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2022.01.05
日本新聞
日本新聞 4447号記事 政府は汚染水の海洋投棄方針を撤回すべき
地球規模で環境を破壊しながら尚も原発再稼働進める日本政府。国内外から、日本の放射性汚染水海洋投棄反対、国際法違反と抗議の声
昨年12月28日の閣議で、政府は東電福島第一原発の放射能汚染水処分の行動計画を決定した。つまり海洋投棄の具体化である。
これに対して中国政府はその日に撤回を要求した。中国外務省の趙立堅報道官は「中国は日本が一方的に放射能汚染水放出計画を発表したことに重大な懸念を表す」と述べ、次の指摘をした。
日本は安全措置の手段を総動員せず、関連情報を全面的に公開していない
日本は周辺国や国際機関と十分に協議していない
日本が国内、海外で認められていない状況で、一方的に決定したことに決然と反対する
日本は周辺国を含む国際社会の懸念に誠実に対応して、汚染水放出決定を早急に撤回し、すべての準備を中断すべきだ
これらはどれももっともな指摘である。
国内外からの批判
昨年4月13日、政府は汚染水の海洋投棄を認めた。発表と同時に、国内外から非難の声が上がった。福島県漁連は立て直しに必死になってきたのに、汚染水の海洋投棄ですべてが踏みにじられるため、断固反対を表明している。また、国内でもパブコメで寄せられた意見の7割は海洋投棄反対であった。つまり意見を出せと言いながら、その意見を反映させる気はさらさらないのである。“民主的な”装いをこらすためにすぎない。
国際的にも大きな批判が巻き起こっている。
韓国…駐韓日本大使を外交通商部に呼んで強く抗議。日本からの輸入食品の放射能検査を徹底的に行い、国際海洋法裁判所への提訴も検討する。
朝鮮…人類の生存を脅かす許せない犯罪と批判。
太平洋諸国フォーラム(オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、ヴァヌアツ等)…日本政府に汚染水海洋放出計画を再考するよう促す声明を発表。
ロシア…日本が情報を公開し、他国の漁業などの経済活動に困難を生み出さないことを希望。日本が提供した公的情報は不十分だ。
フィリピン…地球は一つの生態システムであり、各国は互いに関連している。環境を汚染するものは代価を払うべき。すべての国家が原則を順守すべきだ。
世界各国が非難している中で、唯一賛成しているのはアメリカである。しかし、アメリカは海洋投棄に賛成しながら、2011年3月に日本産製品の輸入を禁止する輸入禁止令を発令し、昨年3月4日に継続行使したままである。輸入禁止地域は福島、青森、群馬、茨城など14か所、農水産物100種余りを対象としている。海洋投棄を評価することと、輸入禁止は全く合わないことだ。
実際、海洋投棄は危険極まりない。政府や東電は「処理水」と呼び、あたかも放射性物質が処理されたように宣伝する。しかし、トリチウムを始め、処理されていない放射性物質が残っているのである。特にトリチウムは多核種除去設備(ALPS)で取り除くことができない。トリチウム水として人体に取り込まれやすく、造血作用、生殖器に異常をきたす。また、ALPSで62核種が基準値以下になるとしたが、84%が基準を満たしていない。
現在でも日本のイワナ、スズキ、クロソイ、ヤマメなどから基準値をはるかに超える放射性物質が検出されている。
政府は更なる環境破壊を引き起こす汚染水の海洋投棄の計画を即刻撤回すべきである。そして、原発から撤退の方針を打ち出すべきだ。 (沢) -
2021.12.23
党の主張・声明
汚染水の海洋放出に反対する声明
2021年4月13日、政府は東京電力福島第一原子力発電所事故に伴うアルプス(ALPS)処理水の海洋放出を決めた。しかし、これは国民の理解を得たものではない。
この政府の方針を受けて、東京電力は「ALPS処理水の海洋放出に係る放射線影響評価報告書」(2021年11月17日)を出した。東電は、2023年春に海洋放出する計画であるが、国内外で海洋放出に伴う環境への影響を懸念する声があることを踏まえ、国民・国際社会の理解醸成に努めると称してパブコメを行い、必要に応じて見直しを行い、リスクを最適化する方法を検討するとしている。東電は、人に対しても、動植物に対しても、国際的に認知された手法(IAEA・国際原子力機関の安全基準文書、ICRP・国際放射線防護委員会勧告)に照らした評価を行っているとしている。しかし、それは、危険な放射性物質を含む汚染水を海水で薄めて流せば大丈夫という大変無責任なものである。
