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2025.05.21
日本新聞
沖縄県議会が米兵性暴力に抗議決議
4621号1面記事
沖縄県議会が米兵性暴力に抗議決議
沖縄だけでなく日本全国の米軍基地周辺で、繰り返されている性暴力、事件、事故。日米地位協定の抜本改定で屈辱外交を終わらせる時
9日、沖縄県議会は県内で米兵による性暴力事件が繰り返されていることで、米軍や日本政府に具体的で実効性のある再発防止策を求める抗議決議案と意見書案を全会一致で可決した。沖縄県議会は昨年7月にも米兵事件への早急な対策を求め、抗議決議をしたが、「再発防止の取り組みは不十分、真摯な対応がなされていない」と非難した。今回改めて、再発防止策と共に、被害者へのケア、日米地位協定の抜本的改定などを求めた。
沖縄で米兵による性暴力事件が相次いでいる。1月には女性が知人の米海兵隊員に暴行を受け、2月に被害申告をしたが、4月24日に不起訴になった。暴力を受けた実際があるのに不起訴は不当だ。3月には米海兵隊員がトイレで待ち伏せして女性を襲い、助けに入った女性の顔面を踏みつけるなどしてけがを負わせた。昨年5月、6月にも米海兵隊による性暴力事件が2件相次いで引き起こされ、起訴された。一昨年12月には米空軍兵長が16歳未満の少女を誘拐して性暴力を加え、わいせつ誘拐、不同意性交の罪で実刑判決を受けた。
こうした事件に対して、ジョージ・グラス駐日米大使は「米兵が容疑者となった事件の報道を深く憂慮している」と語った。謝罪はしていない。事件を起こした米海兵隊員同様、日本女性の人権を認めていないと言わざるを得ない。
こうした事件は今始まったことではない。「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」(高里鈴代、糸数慶子共同代表)は、「1945年4月に米軍が沖縄本島に上陸した直後から、各地で米兵による性暴力が起きている。1972年の施政権返還後も性暴力による人権侵害が繰り返されてきた。戦後80年、沖縄の女性の人権は侵害され続けてきたのである」と指摘している。そしてそれは沖縄だけの問題ではなく、日本全国の米軍基地周辺に共通した深刻な問題である。
不平等極まりない日米地位協定の抜本的な改定を
米兵が事件を起こしても、基地内に逃げ込んでしまえば日本の法が適用されず、いつのまにか米国へ帰国していた、というケースも多い。日本の法は米軍基地には適用されない、捜査権も及ばないという不平等な日米地位協定の存在は大きい。
第二次世界大戦での敗戦国である日本、ドイツ、イタリアにはそれぞれ米軍基地が存在する。それぞれの地位協定を比較すると、日本の無権利さに驚く。
駐留米軍に対して、
日本では適用されない
ドイツ・イタリアは適用
日本は基地への立ち入り権の明記がない
ドイツは立ち入り権の明記あり
イタリアは、駐留米軍がイタリア軍司令部の下に置かれる
日本では規制できない
ドイツ側の承認必要
イタリア側の承認必要
日本は捜索権を行う権利を行使しない
ドイツは現場を規制、調査に主体的に関与
イタリア検察が証拠品を押収
無権利な日本の姿が浮き彫りにされている。駐留米軍は日本で好き勝手に蛮行を働いても、地位協定で特権的に守られている。日本政府はこれまで一度も米政府に対してき然とした態度を取らず、奴隷外交と言うほかない屈辱的な対応をしてきた。その結果が、今日の理不尽な状況を引き起こし、多くの犠牲を生みだした。
この不平等な地位協定の抜本的改定なしに、問題の解決はない。政府はこの問題に真剣に取り組むべきである。 (沢)
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2025.05.14
日本新聞
憲法大集会に3万8000人結集
4620号1面記事
憲法大集会に3万8000人結集
「未来は変えられる!戦争ではなく平和なくらし!」
軍拡ではなく、不戦・基本的人権保障の憲法守ろう。沖縄からも理不尽に対する怒りの声
5月3日、「2025憲法大集会」が開催され、3万8000人が有明防災公園につどった。
