日本新聞
日本新聞 4538号記事 2022年度、いじめも不登校も過去最多
小中の不登校は29万9千人、いじめは小中高で68万2千件、自殺は411人。差別や暴力にがんじがらめにされている子ども達の心の解放を
文部科学省が2022年度の「児童生徒の問題行動・不登校調査」を発表した。
それによると、小中学生の不登校は約29万9000人で過去最多。前年度比22.1%の大幅増となった。いじめは小中高で約68万2000件、暴力行為の発生は約9万5000件でいずれも過去最多だった。
大変な事態である。学校現場の惨たんたる状況が浮き彫りにされている。発表された数字はあくまで文科省に報告された数であり、実際はこの数より多いと思われる。不登校やいじめを報告すれば、学校長自身の評価に関わるから、なるべく問題がないようにして定年退職を迎えたいという意識が働き、問題に目をつぶる傾向は否定できないからである。いじめが前年度より1割も増えたことについて、「コロナ禍で縮小されていた部活動や学校行事が再開され、子ども同士の接触する機会が増えた」としている。コロナでオンライン授業の時は、子ども達が会わないから、いじめが減っていたというのである。これでは本質的に何も変わっていない。子ども達の中の差別意識は変わらないから、顔を合わせればいじめ、暴力となる。
小中高校生の自殺者数は前年度より43人増えて411人。そのうち原因不明が6割の255人だというのだから驚く。
これが一番の問題である。何故、学校に来ない子どもが年々増えるのか、不明。何故、いじめが増えるのか、不明。何故、暴力事件が起きるのか、不明。何故、自殺する子どもが後を絶たないのか、不明。
これでは何も解決することは出来ない。日本の教育は死んでしまっていると言っても過言ではない。深刻な事態なのである。
子どもをいきいき育てる教育への転換を
いじめの問題一つとってみても、自分たちがいじめた子が自殺したと聞いても、「なんてことをしてしまったんだ」と心を痛めるのではなく、笑い飛ばす子どもが育っている。子どもと子どものコミュニケーションも、教師と子どものコミュニケーションも成立していない。
教師は残業残業に追われているが、それは子どもを育てるための仕事ではなく、書類提出に忙殺されているのである。そんな中で疲れ果て、子ども達が何を考えているか、何に悩んでいるか、困っているかと心を配ることもできなくなってしまう。子どもの自殺が増えているが、精神的に追い詰められて休職に追い込まれている教師も増えている。子どもも教師も管理、統制され、疲れ果てている。
教師が元気なら、子ども達と一緒に遊び、子ども達の様子もわかる。子ども達も教師に心を開いてくるだろう。そんな関係が、今の教育現場にはあまりにも少なくなっている。
その結果が、不登校過去最多、いじめ・暴力過去最多、自殺過去2番目なのである。夜遅く、電車から降りてくる子ども達がいる。塾帰りなのだろう。子ども達に一番大切なのは何なのか、今一度、考え直す必要がある。勉強しろ勉強しろと育てた子どもに殺される事件が頻発している。子どもにとっても、親にとっても、何が幸せなことかと考えさせられる。
学校現場で子ども達の中にある差別に真っ向から立ち向かっていく教育が、最も求められている。
人間は本来、集団化するものであり、命を大切にするものである。その本来の姿に戻してやるのが教育の仕事である。子ども達を差別から解放する教育への転換は急務である。 (沢)