日本新聞
日本新聞 4559号記事 食料安保の確立は農家を守ることから
政府、食料・農業・農村基本法改「正」案と関連法案を閣議決定。食料自給率アップ、主要穀物の備蓄確保が大事。その点に何も触れない改悪
2月27日、政府は、食料・農業・農村基本法の改「正」案や関連法案を閣議決定した。
これまでの政府の方針は、有事の際に、花づくりをやめて野菜を作れ、と命令と義務を課すというものだった。これを平時から緊急時にも対応できるように、食料生産を増やし、輸出を増やすというのである。
2020年度の日本の食料自給率は、カロリーベースでたったの37.6%である。東京の自給率はなんと0.49%にすぎない。大問題だ。それなのに何故、輸出を増やさなければならないのか。日本の農家がもっと生産できるなら、それを実現し、食料自給率をあげるべきだが、そうはしない。あくまでも輸入相手国との関係を重視している。
そもそも、なぜ日本の食料自給率がここまで下がってしまったのか。
戦後、敗戦国日本はアメリカの占領下に置かれた。アメリカの農産物輸入の増大、そのためのパン食や肉食への移行で、食の安全保障を量的にも質的にも握られることになった。
今も同様で、食の安全保障をアメリカに握られている状況である。何十年も前に、“食料自給率をまずは45%にする”という目標が掲げられた。今では目標さえ出さず、自給率は下がり続けている。
日本の農業を抜本的に立て直す時
ウクライナ戦争、イスラエルのガザ無差別爆撃など、紛争が絶えない中で、食料安保の問題は深刻だ。このような中、中国は、14億の人口が1年半食べられるだけの穀物を備蓄する方針を出した。日本はどうか。コメを見ても、1.5ヵ月か2ヵ月分しかないのである。だから日本は、世界で一番先に餓死者が多数出て、日本という国が滅亡の危機に瀕する、とさえ言われている。“日本が無くなる前に行っておこう”と日本を訪れる外国人観光客もいる、これが実際だ。
食料自給率をあげることは、国の存亡に関わるくらい、重要な問題なのである。
改「正」案では、食料安保を「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態」としている。そしてこの実現に取り組むことを目的に掲げた、というのである。
ではどうやって実現するのか、具体策が大事である。
1970年、農水予算は1兆円、軍事費の2倍近くあった。ところが50年以上経っても2兆円。軍事費は5年間で43兆円にするという。資材、飼料、燃料は暴騰し、農産物の販売価格は上がらず、農家は悲鳴を上げている。やむなく離農する農家も後を絶たない。こうした農家を具体的に支援し、後継ぎを守れるようにしなければ、野菜やコメを作る農家がいなくなってしまう。まさに危機的状況である。
大企業は農業をビジネスとしかとらえない。将来の食の確保のためにと、昆虫食、培養肉、人口卵などが考えられ、すでに学校給食にコオロギが出されたり、パウダーにしてさまざまな食品に混ぜられようとしている。ゲノム編集のトマトの苗が全国の小学校に無料配布されたりしているが、これでは子ども達を守れない。
遺伝子組換えでない、という表示もできなくなり、ゲノム編集は始めから表示なし、無添加の表示もダメ、コオロギパウダーもわからないようにして食べさせるなど、全くひどいものだ。
農政を抜本的に変える時である。そのためには、安全な食べ物を作っている農家と消費者の連携を強め、遺伝子組換えなどの危険な食品を排除していく運動が求められる。
アメリカの消費者は信頼できる生産者を見定め、その作物を購入して支えている。そうした動きは日本でも確実に広がっている。そうした草の根の運動から、政治を変えていこう。 (沢)