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2023.07.12

日本新聞

日本新聞 4502号記事 福島第一原発汚染水放出

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IAEAが「安全基準適合」と不当判断


トリチウムや基準超えの放射性核種を含む汚染水の海洋放出。国内外からの批判を無視して、海洋放出を強行する政府と原発推進勢力

 7月4日、IAEA(国際原子力機関)は東電福島第一原発の汚染水海洋放出計画について、「計画は国際的な安全基準に適合」とする報告書を発表した。これによって政府は、今夏までとしている放出時期を具体化するとしている。政府もIAEAも処理水と言うが、実際には、トリチウムは除去されていないし、放射性核種も基準超えのものが多数あり、その影響は大きい。水産物への影響は計り知れない。

報告書の問題点

IAEAの報告書の骨子は次の通りである。
1、処理水の海洋放出計画は、国際的な安全基準に適合し、人や環境への影響は無視できるほどだ。
※トリチウムは処理されておらず、放射性核種も基準超えのものが多数ある。水産物への影響は十分考えられ、もちろんそれを食した人間への影響も否定できない。このことから全漁連、福島県漁連は反対決議をあげている。
政府は「関係者の理解なしには実施しない」と言っていたが、今では関係者の反対を全く無視している。

2、東電は、処理水の放出にあたり放射性物質の濃度を正確に測る能力がある。
※能力があるかどうかが重要ではない。正確に測ることができるかではなく、正しく対処するかが問題。線量の高い地への帰還を問題なしとして、国と一緒になって福島への帰還を進めている不誠実さによって、犠牲にされる人は多い。

3、放出計画を審査した原子力規制委員会は、独立した規制機関として、適切な規制をしている。
※これは全くの大嘘だ。原発事故の収束さえ目途が立っていないのに、次々原発の再稼働を「新基準適合」と認めてきたのが規制委員会である。きわめつけは、1977年運転開始の超老朽炉「常陽」の「適合」判断である。一体どこが独立した規制機関なのか。政府が原発推進に舵を切れば、何でもかんでも「適合」と再稼働ゴーサインを出す。政府の意向通りのお抱え機関である。

4、原子力規制委員会による使用前の検査は、設備が計画通りに設置され、運転できるかを確認するうえで十分。
※3に記した通り、原子力規制委員会の判断はまゆつばものだ。

 今回のIAEAの「適合」判断を、政府は「お墨付き」を得たとばかりに、汚染水の海洋投棄を正当化し強行しようとするだろう。これを何としても止めなければならない。IAEAが「適合」と判断しても、海洋投棄が許される根拠はない。

 IAEAが「適合」判断した7月4日、韓国では超党派の国民対策委員会が「汚染水の海洋放出に反対する85%の国民を代弁する」と発足し、「日本政府は“海洋テロ”に他ならない無断放出計画を、ただちに取り消すべきだ」と訴えた。中国外交部は「日本が放射性物質汚染リスクを世界に押し付けるのは非道徳で不法」と声明を出した。日本国内でも半数以上が海洋放出に反対である。

 IAEAが実際に基づいていないのは、東電福島第一原発事故が起きた時に、「年間100ミリシーベルト被ばくしても、がんの危険性はない」と言い放ったことからもよくわかる。国際原子力機関ではなく、原発推進機関なのである。

 事故当時、18歳未満だった福島の子ども達のうち300人以上が甲状腺がんを発症している。これも“原発事故との因果関係は不明”としらを切る。今、甲状腺がんになった若者7人が“原因をはっきりさせてほしい”と裁判を闘っている。勇気ある闘いである。

 汚染水の海洋放出は何としてもストップさせなくてはならない。    (沢)