を守り戦争しない日本に
安倍政権は、改憲手続きもせず、解釈改憲で集団的自衛権の行使を閣議決定した。これほど重要なことを閣議決定で決められるわけがないが、決めてしまった。
集団的自衛権の行使も、敵基地攻撃能力も、不戦、戦力不保持の憲法9条に明らかに違反している。9条をそのままで、決して成り立たないことである。全く無法である。
憲法9条は、戦後の焼け野原の日本で、食料にも事欠く中で、二度と戦争してはならないという強い思いで、決められた大切なものである。戦争は何もかも奪い尽くすもので、プラスになることはひとつもない。不戦を誓い、命を守っていこうという決意である。この憲法9条を形骸化させ、軍事費を2倍にし、軍備強化に拍車をかけている。
日米韓首脳会談で確認した結束とは一体何か。日本と韓国がアメリカの手足となって、アメリカの世界戦略の下で、アメリカと共に闘う、実際は戦わせられるのだ。
そこに日本の未来はあるか。岸田首相は、日本が加盟してもいない軍事同盟NATO首脳会議に、昨年6月に続き、今年7月にも出席した。これも憲法違反である。決して認められないことなのに、マスコミは口をつぐんでいる。国会で徹底討論したという話も聞かない。NATOで日本は「パートナー国」に位置づけられているというが、日本は欧米の一員ではなく、アジアの一員である。アジアの国々と力を合わせて生きるのが、日本の取るべき進路である。それが平和への道である。
(沢) -
2023.09.20
日本新聞
日本新聞 4535号記事 3.11 子ども甲状腺がん裁判
子どもの命を守る闘い
「治療のいらない軽微ながん」と非情な言葉を吐きつける東電側。公表でも358人の小児甲状腺がん発症。原因が原発事故なのは余りに明白
東電福島第一原発事故から12年半の歳月が流れた。しかし事故による被害はいまだに続いている。政府は放射性汚染水の海洋投棄を国内外の中止要請に耳を傾けることもなく、8月24日に強行した。中国を始め、国際世論の批判を浴びている。
9月13日、東京地裁において、3.11子ども甲状腺がん裁判の第7回口頭弁論が行われた。地裁前には200名以上が駆けつけ、83名が傍聴した。
裁判の前に、地裁前での集会が行われた。
弁護団から、今回から裁判長が代わることが報告された。これまで原告7人全員の意見陳述が終わっている。新しい裁判長は何も聞いていない。新たな裁判長に対して、弁護団は、原告2人の意見陳述の時間を取ってほしいと要望を出したが、それが実現できる見込みが今のところないという。井戸弁護団長は、「裁判の前の進行協議で、次回以降、原告の声を直接裁判長に届けられるよう要求していく」と話した。そして、東電と原告側の一番の争点は、潜在がんなのか被ばく由来なのかという点だ。執刀した鈴木医師は「甲状腺がんは非常に進行している」と論文に記している。これに対する東電側の反論は何も反論になっていないことが指摘された。
古川弁護士は「原告の一人は来週末に検査をし、すでに2回手術をしているが、結果を見て、次の手術をどうするか判断する。不安な気持ちを話していた。裁判所には原告の声をきちんと聞いてもらいたい」と訴えた。
あじさいの会共同代表の牛山元美医師は「甲状腺がんは放っておいてもいいがんというものではない。病気に悩んで人生が変わってしまった子ども達の実際をみてほしい。裁判に関わって、たくさんの支援の方がいることが、大きな励ましになっている。最近一番気になったのは、疫学の専門家たちが“被ばくの影響かもしれないということ自体が、被ばくした社会の復興を妨げる”と言っている。だからこそ、真実を訴えなければならない」と語った。
福島の小児甲状腺がん多発は原発事故由来
裁判では鈴木弁護士がプレゼンをおこなった。小児甲状腺がんが通常は100万人に1人か2人、事故後、福島では事故当時18歳未満の子ども38万人の健康調査を行った。その結果、1巡目で187例、2巡目で125例の甲状腺がん、あるいは疑いがみつかった。しかも、その77.6%でリンパ節転移が確認された。これを東電はスクリーニング検査の結果だと言う。調べなければ生涯わからない、治療の必要もないがんだというのだ。これについて、鈴木弁護士は明確に否定した。
東電は「甲状腺がん多発と原発事故との因果関係はない」という根拠に、UNSCEARの報告書を論拠にしている。ところが裁判で、UNSCEARの報告書のデータの開き方を質問している。つまり、報告書を見もせずに論拠としているのである。これでは話にならない。
報告会では、UNSCEARがビキニ水爆実験による被爆が問題になって、放射能汚染に対する国際的な関心が高まった時に、それを抑えるために作られた機関であると指摘された。
福島からの避難者で、大阪で裁判闘争を闘っている森松さんは、「原告を孤立させないでほしい。甲状腺がん多発は事実だ。原告を支えていこう」と力強く訴えた。
新たに副団長となった杉浦弁護士は「裁判はまさに被害の問題になる。原告に寄り添うことが大事」、同じく副団長の斉藤弁護士は「声をあげた原告がさまざま言われる。それを守ろうと参加した。原告達が怖がらずに声をあげれるよう支えていく」と語った。
国と組んで権力でごり押ししてくる東電側。それに対して若者たちを守る良心の闘い、子ども達の命を守る闘いである。 (沢)