-
2021.12.01
日本新聞
日本新聞 4443号記事 沖縄県知事が辺野古設計変更認めず
岸田政権も「辺野古移設が唯一の解決策」と沖縄の民意無視。基地などできない軟弱地盤に莫大な費用を浪費。辺野古新基地建設は中止に
11月25日、玉城・沖縄県知事は防衛省沖縄防衛局が県に出していた辺野古新基地設計変更の申請を不承認とした。これは埋め立て予定海域で見つかった軟弱地盤に対応するためのものであるという。
玉城知事は「完成の見通しが立たず、事実上、無意味な工事をこれ以上継続することは許されない」と語っている。
軟弱地盤はN値0で、“マヨネーズ状”と称されている。そのようなところに基地を造るなど不可能である。しかも最深90メートルというが、政府が改良工事を行うのは水深70メートルまでで、改良しない部分を残しての基地建設もあり得ない。
軟弱地盤改良のために、砂杭約7万1000本を海底に打ち込んで地盤を固めるために、さらに約353万3000立法メートルの海砂を採取しなければならない。土砂の増量も変更申請に含まれている。土砂の調達先は本部・国頭村地区だけだったのが、本島南部、宮古島、石垣島など7地区9市町村に拡大する。沖縄戦で犠牲となった人々の遺骨が残る土砂を米軍の基地に使うなど、全く許されないことだ。総工費は当初の3倍近い9300億円に膨れ上がり、工期も12年、これは政府の試算で実際はもっと増える可能性が大きい。
実現不可能な基地建設に、莫大な時間と費用をつぎ込む。儲けているのは大手ゼネコンだ。基地ができようができまいが、儲けさえすればいいというねらいが見えてくる。
「基地はいらない」と
いう沖縄の民意尊重を
1995年に米兵3人が女子小学生を強姦した。この事件を巡って、沖縄では米軍基地反対運動が高まった。県民大会には8万5000人が結集した。こうした運動の鎮静化をねらって、日米両政府が提示したのが1996年のSACO合意である。沖縄の11の米軍施設を返還するとして、沖縄の負担軽減策だといわれた。しかし実際は、老朽化し使い物にならないものを返還し、最新機能を備える基地強化であった。
このような姑息なやり方を見抜いた沖縄県民は、辺野古新基地に明確に反対の意思表示をした。選挙のたびに、辺野古新基地反対の候補を支持した。これに対して政府は「選挙は基地建設だけを問うものではないので、基地反対の民意とは言えない」とねじ曲げた。そのため、沖縄県民は2019年に辺野古基地建設だけを問う県民投票を行った。72%が反対票を投じた。
基地反対を、命をかけて貫いた翁長知事の後継者として、沖縄県民は玉城知事を誕生させた。今回、玉城知事が設計変更申請を承認しなかったのは当然である。
これまで玉城知事は何度も首相官邸を訪れたりして、沖縄県民は基地建設に反対だと訴え続けてきた。しかし、政府は聞く耳を持たなかった。岸田首相は安倍・菅内閣とは違うかのように登場したが、結局、「辺野古が唯一の解決策だ」と従来の自民党政権と全く同じ言葉を繰り返した。このようなことから、玉城知事は不承認で工事を阻止しようとしたのである。
これは国が沖縄の声を聞こうとしないことに対する対抗策である。国が真摯に沖縄県と話し合う姿勢をとったことは、残念ながら今まで一度もない。
玉城知事の不承認に対して、政府は対抗策を検討しているという。
11月23日には、普天間基地所属のオスプレイから宜野湾市野嵩の住宅街に金属製の水筒が落下した。米軍基地がある限り、基地周辺の住民は常に危険にさらされている。
政府は沖縄県を訴えるのではなく、基地建設を中止すべきである。
(沢) -
2021.11.24
日本新聞
日本新聞 4442号記事 沖縄戦場化に向かう軍事訓練中止を
11月下旬の自衛隊統合演習で、沖縄各地で大規模軍事訓練実施の計画。沖縄を再び戦場にする危険な動きに歯止めを。
平和が沖縄の民意
沖縄が軍事訓練の場とされている。
11月9日、宮古島と石垣島の北方海域で、航空自衛隊と米空軍が共同軍事訓練を行った。空自は救難捜索機U125AとUH60J救難ヘリコプターを1機ずつ、米空軍は垂直離着陸輸送機CV22オスプレイ、MC130J特殊作戦機が参加しての訓練であった。尖閣諸島に近い空海域での訓練で、中国に対する挑発である。
9日の軍事訓練を発表したのは2日後の11日である。この訓練に対して中国からどのような反応があったかについては、「運用、情報に関わるため、答えは控えたい」という。これでは沖縄の平和、沖縄県民の安全は守られない。
それだけではない。今月下旬(日時は明らかではない)、自衛隊統合演習の一環で、沖縄各地での軍事訓練が計画されている。
・石垣港に海上自衛隊の輸送班が寄港し、与那国島の祖納港との間で人員や車両の輸送訓練
・中城湾港に防衛省が借り上げた民間船で県外から部隊や物資を輸送する訓練
