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2023.08.23

党の主張・声明

放射能汚染水の海洋放出の中止を求める声明

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 岸田首相は、「福島県復興の前提に福島第一原発の廃炉があり、廃炉の前提に処理水の処分がある」として、その汚染水の海洋放出を8月24日に行うことを関係閣僚会議で決定した。しかし、30年以上に及ぶ汚染水の放出は世界の海を汚し、二次災害を生み出すものだ。反対の声があるにもかかわらず強行する海洋放出は即刻中止することを求める。

 政府は、国際原子力機関(IAEA)の「国際的な安全基準に合致する」「人および環境に与える放射線の影響は無視できる」という報告書をお墨付きとして、海洋放出を強行している。しかし、原発事故で溶け落ちた核燃料を冷やした高濃度汚染水は、「多核種除去設備ALPS」で処理してもトリチウムなど除去できない放射性物質を含む。またトリチムのほかにもセシウム・ストロンチウムなど62核種の基準値越えの放射性物質を含む汚染水が大量にある。放射性物質がある限り、被ばくを伴う。海洋放出はどんなに薄めても放射性物質を海に垂れ流すことであり、食物連鎖を通じて健康に被害をもたらす明らかな環境汚染である。世界最悪の原発事故を起こした汚染水を海洋に放出するのは世界初であり、全く無謀なことである。断じて認めるわけにいかない。これは風評被害ではなく、放射能の二次災害である。

事故前は、年間2兆ベクレルのトリチウムを海洋放出していた。現存の汚染水のトリチウムは860兆ベクレルである。年間22兆ベクレルを放出する予定である。しかし、海洋放出はコスト削減になるからと言って行うべきではない。二次災害を防ぐために、放射性物質を閉じ込めるべきである。政府は、石油備蓄で使われている大型タンクの増設やトリチウムのモルタル固化などの代替え案を採用すべきである。
現在の汚染水の総量134万トンは、タンク約1000基に保管されている。東電によると、2023年に放出する汚染水は、3万1200トン、約30基分であるが、毎日約100トンの汚染水が新たに発生しているので、実質減るのは約1万2200トン、約10基分、全体の1%に過ぎない。東電は、「放出量を徐々に増やして、2051年までに、保管タンクゼロにできる」としているが、石棺や地下水などを遮蔽する措置を抜本的に取らない限り、汚染水の終わりが見えない。50年もかかると推測する専門家もいる。345億円をかけ、現在も毎年の電気代が十数億円かかる凍土壁は、地下水をゼロにはできなかった。したがって石棺や新たな広域遮水壁対策を検討するべきである。
2015年、政府と東電は、「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と約束した。ところが、政府は約束を破って海洋放出を強行した。全漁連会長らと面会し、漁業者に必要な支援などの基金を800億円出すことによって一定の理解を得たと強弁している。しかし、関係者の理解を得られたとは到底言えるものではない。世界の海を放射能で汚染することは取り返しのつかないことであり、被災地の人々を一層苦しめるものである。海洋放出の中止以外、安心は得られない。そして国内だけでなく、汚染された海によって世界の人々の生業もまた奪われる。政府は、国内や世界の人々の反対の声に耳を傾けるべきである。
政府は原発回帰に舵を切った。福島原発事故の1~3号機で生じたトリチウムは年間200トンにのぼる。再処理工場が稼働すれば、使用済み核燃料を年間800トン処理し、大量のトリチウムが取り出され、海洋放出する計画になっている。原発のない社会を実現しない限り、更なる危険が待ち受けることを危惧する。環境を破壊する放射能汚染水の海洋放出は即刻中止することを要求する。


2023年8月23日

                緑の党 党首   對馬テツ子