東電は、ALPS処理水で除去できないトリチウムの年間放出量を22兆ベクレルとしている。事故前の東電のトリチウム放出量は年間2.2兆ベクレルであり、10倍も違う。しかも、2021年5月時点で約780兆ベクレルのトリチウムがあるので、放出に35年以上かかることになる。ところが、海底トンネルを作り、「費用34億円と7年4カ月で放出完了」としている。しかし、これ自体が無謀で、破綻している。また、ALPS処理は62種類の放射性物質を国の安全基準を満たすまでに除去することになっているが、実際はALPS処理水の7割に、トリチウム以外の放射性物質(ヨウ素129、セシウム134、セシウム137、ストロンチウム90など)が基準値を超えて含まれていることが明らかになっている。つまり、これは原発事故による高濃度汚染水を処理したものであり、事故前の通常の原発から放出されたトリチウム水とは濃度も量も異なるものである。東電は「二次処理」して基準以下にして放出する予定としているが、東電の実効性が本当に担保されるのであろうか。しかも、30年以上も放出され続けるのに、放射能汚染や被ばくも過小評価されている。国民の安全がどう守られていくのか最も大きな課題である。また、地域の経済や漁業者の保障は、風評被害対策基金300億円で当てるというが、それで済むものではない。風評被害ではなく、実害である。日本のみならず、海洋環境の破壊も深刻である。
原発推進のIAEAは、「(海洋放出は)日本及び世界中の稼働中の原子力発電所や核燃料サイクル施設で、日常的に実施されている」(2020年4月)、「(日本政府の)重要な決定を歓迎」「海洋放出は技術的に可能で、国際慣行に沿ったもの」(2021年4月)として、政府の海洋放出への支援を表明している。また、この東電の計画を認可するのが、原子力規制委員会であるが、更田委員長は「希釈して海洋放出が現実的な唯一の選択肢」として東電に「海洋放出の計画書をできるだけ早い申請を」と催促している。
しかし、国連人権理事会は「(海洋)放出は、太平洋地域の数百万人もの命や暮らしに影響を与えかねない」「汚染水の放出は日本の国境の内外で、関係する人たちが人権を完全に享受することに相当のリスクを及ぼす」と日本政府を非難し、日本政府に対して、「放出が及ぼしうるリスクの環境影響評価を行い、国境を越えた環境被害を防いで、海洋環境を保護すること」等を求めた。
政府や東電は、汚染水の海洋放出を絶対止めるべきである。原発事故を起こして、さらに世界に汚染を広げる二次災害を作ることは絶対許されないことである。デブリの空冷化を行い、汚染水の発生を止めることや、「大型タンク貯留案」や、「モルタル固化による処分方法」も提案されている。政府や東電は、代替え案を検討すべきである。
2021年12月19日 -
2021.12.22
日本新聞
日本新聞 4446号記事 改憲論議ではなく最優先は困窮者支援
予算審議中に衆院憲法審査会が討議行う。衆院選で改憲勢力が3分の2を超え戦争に向かう。改憲の動きを阻止、不戦の9条を守ろう
16日、衆院憲法審査会は各会派の自由討議を行った。現在、臨時国会が開かれており、予算について審議されている最中である。
予算審議は国会でも特に重要な案件である。そのため、憲法審議などは同時に行わないのがこれまでの通例だった。しかし、衆院選で自公、維新、国民民主と改憲勢力が3分の2を超え、改憲論議を進めようというねらいが見える。安倍晋三・元首相が自民憲法改「正」推進本部の最高顧問に就任しており、改憲勢力が増えた勢いに乗って、改「正」国民投票法を決め、改憲発議、改憲へと持っていこうとしている。
しかしこのような強硬姿勢は歓迎されてはいない。名古屋学院大の憲法学の飯島慈明教授は「衆院選で勢力が変わり、自民や公明、維新、国民民主が改憲論議に前のめりになっている。だが、いま国民が望むのは改憲ではない。新型コロナウイルスへの対応や、苦しむ人たちの支援だ。この時期に改憲を進めれば、国民のことを考えていない議論になる」と語っている。新型コロナウイルス感染の混乱を利用して、「緊急事態宣言が必要だ」と改憲につなげようとしているが、緊急事態宣言発令で、事態が解決に向かったという実際は全くない。
改憲を急ぐ理由をしっかりと見定めなくてはならない。
米国が対中包囲網の
ための国防権限法案
成立、改憲は日本の
参戦のためのもの
15日、米上院は2022会計年度の国防予算の大枠を決める国防権限法案を可決した。すでに下院は可決しているため、法案は成立する。対中抑止のためとインド太平洋軍の能力を強化するために創設された「太平洋抑止構想」基金を前年度の3倍に大幅に引き上げる。また、海上軍事演習「環太平洋合同演習(リムパック)」に台湾招待を求める等、対中国を鮮明にした。総額約87兆円と巨額だ。九州や沖縄からフィリピンを結ぶ「第一列島線」に射程500キロ以上の対中地上発射型ミサイル網を構築する構想も盛り込んでいる。
これは日本の軍事装備強化と符合する。
来年度予算案では、防衛費は5兆4797億円で10年連続増加となる。今月下旬には決定の予定だという。
