日本新聞
311子ども甲状腺がん裁判 原発事故と甲状腺がんの因果関係は明らか
4587号1面記事
311子ども甲状腺がん裁判
原発事故と甲状腺がんの因果関係は明らか
311子ども甲状腺がん裁判第11回口頭弁論で苦しい体験を切々と語る原告。被告東電は事故による被ばくを認め、被害者に保障せよ
9月11日、東京地裁で「311子ども甲状腺がん裁判」第11回口頭弁論が行われた。
「311子ども甲状腺がん裁判」は事故当時18歳未満だった青年達が、事故後、甲状腺がんを発症し、自らの病気が原発事故による被ばくが原因だったことを明らかにして、保障してほしいと訴えた裁判である。
被告東電は、いまだに事故と甲状腺がんとの関連性を認めない。それどころか、原告の青年達のがんは、検査しなければ生涯気づかないくらいの、問題にもならないものだとさえ言っている。現実に今現在、苦しんでいる青年たちを前に、よくもこれほどの暴言を言い放つことができるものだ。譲れない闘いである。
原告1さんの意見陳述
裁判の最初に原告1さんの意見陳述があった。すべての原告の意見陳述を聞いた裁判長から今の裁判長に代わったので、意見陳述が認められて本当に良かった。以下に要旨を紹介する。
会津若松に住んでいた。自宅は原発から西に100キロ圏内で、東側方向からのプルームが滞留しやすいところにある。事故後、放射性セシウムも高い値を示していた。自宅の窓は原発側に向いていた。自転車通学で、片道30分はかかった。よく牛乳を飲んでいた。事故後も露地野菜を食べていた。
19歳の時の検査では特に問題はなかった。20歳の時、穿刺細胞診検査をした。1、2回目とうまくいかず、苦しかった。翌日、甲状腺がんを告知された。半年に1回通院した。1年後には10.6ミリと大きくなった。手術前には11.6ミリになっていた。
SNSで病気のことを発信したら、励ましが返ってきてうれしかった。手術後も定期的に検査している。再発を考えると落ち込むので、考えないようにしている。
被告東電はこの意見陳述をどうとらえるのだろうか。これが、調べなければ生涯気づかない、問題にもならないガンなのか。あまりにもひどい。
原告側弁護団は13本の準備書面を提出して、この日の弁論に臨んだ。
弁護団の論点は明確だった。
・被告は“潜在がん”だというが、福島県で甲状腺摘出手術は327人、必要のない手術だったのか。1割が再発している。被告の主張“治療の必要のない潜在がん”は、実際とかけ離れている。
・被告は“福島の子ども達の被ばく量は5.1ミリシーベルトと低いから、原発事故と甲状腺がんに因果関係はない”と主張。紅葉山のモニタリングポストは1歳児で約60ミリシーベルトの被ばくを示す。平山論文も10歳児の被ばく46.81ミリシーベルトと明記。UNSCEARは5.1ミリシーベルトとしている。なぜこんなに違うのか。
・被告の「100ミリシーベルト閾値論」は誤り。世界的な微生物研究者であるルビン博士は“100ミリシーベルト以下でもガンになる”と述べている。
日本民法学会最高峰の我妻栄は“常識的に、事故があった時は因果関係あり”と述べている。原賠法では“早急かつ十分に被害者を支援すべき”と定めている。
この日、87席の傍聴席に対して207人がかけつけた。
報告集会では大学生やスタッフの青年など、若い人の発言が続いた。
「自分と同年代の原告がいろいろな覚悟を持って裁判をしているのがすごい。メディアはあまり報じないが、自分は見過ごしたくないから傍聴した」
「同年代の人たちが闘っているのが心に響いた」
「メディアは取り上げてほしい。人権を守る最前線だ」
井戸弁護団長は「今、“福島の事故で住民被害はなかった”という神話がまん延している。それを打ち破っていかなくてはならない。UNSCEARはインチキだと広めてほしい。それが一番の武器になる」と訴えた。
なぜ、被害を受けた人が勇気を持って被害を訴えなければならないのか。原告の青年達と連帯し、被害の実際を広めていこう。(沢)