日本新聞
日本新聞 4443号記事 沖縄県知事が辺野古設計変更認めず
岸田政権も「辺野古移設が唯一の解決策」と沖縄の民意無視。基地などできない軟弱地盤に莫大な費用を浪費。辺野古新基地建設は中止に
11月25日、玉城・沖縄県知事は防衛省沖縄防衛局が県に出していた辺野古新基地設計変更の申請を不承認とした。これは埋め立て予定海域で見つかった軟弱地盤に対応するためのものであるという。
玉城知事は「完成の見通しが立たず、事実上、無意味な工事をこれ以上継続することは許されない」と語っている。
軟弱地盤はN値0で、“マヨネーズ状”と称されている。そのようなところに基地を造るなど不可能である。しかも最深90メートルというが、政府が改良工事を行うのは水深70メートルまでで、改良しない部分を残しての基地建設もあり得ない。
軟弱地盤改良のために、砂杭約7万1000本を海底に打ち込んで地盤を固めるために、さらに約353万3000立法メートルの海砂を採取しなければならない。土砂の増量も変更申請に含まれている。土砂の調達先は本部・国頭村地区だけだったのが、本島南部、宮古島、石垣島など7地区9市町村に拡大する。沖縄戦で犠牲となった人々の遺骨が残る土砂を米軍の基地に使うなど、全く許されないことだ。総工費は当初の3倍近い9300億円に膨れ上がり、工期も12年、これは政府の試算で実際はもっと増える可能性が大きい。
実現不可能な基地建設に、莫大な時間と費用をつぎ込む。儲けているのは大手ゼネコンだ。基地ができようができまいが、儲けさえすればいいというねらいが見えてくる。
「基地はいらない」と
いう沖縄の民意尊重を
1995年に米兵3人が女子小学生を強姦した。この事件を巡って、沖縄では米軍基地反対運動が高まった。県民大会には8万5000人が結集した。こうした運動の鎮静化をねらって、日米両政府が提示したのが1996年のSACO合意である。沖縄の11の米軍施設を返還するとして、沖縄の負担軽減策だといわれた。しかし実際は、老朽化し使い物にならないものを返還し、最新機能を備える基地強化であった。
このような姑息なやり方を見抜いた沖縄県民は、辺野古新基地に明確に反対の意思表示をした。選挙のたびに、辺野古新基地反対の候補を支持した。これに対して政府は「選挙は基地建設だけを問うものではないので、基地反対の民意とは言えない」とねじ曲げた。そのため、沖縄県民は2019年に辺野古基地建設だけを問う県民投票を行った。72%が反対票を投じた。
基地反対を、命をかけて貫いた翁長知事の後継者として、沖縄県民は玉城知事を誕生させた。今回、玉城知事が設計変更申請を承認しなかったのは当然である。
これまで玉城知事は何度も首相官邸を訪れたりして、沖縄県民は基地建設に反対だと訴え続けてきた。しかし、政府は聞く耳を持たなかった。岸田首相は安倍・菅内閣とは違うかのように登場したが、結局、「辺野古が唯一の解決策だ」と従来の自民党政権と全く同じ言葉を繰り返した。このようなことから、玉城知事は不承認で工事を阻止しようとしたのである。
これは国が沖縄の声を聞こうとしないことに対する対抗策である。国が真摯に沖縄県と話し合う姿勢をとったことは、残念ながら今まで一度もない。
玉城知事の不承認に対して、政府は対抗策を検討しているという。
11月23日には、普天間基地所属のオスプレイから宜野湾市野嵩の住宅街に金属製の水筒が落下した。米軍基地がある限り、基地周辺の住民は常に危険にさらされている。
政府は沖縄県を訴えるのではなく、基地建設を中止すべきである。
(沢)