・宮古島で地対艦ミサイル部隊がシミュレーションによる模擬射撃実施
・北大東村の米軍沖大東 島射爆場で空自の戦闘 機や陸自のヘリコプタ ー、海自の護衛艦が実弾射撃訓練
自衛隊の統合演習は、隔年で行われる大規模軍事訓練である。沖縄各地が軍事訓練場として使われることは、とても危険なことである。訓練の中味は、日本が直接攻撃を受ける「武力攻撃事態」を想定したもので、まさに実戦さながらの訓練である。台湾有事や尖閣諸島周辺の緊迫化を意識したものだと言っているが、有事に備えたものではなく、有事を引き起こすものに他ならない。
沖縄での軍事訓練は、沖縄が標的にされる結果をつくる。再び沖縄を戦場とする危険な動きに歯止めをかけなくてはならない。
基地建設ではなく、
沖縄の自然を守る政
策を
50年前、琉球政府の屋良朝苗主席が佐藤栄作首
相に「建議書」を手渡した。日本復帰後の沖縄の将来像を示したものだという。「屋良建議書」の「はじめに」に次のように記されている。
「沖縄は、余りにも国家権力や基地権力の犠牲となり手段となって利用されすぎた。復帰という歴史の一大転換期にあたって、このような地位からも沖縄は脱出していかなければならない」
沖縄戦での犠牲、米軍統治下での軍事植民地状態にされた犠牲であり、沖縄戦で捨て石にされたこと、戦後も沖縄を日本から切り離したこと、沖縄に米軍を集中させたなどの「手段」を批判している。
「建議書」は、復帰後の沖縄の振興開発計画は地域住民の総意であること、国は県が策定した計画を財政的に保障すること、県民の意思に基づく計画に国は口を出さないことを明記している。米軍基地撤去、自衛隊の沖縄配備にも反対している。
「屋良建議書」を政府は何一つ守ろうとしてこなかった。いや、全く逆のことをしている。沖縄に基地を集中し、日米合同軍事訓練を繰り返している。辺野古新基地反対の民意を、何度も沖縄県民は繰り返し示してきたが、それを無視して、政府は建設を続けている。
11月19日には、「沖縄・奄美の世界自然遺産登録を記念する式典」が沖縄空手会館で行われ、「先人から受け継いだ自然を守る」と誓い合った。戦争は自然をことごとく破壊する。沖縄を軍事訓練の地、戦場へと向かわせてはならない。沖縄だけではなく、日本のどこにも米軍基地はいらないし、軍事訓練もいらない。戦争を避けるには平和・友好の外交以外にない。 (沢) -
2021.11.17
日本新聞
日本新聞 4441号記事 海自がオーストラリアの艦船を初の防護
米軍に次いで「武器等防護」の国を拡大。米国の中国包囲網に組みした挑発行為。戦争にまっしぐらに向かう日米豪印英の軍事同盟強化
12日、防衛省は海自の護衛艦「いなづま」がオーストラリア海軍のフリゲート艦ワラマンガに対して「武器等防護」を実施したと発表した。「武器等防護」は安保関連法を根拠としたもので、平時から他国の艦船や航空機を守る活動である。
これは明らかに憲法9条に違反する。憲法9条では、戦力を持たないこと、戦争しないことを明記している。他国の艦船を守ると言うが、つまり他国の艦船が攻撃される、あるいはその危険があると判断すれば、武器を使う。その結果、自衛隊が戦争に巻き込まれることは目に見えている。
安保関連法自体が憲法違反であり、違憲訴訟が行われている。しかしすでに、この戦争法を根拠として、米軍への武器等防護は2017年5月から実施されている。実施されたのは2017年2件、2018年16件、2019年14件、2020年25件にも上っている。憲法9条が闇に葬り去られようとしているのである。
日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4か国の軍事同盟「クアッド」は対中戦略体制である。これにイギリスが加わり、対中包囲網の構築をアメリカはねらっている。日本はあろうことか、この中心的役割を担おうとしている。来春にも「クアッド」の2回目の首脳会談を日本で開催する方向で調整が進められているというのである。中国への攻撃を検討する会議を隣国日本で開催する、これはまさに中国への挑発である。非常に危険な動きであり、止めなければならない。
軍事強化の
危険な動き
防衛省は12日、「防衛力強化加速会議」の第1回目の会合を開いた。ここでの議論を、安保戦略や防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の改定に反映させたいという。岸信夫防衛相は中国や朝鮮の軍事開発を念頭に、「あらゆる選択肢を排除せず、冷静かつ現実的な議論を突き詰めていくことが重要」と語ったという。「あらゆる選択肢」とは何を指しているのか。岸防衛相は安倍晋三元首相の実弟であり、岸信介元首相の孫である。岸信介は国務大臣の時に「名前が核兵器であれば憲法違反、そういう性質のものじゃない」と言っている。つまり核兵器を持つこともありうると言っている。安倍元首相は2018年1月26日の参院本会議で「国民の命と平和を守り抜くために、通常兵器に加えて核兵器による米国の抑止力を維持していくことが必要不可欠」と言っている。こうした姿勢と岸防衛相の「あらゆる選択肢を排除せず」とが符合することは否定できない。「防衛力強化加速会議」なるものを発足させ、軍事力強化にまい進しようとしていることは実に危険なことである。
