日本新聞
日本新聞 4498号記事 反戦、命を第一にする政治への転換を
軍備増強は抑止力にはならず、戦争を引き起こす。軍拡のための増税許さず、コロナ禍の困窮世帯支援第一の予算で政治の抜本的改革を
昨年は岸田政権の悪政ぶりを余すことなく見せつけられた年となった。
新型コロナ感染者数は昨年11月、12月と日本が世界で一番多い。コロナ禍も続き、困窮を極めている状況は少しも良くなってはいない。
食品の値上げラッシュも続き、昨年10月には値上げ品目は6699品目、11月882品目、12月175品目が値上げ。11月30日までで実に2万822品目も値上げし、昨年暮れに、2023年にはさらに4000品目が値上げ予定だと発表されている。ガソリン、電気料金などあらゆるものが値上げされ、生活を直撃している。
日本の食料自給率は37%と極端に低い。天候不順などで輸入相手国から農作物が入ってこなければ、すぐさま飢餓の危険が迫る状況だ。ロシア・ウクライナ戦争での物流の停滞などがすぐさま影響する。
食料自給率を上げ、飢えさせないことは政治の最も重要な責務である。ところが安倍、菅、岸田、どの政権も、その責務を全く果たしていない。それどころか、困窮世帯救済よりも軍備増強に力を入れている始末である。
敵基地攻撃能力保有は憲法違反
昨年12月16日、政府は「安保3文書」を、あろうことか閣議決定で決めてしまった。敵基地攻撃能力の保有を決めたのである。敵基地攻撃能力ではあまりにも露骨な表現なので、「反撃能力」と変えている。しかし中味は、「(同盟国である)米国が攻撃されていなくても攻撃する」と言うのだから、反撃ではない。明らかに先制攻撃である。
つまり、これまで日本は専守防衛を原則としてきたのだが、それを全く変えてしまうことなのである。憲法9条の不戦、戦力不保持もかなぐり捨ててしまう大転換である。違憲そのものだ。これだけのことを閣議決定で済ませる等、日本の政治には民主主義のかけらもない。国会での徹底的な討論の場と、有権者の意見を聞く場を設けなければならない。その上で、国民投票も行わなければならない。そうしたことを一切行わず、閣議決定で決めてしまう、こうした暴挙を許してはいけない。
政府は、敵基地攻撃能力を決める前から、米国から、攻撃のための兵器の購入を決めて予算に組み入れてきた。これも違憲で、決して認められることではない。
そして今、軍事費に5年間で43兆円使う、そのために増税しなければならないと、法人税増税、復興特別税の軍事費への流用、たばこ税増税などを提唱している。
もともと軍事費を増やすべきではないし、そのための増税など認められない。戦争への道に歯止めをかけなくてはならない。
政府は今、九州南部から沖縄の与那国島までの南西諸島に、自衛隊のミサイル基地などを建設している。南西諸島の軍事要塞化である。「台湾有事」を煽り立て、“中国が台湾を攻撃した時に迎撃できるようにしなければ大変なことになる”というのだ。
そもそも軍備増強は抑止力にはならない。日本の軍備増強は、かつての大日本帝国軍を想起させ、アジアの国々は警戒心を強めている。しかも、南西諸島の島々から米軍がミサイル攻撃を仕掛けて移動すれば、抑止力どころか、島々が攻撃の的になってしまうではないか。
軍備増強は抑止力にはならない。抑止力は平和外交以外にない。
原発の「最大限活用」の基本方針決める政府
昨年12月22日、政府は原発の60年を超える運転や次世代型原発への建て替えなどの基本方針を決めた。1月下旬まで意見公募(パブリックコメント)を実施し、閣議決定して、通常国会に法案を提出するという。
東電福島第一原発事故をどうとらえているのか。ふるさとも生業も失った被害者の苦しみは今も続いている。事故現場から放射性物質は今も環境に拡散し続け、廃炉作業はいつ終わるかの見通しも立っていない。何も解決していないのである。
政府はその実際から、原発から撤退すべきだという教訓を引き出すのではなく、老朽原発を再稼働させるというのである。原発を再稼働し、次世代原発を動かそうというのである。まさに狂気の沙汰である。
今、私たちは政府がやろうとしていることの行先をしっかりと見ていかなければならない。民主主義のルールも守らず、閣議決定で事を進めようとする暴挙を許してはならない。 不戦の憲法9条を守り、戦争ではなく命を守る政治、民意が反映される政治への転換を求めていこう。 (沢)