日本新聞
汚染水の海洋投棄は ただちに停止を
4584号1面記事
汚染水の海洋投棄は ただちに停止を
トリチウムを筆頭に多くの放射性物質含む汚染水海洋投棄を8回も強行。デブリ取り出しは不可能。石棺で覆う放射能封じ込め実施を
8月22日、東電は事故を起こした福島第一原発燃料デブリの試験的取り出し作業を初めて行う予定だったが、手順を間違え中断した。再開のメドは立っていない。燃料デブリは事故で溶けた核燃料が冷えて固まったもので、高線量で人間は近づけない。パイプを5本つなげて、取り出しに使うロボットを2号機に投入する予定だったが、パイプをつなぐ順番が間違っていたため、中断。これまでもロボットの開発の遅れや、堆積物でロボットが進めないなどで、デブリの試験的取り出しはこれまで3回延期され、当初の計画から3年も遅れている。
1号機から3号機まで合わせたデブリは約880トンあると推計されている。試験的デブリ取り出しは、計画通り進んだとしても、2週間かけて3グラム取り出すというもの。
一体どうやって、どのくらいの時間をかけて880トンのデブリを取り出すのか。しかもそれをどこにどうやって保管するのか。
元京大原子炉実験所助教の小出裕章さんは、「国と東電が策定したロードマップは『幻想』です」と断じている。デブリ取り出し一つとっても全く同感だ。小出さんは次のように指摘している。
「国と東電はデブリが、圧力容器直下のコンクリート製の台座に、まんじゅうのような塊になって堆積していると期待していた。格納容器と圧力容器のふたを開け、上からつかみ出す予定だった。ところが、デブリは飛び散っていることがわかった。そこで、国と東電は格納容器の横に穴を開け、横に取り出すと言い出した。作業員の被ばくが膨大になり、しかも格納容器の反対側にあるデブリは取り出せない」
結論として小出さんは「デブリの取り出しは100年経っても不可能。チェルノブイリのように原子炉建屋全体をコンクリート製の構造物(石棺)で封じ込めるしかない」と言っている。
汚染水海洋投棄、デブリ取り出しを中止し、原発からの撤退を
8月21日、「ミライノウミプロジェクト」主催の院内集会と政府交渉が、衆院第二議員会館で行われた。
福島県平和フォーラム、原子力資料情報室、原水禁が呼びかけ団体となり、「『ALPS処理水』海洋投棄を直ちに停止してください」と署名活動を行い、今集会を開催した。
「ALPS処理水」にはトリチウムをはじめ、処理できない放射性物質が含まれている。「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」という約束を反故にして強行している。他の方法を講ずるべきだと話された。
また、通常的に福島第一原発敷地内から雨水での垂れ流しは問題にされていない。
・構内排水路を通って流れ出るもの、これはALPS処理もしていない危険なものだ。ALPS処理はで
きることだ。
・海側遮水壁から汚染水が外に出ている。2019年の東電の発表で1日30トン。
海洋投棄より、はるかに多い放射性物質が日々、垂れ流されているのである。今、海洋投棄されている汚染水はトリチウムが少ないもの、他の核種があまり入っていないもので、これからがますます問題になる。
政府交渉に先立ち、これまでの署名20万7456筆が経産省に提出された。政府は署名に込められた思いを真摯に受け止めてほしいものだ。
ロードマップが崩壊していることについては経産省側は、「3年程度遅れてはいるが、着実に進展している」と繰り返し強調し、「ロードマップ見直しは考えていない」と言い放った。
小出さんが指摘しているように、原子炉建屋全体をコンクリート製の石棺で覆うことが、現時点で有効な措置だと思われる。地下水の流入を防ぎ、汚染水の増大を防ぐ。そして放射性物質の環境への拡散を止める。これ以上、作業員の被ばく、環境汚染を拡大することにストップをかけなくてはならない。
原発再稼働などとんでもない。政府はただちに原発から撤退すべきである。 (沢)