日本新聞
農家を守る農業政策が日本の未来を拓く
4579号1面記事
農家を守る農業政策が日本の未来を拓く
「ふだんは輸入中心、有事には農産物増産命令」政府の方針は実現不可能で命を守ることはできない。食料自給率を引き上げ食の保障を
ウクライナ戦争、イスラエルとハマスの戦い、いずれも長期化し、解決は難しい状況である。ウクライナ戦争では、NATOがウクライナに武器支援を続けているために、戦争を長引かせ、犠牲を拡大している。イスラエルとハマスの戦いではパレスチナの人々が犠牲になっている。アメリカはイスラエルにガザ攻撃をやめさせるように働きかけているというが、この間もイスラエルに武器を輸出し続けている。
世界の国々が戦争が終わるために動けば、いたずらに戦闘を長引かせることはない。
こうした戦いによって、世界の国々に影響がある。ロシア、ウクライナは穀倉地帯である。そこからの穀物の輸出が滞ることで日本も大きな痛手を被る。ロシア、ウクライナが主要な生産国である小麦の高騰。イスラエルとハマスとの戦闘による石油、天然ガスの高騰。円安の影響が更に追い打ちをかける。
このような中、世界の国々は国内で食料を調達できる体制をとっている。特に大国中国では、今後1年半の食料備蓄に取り組んでいる。
では日本はどうか。今、真剣に考えなければならない時にきている。
日本の農業政策を問う
日本の食料自給率は38%。カナダ266%、オーストラリア200%、アメリカ132%、フランス125%、ドイツ86%、イギリス65%、イタリア60%、スイス51%と比べて、あまりにも低い。
日本の農業政策に大きな問題があることは、この数字からもよくわかる。1970年には、総予算に占める農水予算の比率は11%であった。ところが2023年度には2.2%に低下している。これでは農業の再生は見込めない。今、日本の農家は肥料、飼料、燃料の暴騰、加えて農産物の価格は上がらず、廃業に追い込まれる農家が増えている。
食料の確保は命に関わる重要課題である。政府は農家に対して、生産コストの上昇を国が補てんする、農地を守る交付金などの個別所得補償制度が必要である。外国では当然の制度とされているのに、日本ではバラマキなどと批判される。日本の農家の所得に占める補助金の割合は国際的にも最も低い割合だ。にもかかわらず、「補助金漬け」などと批判される。全く実際ではない。
政府は軍事費だけはうなぎのぼりに引き上げていき、農水予算は減らしていく一方である。これでは農家の所得補償などできない。
食料自給率低下の原因を“日本人の食生活が変わったから”というが、戦後、日本がアメリカの余剰農産物の処理場とされたからである。また、輸出企業が製品を輸出するかわりに、農産物を輸入させられ、日本の農業を衰退させた農政に大きな責任がある。
改悪された農業基本法には、平時は食料は輸入し、有事になったら国内の農家に増産命令を出す方針が記されている。有事になったから急に食料増産しろと言っても、実際には無理である。ふだんから日本の農家に所得補償して主食を作らせるべきだが、政府は田んぼをやめて畑にすることを進めようとしている。これでは食料の備蓄など到底無理である。
外国から食料を輸入することで、添加物や収穫後に輸送に耐えられるように農薬をふりかけるポストハーベストなど、食の安全が問われる問題も起きている。
地産地消、できるだけ小さな範囲(地元)で生産と消費を行う、食料の備蓄、タネの自給を確保するなど、取り組むべきことははっきりしている。農業を守ることは未来を拓くこと、農政の抜本的改革は緊急課題である。 (沢)