実行委員の菱山南帆子さんの「幾度も訪れた改憲の危機を乗り越えてきたのは、この憲法集会を中心とした粘り強い市民運動があったからだ。ミサイルで戦争を作り出すのではなく、憲法をもって平和を作り出す時」という元気な訴えで開会した。
日本原水爆被害者団体協議会・代表委員の田中煕巳さんは「13歳の時に長崎で被爆した。核兵器は絶対に使ってはならない。今、1万2000発の核兵器が地球上にある。なぜ日本被団協がノーベル平和賞を受賞したのか。それは今日の世界情勢にある。核戦争が起きる危険性が高まってきたからだ。私たちのこれまでの70年、80年にわたる努力を引き継いで、みなさんが日本中に世界中に広めてほしい」と訴えた。
今、政治を変え平和への道へ
政治経済評論家の古賀茂明さんは「日本はアメリカと戦って原爆を落とされたのに、アメリカは一番大事な同盟国だ、友達だと、日本人は思わされてきた。日本国憲法は市民のつながりで世界の平和を守っていこう、と前文にはっきり書いている。そこに立ち返ることだ。アメリカとの関係を問い直すのは、中国との関係を問い直すことと表裏一体だ。中国が怖いという人がいるが、中国の人と話をしてみればいい。誰一人、日本と戦争しようなんて思っていない。日本は中国に向けてミサイル基地を造り、射程距離を伸ばして北京に届くようにしている。そんなことをしたら相手も心配になる。中国との関係を安定させなければならない。今、ヨーロッパもアジア諸国もアメリカから少し離れていっている。日本だけがアメリカにしがみつこうとしている。今、大きな分かれ道だ。今がチャンス。去年の衆院選で私たちは結果を出した。自公に勝てた。この夏、参院選がある。衆議院も解散してほしい。そのために躊躇なく不信任案を出してほしい。そして衆議院でも参議院でも勝って政治を変える。戦争に向かっている流れを変え、憲法を復活させよう」と明解に呼びかけた。
アメリカは友達、中国怖いという宣伝に乗せられるのではなく、話をしよう、それが日本国憲法の精神、本当にそうだと思う。自分の頭で判断することが大事だと感じた。
社民党副党首の大椿ゆうこさんの訴えが心に響いた。「憲法は私達が生きていく方法を示してくれている、と実感した体験がある。30代半ば、長年非正規労働者として勤めていた私立大学を雇い止め解雇された。1年ごとの更新で最長4年までしか働けない。仕事はあるのに、なぜ数年で首を切られなきゃいけないんだ。そういう思いでたどり着いたのが労働組合。そこで“大椿さん、あなたが有期雇用をおかしいと思っているその直感は間違っていないよ”と初めて、そう言ってもらえた。3年9か月、継続雇用を求めて闘った。職場に戻ることは出来なかったが、憲法28条の労働三権、これがなければ私達非正規労働者は生き延びられないんだ、そう実感した。憲法とは、私たちが使い、生かしていくものだと実感した。
私の父は91歳、最近会うたびに私に言う。“戦争はしちゃいけないよ。この国は憲法9条がある。戦争しないと誓ったんだろ”と、時に泣きながら伝える。子どもの時に遠くの岡山大空襲の炎を見て、花火だと思った経験がある父は、今、戦争に向かう政治に強い危機感を持っている。父の思い、みなさんの思いをしっかり受け止め、戦争は絶対させない」
全国で進められている戦争準備に歯止めを
沖縄の風・代表の伊波洋一さんから、沖縄の状況が報告され、「沖縄や日本全国を戦場にしないために、憲法9条を守り、日本の未来を閉ざす安保3文書を一日も早く廃棄させよう」と訴えられた。
慶応大学法学部4年・沖縄出身の崎浜空音さんは「日本国憲法の規定する国民に、私達うちなんちゅは含まれているのでしょうか。沖縄には米軍基地が70%も押し付けられ、私の生まれた北谷町も面積の50%以上が米軍基地。米兵による性暴力、爆音、PFASなど様々な問題が起きている。
4月28日は沖縄では屈辱の日と呼ばれている。サンフランシスコ条約によって、日本から切り離され、主権が及ばなくなった日。27年もの間、私たちが求める憲法に私たちは入っていなかった。そして復帰後も何も変わらなかった。沖縄には憲法の上に日米地位協定があると言われている。