「国民の命と平和を守り抜く」と称して、戦争への道に突き進むことを阻止しなくてはならない。
「覇権主義を強める中国」などと言うが、根拠は何か。これまで他国に戦争の火種をまき散らしてきたのは、アメリカである。日本がアメリカの軍事戦略に組みすることは、世界に多くの敵を作ることに他ならない。抑止力とは、アメリカの核の傘に入ることや、憲法9条を葬り去って戦争を合法化することではない。
本当の抑止力は、アジアの国々とともに発展していく道である。その意味でRCEP(東アジア包括的経済連携協定)が来年1月1日発効の見通しがついたことは、評価できる。
平和憲法9条を守り、アジアの国々とともに平和への道を切り開いていくことが、日本の歩むべき道である。(沢) -
2021.11.10
日本新聞
日本新聞 4440号記事 広島地裁、伊方原発3号機運転差止申し立て却下
伊方3号機は危険なプルサーマル運転。福島第一原発事故から何も学ばぬ再稼働強行を中止に。東電刑事裁判控訴審で問われる東電の責任
4日、広島地裁は広島、愛媛の住民7人が、伊方原発3号機の運転差し止めを求めた仮処分の申し立てを却下した。原爆が投下された広島の裁判所で、原発再稼働につながる判決は無念なことである。
住民側が四国電力の定める耐震設計の目安となる揺れ650ガルが、過去の地震観測データと比較して適正かどうかを主張した。吉岡裁判長は「四国電力が定める地震動を上回る規模の地震が起きるとは言えない」とした。実際は650ガルを上回る地震が過去10年間に5回も起きているのに、なぜ起きないと言えるのか。科学的根拠はあるのか。また、原子力規制委員会が「高度な科学的、技術的知見に基づく総合的判断」をしているから、裁判所が判断する必要がないというなど、全く話にならない。住民側は「司法が安全性を判断しうることを放棄しており、到底容認できない」と即時抗告の方針である。
伊方原発3号機の
危険性
瀬戸内海にある伊方原発は全国の原発の中でもとても危険な原発である。
・南海トラフ・津波が差し迫る今、中央構造線が直近にある伊方原発 再稼働は危険
・伊方原発3号機はウランとプルトニウム混合MOX燃料を燃やすプルサーマル運転だから、事故の際には猛毒プルトニウムが拡散される危険。通常運転時も大量の放射性物質拡散
・事故が起きれば偏西風に乗って放射性物質は全四国、瀬戸内一円に。瀬戸内海は死の海に、西日本壊滅の危険
・実現不可能な避難計画。佐多岬半島の西半分の住民5000人は孤立状態となり避難できない
このようにどう考えても、伊方3号機は運転差し止め、廃炉以外にないのである。
東電刑事裁判控訴審
始まる
2日、東電福島第一原発事故で業務上過失致死罪で強制起訴され、一審で無罪となった東電旧経営陣3人の控訴審初公判が東京地裁で行われた。
武黒一郎元副社長と武藤栄元副社長が出廷し、勝俣元会長は体調不良を理由に出廷しなかった。
検察官役の指定弁護士は「一審判決には重大な誤りがある」と訴えた。被告の弁護側は控訴棄却を求めた。指定弁護士側は「長期評価は国の唯一の公式見解であり、化学的信頼性は十分認められる」と主張し、裁判官が現場に行って津波の状況を直接確認する必要性を訴えた。これに対し、弁護側は「国の公式見解だからといって、信頼性があると決めつけることはできない」とした。
実際に長期評価どおりに大津波が起こった。社員から大津波の予測が報告された時点で、具体的に対策していれば、事故は防げた可能性が大きい。
たくさんの方が被ばくし、美し都・福島は戻ってこない。命を失った方も多い。そのことに心を痛めることもなく「無罪」を主張する東電元幹部の面々。
今なお、原発の利権に群がる者たち。どんな大事故があろうと、日本は何も変わっていない。そして今、危険な原発の再稼働へと向かっている。あまりにも愚かなことを繰り返そうとしている。
原発からの撤退、原発は廃炉に。それ以外の選択はない。
子どもの甲状腺がんの検査を縮小し、実際から目をそらそうとする政府と福島県。国がやるべきことは、被ばくによる健康被害をできるだけ少なくするための保養などの対策であり、避難者への補償、福島に住んでいる人たちへの正しい情報提供である。そして、二度と同じ惨劇を繰り返さないために、原発からの撤退方針を早急に決めることである。 (沢)