日本新聞
日本新聞 4545号記事 東電、3回目の汚染水の海洋投棄強行
東電、3回目の汚染水の海洋投棄強行
汚染水を処理水と偽り、危険性を隠す国と東電。トリチウムをはじめ62種もの放射性物質がタンクの7割で基準超え。海洋投棄は中止を
東電は11月20日に、汚染水の3回目の海洋投棄を完了したと発表した。2023年度中に4回の海洋投棄を実施するとしており、4回目は年明けに行う予定だという。8月24日から3回の投棄で約2万トンの汚染水が減ったというが、保管総量のわずか約1.5%だというのだから、延々と続ける計画である。しかも汚染水は毎日約90トンも増え続けているという。
政府も東電も「処理水」と呼んで、ALPS(多核種除去設備)で処理したから安全だというが、果たして処理されたのか。東電が投棄している「処理水」にはトリチウムが含まれている。トリチウムは飛距離も短く影響が少ないように言われるが、決してそうではない。体内に長くとどまり、近くの細胞に影響を与える。また、トリチウムが水素と置き換わった場合、被ばくの影響が強くなり、ヘリウムに壊変したときにDNAが破損するなどの影響が指摘されている。そしてトリチウムだけではなく、7割のタンクで62の放射性核種の濃度が全体として排出基準を上回っており、最大で基準の2万倍近くなっていると、東電は公表している。どうしてこのようなものを海に流していいのか。これは犯罪と言っても言い過ぎではない。
驚くべきことに、東電が放射性物質を測っているのは3つのタンク群だけである。タンクの水全体の3%にも満たない。これでは調べたことにならないではないか。
東電は、経費がかかるからと津波対策を行わず、2011年3月11日の東日本大震災で福島第一原発事故を引き起こした。そして今、海洋投棄ではなく、モルタル固化して半地下で保管する案、石油備蓄に使われている大型タンクに入れ替える案など代替案はあるのに、最も経費が安上がりで済む海洋投棄を強行しているのである。東電には原発事故の反省は全くない。
海洋投棄への国内外の批判高まる
2015年に国と東電は福島県漁連と「(ALPSを通した水は)関係者の理解なくして、いかなる処分もしない」という文書を交わした。県漁連は「海洋投棄はあくまでも反対だ」と一貫している。「関係者の理解なくして、いかなる処分もしない」は一体どうなったのか。交わした文書どおりなら、海洋投棄はできないはずだが強行している。関係者の意見を聞くどころか、全く無視している。
また、中国や韓国の市民団体、太平洋島しょ国も海洋投棄に反対している。中国は核汚染水の海洋投棄は世界の環境破壊だと指摘している。
岸田首相は16日の中国の習近平国家主席との会談で、「(海洋投棄を巡り)対話を通じて解決する方法を見出すことで一致した」と発表した。これが一致と言えるのか。中国の再三の反対を無視して日本は海洋投棄を強行している。そして、安全を危惧して、日本の海産物の輸入を禁止したことを、日本政府は怒っている。岸田首相は「あらゆる機会をとらえて、中国に日本産水産物の輸入規制撤廃を働きかける」と言うが、解決は海洋投棄を中止する以外にない。
福島第一原発事故という未曽有の過酷事故を引き起こし、今度はデブリに触れた汚染水を海に流しているのだから、国際世論の非難は当然のことである。
今、日本がやるべきことは、汚染水の海洋投棄を中止し、東海第二などの老朽原発の再稼働するのではなく、原発から撤退することである。 (沢)