東京の、日本の平和は沖縄の犠牲の上に成り立っているのではないかと問いたい。東京で、基地をなくそう、地位協定を改定しようという世論が高まっていると言えるのか。沖縄の犠牲の上に成り立つ平和を、もう終わりにしたい。沖縄の現状は日本が変らないと決して変わらない。沖縄に憲法が適用されない現状を、日本で、この東京で変えたいと強く願う。共に頑張りましょう」と、訴えた。
“沖縄の犠牲の上に成り立つ平和”この言葉は私達にとって実に重く痛い言葉だ。そして、憲法が適用されていないのは、沖縄だけではない。私達一人一人が憲法が生かされる社会を作っていかなければならない。平和、人権が守られる政治に変えていかなければならないと、強く思わされた憲法大集会だった。
集会後、お台場海浜公園駅まで、「戦争反対」「政治を変えよう」と思いを込めて訴えながらデモ行進した。 (桐)
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2025.05.07
日本新聞
東電、12回目の汚染水海洋投棄強行
4619号1面記事
東電、12回目の汚染水海洋投棄強行
汚染水のトリチウム総量を今年は昨年度より増加方針。2回目の超高線量デブリ取り出しは3グラム。原発は廃止、放射性物質投棄止めよ
福島第一原発事故から14年経った。事故を起こした東電は4月10日、事故炉の核燃料に触れた汚染水の12回目、今年最初の海洋投棄を強行した。
東電はALPS(多核種除去設備)で処理したから汚染水ではないと言っている。しかし、ALPSでトリチウムは除去できないし、トリチウム以外の62の放射性核種が排水基準を超えていることが明らかになっている。
原発事故によって大きな打撃を受けた三陸の漁師の皆さんは、必死の努力を続けてきた。獲った魚の線量を測り続け、ようやく原発事故の被害をはねのけ、漁業の再開をかち取った。その矢先に汚染水の海洋投棄が強行された。“放射性物質の処理については、当事者の同意なしには行わない”という約束だったが、当事者である漁協の反対を無視して2023年8月末から始められた。風評被害ではなく、実質被害がまき散らされることになってしまったのだ。
4月10日には12回目の海洋投棄が強行された。漁業者の生業も、消費者の健康も全く眼中にない暴挙と言うしかない状況である。
危険極まりないデブリ取り出しも強行
4月23日には溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の2回目の試験取り出しが強行された。東電は、1回目に比べて量も多いし時間も大幅に短縮できた」と見通しがあるかのように発表している。1回目は0.7グラム、2回目は3グラム程度の取り出し。デブリは総料880トンあるという。全く気の遠くなるような話だ。しかも、デブリの放射線量はあまりにも高線量で、人間は即死してしまうため、遠隔操作である。東電は「回収した試料を分析し、燃料デブリの保管方法の検討などに役立てる」と言うが、そんな危険なものを取り出してどうするのか。保管する場所も方法もない。危険なデブリは閉じ込めておく以外に方法はないという、良心的な専門家の意見を聞くべきである。
原発事故が起きたら、止める、冷やす、閉じ込める、だというが、3つ目の閉じ込める、がいまだにできていない。毎日4000人の作業員が廃炉作業を行っているが、被ばく作業を余儀なくされているのである。
福島第一原発事故を教訓にするなら、日本は世界のどこの国よりも早く、原発から撤退しなければならない。ところが政府は、全く逆の原発を最大限活用という方針を出し、原発再稼働へと動いている。昨年12月に政府が公表した第7次エネルギー基本計画では、2023年時点で原発は総電力量の9%、それを2030年には20~22%にする、そのために現在14基の原発稼働を30基にしなければならないというのだ。これは実に無謀である。
すでに日本の原発は老朽原発がほとんどである。だから40年といわれている原発の寿命を60年、あるいはそれ以上に伸ばしている。原発事故後10数年停止していたからその期間は寿命からはずすなどという、全く非科学的な論まで出てきている。運転していなくても経年劣化は進む。根拠もなく原発の寿命を延ばすなど、安全軽視そのものである。
