日本新聞
第2回全国オーガニック給食フォーラム
4595号1面記事
第2回全国オーガニック給食フォーラム
JAと市が一緒にオーガニックに取り組んでいる常陸大宮市での開催。全国各地のJAの取り組みも紹介。食を守ることは命を守ること
11月8日、常陸大宮市文化センターで、第2回全国オーガニック給食フォーラムが開催された。会場には800人、オンラインで400人、全国50のサテライトスタジオにもたくさんの方が集まった。
常陸大宮市は、全国に先駆けて市とJAが一緒になってオーガニック給食を推し進めている。JA常陸の秋山会長は「もともと私が子どもの頃は、皆無農薬だった。やれないわけがない」と全国のJAの先頭で、ネオニコチノイド系の農薬削減に取り組んだ。全国オーガニック給食協議会の理事も務めている。鈴木市長もオーガニック給食に意欲的に取り組んでいる。
基調提案は鈴木宣弘・東大大学院農学生命科学研究科特任教授と、国際ジャーナリストの堤未果さん。
給食が拓く子どもたちの未来
鈴木宣弘教授は次のように語った。
――戦後日本は、米国の余剰農産物の最終処分場にされた。自動車の利益のために農と食を差し出す「いけにえ」政策だ。その結果、輸入増加、農業縮小、自給率低下を招いた。
食料自給率の低下は日本人の食生活の変化によって輸入するしかなくなった、これは嘘。1958年に出版された「頭脳」という本には「米食低能論」が記されている。慶応大学医学部・林教授の著書で50版を重ね、日本社会に大きな影響を与えた犯罪的な書だ。
国際紛争などの不測の事態になると、一気に事態が悪化するが、ウクライナ危機で、それが起こってしまった。
食料、種、肥料、飼料などを海外に依存していては、命を守れない。肥料、飼料、種を輸入していることを考慮すれば、日本の自給率は38%どころか9.2%にすぎない。海外に依存しないで、肥料も種も国内で作る。国内の生産力をフル稼働させることだ。
自給率は北海道が228%、茨城が70%、東京は0.4%、ほとんど0だ。農業問題は消費者問題、命の問題だ。
日本の農家は、ひどい政策下でも世界10位の農業生産をあげている。赤字でも頑張ってきた。農家とともに一緒に頑張ろう!——
本質をズバリ突いた講演だった。
いのちの給食が世界を変える
堤未果さんはこう語った。
――米大統領選があったが、ロバート・ケネディJrは無所属で大統領選に出馬していたが、降りて、トランプを支持した。彼は“子ども達の食を変える”と言っていた。医療と食が大企業寄りだと指摘した。
アメリカは毎日8000万人がファストフードを食べている。子ども達の3人に1人は肥満。米軍入隊年齢の7割が太りすぎ、健康に問題があって不適格。子ども達の健康が食から壊れている。
アメリカでは、食生活の7割が超加工品。便利、安い、どこでも手に入る。世界中に輸出している。化学的に作った味で、精神にも影響する。人工甘味料はカロリーゼロ。体がおかしいと思って、代謝ができなくなる。そしてもっと食べる。
「新・大豆バーガー」が2021年に学校給食にデビューした。アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、日本でも。環境にいい、健康にいい、は嘘。子どもの4人に3人が「毎日食べたい」。大量生産で、途中から遺伝子組換え大豆に変えた。ブラジルの木を大量に伐った。添加物だらけで塩分も高い。
日本政府は酪農家には「牛1頭殺せば補助金やる」、一方でコオロギには補助金たっぷり。コオロギはカドミウムを蓄積するから、遺伝子組換えする。「京大バーガー」はゲノム編集のマダイのフィッシュバーガー。
まずは種を守る。地元の災害に強く味もいい種を守る。旬の食材を使ったオーガニック給食を食べられる子ども達は幸せだ。自然の多様性に感謝するようになる―
見通しの出てくる講演だった。
各地のJAの取り組みを聞いたり、パネルディスカッションでの農家の方の「子ども達に農家の話を聞かせたい」という発言や、お母さんの立場から「なるべく受け入れられるように考えて、激しく主張しすぎないようにしている」という発言に学ぶところが多かった。
「子ども達に安全な食を!」オーガニック給食の実現に向けた展望の持てる集会だった。 (沢)