日本新聞
日本新聞 4570号記事 原発は再稼働ではなく廃炉に!
広島高裁、島根原発運転差し止め求める住民の訴え却下。
原子力規制委は東電の安全管理意識低いとしながら東電柏崎刈羽原発稼働認める
5月15日、広島高裁松江支部は、中国電力島根原発2号機の運転差し止めを求めた訴えを退けた。
島根原発は県庁所在地にある原発で、30キロ圏内2県6市に約45万人が住む。住民側は、1月の能登半島地震の家屋倒壊、道路寸断の状況から、島根県や周辺自治体の避難計画にある屋内退避は不可能と訴えた。また、屋外退避では被ばくを強いられる。避難計画に実効性はないという住民側の主張は、理に合っている。
中国電力は最大加速度820ガルとしているが、近年の大規模地震は2000ガルを超えている。設計自体が安全を確保するものではない。
また、島根原発は東電福島第一原発と同じ沸騰水型軽水炉である。福島第一原発の事故原因や事故の中味も明らかにされていない。いまだに廃炉の目途も立たない状況である。事故炉と同じ沸騰水型原発を稼働するなど許されないことである。
東電の安全対策の姿勢を批判しながら再稼働認める原子力規制委
今も毎日約4000人の作業員が廃炉作業を続けている福島第一原発の事故現場。廃炉作業の工程は次々遅れ、廃炉の見通しは全く立っていない。昨年10月には汚染廃液が飛散し、作業員が被ばくし入院する事件が起きた。そして今年2月にも建屋からの汚染水漏れが起き、原子力規制委は、原子炉等規制法に基づく実施計画の違反と判断した。設備の配管洗浄中に起きた事件で、本来閉じる弁が開いていたというのだ。発見が遅れれば、周辺環境にも影響を及ぼすことは必至だった。東電が作成した手順書が現場の状況と一致していなかったことと、作業時に弁が閉じていなかったことが見落とされていたという。トラブル続きに規制委員の中からも「ばからしい」という発言もでている。
ではなぜ、福島第一原発事故を起こしながら、今も安全管理さえまともにやらない東電に、柏崎刈羽原発(これも福島第一原発と同じ沸騰水型)の運転を認めるのか。規制委の山中委員長は「リスク評価が正しくできているか、きちっとみていく」と言っているが、これまで何を見てきたのか。
福島第一原発事故が起きたのも、東電が15メートル以上の津波が起きるという警告を無視し、防潮堤を造るなどの措置を行わなかったことが、大事故につながった。
やらなかった理由は、経費がかさむから。それで故郷も生業も奪われた被害者、のちにガンになった被害者、避難の中で衰弱して亡くなった被害者がいる。今もその苦しみは続いている。東電はあれだけの事故を起こしながら、何の責任も取っていない。
そして今、東電は「福島原発事故処理で23.4兆円かかる。柏崎刈羽原発1基動かせば、年間1100億円の収益改善が見込める」と言っている。実際、これまで東電が負担したのは3兆3000億円だけである。結局、国が負担、つまり私たちの税金である。福島第一原発処理のために柏崎刈羽原発を再稼働する、東電のこの論を原子力規制委は認めているのである。
これでは安全対策二の次で、再び福島第一原発事故のような大惨事を防ぐことはできない。原子力規制委のお墨付きを受けて東電は、地元の合意もないままに、4月26日、柏崎刈羽原発の原子炉への核燃料装てんを完了したと発表している。
二度と福島第一原発事故のような大惨事を引き起こしてはならない。世界で発生しているマグニチュード6以上の地震の約2割が、日本周辺で起きている。地震大国日本では特に原発は危険である。政府は原発再稼働を推進しているが、再稼働ではなく、すべての原発を廃炉に、それが生きていける環境を作ることである。 (沢)