日本新聞
日本新聞 4528号記事 最老朽炉・高浜原発1号機再稼働の暴挙
新規制基準審査クリアの11基が再稼働。原子力規制委は独立性なく政府ベッタリ。経産省は原発事故対策費の消費者負担制度新設
7月28日、関電高浜原発1号機が再稼働した。高浜原発1号機は運転開始から48年経過し、国内で最も古い原発である。東電福島第一原発の事故を教訓にすれば、原発は人類がコントロールできない危険な代物であることは明白である。原発を運転すること自体、やめた方がいいことははっきりしている。老朽原発を動かすなど、してはならないことだ。
再稼働して現在動いている原発は11基である。新規制基準の審査をクリアしたことが再稼働の根拠である。この審査をする原子力規制委員会は独立した機関だというが、実際は政府の意向通りに動いている。岸田政権は、原子力の最大限の利用を掲げている。それに呼応して、次々新基準適合のゴーサインを出した規制委。原子力を規制するどころか推進しているのが実際だ。
運転48年の高浜原発1号機、運転46年の美浜原発3号機、あとの9基すべてが25年以上、大方が30年を経過している。
福島の原発事故後、原発の運転は「原則40年、最長60年」とされたが、今年5月に「改正電気事業法」が成立し、60年を超える運転が可能になってしまった。高浜1号機で言えば、12年半の運転停止期間を差し引いて60年までとされる可能性がある。
現在の時点でも、12年半も運転していなかった原発の再稼働は危険を極める。
運転40年を超える美浜原発3号機では、昨年、定期検査中に原子炉補助建屋内で放射性物質を含んだ水が漏れ出すトラブルが起きた。また、高浜4号機では、今年1月、核分裂反応を抑える制御棒が落ちて自動停止した。
経年劣化の問題は避けて通れない重大な問題である。
経産省が原発事故対策費を消費者負担にする新制度導入
7月26日、経産省は来年導入する「長期脱炭素電源オークション」の対象に、再稼働をねらう既存原発を加えることを検討するとした。「長期脱炭素電源オークション」は、新電力も対象である。現在は個別の電力会社が負担している事故対策費を、電気料金を通して全国の消費者から集めることになる。原発事故が起きて、東電との契約をやめ、再生可能エネルギー由来の新電力会社と契約した人も多い。ところがこの新電力会社と契約している人も、原発の事故対策費や再稼働費用を負担させられるのである。
あまりにも理不尽だ。原発事故から学び、原発は良くない、稼働すべきではないと、原発ではないエネルギーを求めて新会社と契約した人たちから集めたお金を、原発も含む発電会社に分配するというのである。
原子力資料情報室の松久保事務局長は「事故対策は電力会社の責任で投資すべきだ。消費者に負担させるべきではない」と苦言を呈している。
東電福島第一原発事故から学び、各電力会社は安全第一へと抜本的な体質改善に取り組むべきである。国はそれを指導する立場だが、事故を起こしても消費者に負担させる制度を導入しようとしている。これでは事故を起こさないように対策を取らなくてはという意識にならない。
東電は15メートル以上の津波が来る可能性を知りながら、経費がかかるからと対策を行わず、原発事故を引き起こした。そこからしっかり教訓を得なければならない。危険な原発ではなく、再生可能エネルギーへの転換を。
原発からの撤退以外に選択の余地はない。(沢)