安全対策を怠って原発事故を起こした東電が、福島第一原発と同じ構造の柏崎刈羽原発の再稼働をねらっている。福島第一原発事故収束の見通しもなく、事故の全貌も明らかにせずに、柏崎刈羽原発の再稼働など認められない。地元では県民投票を求める声があがっている。当然のことであるが、知事はそれを認めない。
汚染水の海洋投棄、デブリ取り出しをやめ、原発からの撤退策を政府は急ぐべきである。 (沢)
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2025.04.28
日本新聞
農家への所得補償なしに解決はない
4618号1面記事
農家への所得補償なしに解決はない
「食料困難事態」に命令で食料増産させようとする政府。米農家も酪農家も赤字、農家が農業で生きられる政策を打ち出すことが最優先
4月11日、政府は「食料供給困難事態対策法」の運用を定めた基本方針を閣議決定した。これは米や肉類など19品目を「特定食料」と定め、供給量が2割以上減少するなどの際に、増産や作物転換を要請するというもの。
「食料供給困難事態対策法」は4月1日に施行され、閣議決定でそれを具体的に運用できるようにした。19品目は、米、肉類(牛肉・豚肉・鶏肉)、小麦、大豆、菜種・油ヤシの実、てん菜・サトウキビ、生乳、鶏卵、加工品は小麦粉、植物油脂、砂糖、飲用牛乳・乳製品、液卵・粉卵などである。供給不足になったら増産命令を出し、その計画を出さない農家や事業者には20万円以下の罰金を科す。休耕地を持つ農家に増産に協力してもらうというのだ。
全くひどい話だ。
つい最近まで政府は田んぼをやめて畑にすれば奨励金を出す、などと言って、田んぼ潰しを進めてきた。“米が余っているから”と。実際は、米農家は作れば作るほど赤字で、後継者も減る一方。ついに、スーパーから米が消えるという米不足状態となった。そうしたら今度は増産しろという。休耕地を田んぼにすぐに復活させられるとでも思っているのか。不可能である。増産計画など出せない。そんな農家には罰金20万円を科すというのか。
世界で真っ先に餓死するのが日本人という現実
“日本の農家は過保護”と宣伝されてきたが、実際は全く違う。
米の生産コストは1俵(60キロ)1万5000円かかるのに、米価は1万円を切る事態になった。作れば作るほど赤字だ。最近は米価が上がったと言うが、ようやく30年前に戻ったにすぎない。しかも値が上がったのは、農家から安く買い取った後であり、農家の収入は増えていない。赤字である。驚くのはアメリカからの輸入米は1俵3万円で買い取っているというのだ。しかも食用にはまず過ぎるから飼料米にしているというのだ。
酪農家は牛乳を1キロ搾ると平均30円赤字だという。飲料乳価が一昨年11月に10円上がり、昨年8月に10円上がったと言っても、まだ10円赤字である。おまけに昨年も一昨年も猛暑で乳量も減っている。
赤字の農家に対して国は何の補助もしない。一体どこが過保護なのか。
外国では最低限価格(農家が生きられる価格)で政府は穀物や乳製品を買い上げ、国内外の援助に回している。子ども食堂やフードバンクなど、国内の貧困層の援助や、国内外に人道援助し、農家が作ったものが生かされるように、農家にも収入が保障されるように、政府が対策を考えている。
今、米が足りなくなることが予測されているのに、閣議決定の内容は食料自給率を大幅に上げようというものではない。米の輸出を今の8倍に増やす計画だというのだ。空いた口がふさがらないとはこのことだ。輸出を増やして、有事には国内に向ける、そんな事態ではない。国内で米をしっかり生産していけるようにしなければならない。それには農家の所得補償は必須だ。
乳価を10円上げるには750億円、米1俵当たりの赤字を主食米700万トンに補てんするのに3500億円、全国の小中学校の給食無償化に約4800億円あれば実現できる。
世界で大きな災害や紛争の影響で流通が止まれば、真っ先に餓死するのは日本人だと言われている。十分根拠のある説である。
日本に住む人々の命も守れない、これが独立国と言えるのか。軍事費43兆円をやめ、国内の食料生産を支えることこそが、最優先の安全保障である。政治の根本転換が求められる。 (沢)