日本新聞
日本新聞 4556号記事 経済安保保護法案 知る権利・プライバシーの侵害
政府指定の秘密の範囲拡大、適性評価の調査対象大幅増、秘密漏えいの厳罰化を今国会提出予定。戦争準備総仕上げの危険な法案阻止
政府は7日、経済安全保障に関わる情報に、国家機密の取り扱いを有資格者に限る「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度を広げる「経済安保情報保護法案」の概要を自公両党に説明した。この法案を政府は2月下旬にも今通常国会に提出する方針である。
セキュリティー・クリアランス(SC/適性評価)とは何か。政府が指定した安全保障上重要な情報とされたものに接する必要がある公務員や民間事業者らに対して、政府が信頼できるか否かを調査するというもの。家族や同居人の生年月日や国籍、犯罪歴、薬物乱用、精神疾患、飲酒の節度、経済状況など。本人の同意を得た上で、というが、仕事を失わないためには、ノーとは言えない。ほぼ強制となるだろう。
2014年の特定秘密保護法施行以来2022年末時点で、評価保有者は13万人で、大半が国家公務員で、民間人は3%。これを経済安保に広げることで、民間事業者や大学などの研究者へと、民間人の対象が大幅に増加する。調査を拒否したり、不適格と判断された民間人が、その後不当に扱われる危険性もある。
国家総動員法の再来
この法案は、高市早苗・経済安全保障相が「安倍元首相の宿題、何としても成立させたい」と取り組んでいるという。実にきな臭い。
明らかにされたところによると、機密漏えいの罰則を2段階で設けている。特に機密性が高い情報を漏らした場合、既存の特定秘密保護法を適用して、懲役10年以下の罰則を科す。また、有資格者が漏えいすれば、最長5年の拘禁刑や最高500万円の罰金刑などを科す。
昨年12月26日付で、海上自衛隊の1等補佐が、「特定秘密」が含まれる情報をOBに漏らしたとして、懲戒免職処分にされている。
弁護士の海渡雄一さんは「経済安保版秘密保護法は、日本政府の戦争準備の一連の法律の総仕上げだ。経済情報、ITに関する情報まで秘密にしようとしている。これは戦前の国家総動員法に匹敵するもの。人権侵害のための法律だ」と厳しく批判している。
日本弁護士連合会(日弁連)は1月18日に、「経済安全保障分野にSC制度を導入し、厳罰を伴う秘密保護法制を拡大することに反対する意見」を発表した。
意見書では、国民的な議論を経る必要があると同時に、少なくとも次の4項目について定めるなど、知る権利及びプライバシー権が侵害されない制度的な保障がなされない限り、反対する、とした。
1、政府の違法な行為を秘密指定してはならないと法定すること
2、公共の利害にかかわる事項を明らかにしたことによって、ジャーナリストや市民が刑事責任を問われることがないこと
3、適正な秘密指定がなされているかどうかをチェックするための、政府から真に独立した機構を作ること
4、一旦秘密に指定した事項が、期間の経過等によって公開される仕組みを作ること
いずれも当然のことである。政府によって、何が秘密に指定されるかもわからない、公務員だけでなく民間企業・大学・研究機関で働く民間人が秘密保護の義務を課されプライバシーを侵害される、政府に反対する個人や報道関係者を厳罰に処すなどの、権力の乱用を許してはならない。
特定秘密保護法と共に、「経済安保情報保護法案」も闇に葬り去らなければならない。ファシズム国家の完成に向かっての法整備に歯止めをかけなければならない。 (沢)