-
2021.11.17
日本新聞
日本新聞 4441号記事 海自がオーストラリアの艦船を初の防護
米軍に次いで「武器等防護」の国を拡大。米国の中国包囲網に組みした挑発行為。戦争にまっしぐらに向かう日米豪印英の軍事同盟強化
12日、防衛省は海自の護衛艦「いなづま」がオーストラリア海軍のフリゲート艦ワラマンガに対して「武器等防護」を実施したと発表した。「武器等防護」は安保関連法を根拠としたもので、平時から他国の艦船や航空機を守る活動である。
これは明らかに憲法9条に違反する。憲法9条では、戦力を持たないこと、戦争しないことを明記している。他国の艦船を守ると言うが、つまり他国の艦船が攻撃される、あるいはその危険があると判断すれば、武器を使う。その結果、自衛隊が戦争に巻き込まれることは目に見えている。
安保関連法自体が憲法違反であり、違憲訴訟が行われている。しかしすでに、この戦争法を根拠として、米軍への武器等防護は2017年5月から実施されている。実施されたのは2017年2件、2018年16件、2019年14件、2020年25件にも上っている。憲法9条が闇に葬り去られようとしているのである。
日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4か国の軍事同盟「クアッド」は対中戦略体制である。これにイギリスが加わり、対中包囲網の構築をアメリカはねらっている。日本はあろうことか、この中心的役割を担おうとしている。来春にも「クアッド」の2回目の首脳会談を日本で開催する方向で調整が進められているというのである。中国への攻撃を検討する会議を隣国日本で開催する、これはまさに中国への挑発である。非常に危険な動きであり、止めなければならない。
軍事強化の
危険な動き
防衛省は12日、「防衛力強化加速会議」の第1回目の会合を開いた。ここでの議論を、安保戦略や防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の改定に反映させたいという。岸信夫防衛相は中国や朝鮮の軍事開発を念頭に、「あらゆる選択肢を排除せず、冷静かつ現実的な議論を突き詰めていくことが重要」と語ったという。「あらゆる選択肢」とは何を指しているのか。岸防衛相は安倍晋三元首相の実弟であり、岸信介元首相の孫である。岸信介は国務大臣の時に「名前が核兵器であれば憲法違反、そういう性質のものじゃない」と言っている。つまり核兵器を持つこともありうると言っている。安倍元首相は2018年1月26日の参院本会議で「国民の命と平和を守り抜くために、通常兵器に加えて核兵器による米国の抑止力を維持していくことが必要不可欠」と言っている。こうした姿勢と岸防衛相の「あらゆる選択肢を排除せず」とが符合することは否定できない。「防衛力強化加速会議」なるものを発足させ、軍事力強化にまい進しようとしていることは実に危険なことである。
「国民の命と平和を守り抜く」と称して、戦争への道に突き進むことを阻止しなくてはならない。
「覇権主義を強める中国」などと言うが、根拠は何か。これまで他国に戦争の火種をまき散らしてきたのは、アメリカである。日本がアメリカの軍事戦略に組みすることは、世界に多くの敵を作ることに他ならない。抑止力とは、アメリカの核の傘に入ることや、憲法9条を葬り去って戦争を合法化することではない。
本当の抑止力は、アジアの国々とともに発展していく道である。その意味でRCEP(東アジア包括的経済連携協定)が来年1月1日発効の見通しがついたことは、評価できる。
平和憲法9条を守り、アジアの国々とともに平和への道を切り開いていくことが、日本の歩むべき道である。(沢) -
2021.11.10
日本新聞
日本新聞 4440号記事 広島地裁、伊方原発3号機運転差止申し立て却下
伊方3号機は危険なプルサーマル運転。福島第一原発事故から何も学ばぬ再稼働強行を中止に。東電刑事裁判控訴審で問われる東電の責任
4日、広島地裁は広島、愛媛の住民7人が、伊方原発3号機の運転差し止めを求めた仮処分の申し立てを却下した。原爆が投下された広島の裁判所で、原発再稼働につながる判決は無念なことである。
住民側が四国電力の定める耐震設計の目安となる揺れ650ガルが、過去の地震観測データと比較して適正かどうかを主張した。吉岡裁判長は「四国電力が定める地震動を上回る規模の地震が起きるとは言えない」とした。実際は650ガルを上回る地震が過去10年間に5回も起きているのに、なぜ起きないと言えるのか。科学的根拠はあるのか。また、原子力規制委員会が「高度な科学的、技術的知見に基づく総合的判断」をしているから、裁判所が判断する必要がないというなど、全く話にならない。住民側は「司法が安全性を判断しうることを放棄しており、到底容認できない」と即時抗告の方針である。
伊方原発3号機の
危険性
瀬戸内海にある伊方原発は全国の原発の中でもとても危険な原発である。
・南海トラフ・津波が差し迫る今、中央構造線が直近にある伊方原発 再稼働は危険
・伊方原発3号機はウランとプルトニウム混合MOX燃料を燃やすプルサーマル運転だから、事故の際には猛毒プルトニウムが拡散される危険。通常運転時も大量の放射性物質拡散
・事故が起きれば偏西風に乗って放射性物質は全四国、瀬戸内一円に。瀬戸内海は死の海に、西日本壊滅の危険
・実現不可能な避難計画。佐多岬半島の西半分の住民5000人は孤立状態となり避難できない
このようにどう考えても、伊方3号機は運転差し止め、廃炉以外にないのである。
東電刑事裁判控訴審
始まる
2日、東電福島第一原発事故で業務上過失致死罪で強制起訴され、一審で無罪となった東電旧経営陣3人の控訴審初公判が東京地裁で行われた。
武黒一郎元副社長と武藤栄元副社長が出廷し、勝俣元会長は体調不良を理由に出廷しなかった。
検察官役の指定弁護士は「一審判決には重大な誤りがある」と訴えた。被告の弁護側は控訴棄却を求めた。指定弁護士側は「長期評価は国の唯一の公式見解であり、化学的信頼性は十分認められる」と主張し、裁判官が現場に行って津波の状況を直接確認する必要性を訴えた。これに対し、弁護側は「国の公式見解だからといって、信頼性があると決めつけることはできない」とした。
実際に長期評価どおりに大津波が起こった。社員から大津波の予測が報告された時点で、具体的に対策していれば、事故は防げた可能性が大きい。
たくさんの方が被ばくし、美し都・福島は戻ってこない。命を失った方も多い。そのことに心を痛めることもなく「無罪」を主張する東電元幹部の面々。
今なお、原発の利権に群がる者たち。どんな大事故があろうと、日本は何も変わっていない。そして今、危険な原発の再稼働へと向かっている。あまりにも愚かなことを繰り返そうとしている。
原発からの撤退、原発は廃炉に。それ以外の選択はない。
子どもの甲状腺がんの検査を縮小し、実際から目をそらそうとする政府と福島県。国がやるべきことは、被ばくによる健康被害をできるだけ少なくするための保養などの対策であり、避難者への補償、福島に住んでいる人たちへの正しい情報提供である。そして、二度と同じ惨劇を繰り返さないために、原発からの撤退方針を早急に決めることである。 (沢)