日本新聞
衆院選 与党過半数割れ、自公政治にノー
4593号1面記事
衆院選 与党過半数割れ、自公政治にノー
与党215議席、公示前より64議席減。裏金、軍事優先・福祉切り捨て政治
拒否の有権者の意思表示。野党も託された票に応え政治転換に全力を
10月27日衆議院議員選挙の投開票が行われた。投票率は53%台と前回55.93%より低い。これも政治不信の表れである。衆院の過半数は233議席。公示前、自民247議席、公明24議席で自民は単独過半数であった。選挙結果は自民191議席、公明24議席で合わせても215議席と過半数に及ばなかった。
立憲民主党は公示前98議席から148議席まで大幅に議席を増やした。今回の選挙は、自民党の裏金問題(政治資金パーティーのパーティー券の収入を収支報告書に記載していなかった)問題で、石破首相が“国民に信を問う”と行ったもの。石破首相は就任から8日後に衆院を解散した。戦後最短の解散である。
石破内閣は支持率28.0%の「危険水域」から始まった。これまでの例を見ると、少なくとも発足当初は支持率が上がり、そこから低下していくというケースが多く、発足当初から支持率が28.0%では見通しは暗い。それが総選挙を急いだ要因だろう。石破首相は「日本を守る。政治を変える」と息巻いて全国を遊説したが、結果は大惨敗である。口先だけで有権者はだまされない。
有権者が与党を見限ったのは、裏金問題だけではない。政策自体が問題だらけである。
石破首相は就任早々、解散総選挙に突入したが、今年1月に大地震に見舞われた能登半島は、9月には大雨に見舞われ、大きな打撃を受けていた。そのさなか、岸田首相(当時)は訪米していたのである。すぐさま帰国して、緊急対策を講じるべきだろう。最優先は被災者を守ることだ。1月の大地震の復興も置き去りにされた状態に、追い打ちをかけるように大雨が襲った。その救済に全力を注ぐべき時に訪米し、アメリカのご機嫌伺いが最優先。そして引き継いだ石破首相も、被災地支援より総選挙。能登では自民候補ではなく立憲民主の候補を選んだ。
今、光熱費も物価もどんどん高騰し、生活は苦しい。賃上げと言われても、一部の大企業に限られ、それも実質賃上げからは程遠い。零細企業は倒産の憂き目にあっている。無権利の非正規労働者が増える一方である。このような中、政府は生きていけるように福祉に予算を回すのではなく、軍事費倍増を強行している。琉球弧にミサイル基地を造ることは、抑止力ではなく「有事」を引き起こすことである。さらに、福島第一原発事故で危険性が明らかになった原発を利権のために再稼働する政策。命をないがしろにする政治だ。
自民党大惨敗は有権者が突きつけた、現行の政治へのノーである。
野党は有権者に応える政治改革の努力を
自公政治ノーの思いは立憲民主党の大幅議席増の結果となった。公示前98議席から148議席へ50議席も増やした。問題はここからである。
公示前3議席から9議席へと増やした「れいわ」の山本代表が「立憲民主との共闘は考えているか」と問われて、「今のままでは、ないです。だって自民と同じだ」と答えた。自公に対する不信の思いで投じられた立憲民主への有権者の1票を生かすには、立憲は今のままではダメだ。改憲についても野田代表は反対を明示せず「是々非々」と言っている。
有権者の多くの支持を得た立憲がこれから示すべきは、自公政治との違いである。軍事優先ではなく社会保障の充実、原発ではなく再生可能エネルギーへの転換を明確に打ち出すべきである。自公政権ノーの1票1票に応えることが、これから求められる。
野党と言っても、改憲、軍備増強で自公と歩調を合わせる勢力もあることから、私たちは一層警戒感を強め、戦争への道に歯止めをかけなければならない。 (沢)