無人機の開発・研究に101億円も計上。戦闘機と離れた空域を飛行し、早期に危険を探知するためにAI人工知能も搭載する。また、陸上自衛隊の誘導弾開発費として393億円を計上している。これは護衛艦・戦闘機などから発射できる新たな長射程の巡航ミサイルに改良するための費用である。アメリカが対中戦略として打ち出している、九州や沖縄からフィリピンを結ぶ「第一列島線」の長射程ミサイル網と合致する。
アメリカの戦略下で、自衛隊が一部隊となって参戦させられる事態が迫っている。そのために不戦の憲法9条は何としても葬り去っておかなければならない。そのために改憲を急いでいるのである。
自民憲法改「正」推進本部の安倍晋三・最高顧問は、「アメリカの若者は日本を守るために血を流すこともある。日本の若者も血を流さなければならない」と本に書いた。まさに今、そういう道に向かっているのである。
改憲を阻止し、日本の若者が再び戦場に送られることのない日本を築いていかなければならない。 (沢) -
2021.12.15
日本新聞
日本新聞 4445号記事 安保法制 違憲訴訟 広島地裁が一審17件目の請求棄却
日本を合法的に戦争する国にしてしまった安保法制。裁判所は違憲か否かの判断をせず、請求却下。安保法制違憲訴訟は戦争反対の闘い
12月8日、安保法制違憲訴訟の判決が広島地裁で行われ、原告の請求が棄却された。この訴訟は広島県内の被爆者や戦争体験者ら計289人が、「安全保障関連法は憲法に違反する。集団的自衛権を行使する基準があいまいなため、世界中で武力行使が可能となり、精神的苦痛を受けた」として、自衛隊の出動差し止めと一人10万円の国家賠償を求めたものである。
判決は、自衛隊の出動差し止め請求は「行政処分に当たらない」と却下した。そして「原告らの精神的苦痛は社会通念上、受忍すべき限度を超えているとはいえない」と、国家賠償請求を却下した。
“社会通念上、受忍すべき限度の精神的苦痛”とはどのような基準なのか。だれが決められるのか、全く理解できない。広島は原爆が投下された地である。あの悲惨な歴史を繰り返してはならないと、被爆者や戦争体験者は必死の訴えをしているのだ。再び戦争の危険がもたらされる法制化に、「受忍できる限度」などあり得ない。原告の共同代表の杉林さんは「戦争被害を誰にも経験させてはいけない」と訴えている。その思いが届かない判決だ。
安保法制違憲訴訟は全国22地裁、25裁判、原告総数は11月19日時点で7699名にのぼる。25裁判のうち、一審判決は広島判決で17件目。すべて憲法判断は示さず、原告側の請求を却下している。高裁判決3件も同様の判決である。
安保法制が日本を有
事に追い込む
12月10日には東京地裁で、安保法制違憲訴訟の第5回口頭弁論が行われた。裁判官が2人代わったために、防衛ジャーナリストの半田滋さんの再証人尋問が行われた。
報告会で半田さんは今回主張したことを語った。
「東京新聞の記者として防衛省、自衛隊を取材して30年。
2001年のアメリカ同時多発テロを受けてアメリカがアフガニスタン攻撃。日本がテロ対策特措法制定、ここから日本の独自判断で自衛隊派遣。
2003年、イラク特措法で陸自600人がイラクのサマワに派遣される。航空自衛隊の輸送部隊は、米兵を戦闘地域のバグダッドまで空輸。2万4000人の米兵を運んだ。これは憲法違反だと名古屋高裁で判断された。
2015年、安保法制制定。憲法学者みんなが違憲だという法律を通す国は他にない。
安倍政権下で、森加計事件、桜を見る会と政治の私物化が行われてきた。
2013年の第二次安倍政権で、閣議決定で集団的自衛権の行使を認め、自衛隊が米軍にできることを拡大。戦場に出撃する米軍機に給油、自衛隊の弾薬も提供できることを認めた。
安保法制によって、日本防衛だけでなく、密接な関係にある他国に対して武力攻撃されたら、他国を守るために自衛隊が外国で戦争できるとなった。
“自由で開かれたインド太平洋”と、外国で戦争するための軍事訓練を自衛隊は行っている。南シナ海に潜水艦を送り込んで、それを発見して攻撃する訓練。まさしく中国海軍の巨大な基地のある海南島での潜水艦との戦いを前提とする訓練だ。
アメリカは6年以内に台湾有事が起きると言っている。台湾有事になればアメリカは参戦する、日本は自衛隊を送り込んで、米軍とともに中国と戦う。中国にとって日本は敵対国となる。
違憲な安保法制を作ったことによって日本が有事になるんだと裁判所にわかってほしい、そういう気持ちで訴えた」
東京訴訟弁護団の古川健三弁護士は「来年2月4日が結審となる。憲法を守るのが裁判所じゃないか訴えていきたい」と語っていた。
半田さんの話からも、これまでの弁論からも安保法制は戦争に直結することは明らかである。裁判所は憲法を守る立場から判断すべきである。(沢)