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2024.07.10

日本新聞

子どもの自殺が年々増えている日本の病巣

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4577号1面記事
子どもの自殺が年々増えている日本の病巣

小中高生の自殺が2020年から急増し続けている実態。自殺の6割「原因不明」はありえない。問題を直視し子どもが希望を持てる社会に

 札幌市立中学1年女子生徒が2021年10月、いじめが原因で自殺した。生徒の両親は「何度もいじめ被害を訴えていたのに、学校が放置し続けた」と、7月5日、札幌市に約6500万円の損害賠償を求め、札幌地裁に提訴した。
 今年2月に、第三者による調査委員会が公表した報告書では、生徒は学校のアンケートに「仲間外れや無視をされる」と何度も答えていた。6年生の時には「どれいあつかいされる」と書いていたという。調査委員会は、「髪の毛を引っ張られたり、絵の具で服を汚されるなどのいじめも受けていた、学校側が適切に受け止めず、対応しなかったことが自殺につながった」と結論づけた。
 訴状では、小学5年から2年以上、陰湿ないじめを受け、「終わりの見えない苦痛、屈辱を感じる慢性的ストレスを受けた」と主張している。
 生徒の父親は「学校の先生方や市教委には、娘を死に追い込んだことについて責任を自覚し、償ってほしい」、母親は「いじめられ続け、被害を訴えても、先生方が誰も助けてくれなかった。どれだけ娘が悩み苦しんでいたかと思うと、悔しくてなりません」と訴えている。
 第三者の調査委員会が調べてすぐわかるいじめを、学校側が把握できないわけがない。いじめを問題にもしない教育現場に深い闇がある。
 いじめは日々、陰湿化し、教師も一緒になって葬式のまねごとをしていた事例や、いじめられた女子生徒が凍死したあとも「死んでサッパリした」とSNSに書き込んだり、心が病んでいるとしか言いようがない。校長も「死んだ一人より、生きている(いじめた)10人の未来を考えなければならない」と、死んでも尚、問題にしようとしなかった。このようなことが現実に起こっていることを重く受け止めなければならない。
 児童生徒が自殺に追い込まれても、「いじめとの因果関係は不明」などと平気で言い放つことが繰り返されてきた。今、子ども達を取り巻く問題を掘り下げて考えなければならない時にきている。

 世界でも子どもの自殺
 が深刻な日本

 日本の小中高生の自殺は、
2019年 317人
2020年 415人
2021年 473人
2022年 514人
2023年 513人
と、年々増えている。2022年に比べて2023年が1人減っているのは、不登校が増えている関係がある。いじめが減っているわけではない。
 15~19歳の死因のトップが自殺であり、これはG7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、イギリス、アメリカ)のうち、日本だけである。そして、自殺の原因は6割が不明とされている。これも全く異常である。不明なのではなく、明らかにしたくないのである。
 日本の子どもの「精神的幸福度」はOECD38カ国中37位だとされている。虐待、いじめ、差別、貧困など、子どもを取り巻く状況は厳しい。
 コロナ禍もあり、貧富の格差は拡大するばかりである。仕事を失った親は子どもを食べさせるために必死に働き、子どもと話をする時間さえない状況だ。貧困家庭に対する政府の支援体制は全く不十分である。貧しい子どもたちが差別され、いじめられる。お金がなければ大学にも行けない。将来を考えても、貧困から抜け出すすべはない。持っている能力を伸ばすこともできない。
 一番若い世代が自ら命を絶つ国に未来はない。子ども達が希望を持てる社会、生きたいと思える社会へと変えていかなければならない。差別を許さない教育、貧困の連鎖を断ち切る政治が求められる。      (沢)