日本新聞
日本新聞 4558号記事 東電・福島第一原発事故 ますます被害拡大の汚染水投棄
汚染水投棄から半年、中国など国際社会の批判高まる。禁輸で漁業者の苦難続く。政府は国内外の批判を受け止め、海洋投棄の中止を
東電福島第一原発事故による汚染水の海洋投棄から、半年が過ぎた。この問題を巡り、日中両政府の専門担当者が1月、非公表で協議を開始した。
汚染水海洋投棄の4回目の投棄を目前にして、海洋投棄に反対し日本の海産物を輸入禁止にしている中国と話をつけ、日本の漁業者の反発を弱めるというのが、日本政府のねらいだったのだろう。
日本側からは、外務省、経済産業省、環境省、原子力規制庁、東電が参加したという。しかし、中国側は禁輸措置を撤廃する考えはない。
2月23日、中国外務省の毛寧副報道局長は、「日本は国際社会の懸念に真剣に応え、責任あるやり方で、核汚染水に対処すべきだ」と求めた。中国は「長期にわたり有効な国際的モニタリング(監視)体制の構築」を日本政府に求めている。日本は受け入れようとしない。日本政府が「安全だ」と言うなら、モニタリング体制を作るべきだし、中国が調査を求めているのだから、それも受け入れるべきだ。調べられると困るから拒否している、としか考えられない。調べられると困る、つまり危険なのだから、海洋投棄はただちに中止すべきである。
共同通信による全国の漁連・漁協へのアンケート結果が報じられているが、「風評被害があった」が36.1%、「どちらかといえばあった」が44.4%で、8割を超えている。アンケートは「風評被害」と言っているが、海洋投棄は風評被害ではなく実害だ。海洋投棄に反対している中国や韓国が問題なのではなく、政府が海洋投棄を強行していることが問題なのである。
安全軽視の東電の体質変わらず
事故を起こした東電福島第一原発事故現場で、相次いで事故が起きている。
2023年10月25日
多核種除去設備(ALPS)で洗浄廃液が飛散し、カッパを来ていなかった作業員2人が最大0.9ミリシーベルトの被ばく
2024年2月7日
汚染水の除染設備を洗浄中、建屋外につながる排気口から廃液約1.5トンが漏出。排気口直下の土壌で、周辺の約350倍に当たる毎時7ミリシーベルトを測定
いずれも深刻な事故である。被ばくについての作業員に対する学習もなく、ずさんな管理で被ばくさせる。放射性物質の環境への拡散。これらは東電が事故から何の教訓もなく、いまだに儲け第一、安全軽視の体質が全く変わっていないことを示す。これでは第二、第三の福島第一原発事故が起きる可能性は否定できない。
福島第一原発のタンクにためられている水には、トリチウムが約860兆ベクレルも含まれ、建屋や炉内に約1200兆ベクレル残留していると推定されているが、はっきりしない。トリチウムだけではなく、セシウム134、セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素129などの放射性物質が残留し、タンク貯留水の約7割が基準超えだというのである。これでは明らかに汚染水である。政府は年間22兆ベクレルのトリチウムを海洋投棄する計画だ。事故以前は福島第一原発から海洋に投棄されていたトリチウムは年間1.5~2.5兆ベクレルだから、10倍も投棄するというのだ。しかも、事故で爆発し、超高レベルのデブリに触れたしろものである。
東電は「関係者の理解なしに、いかなる処分も行わない」と、汚染水について文書に明記して約束しながら、漁業者の反対を無視して海洋投棄を強行した。また、経産省は説明会も公聴会も行っていない。関係者の合意どころか、意見を聞こうともしない。
また、良心的な研究者から、海洋投棄ではない大型タンク貯留案やモルタル固化処分案など、実証済みの代替案が出されているのに、検討すらしない。
まさに、海洋投棄は暴挙であり、国内外からの批判は当然である。政府は海洋投棄を中止し、安全を第一に、代替案を検討すべきである。これ以上、環境汚染を拡大してはならない。 (沢)