日本新聞
日本新聞 4529号記事 敗戦から78年、不戦の誓い新たに
防衛白書に「敵基地攻撃能力」明記し戦争に向かう日本。日本の侵略戦争、アメリカによる原爆投下の歴史を教訓に二度と戦争しない国に
8月6日は広島に、9日は長崎に、アメリカが原爆を投下した日である。それから78年経った。そして日本が中国、朝鮮半島をはじめ、アジアの国々を侵略して、ありとあらゆる残虐行為をしたことも忘れてはならない。
その戦争から78年、今日本はどこに向かっているのか。
「敵基地攻撃能力」を2023年版防衛白書に明記の危険
7月28日の閣議で浜田防衛相は、2023年版の防衛白書を報告した。要旨は次の通り。
・中国は軍事力を急速に強化。国際秩序への「最大の戦略的な挑戦」
・中国、ロシア両軍の日本周辺での共同訓練は「重大な懸念」
・国家安全保障戦略など3文書を詳述。自衛隊の体制強化、2027年度までの5年間で約43兆円の防衛費の必要性強調
・弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮は「一層重大かつ差し迫った脅威」
中国、ロシア、北朝鮮が国際秩序を破壊し、有事を作りだそうとしている、というのである。それは事実か。「自由で開かれたインド太平洋」などと言って、アメリカが主導し、日本、オーストラリアなどと中国包囲網を組んでいる。アメリカは中国包囲網にインドも取り込もうとしたが、見事失敗した。インドは中国との経済協力関係を重視し、「特定の国を包囲網の標的にしたインド太平洋戦略に乗ることはない」と明言している。
これに対して日本は、アメリカの世界戦略通りに動こうとしている。アメリカが軍事費倍化を要求すればそれに応じ、5年間で43兆円、ローンも含めれば60兆円に増やすことを決めた。そして中国を敵視し、南西諸島の軍事要塞化を急ピッチで進めている。住民の反対の声を無視して、軍事基地を建設し、住民避難のためだとシェルターまで造っている。住民が必要としているのは、避難するためのシェルターではなく、身の危険のない平和な日常である。
米軍が南西諸島から中国に向けてミサイルを撃つ、そして後を引き継ぐのは自衛隊だ。島を移動しながらミサイルを撃つ。島全体が標的になるのは明らかだ。「有事」は起きるのではなく、日米が引き起こすのである。南西諸島を戦場に、自衛隊員など日本の若者が危険にさらされるのを、米軍は高みの見物、こんなシナリオを決して現実のものにしてはならない。
日本の侵略戦争で、アジアの国々の犠牲者は2000万人を優に超えている。そして日本人も310万人が犠牲になった。その一方で、戦争で儲けた者が、今また軍需産業で儲けようとしている。政府は軍需産業を支援し、強化し、武器輸出まで解禁しようとしている。戦争で商売する死の商人はアメリカだけの話ではない。
侵略戦争での南京大虐殺、従軍慰安婦など日本軍による蛮行、強制連行、強制労働、そして学徒動員、特攻隊、原爆投下。日本の加害の歴史を見ても、被害の歴史を見ても、戦争は悲惨なことばかりである。78年経った今、私たちはどのような未来へと歩んでいくのか。
二度と戦争を繰り返してはならないと、戦争放棄、不戦の憲法9条を含む日本国憲法が1946年に制定された。戦争の体験を語る人が少なくなっている今、私たちは“戦争は絶対にしてはならない”という先人の思いを引き継いでいかなくてはならない。
「自由で開かれたインド太平洋」はアメリカが好き放題にできるものである。戦争のない平和な世界こそ、自由で開かれた世界だ。不戦の憲法9条を守り抜こう。 (沢)