News

お知らせ

2024.08.21

日本新聞

東海第二原発 防潮堤不備、再稼働中止を

SHARE

4583号1面記事
東海第二原発
防潮堤不備、再稼働中止を

防潮堤の造り直しを求められているのに補強工事で済まそうとする日本原電。老朽被災原発の稼働は危険。再稼働でなく廃炉にすべき

 日本原子力発電(原電)は、施工不良がみつかった東海第二原発の防潮堤で、補強工事で対応する考えを示した。防潮堤は安藤ハザマなどの共同企業体が建設したもの。昨年10月に原電によると、取水口が設置されている鋼製防護壁を支える鉄筋コンクリート製の2本の基礎で問題が見つかった。コンクリの充填不足による隙間や鉄筋の変型がある。
 原子力規制委は、「防潮堤としては期待できない。地震と津波に耐えられるかわからない。抜本的に設計を見直し、造り直しを含め検討を」と求めた。これに対して原電が回答したのが「補強」なのである。「9月完成」が造り直しでは大幅に遅れるために、「補強」でしのごうとしているのだ。
 原子力規制委が安全を第一に考えるのであれば、この「補強案」を受け入れられる筈はない。規制庁の審査担当官は「補強で十分なのか今後の審査会合で議論していきたい」と言っているが、忖度しない正しい判断を求める。
 茨城県の大井川知事は「この状況でいまだに工期を変えないのは、地元に対して不誠実じゃないかと思う」と批判している。東海村の山田村長や30キロ圏内の自治体首長からも同様の批判の声があげられている。
 こうした原電の姿勢は、福島第一原発事故を起こした東電の姿勢と類似している。原発事故の前に15メートルを超える津波が原発を襲うという資料が提示されていたのに、東電幹部はそれに対応せず握り潰した。理由は経費がかさむからである。その結果、福島第一原発事故という大事故を引き起こしてしまった。15メートルを超える津波に耐えられる防潮堤を造っていれば、事故は防げたのである。いくら経費がかかろうが、それが原発を動かす会社の最優先課題である。それをないがしろにしたために、福島の惨状が引き起こされた。福島だけではない。世界に影響する環境破壊がもたらされたのである。13年半も経った今も、廃炉への道は遠く、被ばく作業が続けられている。
 造り直しを命じられても補強でしのぐ、そんな会社に原発を稼働させたら、福島の二の舞である。

 危険な東海第二原発再稼働はあり得ない

 原発はどれも危険だが、東海第二原発は最も危険な原発だといっても過言ではない。
被災原発
 東日本大震災で被災した原発で、5.4メートルの津波に見舞われ、冷温停止に必要な外部電源と非常用電源の一部を失った。かろうじて深刻な事故は免れたが危機一髪だった。
老朽原発
 1978年11月に運転開始、46年目の超老朽原発。
首都圏の原発
 30キロ圏内に94万人が居住、150キロ圏内首都圏に4000万人が居住。事故が起きても避難など不可能。
 2012年7月に地元住民224人が水戸地裁に起こした裁判で、2021年3月18日、水戸地裁判決は、「避難計画やそれを実行する体制が整えられているというには程遠い状態で、防災体制は極めて不十分」とし、運転差し止めを命じた。本来ならこれで再稼働をあきらめるところだが、原電が控訴したため、再稼働の計画が進められてきたのだ。
 東電も原電も安全軽視で利潤追求が会社の体質である。事故を起こしても国が支援してくれる、電気料金に上乗せして乗り切る、こうした考えが透けて見える。
 福島の被害者の苦しみは今も続いている。被ばくによる健康被害、故郷を奪われた喪失感、経済的な打撃など、何も解決していないのである。二度と惨事をくり返さないためには、原発からの撤退、すべての原発を廃炉にする以外にないのである。      (沢)