日本新聞
日本新聞 4531号記事 政府・東電は汚染水の海洋放出を中止に
8月末にも汚染水を海に流そうとしている政府。海洋放出反対の世界の声、国内の声に耳を傾け、提案されている代替案を検討すべき
8月18日、首相官邸前で、「汚染水を海に流すな首相官邸要請行動」首相官邸前集会が行われた。主催は「これ以上海を汚すな市民会議」と「さようなら原発1000万人アクション実行委員会」である。司会を務めた武藤類子さんの「岸田首相は日米韓首脳会談のため、アメリカに行っている。しかし、岸田首相の聞くべき声は、バイデン大統領や尹大統領ではない。福島県内の市民の声、国内の市民の声、他の国々の市民の声だ」という訴えに共感を覚えた。
主催者を代表して佐藤知良さんは「政府と東電は“関係者の理解なしには(汚染水を)いかなる処分もしない”と文書で約束している。戊辰戦争の時に会津は大変苦労した。東北は大変苦労した。東日本で塗炭の苦しみを味わって12年。沿岸漁業はようやく2割の水揚げに至ったばかり。ここで汚染水を流されたら、生業が成り立たない。絶対に流させるわけにはいかない。会津の10の掟に、成らぬものは成らぬものです、とはっきりある。成らぬものは成らぬ、汚染水は流させてはいけない!」と力強く訴えた。
あじさいの会事務局長の千葉親子さんは「放射能ほど不条理で、差別的で理不尽なものはない。原発事故から12年、国も東電も責任も取らず、よく来たものだ。事故を起こした原発からの汚染水を、大丈夫だと言って流そうとしている。説明会で一人の男性が言った。“海に汚染水を流すことは、俺のリンゴ畑に汚染水を撒くことと同じだ。何年も何年も撒く。許されない!”汚染水の海洋投棄は絶対に反対だ」と述べた。
原水禁事務局長の谷さんは「原水禁で8月7日に長崎で、汚染水の海洋放出をテーマとした国際シンポジウムを開催した。海外からも、薄めて流すという前例を日本が作ることがどういうことか、指摘されている。他の原発がトリチウムの水を流しているのと福島第一原発の水は違う。事故を起こした原発の水で、どういうものかつかみ切れていないものを流すということは科学的ではない」と指摘された。
海洋放出は地球規模の環境汚染、中止以外に方法はない
続いて参議院議員会館で、「汚染水を海に流すな首相官邸要請行動」院内集会が行われた。
「さようなら原発1000万人アクション」呼びかけ人の鎌田慧さんは「汚染物を海に投棄する。今までの公害病を考えてください。水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそく、これらはすべて企業が環境汚染を公然とやってきた。水俣は今も続いている。こういう結果が出ているのに、130万トンの汚染水を30年間にわたって海に流す。地球環境、世界の水産業者に影響する。国際的な問題で日本の恥だ。無責任な廃棄、放流は絶対認めない。頑張っていこう」と呼びかけた。
経産省に対して要請書を読み上げて手渡した。要請書の中味をしっかりと受け止めてほしいものだ。
海渡弁護士は「汚染水の海洋放出は、国際法上も国内法上も違法である。海洋放出が行われ、消費者が魚を買わなくなるのは風評被害ではなく、正当な自衛行動だ。漁業者は大変な被害を被る、それは風評被害ではなく政府による被害だ。安全な方法を取るのが当然だが、その評価もなされていない。脱原発弁護団はあらゆる努力を続け、何らかの裁判手続きで無謀な海洋放出を食い止める努力を最後まで続ける」と表明した。
8月20日、岸田首相は東電福島第一原発を視察し、22日にも関係閣僚会議を開き、汚染水海洋放出時期の最終協議を行う方針を出した。
汚染水の海洋放出には一分の正当性もない。政府は海洋放出を中止し、代替案を検討すべきである。そしてこれ以上、汚染水が増えないように、建屋内に地下水が流入することを早急に防ぐ措置を取ることを最優先すべきである。 (沢)